簡易裁判所における本人訴訟支援の実務 その5

(2)本人訴訟支援型
 ① 「低コスト」に解決したいという要望によって本人訴訟が選択された事例
 ◆貸金請求の被告事件で被告が請求されている内容について特段異議がないという事例において、「低コスト」に解決したいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが訴訟の対応をされたもの
  ☞ もっとも、司法書士との間で事前に和解水準などについての入念な打ち合わせは必要である。
 ◆通信教育の役務が提供されないため、業者(法人)に対して既払いの教材費の請求につき少額訴訟の判決を取得したところ、業者(法人)の代表者に対する貸付金が判明し、当該貸付金に対して少額訴訟債権執行をしたものの、第三債務者である代表者より任意の支払いがなされないという事例において、債務者、第三債務者所在地ともに管轄が遠方となるので、「低コスト」に解決したいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、取立訴訟が選択されたもの
  ☞ 管轄が遠方となるケースは、コストを抑えるための本人訴訟が選択される典型例であるといえる。
 ◆アパートの賃貸借契約終了に伴い、退去したものの、敷金の返還額に不満があるので、賃借人から賃貸人に対して敷金を請求するという事例において、「低コスト」に解決したいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、少額訴訟が選択されたもの
  ☞ 敷金返還に関する(少額)訴訟は経験上和解で終了することが多いため、本人訴訟にもなじみやすいと思われる。
 ◆物損交通事故の被害者が保険未加入の加害者に対して損害賠償を請求するという事例において、「低コスト」に解決したいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、調停が選択されたもの
  ☞ 被害者も保険未加入であったために弁護士、司法書士特約を利用できなかったという事例である。
 ◆物損交通事故の被害者が保険未加入の加害者に対して損害賠償を請求するという事例において、「低コスト」に解決したいという要望によって、本人自らが対応するとして、訴訟を選択したものの、訴訟遂行が困難となったために、司法書士が裁判外で代理し、示談交渉を締結して、当該訴訟を取下げたもの
  ☞ 進行している本人訴訟に対して、この事例のように裁判外で代理人となり、訴訟を取下げるものもあれば、途中から司法書士が裁判書類の作成として引き続き訴訟を係属するものもある。

 ② 採算を度外視してでも解決したいし、かつ、自らが訴えることに意義があるという要望によって本人訴訟が選択された事例
 ◆本来であれば昼休みが60分間あるはずなのに45分間しか取得できないので、1日あたり15分間のサービス残業が発生しているとして、2年分のサービス残業代数万円を請求するという事例において、本人自らが会社と交渉することによって職場環境を是正したいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、訴訟が選択されたもの
  ☞ 会社の労働組合が機能していないため、訴訟が会社との交渉のきっかけとして機能したものである。本事例では、後日、職場全員の賃金計算が変更され、本人も在職を続けることができた。
 ◆友人に金銭を貸付けたものの転居後10年近く連絡が取れなくなってしまったので、消滅時効を中断させるためにも貸金を請求するという事例において、連絡を寄こさない相手方の真意を知りたいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、訴訟が選択されたもの
☞ 本事例では、提訴後、相手方より本人に対し、心からの謝罪があり、これに納得した本人は時効が成立してもかまわないので、訴訟を取下げてほしいとの意向を示され、司法書士が取下書を作成した。訴訟が当事者間の対話のきっかけとして機能したケースともいえる。
 ◆元配偶者から暴行を受けたことにより、元配偶者に対して損害賠償を請求するという事例において、元配偶者が暴行におよんだ真意を知りたいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、訴訟が選択されたもの
  ☞ 本事例では、元配偶者が請求額全額を認容するという形で訴訟が終了したものの、元配偶者が暴行におよんだ真意は分からずじまいであった。訴訟は勝ったものの本人としては納得がいかない終結となった。
 ◆配偶者のある人と不貞行為をしたところ、当該配偶者から不法行為に基づく損害賠償請求の訴訟を提訴されたという被告事件において、当該配偶者に謝罪の気持ちを伝えたいという要望によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応することが選択されたもの
  ☞ 本事例では、本人の謝罪を汲んで、請求額が減額された上で分割払いの和解が成立した。被告代理人が応訴していたら、和解が成立しなかったかもしれないケースといえる。
 ◆アパートの賃貸人が賃借人に対し、老朽化による建替えを検討しているので、立退きを要求したいという事例において、賃貸人が代理人をつけると、賃借人も対抗して代理人をつけることが予想され、そうなるとかえって高額の立退料を請求されるのではないかとの懸念によって、司法書士が裁判書類を作成し、本人自らが対応するとして、調停が選択されたもの
  ☞ 当事者同士で話をしようという意向のシグナルとして、本人訴訟(調停)が選択されたケースといえる。

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プロフィール

Author:赤松 茂
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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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