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司法書士からみた民法(債権関係)改正―中間試案に向けて編―その2

その2 民法(債権関係)改正に対する日司連の対応

 ここで、民法(債権関係)改正に対する今までの日司連の対応を振り返ってみたい。
 法制審議会民法(債権関係)部会が設置される以前より、民法(債権関係)改正の気運が高まっており、平成21年10月25日には、民法改正研究会・「民法改正を考える」研究会・「市民のための民法改正」研究会・「企業法務に役立つ民法改正」研究会の主催により「民法改正国民シンポジウム-『民法改正 国民・法曹・学界有志案』の提示のために」が開催され、日司連としても、「司法書士からみた『民法改正 国民・法曹・学界有志案』」を発表する機会に恵まれた(注3)。
 同シンポジウムにおいて、日司連としては、発表者となった筆者の私見を含みつつ、主に次の内容の発表を行なった。
 ① 民法改正に対する司法書士の視点としては、本人訴訟支援、登記、少額民事紛争に携わってきた実務家の専門的知見の立場から意見を述べていくものとする。
 ② 裁判規範ではなく、行為規範として予防司法に資する民法となることを期待する。また、消費者契約に関する規定を民法に取り込むことは慎重に検討すべきである。
 ③ 物権編を含む各論として、未成年・法人・意思無能力・錯誤・不実表示・時効・不動産登記・相隣関係・農用地上権・人役権・債権者代位権・保証・債権譲渡・契約上の地位の移転・金銭消費貸借について、それぞれ大きな方向性を示す意見を述べる。 
 このシンポジウムを皮切りに、日司連に民事法改正対策部が設置され、日司連における民法改正に関する検討が本格化するに至ったということができるだろう。

 平成21年11月に法制審議会民法(債権関係)部会が設置され、改正に関する議論が始まったが、日司連では、同部会に対し、民法(債権関係)改正に関する意見を述べる前に、平成22年6月8日に開催された第10回会議に、「消費者の視点から見た論点の提示」を提出し、次の4つの論点の提示を行なった。

 論点① 未成年者取消しに伴う原状回復義務の範囲について
 論点② 暴利行為の明文化およびその要件緩和について
 論点③ 複数の契約の解除について
 論点④ 建物の賃貸借契約の保証人の保護について

 論点①は、未成年者による契約トラブルの増加に鑑み、役務提供型の契約について、未成年者取消しを主張したとしても、既に受けた役務を現存利益と解される余地のある現民法では被害回復が困難となるケースがあるので、立法により未成年者取消しに伴う原状回復義務の範囲の特則を設けてはどうか、というものである。
 論点②は、現民法の意思表示に係る規定、あるいは、特定商取引法や消費者契約法等の特別法の民事規定の要件に該当せず、実務上の対応に苦慮することが少なくない事例が多いことに鑑み、公序良俗違反無効が、いわば民法の意思表示や特別法の隙間にある不当な契約からの解放の手段として位置づけられるように、当事者間の交渉力・情報量の較差、適合性等の主観的要素に係る社会的非難の程度が高い場合は、契約金額(被害金額)が著しく過当な利益に該当しない場合であっても、契約の無効を認めるといった見直しを行ってはどうか、というものである。
 論点③は、複数の契約当事者が介在する契約トラブルの増加に鑑み、割賦販売法、特定商取引法及び消費者契約法等の特別法による手当だけでは対処できないケースも多くあることを踏まえて、複数の契約の解除について、無効の場合との整合性、予見可能性を害する濫用的解除防止への配慮、対象範囲等を考慮しつつ、複数の当事者による複数契約の解除について検討を行ってはどうか、というものである。
 論点④は、賃貸借契約の保証人において、保証額及び保証期間が不明確であり、賃貸借契約が相当期間継続し、借主と保証人との間の人的関係が途絶えた後などに保証人としての責任を問われるケースも多くあることを踏まえて、賃貸借契約の保証人に対して、保証額及び保証期間の制限を設けることについて検討を行ってはどうか、というものである。
 これらの提示した論点の検討の過程で、民法(債権関係)改正に関して日司連が消費者からの視点として意見を述べていく際の大きな方針が固まったものといえるだろう。

 日司連は、その後、平成23年3月8日に開催された法制審議会民法(債権関係)部会第25回会議に、「司法書士からみた民法(債権関係)改正に関する意見書」を提出した。同意見書においては、民法の債権関係に関する規定について改正作業を進めることに原則として賛成した上で、主に次の7つの論点について詳細に意見を述べた。なお、この意見書は、既に本会あてに回付しており、NSR2においても公表されている。

 意見① 消費者関連(民法と特別法の関係、契約交渉段階、法律行為に関する通則、意思表示、無効・取消、契約の解除、保証、相殺、賃貸借契約、消費貸借契約)
 意見② 債権譲渡関連
 意見③ 債務不履行解除
 意見④ 代位による登記
 意見⑤ 法定利率
 意見⑥ 代理、売買、贈与、委任、請負、
 意見⑦ 時効

 意見①は、前述の4つの論点を踏まえ、消費者の視点から各論点に対する意見を述べたものである。とくに、民法は基本的な契約ルールを規定すべき法律であるから、適用の対象が特定の事物、人などに限られる取引等については、原則的には特別法による規律に委ねるべきであるとして、消費者契約法等の取り込みには慎重に検討すべき、との意見を述べている。同時に、「消費者」、「事業者」の概念も民法において規律する必要性は乏しく、消費者契約に関する特則は特別法においてすべき、との意見も述べている。
 意見②では、とくに債権譲渡登記について、登記制度の整備をすることによって、登記一元化を図ることが可能であるという意見を述べている。
 意見で述べた登記制度の整備としては、次の事項を掲げた。
  )債権譲渡登記の対象について、金銭債権に限定せずに非金銭債権も含むすべての債権の譲渡とする。
  )債権譲渡登記の利用者(譲渡人)について、法人に限定せずに個人も利用できるものとする。
  )債権譲渡登記の申請について、オンライン申請を利用しやすい仕組みを整備し、例えば、当分の間、不動産登記申請と同時に添付書類の法務局への別途持参または送付の特例を設ける。また、債権譲渡登記に係る証明書について、登記事項概要証明書の“インターネット登記情報”による情報取得ができるようにする。
  )債権譲渡登記の真実性を担保するとともに、利用の促進を図るために現行制度に以下のとおりの修正等を加える。
   ア)原因照明情報の提供を義務付ける。
   イ)登記申請の補正を認める。
   ウ)一定の登記事項の変更・更生を認める。
   エ)質権設定登記に、順位の概念を採用する。
   オ)登録免許税を低減する。
   カ)できる限り当事者が利用しやすい仕組みを整備する。
 意見③乃至意見⑦については、それぞれ実務上の観点から、各論点に対する意見を述べたものであるが、紙幅の関係から説明は割愛する。
 この意見書の検討の過程で、日司連が、民法(債権関係)改正に関して、消費者関連の意見と債権譲渡登記関連の意見という2つの大テーマを中心に意見を述べていくという基本方針が固まったものといえるだろう。

 さらに、前述の4つの論点及び意見書で述べた意見に基づき、「中間的な論点整理」によって示された論点に対する意見をパブリックコメントに提出したところである。
 パブリックコメントにおいては、既に述べた意見を掘り下げるといった方針ではなく、それら意見の関連論点を中心に、既に述べた意見との整合性を保ちつつ、できる限り多くの論点に意見を述べる方針でまとめることとした。
 今回のパブリックコメントの趣旨としては議論の留意点についての意見を募集するとのことであるし(注2)、意見を掘り下げる作業は、これから始められる法制審議会民法(債権関係)部会の第2ステージと並行して行うほうが効率的であると考えられたからである。

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赤松 茂

Author:赤松 茂
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静岡県沼津市下河原町48番地

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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