債権譲渡登記制度の見直し

 民法(債権関係)改正に関連して、債権譲渡の第三者対抗要件について、市民向けに原稿を書いたので、参考までにアップしておく。

Q 取引先A社が倒産しそうだという風評がたった途端に、別の会社B社から、当社が、そのA社から仕入れた商品代金をB社に対して支払うように債権譲渡の通知とともに請求されています。当社は、この請求に応じなければならないものなのでしょうか?

A 債権譲渡の通知の差出人がA社(B社がA社の代理人である場合を含みます)であるのであれば、請求に応じなければならないものと考えられます。ただし、他の会社(たとえばC社)からもA社に対する貴社の債権を譲り受けたという通知が届き、貴社にとって、B社とC社との通知の到達の先後が明らかでないようなときには、供託することができます。

1 債権譲渡の第三者対抗要件
 商品代金のような債権も原則として譲渡することができます。
 この譲渡は、譲渡債権の債権者が譲渡人となり、譲受人との間で行われますので、譲渡債権の債務者は、譲渡があったことを知らないまま、気がついたら債権者が変わっていたということが起きるおそれもあります。
 そこで、民法では、譲渡禁止特約を付すことによって、債務者の知らない債権譲渡が行われないよう制限することができる規律を設けるとともに、そのような特約のない債権であっても、債権譲渡が行われ、債務者に、その債権を請求するときには、債務者に通知しなければならない、と定めています。(上記の事例では、この債務者が貴社になります。)
 また、債務者以外の第三者に対しては、確定日付のある証書によって債権譲渡が行われなければならず、実務上は、内容証明郵便や公証人役場による証明が利用されています。(上記の事例では、C社を含む、その他の会社等が第三者に当たります。)つまり、債権譲渡の通知が内容証明郵便でされたり、公証人役場による証明があれば、譲受人は、債務者と第三者のいずれにも、その債権を譲り受けた者であることを主張することができます。
 債務者が倒産状態にあるなどして、この通知が競合し、その到達の先後が明らかでないような場合には、債務者は、どの債権者に支払えばよいのか判断できませんので、供託することによって債務を免れることができます。

2 第三者対抗要件の特例
 民法上の第三者対抗要件は、債務者に確定日付ある通知もしくは承諾が必要となりますが、債務者が多数いるような場合、もしくは債務者に知らせないまま債権譲渡を行いたいような場合には、使い勝手が悪い制度であるとも言えます。債務者の立場から言っても、債権譲渡の到達の日時を管理しておかなければ、債権者に弁済してしまったが、その前に実は債権譲渡の通知が届いていた場合などのように、後日、思いもよらぬ紛争に巻き込まれるおそれもあります。
 そこで、譲渡人が法人である場合には、特別に、債権譲渡の登記をすることによって、第三者に対抗することが認められています。この債権譲渡の登記は、譲渡債権の債権者である譲渡人とその債権を譲り受ける譲受人が申請するものですので、譲渡債権の債務者は関与しません。
つまり、分割弁済する債務のような場合もしくは債務者が継続的に債務を負っているような場合においては、何事もなければ、債務者は当初の債権者である譲渡人に弁済を続けていればよく、債務者が債権譲渡のあったことを知らないまま、債務が消滅するということもあり得ます。
債権譲渡は、債権回収の手段として用いられるばかりでなく、担保手段として用いられることもあると考えると理解しやすいでしょう。

3 改正の動向
 現在、検討が進められている民法(債権関係)の改正作業では、債権譲渡において、債務者に負担をかけない第三者対抗要件の制度を造ることが目指されています。
 不動産を持たない事業者についても資金調達の途を開くということや保証人に頼らない融資制度を確立すべきであることなどを踏まえても、債権を担保として譲渡しやすい制度を目指すべきであるといえそうです。
 具体的には、民法上の対抗要件である通知や承諾制度を廃止し、特例として紹介した債権譲渡の登記制度に一元化しようという提案等が検討されていますが、現行の債権譲渡登記制度は、必ずしも使い勝手が良くないため、このままの登記制度では一元化することは難しいという批判も根強くされています。
 こういった批判に対処するため、まさに、今、現行の債権譲渡登記制度を使い勝手の良いものに見直していくことが求められています。登記の専門家である司法書士の出番であるといえますね。


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赤松 茂

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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