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東京大学ビジネスローセンター公開講座 「民法改正の総論的課題―債権法改正を中心に」報告

 平成23年5月26日13時30分から15時まで、東京大学において開催されたビジネスローセンター公開講座「民法改正の総論的課題―債権法改正を中心に」に参加したので、その概要を報告する。
 参加者は、学生・一般含め200名前後である。
 講師は、東京大学教授の大村敦志氏であり、次の内容で進められた。(文責 赤松)

はじめに-なぜ民法を改正するのか

Ⅰ 民法改正の現状
 1 進行中の改正
 (1)債権法の改正
   法制審議会の議論の成果物として、「中間的な論点整理」が公表され、これからパブリック・コメントが実施されるところ。その後、第2読会が開始される見込み。
   留意点として、改正の対象となるのは、債権編に留まらない。実質、契約法の部分の改正である。また、複数の学者グループの研究が出されている点にも留意すべきである。
  
 (2)親権制度の改正
  平成22年3月より、法制審議会で議論されている。平成23年3月に改正案が提出され、国会で審議中。
   児童福祉法の改正を同時に行う必要があるため、厚労省も合わせて検討しているところ。

 (3)成年年齢の改正
   平成20年から、法制審議会で議論されている。成人年齢の引下げに賛成する最終報告書が出されているところだが、引下げ時期は政治的判断に委ねることとされている。今のところ実際の改正時期は未定。

 2 アジアの民法改正
 (1)韓国の場合
   家族法は既に改正されている。戸籍制度の大きな改正もなされている。子供の姓の制度も変わった。成人年齢も20才から19才へ引下げ。
   財産法は、既に改正案が取りまとめられたが、一旦廃案となった。

 (2)中国の場合
   財産法は、順次新たな立法がなされている。
   現在は、人格権法の部分の検討が進められているところ。

 (3)ベトナム・カンボジアの場合
   民法典の編纂作業が進んでおり、日本からの立法支援が積極的に行われている。

Ⅱ 債権法改正の場合
 1 債権法改正は必要か
 (1)部分的な改正ではなく全体の見直しを
   現行法の不備を補う最小限の改正では、火消し立法となりかねず、対応が後手に回ってしまう。一貫したビジョンを示すことができない。
   民法が規律する社会というものに対する考え方を統一的に示す必要があるのではないか。
   もちろん全体の改正の議論をした結果論として、部分的な改正に留まることはありうる。

 (2)判例の確認だけでなく選択肢の創設を
   改正においては、判例の明文化が重要だと言われることもあるが、それのみが改正対象ではない。制度としての新たな選択肢を用意することが重要だ。たとえ利用数が少なくとも、制度を用意しておくことは社会にとって有用である。

 2 合意主義は妥当か
 (1)裸の合意ではなく公正な契約を
   基本方針は合意主義であるとの批判もなされることがあるが、基本方針は裸の合意ではなく、契約そのもの、すなわち公正な契約に着目した合意が重要であり、そのような認識にたった合意は批判の対象にはならない。より公正な契約を目指すということは、弱者を保護することにもつながるものである。

 (2)社会契約ではなく契約社会を
   基本方針では、現実の社会を、契約を用いて改良していくという契約社会を目指している。新しい社会象が求められる今日、これに相応しい契約象を示すことは重要である。

3 私法の一般法は必然か
(1)抽象的な人ではなく具体的な人を
  消費者概念の導入について、①民法が消費者よりになってしまうおそれ、②消費者問題は特別法にすべきではないか、③民法は対等当事者間を規律すべきではないか、という批判が寄せられているが、とくに③については、そもそも、未成年者、行為能力者、法人等の具体的な人が規律されており、消費者契約の発達した今日においては、それに、消費者を加えることは、むしろ当然である。

(2)契約一般ではなく各種の契約を

4 パンデクテンはわかりやすいか
(1)専門家の便宜ではなく学習者への配慮を
  国民に分かりやすい民法という総論は異論がないところだが、何が分かりやすいのかという具体論は様々な考え方がある。
  このときの視点は、これから民法を学ぶ学習者の立場に立つべきである。
  そのような立場からは、パンデクテンは決して分かりやすいとは言えない。
  総則偏を解体することも検討すべきである。

(2)財産の帰属ではなく人格の尊重を
  総則偏の法律行為に関する具体的規定は債権偏に移すべきではないか。
  また、総則偏の人概念についても、人格を尊重し、人格権への手当てをすべきではないか。

Ⅲ その他の改正の場合
 1 家族法改正は再開するか
 (1)終わりではなく始まりを
   成年後見制度の改正は財産法の部分も含め成功したといえるが、それ以外の夫婦、親子に関する改正は一向に進まない。
   現在進められている児童虐待防止に関する改正を家族法改正の始まりとしたい。

 (2)一元・決定ではなく多元・開放を
   
 2 成年年齢の引下げは無意味か
 (1)保護と放任ではなく自律と支援を
   成人年齢の引下げについては、根強い反対論もある。これについては、保護と放任ではなく、自律と支援という考え方をしていくべきではないだろうか。

 (2)私権ではなく市民的権利を

おわりに-「民法典」を持つという選択
 たとえば、消費者問題は消費者庁へという姿勢では、消費者問題を市民社会が考えることを限定してしまうことにもなりかねない。
 今回の債権法改正を通じて、民法典の在り方が問われるものとなる。
 学界を超えた国民全体の広い議論がなされることを期待している。

           *

 民法典の在り方は、現時点では多種多様な考え方が示されているところなので、現時点では、それらの考え方を分け隔てなく聞くことが大切だと考えている。
 パブリック・コメント後に始まる法制審議会民法(債権関係)部会の第2読会の議論を経て、自ずと、民法典の在り方が定まっていくのだろう。
 その際、司法書士として、しっかりとした意見を述べていきたい。


コメント

民法改正案成立!

奇しくも本日親権に関する民法改正案が成立しました。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00043.html

補足まで。

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プロフィール

赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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