司法書士からみた民法(債権関係)改正―中間試案に向けて編―その1

今回から4回に亘って、民法(債権関係)改正の中間試案に向けた司法書士の取り組みについて掲載する。

その1 民法(債権関係)改正の動向

 民法(債権関係)改正に関する法務大臣の諮問を受け、平成21年11月から開催されている法制審議会民法(債権関係)部会は、平成22年12月までに20回開催され、その中で、原則として民法典の配列に従い、改正論点の整理に関する議論がなされた。平成23年1月からは、さらに6回の部会が開催され、それまでの議論をまとめる作業が行われ、同年5月には、その作業の成果物が「中間的な論点整理」として公表されたところである(注1)。
 この「中間的な論点整理」においては、次の63の論点が検討項目として掲げられている。

 1 債権の目的
 2 履行請求権等
 3 債務不履行による損害賠償
 4 賠償額の予定(民法第420条、第421条)
 5 契約の解除
 6 危険負担
 7 受領遅滞
 8 債務不履行に関連する新規規定
 9 債権者代位権
10 詐害行為取消権
11 多数当事者の債権及び債務(保証債務を除く。)
12 保証債務
13 債権譲渡
14 証券的債権に関する規定
15 債務引受
16 契約上の地位の移転(譲渡)
17 弁済
18 相殺
19 更改
20 免除及び混同
21 新たな債務消滅原因に関する法的概念(決済手法の高度化・複雑化への民法上の対応)
22 契約に関する基本原則等
23 契約交渉段階
24 申込みと承諾
25 懸賞広告
26 第三者のためにする契約
27 約款(定義及び組入要件)
28 法律行為に関する通則
29 意思能力
30 意思表示
31 不当条項規制
32 無効及び取消し
33 代理
34 条件及び期限
35 期間の計算
36 消滅時効
37 契約各則―共通論点
38 売買―総則
39 売買―売買の効力(担保責任)
40 売買―売買の効力(担保責任以外)
41 売買―買戻し、特殊の売買
42 交換
43 贈与
44 消費貸借
45 賃貸借
46 使用貸借
47 役務提供型の典型契約(雇用、請負、委任、寄託)総論
48 請負
49 委任
50 準委任に代わる役務提供形契約の受皿規定
51 雇用
52 寄託
53 組合
54 終身定期金
55 和解
56 新種の契約
57 事情変更の原則
58 不安の抗弁権
59 契約の解釈
60 継続的契約
61 法定債権に関する規定に与える影響
62 消費者・事業者に関する規定
63 規定の配置

 法務省によると、「中間的な論点整理」とは、次にまとめられる「中間試案」の取りまとめを目指すにあたって、議論すべき論点の範囲を明らかにしつつ、法制審議会民法(債権関係)部会におけるこれまでの議論の到達点を確認しようとするもの、と説明されている(注2)。
 しかしながら、法務省からは、次のステージで議論される論点は「中間的な論点整理」に示された論点には限られないとの説明も合わせてなされているところであり(注2)、この説明を踏まえると、現時点では議論すべき論点が限定されないことになるのであるから、前者の「議論すべき論点の範囲を明らか」にする必要性は乏しいのではないかとも考えられ、そのような考えを前提とすると、「中間的な論点整理」の意義は、とくに後者の「これまでの議論の到達点の確認」という部分にあるということができるだろう。
 このような問題意識に基づくならば、「中間的な論点整理」を精査する際、とくに、次のような文末の表現に留意すべきであると考えられる。
すなわち、その表現とは、部会内で具体的な内容についてコンセンサスがあったと評価される論点については、文末が「~としてはどうか」と示されていると説明されており(これを仮に「Aランク論点」という)、改正の方向性について部会内で一定のコンセンサスがあったと評価される論点については、文末が「~とする方向で、更に検討してはどうか」と示されていると説明されている(これを仮に「Bランク論点」という)。その他の論点については、文末が「~について、(更に)検討してはどうか」と示されていると説明されている(これを仮に「Cランク論点」という)。
 つまり、Aランク論点及びBランク論点については、これまでの議論の到達点として、既に、部会内において、改正の方向性がある程度共通認識のものになっているといえる。したがって、今後、実務家団体などが、その方向性を覆すためには、相当説得力のある反対意見を述べなければならないといえるだろう。Aランク論点とBランク論点の相違は、コンセンサスの程度の問題であると考えられ、Aランク論点の方が、よりコンセンサスの程度が高いものであるので、Aランク論点の方向性を覆すには、Bランク論点のそれ以上の反対意見を準備する必要があると考えられる。
 これに対し、Cランク論点は部会内における方向性が示されておらず、現時点においてはニュートラルな論点であるといえる。「中間的な論点整理」において示された論点のほとんどは、このCランク論点である。
 このように、数は少ないもののAランク論点及びBランク論点として掲げられた論点について、その方向性に異議がある場合には、然るべき時期に適切な反論を述べておかねば、公表されている方向性で改正が進んでしまう可能性が強いことに留意しておかねばならない。
 この「中間的な論点整理」とともに、今までの議事の概況なども盛り込み、事務当局の責任においてまとめられた「補足説明」も公表されているので、パブリックコメント等で意見を述べる際には、より詳細に今までの議論の経過を把握するために、「中間的な論点整理」の各論点に対応する「補足説明」と今までに公表されている「部会資料(詳細版)」等を照らし合わせつつ、検討作業を行う必要がある。
 さて、今回の「中間的な論点整理」に対するパブリックコメントにおいては、前述したとおり、今後議論すべき新たな論点等についての意見も求められているが、とくに、各論点を次のステージで議論する際の留意事項などを指摘する意見が期待されているようだ(注2)。
 パブリックコメントへの意見提出は平成23年8月1日までと定められており、日司連のみならず、全国の司法書士会や司法書士の任意団体からも、多くの意見が提出されることを期待している。
 今回のパブリックコメントを経て、民法(債権関係)改正のスケジュールも、いよいよ第2ステージに進むことになる。

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