簡裁代理権活用の実務その2

2 今までの司法書士の簡裁代理権の主な活用実績
 司法書士の簡裁代理権は極めて限定的にしか活用されていない、との指摘は今さらここでするまでもないだろう。
最高裁から公表されている司法統計にこそ現れていないが、ある簡裁判事によると、東京簡裁の平成15年から平成19年末までの既済事件の類型データに基づくと司法書士が原告代理人として関与したもののうち、不当利得返還請求が全体の86.3%を占めており、さらに、静岡地裁管内の同期間の既済事件の類型データに基づくと司法書士が原告代理人として関与したもののうち、売買・貸金・立替金・損害賠償等を除く金銭請求が全体の96.1%を占めており、いずれも、その大半が過払金返還と思われると述べられているところである(注2)。
 この簡裁判事の認識は、経験上、大多数の司法書士の認識とも共通するものであると思われる。このような偏重傾向に対し、司法書士界の内外から警鐘が鳴らされている(注3)。
 確かに私もその警鐘のとおりだと思う。
 司法書士の簡裁代理権に期待されているものは、過払金返還請求に関する事件への対応だけではなく、その他の幅広い民事紛争に関する事件類型(これをここでは「一般民事事件」という)への対応であろう。
 その期待に応えることができているかという自問自答は厳しく追求していかなければならない。
 しかし、これからも簡裁代理制度を維持し、市民のために活用していかなければならない私たち司法書士にとっては、仮に活用する分野が一定の事件類型に限られたものであったとしても、付与されたばかりの簡裁代理権を大いに活用する分野があったという意味においては良い面があることにも留意しておくべきである。
 すなわち、代理訴訟については未熟といえる司法書士界が訴訟ノウハウを効率的に蓄積し、一定の訴訟スキルの共有を図ることができたという司法書士側のメリットとともに、利用者である市民に対して司法書士が代理訴訟も行うことができるという認知を高めることができたという面である。
 現に私が受任する一般民事事件は、本会の常設相談センター経由のものか、過去の依頼人本人もしくはその方からの紹介というものがほとんどである。
 確かに今までのところ司法書士が簡裁代理権を活用した分野は過払金返還に偏っていることは否定できない事実であり、一般民事事件の実績数は圧倒的に少ないと思われるが、今後当面の重要課題としては、今までに司法書士が代理訴訟で関与した当事者等を通じ、一般民事事件の相談が寄せられ、徐々に増加していくことも想定し得るという側面に着目し、一般民事事件受任への対応を強化していくべきだと私は考えている。
 もっとも仮に司法書士に寄せられる一般民事事件の相談が増えていくとしても、今まであまり一般民事事件に関与したことのない司法書士に、いざ、一般民事事件の相談が寄せられたというときに、その司法書士が困惑するということがあっては現実の受任事件数の増加、ひいては司法書士全体としての簡裁代理権の活用に結びつかない。
そのように考えると、一般民事事件受任への対応の強化として、まず行うべき対策は、今までに受任したことのない類型の一般民事事件の相談が来ても、相談を受けた司法書士が困惑しないよう事件解決までのイメージの数を少しでも多く共有しておくことだと思う。(いくつかの事件解決までのイメージを持つという作業の目的は、その一般民事事件の解決方法の結論を知るということではなく、自分にとって新しい類型の一般民事事件を解決するプロセスを知るということである。すなわち、それは、一般民事事件を解決する考え方を身につけることに他ならない。)
 そこで、以降では、「3 簡裁代理権の活用事例」において、あまり一般民事事件の受任経験がないという司法書士を想定読者としたうえで、私の拙い経験をもとに、司法書士に寄せられる一般民事事件のほんの一部を紹介し、それらの事例に基づいて若干の留意点を検討することとし、最後に、「4 これからの簡裁代理権の活用方法及び意義」において、私が実務に基づいて感じている簡裁代理権活用の在るべき姿についての私見を述べることとしたい。
 

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プロフィール

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