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労働者派遣法の抜本的改正を求める意見

 全国青年司法書士協議会では、平成20年12月に、次のとおり派遣法の抜本的改正を求める意見書を出しております。なお、全国青年司法書士協議会は意見を述べるとともに、速やかに具体的行動を起こしていきます。

          労働者派遣法の抜本的改正を求める意見

                             平成20年12月24日

                         全国青年司法書士協議会
                          会 長  稲 本 信 広

 我々全国青年司法書士協議会は,全国の青年司法書士約2900名で構成する「市民の権利擁護及び法制度の発展に努め,もって社会正義の実現に寄与すること」を目的とする団体である。当協議会は,今般,臨時国会へ上程された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「改正案」という。)が抜本的な改正を必要とする数多くの問題点を残していることから,以下のとおり意見を表明する。

意見の趣旨

 労働契約は直接雇用が原則であることを踏まえ,すべての労働者が安定した生活と働くことへの希望を見出せる雇用社会の実現に向けて,労働者派遣法の抜本的な改正を求める。


意見の理由

 現代社会問題となっているワーキングプアや格差社会の要因の一つに労働者派遣の拡大が指摘されている。労働者派遣法は,昭和60年に制定された当時,一定の専門的業務に限り派遣が認められていたが,平成11年に派遣業務が原則自由化されたことに伴い,スキルを必要としない単純な業務までがその対象となった。労働者派遣制度が労働力需給の調整システムとして機能する一方で,常用労働者と派遣労働者の入れ替え(常用代替)は加速的に浸透した。しかし,その間,最も強化しなければならないはずの労働者の雇用の安定と労働条件の確保に関する担保措置は,十分に機能していたであろうか。そもそも労働者派遣制度は,「雇用関係」と「使用関係」が分離した特殊な事業形態であり,構造的に問題のある制度なのである。
 労働者派遣は,実質的には派遣労働者の労働力の貸与であり,派遣先は低廉で雇用の需給に応じて指揮命令権を取得できる一方,経営状況により派遣契約を解約すれば,解雇というリスクを負わずに労働者を切り捨てることができる。他方,派遣元にはできるだけ多くの派遣先と派遣契約を締結し,派遣労働者の賃金を下げ,マージンなどの利潤を得ようというインセンティブが働く。したがって,派遣元,派遣先が派遣労働者の生活や労働条件を保護するという構造になっていないのである。
 労働者派遣法の改正に当たっては,現代のワーキングプアや格差社会が上記構造の抱える問題点の解消を図るために,法的な整備を施してきた経緯の中で生まれたものであるということをまず認識し,労働者派遣制度の在り方の基本的な視点から抜本的に見直すべきである。

改正案には,具体的に次のような問題点がある。
1 日雇派遣等について(第35条の3関係)
 日雇派遣に関しては,全面的に禁止するのではなく,政令で定める一定の業務に関しては容認している。また、改正案は30日以内の期間を定めて雇用する労働者についてのみ原則として労働者派遣を禁止し,それ以外の派遣に関してはなんら是正措置を講じていない。

2 有期雇用派遣について(第30条関係)
 有期雇用派遣にあっては、派遣労働者の不安定雇用の温床となっており、かつ違法派遣,違法な給与天引き,労災隠しなどの多くの問題を発生させてきた。
 にもかかわらず,改正案は、これを容認し,有期雇用派遣から期間の定めのない派遣労働者,又は派遣労働者以外の期間の定めのない労働者への転換措置に関する努力義務を定めているにすぎず、派遣労働者の不安定雇用を実効的に解消するものとなっていない。

3 派遣労働者の待遇の確保について(第30条の2関係)
 現行のままで派遣元事業主に派遣労働者の賃金を決定するうえでの勘案要素を定めても,単なる努力義務では適正に賃金決定するためのインセンティブが働かないため,派遣労働者の待遇を真に是正することへは繋がらない。

4 違法派遣の是正のための派遣先の措置について(第49条の2第2項関係)
 改正案における法違反への対応は,あくまでも行政が派遣先に対し労働契約の申込みを勧告する権利を有するものに留まるため,現在横行している違法派遣を是正する抑止力としては不十分である。

 上記以外にも,改正案は,全体を通して現代の派遣労働者が置かれている状況を是正するための改正としては甚だ不十分で実効性に欠けるものと言わざるを得ない。
 近時の派遣労働者の現状を鑑みれば,今派遣労働者に必要とされていることは,改正案の拙速な議論ではなく,現行の労働者派遣法を派遣労働者の雇用の安定と待遇の改善,社会保障の観点から改めて抜本的に見直すことである。日雇派遣の派遣期間にのみ制限を設け,それ以外の派遣労働を許容することを前提とする改正案のもとでは,ワーキングプアや格差社会,派遣労働者の不安定雇用の解消は到底期待できない。
 労働者派遣制度は,構造上問題のある制度であり,雇用は本来直接の雇用が望ましい在り方であると考える。したがって,労働者派遣法の改正に当たっては,専門性の確立された一定の業務に限り労働者派遣を許容してきた原点に立ち返り,改正を行うべきである。
 金融危機による企業経営の悪化により,大企業の派遣労働者の首切りが相次ぎ,派遣労働者が住む場所すら失おうとしている。派遣先と派遣元の利潤の犠牲において今日明日を生きるために労働者としての権利を放棄し,低賃金で稼働せざるを得なかった労働者がさらに劣悪な環境に置かれるような雇用社会は直ちに是正しなければならない。
 今こそ,労働者派遣法の抜本的な改正が必要なときなのである。
         

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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