日本労働弁護団主催「労働者性の否定を許さない集会~そんなあなたは『労働者』~」

 平成23年3月4日(金)18時から20時まで、東京・御茶ノ水において、日本労働弁護団主催で、「労働者性の否定を許さない集会~そんなあなたは『労働者』~」というテーマで集会が開催されたので参加した。
 参加者は、一般の方を含め200名以上である。(なお、弁護士・司法書士のような法律専門職よりも、労働組合関係の方と思われる方々の参加者が多いという印象を受ける。)
 正社員や派遣労働者への規制が厳しくなっている昨今(厳しくなっているというよりも、法の適切な解釈を求めているという結果であり、有期雇用法制の検討が労政審において進められていることも影響していよう)、その反動で、使用者からは、雇用する従業員を委託業務や請負業務であるとして、そもそも労働者ではない、という主張が増加しつつある。このように看過することができない実態を問題視して、今回の集会では、「労働者性」をテーマとしたとのことである。
 集会の次第及び概要は次のとおりである。

【基調報告】
 日本労働弁護団会長である宮里邦雄弁護士から、次の内容で基調報告がなされた。
1 何故いま、「労働者」性(「労働者の定義」)が重要な問題となっているのか。
2 「労働者」概念の重要性と三つの「労働者概念」
 ・労基法上の労働者
 ・労契法上の労働者
 ・労組法上の労働者
3 労組法上の労働者は、労基法、労契法のそれより広くとらえられている―労組法の定義規定の特色
4 労働者の定義規定は抽象的なため、労働者該当性の判断のあり方は何かをめぐって見解が対立している。
5 三判決に共通する問題点―「労働者性」否定の判断手法
 ・新国立劇場運営財団事件、東京高裁H21.3.25労判981号13頁
   財団と出演契約を締結しているオペラ合唱団員
 ・INAXメンテナンス事件、東京高裁H21.9.16労判988号12頁
   住宅設備機器の修理業務を行う業務委託契約を締結している者
 ・ビクターサービスエンジニアリング事件、東京高裁H22.8.26労判1012号86頁(判例ダイジェスト)
   製品の修理、メンテナンス業務を行う個人代行店
6 三事件判決は最高裁(第三小法廷)に係属―最高裁は、高裁判決をどのように見直すか。
7 労組法上の「労働者」性をこえる基本視点
8 「労働者権」の確立を目指すたたかいとして

【「労使関係法研究会」について】
 平成22年11月より、厚労省において、集団的労使関係法制のあり方についての検討が行われている。平成23年6月には「中間報告書とりまとめ」がなされる見込みとのことである。

【「東陽ガス」における「二重契約」の問題性】
 配送に係る雇用契約と「保安・点検」及び「配管工事」という2つの業務委託契約が一人の労働者に締結されている。(合計3つの契約)
 → 業務委託契約の部分が「名ばかり労働者」となっている。
 → 経費以外にも多くの天引きがなされ、当月に天引きできない分は翌月以降に天引きされるという「借金漬け労働」が恒常化している。

【各事件に関して】
 ・CBC管弦楽団労組事件について
 ・ソクハイ事件について
 ・新国立劇場財団事件について
 ・INAXメンテナンス事件について
 ・ビクターサービスエンジニアリング事件について

【集会アピール】
 集会の最後に採択された集会アピールは次のとおり。
「雇用契約によらず、個人請負(委託)形式等によって働いている者が増え、労働基準法上の「労働者」といえるか、労働組合法上の「労働者」にあたるか、ということが重要な問題となっている。とりわけ、個人請負(委託)形式等で就労する者が団結し、団体交渉を申し入れたことについて、労組法上の「労働者」に該当しないとして、使用者がこれを拒否する事件が増加している。その中で、裁判所は、このような使用者の対応を不当労働行為とした労働委員会命令を不当に取り消し、団交拒否を容認する判決を相次いで行っている(新国立劇場運営財団事件・東京高裁平成21年3月25日判決、INAXメンテナンス事件・東京高裁平成21年9月16日判決、ビクターサービスエンジニアリング事件・東京高裁平成22年8月26日判決)。
 個人請負(委託)形式等で就労する者の労組法上の労働者性を否定するこれらの判決は、いずれも労組法上の労働者性につき、「法的」な指揮命令関係ないし使用従属性を要求するなど、使用従属性を過度に強調し、客観的な就労実態は考慮に入れず、使用従属性をもっぱら契約文言上の権利義務の有無という観点から判断している。
 日本国憲法28条は、勤労者の労働基本権を保障している。その趣旨は、勤労者が使用者に対して経済的に従属し、使用者の決めた契約内容に従わざるを得ない立場にあるから、団結によって使用者との実質的な対等化を図り、労働条件を維持・向上させることにある。したがって、この趣旨を具体化した労組法上の労働者性は、団結によって団体交渉の保護を及ぼすことによって実質的な対等化を図る必要性が認められる者、すなわち労務供給の相手方と比べて交渉力が劣り、経済的に依存する立場にある者について広く認められなければならない。同法第3条が、「労働者」を「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」として、労働者概念を労基法及び労働契約法上のそれより広く規定しているのも、このためである。
 使用従属性を過度に強調し、さらには使用従属性の有無を就労実態ではなく、契約文言上の権利義務を中心に判断することは、憲法28条の趣旨及び、労組法の趣旨・目的をないがしろにするものであって、到底認められない。使用者が、個人請負や業務委託など、労働契約とは異なる契約形式を採用するのは、労働者規制を免れ、人件費を切り下げる意図によるものであり、このような非雇用化・非労働者化を容認することは、ワーキングプアの増大にも拍車をかけることになりかねない。
 われわれは、不当な上記3判決について、最高裁に口頭弁論を開いて是正するよう求めてきたが、最高裁は、平成23年3月15日に新国立劇場運営財団事件、同29日にINAXメンテナンス事件につき口頭弁論を開くことを決定した。われわれは、最高裁判所が労組法上の労働者性につき、憲法28条及び労組法の趣旨を尊重した判決を下すよう要求するとともに、個人請負(委託)形式等で働く者の労働者としての権利実現を目指してともに取り組むことを表明する。
                2011年3月4日
    「労働者性の否定を許さない集会」参加者一同」

         *

 今回の集会では、「労組法の労働者性」が主なテーマであったが、個別労使紛争では、「労基法上の労働者性」、「労契法上の労働者性」が問題となることが多い。そして、これらの労働者性は、労組法のそれよりも厳格に解釈される。
 私たち司法書士は個別労使紛争に関わることが多いのであるから、「労基法上労働者性」、「労契法上の労働者性」についての研究も深めていかなければならないといえるだろう。
集会に参加して、そのようなことを考えるきっかけをいただいた。

 

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