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「中間試案の基底に迫る〜債務不履行・解除と危険負担・約款〜」受講報告

 平成25年5月13日(月)13時から17時まで、東京・日弁連クレオにて、日弁連法務研究財団主催、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、関東弁護士会連合会共催で、債権法改正研修「中間試案の基底に迫る〜債務不履行・解除と危険負担・約款〜」が開催されたので報告する。
弁護士の他、一般の参加も含めて、受講生は300人以上と大盛況であった。

 開会挨拶を東京弁護士会会長の菊池裕太郎氏が行った。パブコメに向けて、立法論と解釈論が交差する重要な時期にさしかかったといえる。主催団体は、運動団体ではないので、じっくりと債権法改正について学んでいただきたいとのことであった。

 第一部として、法務省参与の内田貴氏、東京大学教授の道垣内弘人氏、早稲田大学教授の山野目章夫氏が基調講演を行った。内田参与が司会進行しつつ、各テーマについて道垣内教授や山野目教授がコメントを述べていくという形式であった。
(1)損害賠償の要件
 「当該契約の趣旨に照らして」が中間試案におけるキーワードとなる。契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の事情に基づき、取引通念を考慮して定める当該契約の趣旨というものである。
 これに対し、山野目教授からは、債務者の責めに帰することのできない事由という表現自体は残るので安心してほしいと述べられた。債務不履行を無過失責任にしようという議論自体もされておらず、免責事由を詳細に表現することを試みたのが中間試案であるとのことであった。契約の趣旨とは、「契約書の記載」は関係なく、契約の交渉力の強い方が優位になるということもないと述べられた。表現については、「照らし」でよいのか、「基づき」という表現もあり得るのではないかという可能性の問題が語られた。
(2)損害賠償の範囲
 中間試案では、損害を規範的なものと表現するとともに、損害の認識の主体を債務者、その時点を不履行の時であるという判例法理を明文化することとした。さらに、契約締結時から不履行のときまでに生ずべき結果と予見し、予見すべきものとなったものには一定の免責措置を定めた。
 これに対し、山野目教授からは、そもそも損害は完全に賠償されるわけではなく、一定の制限があるものであり、その制限の方法として相当因果関係という概念を教科書では学ぶが実務上機能しているとは思えない。これを洗練させていくためには、予見可能性ルールを取り入れることが必要であろうとのことであった。通常損害という表現を残すか否かという問題については考え方の違いに過ぎず、いずれであっても範囲は変わらない。なお、予見の時点を不履行時とするのは国際法的には極めて異例であり、中間試案では国際法の潮流にあわせるのではなく日本の判例法理を明文化したものもあるという一例であるとのことであった。
(3)解除の要件
 催告解除と無催告解除の概念は残しつつ、催告解除において付随義務違反(軽微な不履行)の場合には解除を制限するとともに、無催告解除において履行不能を履行請求権の限界事由と改めた。また、履行期前の履行拒絶についても解除できることを明文化した。
これに対し、道垣内教授からは、損害賠償と解除の各場面において、債務者の帰責事由は根拠が異なるので、別に考えるべきであるとのことであった。
(4)危険負担との関係
 中間試案では、批判の強い債権者主義を廃止するとともに、債務者主義も廃止することとしている。債務者主義の536条1項に対応する規定は削除するといっても、契約類型ごとに個別に規定することとしているので、債務者主義の概念が廃止されるというわけではないことに留意されたいという指摘が内田参与からあった。
 これに対し、山野教授からは、帰責事由がなくとも契約の解除ができるとするのであれば、民法536条1項のルールが適用されるか否かについて考え込まねばならず、部会で検討を重ねた結果、危険負担を廃止するという一定の結論を出したところであると語られた。また、役務提供契約は、その契約の特性から反対債権が給付されないのであって、危険負担の債務者主義とは別の問題ではないかという指摘もあった。
(5)約款
 中間試案では、交渉の余地のない契約条件を約款と定義したが、約款の導入自体に依然として強い異論がある。組み入れ要件については、本文と注の規律は多くは同じ結論になるとしても、異なる結論になる場合もあり得る。また、不意打ち条項を設けたとしても、個別に合意することによって契約の効力を生じさせることもできるし、不当条項は現行法の解釈よりも踏み込んだ規律であると考えることもできるが、現行法の解釈水準にとどまる範囲であると考えることも排除されたわけではない。
これに対し、道垣内教授からは、現状を変えてほしくないという意見が多いが、判例の意思推定説と学説の白地慣習説とを混同しているものもある。中間試案の内容と意思推定説は根底は同様であると考えられるし、組み入れ要件自体も、支店ではなく遠方の本店に備え付けてあっても良いというような相当緩いイメージであるとのことであった。約款については拘束力を生じさせる根拠を緩和する制度であると理解すべきであり、約款規制というよりも、約款お墨付き制度であるといえ、むしろ約款を利用する業界にとって必要な制度であるといえる。また、現在において約款は極めて不安定な立場に置かれているということを認識すべきであると訴えられた。

 第二部として、「債務不履行、解除と危険負担及び約款の各問題点について」というテーマでパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは東京弁護士会の児玉隆晴氏、パネリストとして内田貴氏、道垣内弘人氏、山野目章夫氏、第一東京弁護士会の岡正昌氏、第二東京弁護士会の深山雅也氏、東京弁護士会の高須純一氏が務めた。

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Author:赤松 茂
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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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