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簡易裁判所における本人訴訟支援の実務 その3

3 司法書士の少額民事紛争への関与の在り方
(1)複数の関与の在り方
 簡裁の事物管轄を超える経済的利益が紛争の対象となっているのであれば、司法書士は裁判書類作成関係業務として関与するほかないのであるから、関与の在り方について検討するまでもない。
 一方、簡裁の事物管轄の範囲内の経済的利益が紛争の対象となっている際には、司法書士は、裁判書類作成関係業務のほか、簡裁訴訟代理関係業務としても関与することができるが、それぞれの業務の関わり方、とくに簡裁代理訴訟関係業務の特徴について留意しておいたほうがよい。
 具体的には、次のとおりである。

(2)簡裁訴訟代理関係業務
 ① 裁判外の代理関係業務との整合性
 司法書士法3条2項に該当する司法書士(以下、単に「司法書士」という)は、同条1項6号に規定される裁判について代理することができるが、多くのケースにおいて、同条1項6号に規定される裁判に入る前に、事前交渉を行うことになる。できれば面倒な裁判は避けて紛争を解決したいという少額民事紛争の当事者の要望があるときは、事前交渉が必須となるからだ。なお、事前交渉の根拠は、司法書士法3条1項7号に規定される代理権限である。
 裁判を代理する前に、通常、代理人として事前交渉する、ということを踏まえれば、司法書士法3条1項6号に規定される業務範囲と同項7号に規定される業務範囲とは一致すると解されなければならない。そうでなければ、裁判は代理してできるが事前交渉は代理してできない、もしくは事前交渉は代理してできるが裁判は代理してできない、といった問題が生じてしまうからだ。
 ところが、制限付代理権という制度を厳密に考えれば考えるほど、いくつかの局面で、代理権の範囲内なのか否か、はっきりとは分からないという部分が生じる。このような問題は立法当初から想定されていたと思われるものの、立法時に確立した見解が示されていない点もある。このような背景事情を踏まえるならば、司法書士は、少額民事紛争であっても、すべてを代理するといった関わり方は考えない方がよいように思う。
 
 ② 簡裁訴訟代理関係業務の限界
 司法書士は、簡裁の事物管轄の範囲内の経済的利益が紛争の対象となる裁判であっても、控訴審以上については代理することができず、通常の強制執行についても代理することができない。
 また、いったん、依頼人の代理人として裁判の代理人となっても、相手方から簡裁の事物管轄を超える反訴がなされた際には、当該反訴においては代理することができないし、地裁に移送されると当該訴訟について代理することができなくなる。
 このように相手方の主張や裁判所の判断によっては代理人としての活動が制限されるということには常に留意しておく必要がある。
 一方、強制執行は代理できなくとも、取立訴訟は代理できるなど、規定の在り方全体として違和感があるケースもあり、代理権限の有無は極めて形式的に画されているといえよう。
 このように見てみると、裁判外の代理関係業務の範囲は不明確であるという側面もあり、裁判上の代理関係業務についても、相手方の対応等によって不安定になるとも思える側面をもつ代理業務であるが、一定の範囲では充実したものとなりつつある。
 それは、少額訴訟が対象となる範囲だ。

 ③ 少額訴訟の利用による回収までを見据えた終局的解決
 訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする事例については、少額訴訟の利用を検討することができ、原則として少額訴訟に係る債務名義であれば、司法書士は債権執行までを代理してすることができる。
 申立の際には一回審理ができる程度の主張立証の準備を整えておく必要があるが、司法書士が代理人となるのであれば、全く問題ないだろう。
 少額訴訟の手続の迅速さはいわずもがなであるし、また、司法書士が回収の局面までを代理することもできるということは、当事者にとって簡易な手続であるということもできる。少額訴訟の利用を検討することができる事例では積極的に提案していくことが望ましい。
 
(3)裁判書類作成関係業務
 ① 裁判書類作成関係業務として受任するしかないケース
 簡裁の事物管轄の範囲内の経済的利益が紛争の対象となっている際であっても、裁判書類作成業務として受任するしかないケースもある。
 依頼人が、地方裁判所を専属管轄とする裁判の利用を希望されている場合だ。
地方裁判所が専属管轄となる裁判としては、たとえば、労働者が使用者に対する未払賃金の請求について労働審判制度を利用して請求するケース、一定の対象となる犯罪被害者が加害者に対する損害賠償請求について犯罪被害者保護法17条に基づく損害賠償命令申立制度を利用して請求するケースなどがある。
 司法書士は、依頼人の求める経済的利益が簡裁の事物管轄の範囲内だからといって簡易裁判所での裁判に拘ることなく、妥当と思われるケースでは、むしろ積極的に地方裁判所を専属管轄とする裁判の利用を提案するべきである。

② あえて裁判書類作成業務として受任するケース
 一方、簡易裁判所に対する訴訟や調停などであっても、依頼人があえてご自分で提訴したいというケースもある。
 自分で提訴する理由は、紛争解決に要するコストを抑えたいという「低コスト」な解決が意識されたものと、依頼人自身が提訴することに強い意義を感じているものとに大別することができる。
 経験上、数としては前者が圧倒的に多いと感じている。
 簡易裁判所において司法書士が関わったとしても、あえて本人訴訟を選択するという事例を具体的に考察することによって、代理と本人訴訟支援の関与の在り方を比較することが本稿の狙いでもある。
 それでは、以降、代理と本人訴訟支援との相違を踏まえつつ、実際に筆者が経験した事例を脚色した上で題材にして、簡易裁判所を利用した少額民事紛争の解決事例を俯瞰していくこととしよう。
 

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赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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