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簡裁代理権活用の実務その4

4 これからの簡裁代理権の活用方法及び意義
(1)簡裁代理権の限界
  簡裁代理権の活用を検討すればするほど、司法書士が係わる民事紛争は、簡裁の事物管轄、すなわち140万円以下の民事紛争に限られていると思いがちになってしまうかもしれない。また、140万円以下の民事紛争でも、控訴中の事件や強制執行に関する事件については関与できないと思ってしまうかもしれない。
  いずれも実際に司法書士から聞いたことのある話だ。
  とくに平成14年司法書士法改正以降に登録した司法書士は、まず簡裁代理権ありき、という世代であるので、寄せられた相談が簡裁代理権の対象となる紛争であれば司法書士業務の範囲であると直感的に思う傾向があるように私は感じている。これは、逆に言えば、簡裁代理権の対象とならない紛争は司法書士業務の範囲外だと直感的に思ってしまうということだ。
  しかし、簡裁代理権があるがゆえに、司法書士業務の範囲を狭めるというのでは、市民の法的需要に応えるために司法書士に簡裁代理権が付与された趣旨が損なわれてしまい、そのような直感は弊害となるというほかない。
  そういった誤解を持たないためにも、各自が簡裁代理権の活用と司法書士が従来から取り組んできた裁判書類作成関係業務による本人訴訟支援との関係について整理しておくことが必要だろう。

(2)簡裁代理権と本人訴訟支援
  そこで、最後に雑感として、簡裁代理権と本人訴訟支援との関係について、私が考えていることを述べて、本稿を締めくくることにしたい。
  私は民事紛争に取り組む際、訴額にかかわらず、あくまで本人訴訟支援という姿勢で関与するようにしている。
  寄せられた相談が簡裁代理権の範囲を超えていたり、代理人として関与することが妥当ではないと思われたりする場合には、そのまま本人訴訟支援として業務を継続する。
  そうでない場合、つまり、寄せられた相談が簡裁代理権の範囲内であり、かつ、代理人として関与することが妥当であると思われる場合にのみ、代理人として受任するようにしているのだ。
  もっとも代理人として受任するケースであっても、私が全面的に代理人として表に出ることは少ない。ご本人ができる情報収集、相手方との交渉などは、極力、ご本人にしていただくように意識している。このように関わることによって、紛争解決コストを抑えることができるし、紛争を当事者自らが解決するという本人訴訟支援の姿勢を保つことができる。そのような意味では、おそらく弁護士が代理人として受任するケースとは異なる関与の仕方であろう。
  私の代理人としての関与の在り方のベースには、本人訴訟支援がある。
  代理事件であっても、紛争を解決する主体は、ご本人にほかならないと思うからだ。
  たとえ訴額の少ない事件であっても、否、訴額の小さい事件だからこそ、紛争解決に向けて、代理人としても、ご本人と2人3脚で歩んでいきたい。
  それが簡裁代理権という司法制度上稀有な制限付代理権のもっとも有効な活用法であり、まさに、それこそが司法書士の民事紛争に関する独自性になるのだろうと確信している。


(注1)司法制度改革審議会「司法制度改革審議会意見書―21世紀の日本を支える司法制度―」平成13年6月12日
「Ⅲ 司法制度を支える法曹の在り方 
第3 弁護士制度の改革
    7 隣接法律専門職種の活用等
 訴訟手続において、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、
•司法書士への簡易裁判所での訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。また、簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても、同様に付与すべきである。
(中略)
弁護士法第72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことなどを業とすることを禁止している。一方、司法書士、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士などのいわゆる隣接法律専門職種は、それぞれの業法に定められたところに従い、限定的な法律事務を取り扱っている。
 弁護士と隣接法律専門職種との関係については、弁護士人口の大幅な増加と諸般の弁護士改革が現実化する将来において、各隣接法律専門職種の制度の趣旨や意義、及び利用者の利便とその権利保護の要請等を踏まえ、法的サービスの担い手の在り方を改めて総合的に検討する必要がある。しかしながら、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消する必要性にかんがみ、利用者の視点から、当面の法的需要を充足させるための措置を講じる必要がある。
 このような観点に立ち、訴訟手続においては、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、少なくとも、司法書士の簡易裁判所での訴訟代理権(簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても同様)、弁理士の特許権等の侵害訴訟(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る。)での代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきであるいても、同様に付与すべきである。(後略)」

(注2)藤岡謙三「認定司法書士の簡裁民事訴訟への関与―制度発足後5年を迎えての雑感」市民と法50号
(注3)司法書士界外のものとして、たとえば、七戸克彦「今後の司法書士の業務展開の方向性」市民と法50号
    司法書士界内のものとして、たとえば、伊藤亥一郎「市民型裁判事件の受託に向けて」月報司法書士457号 などを参照
(注4) BATNA(バトナ)。Best Alternatives To a Negotiated Agreement の略。一般に「交渉が成立しない場合の最善の代替案」を言う。優れたバトナがあれば、この交渉が決裂しても構わないという強気の交渉ができることになり、交渉力が強くなると言われている。
(注5)敷引合意の特約につき、最判平成23年3月24日
    更新料合意の特約につき、最判平成23年7月15日
(注6)集会決議必要説に立つ見解として、加藤新太郎編「簡裁民事事件の考え方と実務」民事法研究会
    集会決議不要説に立つ見解として、岡久幸治ほか編「新・裁判実務体系26 簡易裁判所民事手続法」青林書院、ほか
(注7)「千葉県弁護士会『慰謝料算定の実務』ぎょうせい」、「齋藤修『慰謝料算定の理論』ぎょうせい」などを参照しつつ、インターネットによる判例検索サービスを利用して類似事例の調査を行うと有用であると思われる。
(注8) 犯罪被害者等の権利利益の保護を図る為の刑事手続に付随する措置に関する法律第17条。拙稿「司法書士による損害賠償命令申立ての実務」月報司法書士475号参照
(注9)東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ第16号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」判例タイムズ社、㈶日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(いわゆる赤い本)、㈶日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準」(いわゆる青い本)などによる基準をあてはめる。
(注10)立替金支給の要件は、「労働者が、倒産について裁判所への申立て等(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6か月前の日から2年の間に退職した者であること」とされている。
既に退職した労働者から相談があり、会社が事実上の倒産状態であるものの労基署の認定を未だ得ていない場合、この制度を利用するために、早期(退職から6か月以内)に労基署に倒産認定を求めるよう促す必要がある。
(注11)裁判外の交渉事例については、拙稿「裁判外における簡裁代理権の活用」月報司法書士418号参照
(注12)少額訴訟債権執行申立ての事例については、拙稿「少額訴訟債権執行の実務」月報司法書士442号参照

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赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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