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簡裁代理権活用の実務その3

3 簡裁代理権の活用事例
(1)裁判を利用した解決
 ① 契約無効等に基づく売買代金返還請求
  主に悪質商法に遭遇した消費者からの相談を受け、民法・特別法の規定により、契約の無効、取消し、もしくは解除の主張ができる場合に受任事件となることが多い。
  事情聴取の結果、契約の効力を否定する事実があったとしても、相談を受ける時点によって、売買代金の返還請求という相談者側からの積極的な行為が必要となるケースと、売買代金の支払拒絶という消極的な行為をすれば足りるケースとに分類することができる。後者のケースであっても、業者が債権者として法的手続をとってきた場合には、被告事件としての対応が必要となる。
  悪質商法は日々新たな手口が考案されており、それに伴い、それに対抗する最新の法情報を熟知しておかなければならない。
  また、クレジット会社の介在などによって契約当事者が複数となり、法律関係が複雑となることもある。
  悪質商法を営む業者は、すぐに所在不明となることもあるので、素早い対応が求められるといえ、事前交渉決裂の見極めをするや否や即座に訴訟提起するといった迅速さも大切である。

 ② 金銭消費貸借契約に基づく貸金請求
  市民間の金銭消費貸借では、契約書などの書証となる書類が不足しているケースも多く、仮にあったとしても金銭授受の記載のみで返還約束が記載されていないようなケースもある。そのような書証不足のときには、事前交渉において、相手方に金銭授受の事実と返還約束の事実を認めさせ、書証化しておくことができるかどうかが紛争解決の鍵となる。
  また、市民同士の紛争では、当事者の感情に配慮する度合いがより高く求められている。たとえば、回収可能性がほとんどなくとも後に引けないという思いだけが先行して訴訟提起を希望する相談者もいれば、顔見知り同士の紛争などでは訴訟だけは避けて紛争を解決したいと希望する相談者もいる。そのため、当事者の感情を踏まえて手続選択の説明をより慎重に行わなければならないといえる。
実際に、相談者が原告となって時効成立直前の貸金債権に基づく訴訟提起した後、被告となった相手方が裁判外で相談者に対して心からの謝罪の言葉を伝えてきたところ、相談者は満足し、時効が成立しても構わないので訴訟を取下げてほしいとの意向を示され、紛争が解決に至るということもあった。この場合、相談者にとって、「訴訟」という手続が単なる債権保全機能・債権回収機能ではなく、相手方との対話のきっかけとして機能したケースであるといえるだろう。
  また、書証が少ないケースでは、人証による証拠調べが必要となることもあるので、あらかじめ、証拠調べを想定した陳述書の作成を準備するなどの心構えも大切である。

 ③ 賃料未払いに基づく建物明渡請求
  アパート等の家主が部屋の借主の賃料未払いを理由として賃貸借契約を解除し、借主に部屋からの退去と未払いの賃料等を請求すると、通常、借主は住居を失うことになるので、賃料未払いの事実を認めつつも、部屋からの退去は仲々できないというケースもあり、当初より、そのようなケースとなることが想定される場合は、強制執行等も視野に入れて交渉を進めることになる。
  執行官による断行がある強制執行は交渉における強力なバトナ(注4)となるものの、強制執行手続には相当の時間と費用がかかるため、そのマイナス面を考慮し、家主が一定程度譲歩(明渡しの猶予もしくは未払い賃料の減額など)したうえで、和解で紛争を終結させることもある。自らが譲歩しなければならない和解内容に難色を示す家主もいるので、強制執行手続のマイナス面を踏まえると、ある程度譲歩する和解も家主にとってメリットがある旨などをあらかじめ説明しておく必要がある。
  なお、賃貸借契約を解除して部屋の退去を求めるときには部屋の固定資産税評価額の半額が訴訟の目的の価額となり、賃貸借契約を解除せずに未払賃料のみを請求するときには未払賃料の額が訴訟の目的の価額となるが、連帯保証人のみを相手方として部屋の退去を求めることはできないので、連帯保証人のみを被告とする際には、訴訟の目的の価額は未払賃料の額となることに留意するべきである。

 ④ 賃貸借契約終了に基づく敷金返還請求
  敷金は原則として全額返還されるべきであるが、通常損耗を超える損耗の原状回復費用については敷金から控除することもできる。この通常損耗の正確な認定には経年劣化も考慮しなければならず、その額の認定に手間取ることもあるが、経験上、敷金の額が少額であることが多いことを考慮し、和解で紛争が解決することも多い。
敷金という名称に限られず、入居保証金などという名目で預け入れるケースもあり、このようなケースでは契約書や実態などから交付した金員の性質を特定しなければならない。
  また、事前の敷金の天引き(敷引き)合意や更新料の支払合意などについての最判も相次いでおり(注5)、必ずしも借主に有利な判断とはいえないものもあるので、それらの相談を受ける際には十分留意しなければならない。

 ⑤ マンション管理規約に基づくマンション管理費請求
  マンション管理組合などがマンション管理費を滞納している区分所有者に対し、マンション管理費を請求する際に、まず、問題となるのが、原告適格の問題である。法人ではないマンション管理組合が訴える場合、管理者を原告とするという規約の定めがあれば、その規約が資格証明となるが、そのような定めがないときには、集会の決議が必要となる(建物の区分所有等に関する法律26条4項)。
  また、要件事実の問題として、マンション管理費の支払遅滞が建物の区分所有等に関する法律6条1項の有害行為に該当するという見解をとった場合、滞納者に対してマンション管理費請求の訴訟を提起することを集会で決議する必要がある。マンション管理費の支払遅滞が同有害行為に該当しないという見解もあり、この見解にたった場合には、この集会の決議は要件事実とはならないので、いずれの見解を採るかによって(注6)、事前に集会で決議をするか否かという訴訟の準備行為が変わることになる。
  なお、マンション管理費に関する債権は、滞納している区分所有者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する(建物の区分所有等に関する法律7条)ので、直ちに強制執行をすることもできる。同じマンションの区分所有者同士での紛争ということから、実際に、直ちに強制執行をするケースは少ないと思われるが、このような強力な債権であることをバトナとして交渉を有利に進めることもできるだろう。

 ⑥ 不倫による不法行為に基づく損害賠償請求
  配偶者の不貞行為の相手方に対して損害賠償の請求をする際には、不貞行為の事実について立証することができるかという問題とともに、いくら請求するべきかという問題がある。
  配偶者が不貞行為の事実を認めているか否かによって、立証準備の程度や内容が異なることになるので、配偶者が不貞行為の事実を認めているケースでは、その旨の念書を取るなどして書面化しておくとよい。
  事前に相談者の求める額がはっきりしていたとしても、事案の概要を詳細に聞き取り、類似事件の裁判例などを調査し(注7)、必要に応じて助言した方がよいだろう。
  なお、類似の損害賠償請求事件としては、婚約破棄による債務不履行に基づく損害賠償請求などがある。
  
 ⑦ 傷害等による不法行為に基づく損害賠償請求
  傷害を負わせた相手方に対して損害賠償の請求をする際、傷害の態様によっては刑事被告事件として立件されているケースもあり、そのようなケースでは刑事被告事件手続の進捗も踏まえつつ、民事上の損害賠償請求の手続を進めていかなければならない。
  すなわち、被害者等としては告訴するか否か、極論としては告訴の有無によって損害賠償請求の額が変わるか否かという問題(つまり、告訴しないことを条件に示談を成立させる)や、被害者等が損害賠償請求をする際に加害者がどこにいるか、そして、いつ請求をするべきか(つまり、加害者が服役中であれば、送達場所や支払可能時期の見定め)という問題である。
  なお、一定の対象犯罪については、当該刑事被告事件の公訴提起時から弁論終結時までであれば、刑事被告事件で有罪の言渡しがあった場合には、同じ裁判所において直ちに民事請求にかかる審理の期日が開始されるという極めて簡易迅速な制度である損害賠償命令の申立てをすることができる(注8)ので、この制度の存在自体は知っておくべきだろう。

 ⑧ 物損交通事故による不法行為に基づく損害賠償請求
  物損交通事故の被害者が修理代等を加害者に請求するというケースが典型的であるが、被害者が車両保険を利用した場合には、その保険会社が保険代位して加害者に求償請求するというケースもある。
  被害者にもある程度の落ち度があるというケースも多く、そのようなケースでは損害の過失相殺をすることになるが、通常、画一的な基準を基に過失相殺の割合の率を決めることになる(注9)。この過失相殺の割合の率が争点となるケースでは、事故態様の事実関係を詳細に把握する必要がある。
  また、訴訟においては、事故態様からは問題がないと考えられる過失割合の率によっても加害者の損害賠償債権と法定相殺をすることはできないため、加害者からの反訴をまって、両訴訟のそれぞれの請求につき、相殺合意による和解をすることが多い。
  なお、加害者が期日に出頭せず、訴外で連絡もとれないような場合には、加害者の損害賠償債権と相殺合意をすることが出来ず、加害者の損害賠償債権が未清算のままとなり、被害者が法的に不安定な状態に置かれてしまうことに留意しておくべきである。

 ⑨ 労働契約に基づく未払賃金請求
  労働者が賃金を支払わない会社に対し未払賃金の請求をする事件では、主に2つの理由が考えられる。すなわち、会社に賃金の支払意志はあるものの資金繰りの悪化によって賃金の支払いがされないという理由と、会社が労働者に対して何らかの債権を有しているので賃金と相殺すると主張されて賃金の支払いがされないという理由である。
  前者の理由であれば、未払賃金立替制度の適用の可否について検討することを忘れてはならない(注10)。申請期間に一定の制限があるからだ。また、事案に応じて、先取特権に基づく強制執行の申立てを直ちに検討するときもある。
  後者の理由であれば、労働基準法24条に基づく賃金の全額払いの原則を根拠に裁判例においても、労働者の同意なしに賃金と相殺することはできない旨を会社に伝え粘り強く交渉することが望ましいだろう。

 ⑩ 解雇による労働契約終了に基づく解雇予告手当請求
  会社から解雇を言い渡された労働者からの相談においては、その労働者が復職を求めるか否かによって具体的な対応が異なることになる。
  復職を求める場合には、労働者としての地位確認を求める訴訟を視野に入れて、本人訴訟支援として関与していくことになるだろう。
  復職を求めない場合であっても、解雇予告手当の請求だけでは労働者の権利保護としては不十分である。解雇予告手当は、あくまで解雇予告の言渡期間が足りないときの金銭補償に過ぎないのであって、不当解雇に関する金銭補償ではないからである。不当解雇に関する金銭補償については、労働審判制度を利用すれば比較的容易な手続で請求することができる。労働審判制度は地裁の専属管轄であるので、この場合も訴訟手続としては、本人訴訟支援として関与していくことになる。

 ⑪ 被告事件
  訴訟の類型を問わず、被告となった方から相談を寄せられることも多い。
原告からの請求の理由の大筋について被告も認めており、訴訟としては負け筋であることが予想されるときには、訴訟の一般的な手続説明をした後に、事件として受任するか否か助言に迷うこともあると思われる。
しかしながら、被告一人だけでの対応では、結局、期日を欠席して、予期せずに債務名義を与えることになってしまったり、無理な支払額による分割払いの和解に応じることになってしまったりなどという事態も十分想定されるところである。
相談者がこのような事態となることを避けるために、被告事件であっても、原告との和解が成立する見込みがあれば積極的に、その見込がなくともその後の強制執行の可能性などを考慮して、できる限り受任する方向で検討するべきである。

(2)裁判外での解決
 司法書士に寄せられる相談は、振り返ると2つに分けることができる。
  すなわち、裁判等の法的手続をする事案と、しない事案とである。
  裁判等の法的手続をする事案であっても、紛争の簡易迅速な解決を目指すという視点から、その手続の申立ての前に事前交渉を試みることが通常であるし、しない事案であれば、交渉が全てである。とくに少額民事紛争は、ことさら費用のかかる裁判まではしたくないという需要も多く、それらの需要に応えるためにも司法書士は交渉スキルを磨くことが重要である。また、交渉スキルを磨くことによって、示談成立の率が高まれば、交渉決裂による裁判という事例を減らすことができ、紛争解決コストを抑えたいという相談者の需要により応えることができる(注11)。

(3)回収
 ① 少額訴訟債権執行による回収
  司法書士は、少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行を代理することができる。管轄は、債務名義に係る簡易裁判所書記官である。手続自体は、通常の地裁管轄の債権執行とほとんど変わらない(注12)。そのため、関与する司法書士としても、書類作成であれ、代理であれ、強制執行手続自体に関与する実感としては大きな違いはない。
  しかしながら、代理することによって、実体上も、より踏み込んだ形で関与することができることになり、とくに、裁判外では、債権の捕捉に関する調査、第三債務者との交渉などで執行代理権を活用できる。
  少額民事紛争の専門家という側面をもつ司法書士としては、60万円以下の少額民事紛争の相談が寄せられた際は、まず、少額訴訟が利用できるか、という視点から助言を進めていき、最終的な回収の局面まで代理援助することを視野に入れた助言をしたいところである。
 
 ② 裁判外での回収
  現行法において裁判外の回収行為を代理できるかについては、債務名義の有無、強制執行手続の申立ての有無など、いくつかの場合分けをして判断することになるが、未だ司法書士界における統一見解があるとは思われない。
  たとえば、少額訴訟債権執行を申立てた場合には、裁判外の執行代理ができるのは当然であるが、少額訴訟ではなく簡易裁判所に係る140万円以下の債務名義に基づく強制執行を既に申立てている場合、司法書士は裁判外で執行代理、平易にいうならば回収のための請求行為などができるのだろうか。また、同様の債務名義を得たものの同債務名義に基づく強制執行の申立てをしていない場合にはどうだろうか。
  今のところ、各自がよく考えて執務にあたるほかなかろう。

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プロフィール

赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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