【日司連】民法(債権関係)改正に関する研修会開催

 平成24年2月12日(日)13時から17時まで、新大阪において、日司連主催で「民法(債権関係)改正に関する研修会~中間的な論点整理から中間試案に向けて~」を開催したので、担当委員会委員長として参加した。

 当日の研修内容は次のとおりである。
1 報告        赤松 茂
2 基調講演      潮見佳男教授
3 パネルディスカッション
   コーディネーター 初瀬智彦司法書士
   パネラー     中井康之弁護士
            潮見佳男教授
            齊藤幹司法書士
            恩田英宣司法書士

 全国から100名前後の司法書士にご参加いただいた。今回の研修内容はDVDに収録し、全国の司法書士会に配布する予定であるので、参加されなかった方は、後日、ご覧いただきたい。

 さて、私の担当部分である報告の講義メモを参考までに以下掲示しておく。今回の研修会の開催趣旨なども含めて述べている。

 本日、報告を担当させていただきます、民事法改正委員会委員長の赤松と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 この報告の部分では、資料の通しページ3ページ目と4ページ目を利用して、法制審議会民法債権関係部会の動向と民法債権関係の改正に対する日司連の取組みについて、ご説明させていただきます。

【民法債権関係改正の予兆】
⇒ 学者の取組み
 さて、今般の民法債権関係改正のきっかけとなりましたのは、学者の方々からの提案であるということは、おそらく今回お集まりの皆様方にとっては周知のことと思います。
 とくに平成21年4月29日に早稲田大学大隅講堂で開催されたシンポジウム、民法債権法改正検討委員会の「債権法改正の基本方針」が公表されると、その圧倒的な内容は実務界にも大きなインパクトを与えました。これは言ってみれば、学者側からの挑戦状ともいうべきもので、以降、実務界は、この「基本方針」に対する見解を明らかにするということが求められることになったと言うこともできるでしょう。

⇒ 実務界の動向
 この「基本方針」を受けたような形で、実務界は急速に民法債権関係の改正について考えはじめることになりました。
 現在の民法の規定の多くは、実務上とくに支障はないと思われることが多く、もしかしたら今でもそう思っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、「果たしてそうだろうか」、という検証が求められることになったのです。
 私たち日司連においても例外ではなく、平成21年8月9日には、日司連ホールにおいて、「債権法改正に関するフォーラム」を開催しました。このフォーラムの模様は、日本評論社の「民法改正、国民・法曹・学界有志案」に収録されております。当時取り上げたテーマは、債権関係だけでなく、物権関係にまでおよび、財産法全般についての幅広い議論がなされました。また、この際、登壇された早稲田大学大学院山野目教授からは、これから、司法書士法3条1項5号に象徴されるように、身近な市民の悩みに広く耳を傾けるという司法書士の在り方にふさわしい意見を述べていただきたいという期待の言葉もいただいたところです。

【法制審議会民法債権関係部会の設置】
⇒ 法務大臣からの諮問
 このような学界・実務界の動きに対応するかのように、平成21年10月28日には、法務大臣からの民法債権関係の改正に関する諮問がありました。
諮問において、注意すべきキーワードは、「社会・経済の変化への対応」と「国民一般に分かりやすいものとする」という2つです。
 「社会・経済の変化への対応」という部分には、「もはや現民法は現代社会に適合していない」ということが示唆されていると思われます。
 「国民一般に分かりやすいものとする」という部分には、「そもそも現民法は分かりにくい」という前提意識があると思われます。
 これらの理由のうち、「現代社会に適合していない」という指摘は、通常、どんなに優れた法律であっても時が経てば避けられない性質のものです。勿論、民法の規定が時代に影響されない普遍的な規律のみが定められた法律であるということができれば、この指摘は妥当しないことになりますが、私たちの国の民法は、そうではない、と考えられているわけです。
 一方、「分かりにくい」という指摘については、ご承知のとおり、その制定過程に問題があったから分かりにくくなったと言われることが多いわけです。すなわち、民法の制定にあたり、その制定作業が急ピッチで進められたため、条文に原則規定が記されず、いきなり例外規定から記されていたり、規定する内容が乏しいため、実務を判例法理による解釈運用に頼らざるを得なかったり、ということです。これは、ひとたび民法をマスターしてしまうと途端に気づかなくなってしまいます。わたしたち司法書士にしても然りです。しかしながら、このような民法の規定の在り様は、これから民法を学ぼうとする、もしくは差し迫った事情により急遽民法の規定を理解しなければならないといった場合に大きな弊害となり、ときとして司法アクセスの障害ともなり兼ねません。
このような2つの問題意識に基づいて、現在、民法債権関係の改正作業が進められているということを、まず、押さえておく必要があります。

【法制審議会民法債権関係部会開始】
⇒ 第一読会の成果物として、「中間的な論点整理」が公表
 諮問を受けて、法制審議会民法債権関係部会が開催されるようになると、民法典を一巡し、中間的な論点整理を公表するまでの間を第一読会ということもあるのですが、その第一読会は、3週間に2回ほど、毎回約5時間というとてもハードな内容で開催されました。この際の議論に用いられた資料や議事録は法務省ホームページに公開されています。
 平成23年5月には、第一読会の成果物として、「中間的な論点整理」が公表されるに至りました。この「中間的な論点整理」は改正の対象となった民法典の不法行為や事務管理を除く債権編や契約に関連する総則規程などから63の論点を抽出し、これからの検討論点が示されたものです。188ページに亘る論点整理だけでなく、さらに、それに第一読会の「議事の概況」などの補足説明を加えた467ページにもおよぶ資料が公開されているところです。

【その間の日司連の取組み】
 さて、第一読会が開催されている最中に、日司連が何をしていたかと申しますと、大きく分けて、2方向に対する活動を続けておりました。
 それは、会員に対する情報発信と法制審に対する意見提出です。

⇒ 会員に対する情報発信
 日司連では、法制審の設置直後である平成21年12月に「債権法改正に関するシンポジウム」を開催し、法制審の動向についての情報収集をするとともに、当委員会委員が各会へ講師派遣に伺うといった各地での研修会開催のほか、月報司法書士へは民法債権関係に関する特集に寄稿するなど、会員の皆様の関心を高めるべく司法書士界内の活動を積極的に行ってきました。

⇒ 法制審に対する意見提出
 また、法制審に対しては、比較的早い段階で、改正の議論の際に取り上げていただきたい論点を提示し、さらに、第一読会の終了間際には、重点論点に対する意見書を提出いたしました。
具体的には、平成22年6月に、先に出した論点の提示で、消費者の視点から見た論点として、①未成年者取消しに伴う原状回復義務の範囲について、②暴利行為の明文化およびその要件緩和について、③複数の契約の解除について、④建物の賃貸借契約の保証人の保護について、という4論点を取り上げました。これらの論点は、後の意見書でも詳細に意見を展開しております。
 次に、平成23年3月の第一読会の終了間際に提出した「司法書士からみた民法債権関係改正に関する意見書」において、第一読会で議論された論点の中から大きく22論点を抽出し、それらの論点について、司法書士実務の視点から意見を述べました。この際述べた意見の論点をさらに広範な範囲に広げたものが、後のパブリックコメントに提出した意見です。

【法制審第1読会から第2読会にかけて】
⇒ パブコメの実施
 法務省から「中間的な論点整理」が公表されると、平成23年6月から8月までの間、パブリックコメントが実施されました。
 この際、日司連は「民法債権関係の改正に関する中間的な論点整理に対する意見」として意見を提出いたしました。これは、中間的な論点整理で示された63の論点のうち、司法書士実務に大きく影響すると思われる論点について、当委員会委員の能力と気力の続く限り網羅的に意見を述べたものであります。
 この意見書は「意見の趣旨」と「意見の理由」からなるのですが、すべてを掲載すると144ページほどになってしまいますので、本日は、通しページで5ページ目以降から37ページ目まで、「意見の趣旨」だけ抜粋したものを掲載させていただいております。本日の基調講演やパネルで各論点についての講義がある際に、日司連がどのような意見を持っているのか、と、ご参照していただければ幸いです。

⇒ ヒアリングの実施
 このパブリックコメントが実施されている間、法制審は、各団体に対してヒアリングを実施していました。このヒアリングは、事業団体や消費者団体など幅広く21団体に対して行われ、日司連も6月にヒアリングを受けました。
 その際、日司連としては、「制限能力者の取消権とその返還義務の範囲」という消費者問題に関する問題提起と「債権譲渡の第三者対抗要件について登記に一元化するべきである」という問題提起を行ったところです。
このヒアリングの模様も、他の資料と同様に法務省ホームページで公開されています。

【第二読会の開始】
⇒ 第二読会のスケジュール
 平成23年7月より再開された法制審の第二読会からは3つの分科会も設置され、とくに今年の4月以降は、ほぼ毎週部会が開催されるかもしれない、とのうわさもあるほどです。今まで以上に非常にハードな日程で検討が続けられるものと思われます。
 第2読会の成果物としては、「中間試案」という、より条文に近づいた案がまとめられる予定で、平成25年2月に決定することを目標にしているとのことです。さらに、その「中間試案」に対して再度パブリックコメントが実施される見込みです。

⇒ これからの日司連の取組み
 パブリックコメントへの意見は、各本会で意見を出すことはもちろん、司法書士個人でも提出することが可能ですし、有志が集まって任意の勉強団体としても提出できます。
 司法書士業務を通じて留意するべきであると思われる民法債権関係の改正論点や改正の方向性について、複数の司法書士団体から、多くの視点に立って積極的に意見を述べていくことが、市民のために、よりよい民法とするためには重要です。
 ところが、先日行われた第一回目のパブリックコメントでは、「司法書士」との名称がつく団体からの意見提出は、日司連、大阪司法書士会、静岡県司法書士会制度対策委員会、全青司、東京青司協、滋賀県司法書士会青年会民法債権法改正勉強会のわずか6団体のみです。
 これは、とても寂しい数字であり、このままでは、司法書士団体は、民法債権関係改正にあまり関心がないと思われてしまうかもしれません。
 ここにお集まりの皆様方は、この改正に非常に高い関心をお持ちの方々ばかりですので、ぜひ次のパブリックコメントには、本会・個人・任意団体として、積極的に意見を述べていただきたいと思います。
 何も、すべての論点に対して、意見を述べることはありません。
 関心の高い論点に対して、重点的に意見を述べるということでもかまわないのです。
 今回の研修会がその一助となれば幸いです。
 また、これからの取組みとして、日司連として、今まで以上に取り組んでいこうと計画しておりますのが、市民に対する啓もう活動です。
 法制審では、第一読会を経て論点の抽出が終わり、第二読会では具体的に改正内容を検討する段階となり、これからは、改正後の民法を「分かりやすい」民法とするべく、市民からの声をもっと法制審に届ける必要があります。
 このような段階に入り、日司連では、市民の関心を高めるために、一般の方々を対象に民法改正に関する情報を毎月1回日司連ホームページに連載しています。平成23年12月から連載を開始し、2月で既に3回目となります。第1回目は「いま民法について」、第2回目は「契約とは」、第3回目は「約款について」というテーマで掲載し、3月以降も債権関係のトピックを中心に長期間連載する予定です。
 こちらの日司連ホームページの連載も、お手すきのときに、ご覧いただき、忌憚のないご意見をいただきたいと思っています。

 今日は、これから基調講演・パネルと盛りだくさんの講義が続きますが、がんばって勉強しましょう。
 ご清聴ありがとうございました。

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プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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