民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理パブリックコメント

 静岡県司法書士会制度対策委員会では、民法(債権関係)改正に関する中間的な論点整理パブリックコメントにつき、次の内容の意見を提出した。


第12 保証債務
7 根保証
(1)規定の適用範囲の拡大について

(意見の趣旨)
 民法第465条の2に規定する根保証契約には,建物賃貸借契約に基づく債務を主債務とする保証契約も含めるべきである。

(意見の理由)
1 建物賃貸借に基づく債務を主債務とする保証契約(以下「保証契約」という)の保証人から寄せられる相談の実態
 建物賃貸借契約及び保証契約においては,契約締結後複数回の更新を繰り返し,長期間が経過してから,賃借人が家賃を滞納したことにより,保証人がその支払及び建物明渡しへの協力を求められることがある。つまり,保証人が一旦当該保証契約を締結すると,主債務者である借主が建物賃貸借契約の更新を止めるまでは延々と当該保証契約が保証人の意思とは無関係に更新されることに起因する問題が生じているのである。
 保証契約の保証人から寄せられる相談では,たとえば,20年前に締結した保証契約によって保証人となったものの,その後,保証人へは建物賃貸借契約の更新の際に一切の連絡がなく,自らが保証人となったことを失念するほどの期間が経過し,主債務者である借主との人的関係も断絶した後に,当該保証債務の履行を請求され,困惑するというケースも寄せられている。また,保証期間及び保証金額の制限がなく,債権者である貸主には主債務の履行遅滞が生じても保証人に対する通知義務も明文上ないことから,当初保証人が想定した以上の保証債務の履行を請求されるというケースもある。
さらに,保証契約の保証人に相続が生じた場合では,その保証人の相続人が保証債務の存在に気づかぬまま相続を単純承認してしまい,その後,当該相続人に対して保証債務の履行が履行されるというケースもある。
 一方,予期せぬ額の滞納賃料の請求を受けた保証人からの相談だけではなく,保証人には迷惑を掛けられないという思いから借主が貸金業者による借入によって賃料を支払ってしまい,それが原因で多重債務に陥ってしまったという借主からの相談も当然ながら数多く寄せられている。
 
2 判例法理
 判例においては,一般に,建物賃貸借契約は,契約期間が定められていても正当事由のない限り賃貸人から更新を拒絶することができないため,契約関係が長期に亘って継続するという事情を保証人は想定しているのが通常であるから,家賃債務についての保証契約には,特段の事情のない限り建物賃貸借契約更新後の家賃債務についても保証する意思が含まれると解されている(最判平9.11.13)。
 一方で,賃借人が家賃を長期間滞納し続けているにも拘らず,賃貸人がこれを保証人に告げることなく,いたずらに契約を更新している場合などには,信義則に照らし,または保証契約が終了していたとの認定の下,保証人に対する請求が制限されることとなる(東京地判平6.6.21,東京地判平10.12.28等参照)。
 このように判例法理は,信義則に基づき保証人の救済を判断していると解することができるが,予見可能性を高め,紛争を未然に防ぐためには,保証契約の保証人に関する明文の規定を設けるべきであると考える。

3 衆参法務委員会付帯決議
 平成16年の民法改正の際には,衆参法務委員会において,「個人の保証人保護の観点から,引き続き,各種取引の実態やそこにおける保証制度の利用状況を注視し,必要があれば早急に,継続的な商品売買に係る代金債務や不動産賃貸借に係る賃借人の債務など,貸金等債務以外の債務を主たる債務とする根保証契約についても,個人保証人を保護する措置を検討すること」とする付帯決議がなされている。
 したがって,今般の民法改正の議論において,根保証につき,この付帯決議の趣旨を重く捉え,建物賃貸借契約から生じる債務を主債務とする保証契約の保証人にまで,その適用を拡大すべきである。

4 具体的提案
 このような建物賃貸借契約から生じる債務を主債務とする保証契約の保証人から寄せられる相談,判例法理及び上記付帯決議を踏まえると,保証人が保証契約の際に予定している範囲について,保証期間と保証金額に関する明文の規定を民法に設けることが妥当であると考える。
 具体的には,民法第465条の2に規定する根保証契約には,建物賃貸借契約に基づく債務を主債務とする保証契約も含めるべきである。

5 補足
 なお,上記4の方向で検討を進め,保証期間を主債務の更新期間と同一とすると,建物賃貸借契約の更新の都度,当該建物賃貸借契約から生じる債務を主債務とする保証契約の保証人に対し,保証契約更新の意思確認が必要になる。このような保証人への意思確認は現在の実務慣行を大きく変え,一見,不動産賃貸市場の停滞を招くことになりかねないようにも思われないわけでもない。しかしながら,保証人が主債務者との人的関係によって対価も得ずに,保証人を付けなければ建物賃貸借契約が成立しない仕組みのように保証人の負担を前提として成り立つ市場は,本来,健全な市場であるとは言い難い。保証人の負担に頼った賃貸市場の在り方そのものについても検討を踏まえつつ,十分な経過措置を取るなどにより市場への急激な影響は避け,本来あるべき賃貸市場を今般の民法改正を契機に実現すべきであると考える。


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プロフィール

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