最高裁「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を批判する その3

 最高裁が今年の7月に公表した「第4回裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」に対して、全青司が次のとおり意見書を提出した。

全青司2011年度会発59号
2011年10月12日


最高裁判所長官 竹崎 博允様

全国青年司法書士協議会
会長  後藤 力哉
東京都新宿区四谷1-2 伊藤ビル7F
℡03-3359-3513 FAX03-3359-3527
e-mail KYW04456@nifty.com
URL: http://zenseishi.com


「第4回 裁判の迅速化検証結果」についての意見書


私たち全国青年司法書士協議会(以下、「当協議会」と言う。)は、全国の青年司法書士約3,300名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め、もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。
当協議会は、御庁が平成23年7月8日に公表した「第4回迅速化検証結果」に対し、裁判所提出書類作成業務を通じて、市民による本人訴訟を長年支援してきた立場から、市民の権利の擁護のために、次のとおり意見を述べる。


意 見

裁判の迅速化は、裁判所及び裁判制度の改革により解決すべき課題であり、利用者である市民に対し弁護士の選任を強制する制度の導入により解決を図るべきではない。






意見の理由

 1.裁判の迅速化は、まず、裁判所及び裁判制度の改革により解決を図るべき課題である。
「第4回迅速化検証結果」においては、弁護士強制制度を導入する理由として、「本人訴訟が減少しておらず、ある程度複雑な事件で弁護士が就いていない場合は、弁護士が就いた場合と比較して、当事者が適確な主張・立証を整えるのに時間を要する場合が多く、裁判所の負担が重い」ことや、「書記官の業務としても、本人訴訟では、当事者本人への手続案内や電話対応に多くの時間と労力を要している」という点があげられている。しかし、これらは、裁判所の手続の運用に関する課題というべきであり、まずは、裁判所の組織体制を含めた裁判制度全体の改革により解決を図るべき課題である。それらを十分検討し更に改善を図ることなく弁護士強制制度の導入によりその解決を図ろうとすることは、弁護士の選任という市民の負担によって裁判所の運用上の便宜を図ることにほかならならず、市民のための利用しやすい裁判所への改革には到底つながらない。
そもそも市民は、裁判手続を通して、市民の正当な権利が擁護されることを裁判所に期待している。民事訴訟において裁判所が客観的に法を解釈・適用する前提として、また弁論主義では尚更のこと、訴訟当事者に主張・立証を尽くさせる機会を実質的に確保することは、裁判所の責務である。もし適確な主張・立証ができていないと裁判所が認識しているのであれば、訴訟当事者たる市民が適確な主張・立証ができるように、真先に裁判所の組織体制を含めた裁判制度の改革を検討することが求められるはずである。にもかかわらず、本来は補完的でしかない訴訟代理人の選任を強制する制度を導入することで裁判の迅速化を図ろうとすれば、裁判所は、その責務を十分に果たすことができなくなるばかりか、市民から遠い存在となり、ひいては市民に「閉ざされた裁判所」となってしまうであろう。

2.裁判所における全ての手続は、市民が自由な選択により自己の権利を実現できる制度でなければならない。
言うまでも無く、市民には裁判を受ける権利が憲法上保障されており、これを実現するための裁判制度は、弁護士や司法書士などの法律専門職が関与しない場合であっても、市民自らがその抱えている法的問題について裁判所を通じて解決を図ることができる制度であるべきである。そのような制度において、市民が自らの権利を実現するために、弁護士や司法書士を訴訟代理人に選任するか、これらの者に書類作成を依頼し手続を自ら遂行するか、あるいは全てにおいて自ら遂行するかは、市民自らの自由な意思によって選択できるものでなければならない。その自由な選択により市民が自己の権利の実現を図ることができ又はさまざまな問題を解決できてはじめて、市民の裁判を受ける権利を実質的に保障するものと言えるだろう。これに対し、たとえ一部においても弁護士強制制度を導入することは、市民の自らの手による裁判を受ける権利を著しく制限することになる。
この点、「第4回迅速化検証結果」においては、「弁護士にアクセスできるにもかかわらず自ら訴訟を追行する当事者の割合が増加している現状をも踏まえ」との指摘があるが、弁護士にアクセスできるにもかかわらず自ら訴訟を追行する当事者が増えているのは、自らの手で訴訟を遂行したいという市民の自己権利実現の意思の現れであると評価することができる。つまり、裁判所を利用するにあたっては、市民自らが訴訟等を追行したいという意思を有している場合もあり、弁護士強制制度を導入すれば、市民自らのこの自由かつ正当な意思を無視する結果になる。

以上に述べたとおり、弁護士強制制度を導入することは、裁判所が市民にとって閉ざされたものとなり、さらに市民自らの自由な選択による手続の遂行を妨げる結果となる。当協議会は、このような結果を危惧するとともに、より市民にとって利用しやすい裁判所への改革を切望する観点から、上記のとおり意見を述べるものである。



 この意見書は全青司HPでも公表されている。
http://zenseishi.com/info/detail.php?autono=178

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