司法書士あかまつの事件簿
静岡県沼津市で開業している司法書士赤松 茂のブログです。事件簿といっても、司法書士業務を通じた雑感などが主な記事になります。
【日司連会長声明】民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明
日司連から、民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明が出されている。
https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement/49617/
現在、国において民事裁判手続のIT化が検討されているところだが、多くの司法書士は登記においてオンライン申請に対応している実績があり、古くから全国に遍く存在しているので、きっと民事裁判手続の利用者のお役に立てるだろう。
ぜひとも、制度設計者・利用者におかれては、司法書士を積極的に活用してもらいたい、という趣旨である。
https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement/49617/
現在、国において民事裁判手続のIT化が検討されているところだが、多くの司法書士は登記においてオンライン申請に対応している実績があり、古くから全国に遍く存在しているので、きっと民事裁判手続の利用者のお役に立てるだろう。
ぜひとも、制度設計者・利用者におかれては、司法書士を積極的に活用してもらいたい、という趣旨である。
静岡県司法書士会の取り組み
静岡県司法書士会では、東京オリンピック2020の聖火ランナーに司法書士が出走する際に、一定の条件で推薦している。
県内の司法書士が地域連携を、よりいっそう意識するための仕掛けづくりといえるだろう。
これを機会に多くの司法書士が健康を手に入れ、あわよくば当選する司法書士が現れることを祈っている。
以下、推薦理由を引用する。
司法書士は、業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命としています。
社会環境の変化による権利擁護支援の高まりとともに、簡裁訴訟代理等関係業務、成年後見業務、財産管理業務など司法書士の業務範囲は拡大し、また、昨今では、空き家・所有者不明土地問題への対応、自然災害における復興支援など多方面において、多くの司法書士が活躍しています。
こういった活躍は、それぞれの司法書士が各地域に根差した活動を地道に続け、地域の方々との信頼関係があるからこそ、なされるものです。
地域と司法書士との連携なくして、自由かつ公正な社会は形成できません。
そこで、県内の司法書士が聖火ランナーとして走ることにより、県民に寄り添う法律家である司法書士と県民の皆様との絆を、より一層強固なものとするために、当会司法書士を聖火ランナーとして推薦いたします。 以上
県内の司法書士が地域連携を、よりいっそう意識するための仕掛けづくりといえるだろう。
これを機会に多くの司法書士が健康を手に入れ、あわよくば当選する司法書士が現れることを祈っている。
以下、推薦理由を引用する。
司法書士は、業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命としています。
社会環境の変化による権利擁護支援の高まりとともに、簡裁訴訟代理等関係業務、成年後見業務、財産管理業務など司法書士の業務範囲は拡大し、また、昨今では、空き家・所有者不明土地問題への対応、自然災害における復興支援など多方面において、多くの司法書士が活躍しています。
こういった活躍は、それぞれの司法書士が各地域に根差した活動を地道に続け、地域の方々との信頼関係があるからこそ、なされるものです。
地域と司法書士との連携なくして、自由かつ公正な社会は形成できません。
そこで、県内の司法書士が聖火ランナーとして走ることにより、県民に寄り添う法律家である司法書士と県民の皆様との絆を、より一層強固なものとするために、当会司法書士を聖火ランナーとして推薦いたします。 以上
【書籍紹介】再考 司法書士の訴訟実務
日本司法書士会連合会から、「再考 司法書士の訴訟実務」が発行された。
《内容紹介》
・相談、事件の把握、手続選択、主張立証活動などの留意点を具体事例に即して解説し、簡裁代理および書類作成による本人訴訟支援の執務指針を示す!
・説明助言義務や送達受取りなどの和歌山訴訟を踏まえた現代的論点にも応える、「司法書士の、司法書士による、司法書士のための」民事訴訟実務の必携書!
・訴状・証拠説明書・準備書面・陳述書等はもちろん、委任契約書や各種報告書等の記載例も収録しているので実務に至便!
《目次》
第1章 司法書士の裁判業務─今こそ温故知新
第2章 相 談
第3章 事実認定の構造
第4章 事例にみる事実認定と判断─山本和子事件を題材に
第5章 手続選択
第6章 和 解
第7章 訴状の作成
第8章 期日ごとの対応
第9章 立 証
第10章 判決後の対応
第11章 報 酬
私も、執筆者の一人として寄稿している。
どんなに司法書士業務が変容しようとも、裁判業務を疎かにしてはならない。
しっかりした裁判書類を作成することができなければ、他の業務をするためのベースができていないといえるからである。
そんな思いを込めて、執筆した。
以下、私の執筆担当部分の結びから抜粋する。
「司法書士の本人訴訟支援は、よく「二人三脚」に例えられるが、本人を書類作成という業務で支える司法書士は、マラソンランナーをゴールまで導くための優れたランニングシューズのようなものである(ゴールするのは本人の力次第だが、優れたランニングシューズがなければゴールに至る過程は、つらく険しいものとなり、リタイヤする可能性も高まる。)」
まさに、そのとおりである。
《内容紹介》
・相談、事件の把握、手続選択、主張立証活動などの留意点を具体事例に即して解説し、簡裁代理および書類作成による本人訴訟支援の執務指針を示す!
・説明助言義務や送達受取りなどの和歌山訴訟を踏まえた現代的論点にも応える、「司法書士の、司法書士による、司法書士のための」民事訴訟実務の必携書!
・訴状・証拠説明書・準備書面・陳述書等はもちろん、委任契約書や各種報告書等の記載例も収録しているので実務に至便!
《目次》
第1章 司法書士の裁判業務─今こそ温故知新
第2章 相 談
第3章 事実認定の構造
第4章 事例にみる事実認定と判断─山本和子事件を題材に
第5章 手続選択
第6章 和 解
第7章 訴状の作成
第8章 期日ごとの対応
第9章 立 証
第10章 判決後の対応
第11章 報 酬
私も、執筆者の一人として寄稿している。
どんなに司法書士業務が変容しようとも、裁判業務を疎かにしてはならない。
しっかりした裁判書類を作成することができなければ、他の業務をするためのベースができていないといえるからである。
そんな思いを込めて、執筆した。
以下、私の執筆担当部分の結びから抜粋する。
「司法書士の本人訴訟支援は、よく「二人三脚」に例えられるが、本人を書類作成という業務で支える司法書士は、マラソンランナーをゴールまで導くための優れたランニングシューズのようなものである(ゴールするのは本人の力次第だが、優れたランニングシューズがなければゴールに至る過程は、つらく険しいものとなり、リタイヤする可能性も高まる。)」
まさに、そのとおりである。
裁判手続のIT化をめぐる司法書士事務所の風景(その2)
2019年には裁判手続のIT化について法務大臣から法制審議会に諮問される見込みです。このIT化により、裁判手続は抜本から大きく変わることになりそうです。そこで、ここでは架空の司法書士事務所における本職と補助者との会話を通して、裁判手続のIT化について考えてみましょう。
司法書士:裁判のIT化では、前回見たような申立ての際のIT化だけではなく、法廷におけるIT化、事件管理におけるIT化も検討されているんだよ。今回は、法廷におけるIT化について考えてみよう。
補助者 :法廷の話となると、補助者の私は、あまり関係なさそうですね。
司法書士:いやいや、そうとばかりは言えないよ。これからは、司法書士事務所が法廷の代わりになることもあり得るからね。
補助者 :えっ。それはどういうことですか。
司法書士:今でも弁論準備手続は、電話会議をすることがあるよね。簡単に言うと、これからは、電話だけでなく、映像も積極的に活用するようにして、さらに弁論準備手続以外の手続、たとえば口頭弁論などにも利用していくことになりそうだよ。
補助者 :先生が、会務でされているテレビ会議みたいなものですか。
司法書士:そんなところだね。ただし、裁判手続のIT化では、裁判所と裁判所とを専用回線で繋いだ会議をテレビ会議、インターネット回線を用いた一般的なテレビ会議をウェブ会議と呼んで、区別しているようだね。つまり、ウェブ会議ならば、裁判所と司法書士事務所、裁判所と申立人のスマートフォンといった利用もできるということになる。
補助者 :期日の度に出頭しなくてもよいとなると、本人訴訟の当事者は随分と楽になりますね。これは、国民にとって、ものすごい朗報じゃないですか!
司法書士:ところが、それもぬか喜びとなってしまうかもしれないんだよ。知ってのとおり本人訴訟は非弁の温床となることが多く、いわゆる事件屋が介在することがあるんだ。だからこそ、私たち司法書士が適切に本人訴訟支援をして、事件屋の排除に努めているんだけれどね。こういった事件屋の介在を防止する観点などから、ウェブ会議を利用する場所を、一定の場所に限定するという案も出ているところだからね。
補助者 :うわぁ。当事者の利便性の向上のためにIT化を目指していると思ったのに、それじゃあ、本末転倒じゃあないですか。
司法書士:するどいね。
裁判手続のIT化によって、原告となる本人は、期日のために仕事を休んで裁判所に出頭しなければならないという制約がなくなる可能性があるし、被告となる本人であれば、訴えられた裁判所が遠方の裁判所で事実上出頭が難しいようなときでも、出頭せずに応訴できるようになれば、土地管轄の定めが不利に働くこともなくなる可能性もある。こういったメリットの芽を議論の早くに摘んでしまっては、IT化の議論は広まらないね。議論を発展させるためにも、こういったメリットを受ける訴訟当事者本人が声をあげていくことが大切になるんだ。
補助者 :ウェブ会議だと、回線の状況によって、画像が荒かったり、はっきり聞こえないようなこともあるのかしら。
司法書士:私が会務でしているウェブ会議では、とくにストレスを感じたことはないね。それに日本の裁判は、事前に準備書面を提出しておいて、期日では、その陳述をするだけということも多いからね。そこが、日本では法廷のIT化をしやすいと言われる所以でもある。
補助者 :尋問も、ウェブでするんですか。いくらなんでもカメラ越しでは尋問で嘘をついている証人を見破れないのではないかと思うんですが。
司法書士:おそらく、規定としてはウェブでの証人尋問もできるとなっても、その利用は相当慎重な運用になるんだろうね。私が代理人だとしたら、IT化された後であっても、証人を法廷に呼び出して証人尋問をすることを求めるだろうよ。
補助者 :今までのやり方とIT化による新しいやり方の両方いいとこどりで裁判ができるといいですね。
司法書士:裁判のIT化では、前回見たような申立ての際のIT化だけではなく、法廷におけるIT化、事件管理におけるIT化も検討されているんだよ。今回は、法廷におけるIT化について考えてみよう。
補助者 :法廷の話となると、補助者の私は、あまり関係なさそうですね。
司法書士:いやいや、そうとばかりは言えないよ。これからは、司法書士事務所が法廷の代わりになることもあり得るからね。
補助者 :えっ。それはどういうことですか。
司法書士:今でも弁論準備手続は、電話会議をすることがあるよね。簡単に言うと、これからは、電話だけでなく、映像も積極的に活用するようにして、さらに弁論準備手続以外の手続、たとえば口頭弁論などにも利用していくことになりそうだよ。
補助者 :先生が、会務でされているテレビ会議みたいなものですか。
司法書士:そんなところだね。ただし、裁判手続のIT化では、裁判所と裁判所とを専用回線で繋いだ会議をテレビ会議、インターネット回線を用いた一般的なテレビ会議をウェブ会議と呼んで、区別しているようだね。つまり、ウェブ会議ならば、裁判所と司法書士事務所、裁判所と申立人のスマートフォンといった利用もできるということになる。
補助者 :期日の度に出頭しなくてもよいとなると、本人訴訟の当事者は随分と楽になりますね。これは、国民にとって、ものすごい朗報じゃないですか!
司法書士:ところが、それもぬか喜びとなってしまうかもしれないんだよ。知ってのとおり本人訴訟は非弁の温床となることが多く、いわゆる事件屋が介在することがあるんだ。だからこそ、私たち司法書士が適切に本人訴訟支援をして、事件屋の排除に努めているんだけれどね。こういった事件屋の介在を防止する観点などから、ウェブ会議を利用する場所を、一定の場所に限定するという案も出ているところだからね。
補助者 :うわぁ。当事者の利便性の向上のためにIT化を目指していると思ったのに、それじゃあ、本末転倒じゃあないですか。
司法書士:するどいね。
裁判手続のIT化によって、原告となる本人は、期日のために仕事を休んで裁判所に出頭しなければならないという制約がなくなる可能性があるし、被告となる本人であれば、訴えられた裁判所が遠方の裁判所で事実上出頭が難しいようなときでも、出頭せずに応訴できるようになれば、土地管轄の定めが不利に働くこともなくなる可能性もある。こういったメリットの芽を議論の早くに摘んでしまっては、IT化の議論は広まらないね。議論を発展させるためにも、こういったメリットを受ける訴訟当事者本人が声をあげていくことが大切になるんだ。
補助者 :ウェブ会議だと、回線の状況によって、画像が荒かったり、はっきり聞こえないようなこともあるのかしら。
司法書士:私が会務でしているウェブ会議では、とくにストレスを感じたことはないね。それに日本の裁判は、事前に準備書面を提出しておいて、期日では、その陳述をするだけということも多いからね。そこが、日本では法廷のIT化をしやすいと言われる所以でもある。
補助者 :尋問も、ウェブでするんですか。いくらなんでもカメラ越しでは尋問で嘘をついている証人を見破れないのではないかと思うんですが。
司法書士:おそらく、規定としてはウェブでの証人尋問もできるとなっても、その利用は相当慎重な運用になるんだろうね。私が代理人だとしたら、IT化された後であっても、証人を法廷に呼び出して証人尋問をすることを求めるだろうよ。
補助者 :今までのやり方とIT化による新しいやり方の両方いいとこどりで裁判ができるといいですね。
裁判手続のIT化をめぐる司法書士事務所の風景(その1)
2019年には裁判手続のIT化について法務大臣から法制審議会に諮問される見込みです。このIT化により、裁判手続は抜本から大きく変わることになりそうです。そこで、ここでは架空の司法書士事務所における本職と補助者との会話を通して、裁判手続のIT化について考えてみましょう。
司法書士:登記に続いて、いよいよ裁判もIT化されるようだよ。これからは、当事務所でも定期的に勉強会を開いていくことにしましょう。
補助者 :うちの事務所では、すべての登記をオンライン申請していますので、心配ありませんね。
司法書士:いやいや、登記と裁判は、まるで別物。登記は、一回の申請行為で完了するけれど、裁判は基本的には複数回の審理を経て判決に至るうえ、上級審での審理もある。つまり、申請者としても継続的にかかわっていかなければならない手続だからね。
補助者 :なるほど。そのうえ、登記では申請者と法務局の二者だけで完結しますが、裁判では申請者となる原告と裁判所だけでなく、相手方となる被告も登場しますものね。となると、これからは被告もオンラインで応訴しなければならなくなるんですか。
司法書士:その点は、まだ検討中のようだ。オンラインでの応訴を希望する被告は、当然、オンライン手続をすることができるようになるだろうけれど、すべての被告がインターネットを使えるわけではないからね。
補助者 :オンラインにこだわると、いろいろと難しい問題がありそうですね。となると、送達は、今のままでいいんじゃないかしら。
司法書士:申請の際の真正担保も検討されているよ。
補助者 :私たちは、登記で使っている日司連発行の電子署名をすれば、よいんですよね。
司法書士:いやいや。そうとは限らない。未だに電子署名をすることができる人は限られているからね。電子署名の普及率を踏まえたら、本人訴訟で電子署名を要求することまでは難しいんじゃないかな。裁判を受ける権利は憲法でも保障されているほどの大切な権利だからね。
補助者 :たしかに登記でも本人申請でオンラインを利用している人は、個人では、ほとんどいないですものね。
司法書士:それに、裁判のIT化の議論では、代理人などの資格者であっても、電子署名を申請の都度用いるのではなく、登録の際に電子署名による本人確認をした後は、IDとパスワードを発行して、以降は、IDとパスワードによりオンライン申立てを利用できるようにすることも検討されているんだ。添付する登記識別情報一件一件に電子署名したうえ、申請データにも、さらに電子署名する登記のオンラインシステムとは、えらい違いだね。
補助者 :IDとパスワードっていうと、ネットショッピングでログインするような感じでしょうか。気軽な反面、ちょっと怖い気がするけれど、セキュリティは大丈夫なのかしら。
司法書士:まったく、その通りだと思うよ。電子署名の利用とID・パスワードの利用は、相反するものではなく、両立し得るものだ。登記のオンラインシステムが、まさにそうなっているよね。資格者として、インターネット上、真正担保するための手段としては資格者団体による電子署名が最も優れているのは間違いないよ。
補助者 :オンライン申請が主流になると便利になるんでしょうけれども、便利になりすぎて、私の仕事がなくならないか、心配です。
司法書士:登記の場合、出頭主義が廃止されたので、法務局へ申請書を持ち込む人員が不要となったという側面もあるけれど、裁判の場合、最初から申請時の出頭は不要だからね。もっともIT化によって裁判資料として紙をコピーする手間はなくなりそうだから、補助者が一日中裁判の資料をコピーをしているような大事務所ならともかく、一人の補助者が雑多な仕事をしている、うちのような事務所は影響ないと思うよ。
というわけで、これからも、よろしく頼むよ。次回は、IT化による法廷への影響について勉強してみようか。
補助者 :それを聞いて安心しました。次回も、よろしくお願いします。
司法書士:登記に続いて、いよいよ裁判もIT化されるようだよ。これからは、当事務所でも定期的に勉強会を開いていくことにしましょう。
補助者 :うちの事務所では、すべての登記をオンライン申請していますので、心配ありませんね。
司法書士:いやいや、登記と裁判は、まるで別物。登記は、一回の申請行為で完了するけれど、裁判は基本的には複数回の審理を経て判決に至るうえ、上級審での審理もある。つまり、申請者としても継続的にかかわっていかなければならない手続だからね。
補助者 :なるほど。そのうえ、登記では申請者と法務局の二者だけで完結しますが、裁判では申請者となる原告と裁判所だけでなく、相手方となる被告も登場しますものね。となると、これからは被告もオンラインで応訴しなければならなくなるんですか。
司法書士:その点は、まだ検討中のようだ。オンラインでの応訴を希望する被告は、当然、オンライン手続をすることができるようになるだろうけれど、すべての被告がインターネットを使えるわけではないからね。
補助者 :オンラインにこだわると、いろいろと難しい問題がありそうですね。となると、送達は、今のままでいいんじゃないかしら。
司法書士:申請の際の真正担保も検討されているよ。
補助者 :私たちは、登記で使っている日司連発行の電子署名をすれば、よいんですよね。
司法書士:いやいや。そうとは限らない。未だに電子署名をすることができる人は限られているからね。電子署名の普及率を踏まえたら、本人訴訟で電子署名を要求することまでは難しいんじゃないかな。裁判を受ける権利は憲法でも保障されているほどの大切な権利だからね。
補助者 :たしかに登記でも本人申請でオンラインを利用している人は、個人では、ほとんどいないですものね。
司法書士:それに、裁判のIT化の議論では、代理人などの資格者であっても、電子署名を申請の都度用いるのではなく、登録の際に電子署名による本人確認をした後は、IDとパスワードを発行して、以降は、IDとパスワードによりオンライン申立てを利用できるようにすることも検討されているんだ。添付する登記識別情報一件一件に電子署名したうえ、申請データにも、さらに電子署名する登記のオンラインシステムとは、えらい違いだね。
補助者 :IDとパスワードっていうと、ネットショッピングでログインするような感じでしょうか。気軽な反面、ちょっと怖い気がするけれど、セキュリティは大丈夫なのかしら。
司法書士:まったく、その通りだと思うよ。電子署名の利用とID・パスワードの利用は、相反するものではなく、両立し得るものだ。登記のオンラインシステムが、まさにそうなっているよね。資格者として、インターネット上、真正担保するための手段としては資格者団体による電子署名が最も優れているのは間違いないよ。
補助者 :オンライン申請が主流になると便利になるんでしょうけれども、便利になりすぎて、私の仕事がなくならないか、心配です。
司法書士:登記の場合、出頭主義が廃止されたので、法務局へ申請書を持ち込む人員が不要となったという側面もあるけれど、裁判の場合、最初から申請時の出頭は不要だからね。もっともIT化によって裁判資料として紙をコピーする手間はなくなりそうだから、補助者が一日中裁判の資料をコピーをしているような大事務所ならともかく、一人の補助者が雑多な仕事をしている、うちのような事務所は影響ないと思うよ。
というわけで、これからも、よろしく頼むよ。次回は、IT化による法廷への影響について勉強してみようか。
補助者 :それを聞いて安心しました。次回も、よろしくお願いします。