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民事紛争における司法書士の果たすべき役割その4

4 民事紛争における司法書士の果たすべき役割
 簡裁訴訟代理関係業務の偏りが指摘されており、実務の実感としても同様に感じているところであるのだが、実は、この偏りにおける全国的なデータはない。前述した司法統計も事件名別には集計されていない。したがって、偏りを正確に把握することは困難な状況である。
以上のような状況を踏まえ、筆者は、今後、民事紛争における司法書士の果たすべき役割を具体的に、より深く考察するのであれば、司法書士の簡裁訴訟代理関係業務の事件名別集計をする必要があるのではないかと考えている。それには全国の司法書士の協力を得て、全国の簡裁に掲示される事件名を集計するなどの方法が考えられる。このような集計をすることによって、司法書士にとって、おそろしい現実が突きつけられる可能性も否定できないが、現実を直視しなければ、今後の展望を検討することはできないだろう。
 果たして、実践が理念にどれほど適合していないのか、私たちが自ら問いただしていかなければならないと思うのだ。
 そのような具体的データのない現状においては、実践を理念に適合させるための方策を、前項の①乃至④に対応して、以下、それぞれ述べることとしたい。
 ① 司法書士が受けるトラブル相談の総数と多様性の貧困さを改善するために、司法書士総合相談センターの充実と様々な類型の事件に関する研修及び相談会を積極的に開催していく必要があろう。債務整理に関する紛争に偏重することなく、「B(事業者)to C(消費者)間」の紛争全般、たとえば、契約トラブルなどの悪質商法の事件にも、もっと積極的に関与すべきであるし、紛争当事者が市民同士となる一般民事事件にも広く対応することを強く意識すべきである。具体的には、日司連が例年各会に呼びかけている「労働トラブル110番」のほか、「賃貸トラブル110番」、「物損交通事故110番」等の開催を呼びかけることにより、個々の司法書士が幅広い紛争類型に関与するための仕掛け作りが重要になる。
 また、顕在化した紛争に関わる司法書士の増加には、前述のとおり試験制度改革も視野に入れるべきであろうと思われる。
 ② 司法書士が提供する役務内容の機能充実を図るために、裁判書類作成関係業務だけでなく、簡裁訴訟代理関係業務のうち、とくに訴訟外での交渉術を磨く必要がある。紛争に代理人として関与するということは、対立当事者間の間に入って利害調整を行うことを意味する。そのような利害調整は全てが訴訟に適合的というわけではないと言われている。
法的には関連しない性質の事項であっても、交渉によって、それらを一括で解決することが妥当であるケースもあるし、後述④に述べるように紛争処理のコストを下げる意味においても、簡易・迅速な交渉を試みる意義は大きい。このように、新しい理念に伴う実践活動を行う司法書士は文章がかけるだけでなく、交渉もできなければならないのだ。
 なお、簡裁代理権の訴訟外での活用の具体例については、拙稿(「裁判外における簡裁代理権の活用」月報司法書士418号26頁)をご参照いただきたい。
 ③ 近年、司法書士の地方開業が低下しつつある傾向への対策を立てるために、新規開業希望者を中心に、司法過疎地を始めとする地方での開業を促進していく必要がある。日司連でも司法過疎地での開業支援等を行っており、司法過疎地における開業者も増えつつあるが、地方における司法書士の減少率と比較すると現状は不十分な対策であると言わざるをえない。現在の支援は開業に至るまでのいわば片道切符型の支援となっているので、開業後に状況に応じて従前の居住地等に比較的容易に戻ることが可能となるような、いわば往復切符型の支援等も含めた制度の抜本的見直しを検討すべきだろう。
 同時に、地方で既に開業している司法書士に対する簡裁訴訟代理関係業務に関する研修等も一層実施していかなければならないが、簡裁訴訟代理関係業務を行うようになって既に7年が経過しており、既存の開業者の業務拡充の急激な増加は、さほど見込めないのではないだろうか。
そのような事情を鑑みると、司法過疎地を始めとする地方での開業促進は、新たな理念に基づく試験に合格した者を、いかに誘致するかが鍵となるように思われるのである。
 ④ 簡裁訴訟代理関係業務の労力と報酬の対価が対等となるために、紛争処理の合理化を図る必要があるが、司法書士が代理する業務は簡裁の事物管轄に関する民事紛争に限定され、経済的利益が140万円以下の紛争に限られる。したがって、紛争の経済的利益に比例し、自ずと報酬も低額となることが大半であると思われる。
 このような簡裁訴訟代理関係業務と報酬との関係に対し、他の業務で事務所経営に必要な報酬を得て、簡裁訴訟代理関係業務は赤字であっても構わないという考え方もあろうが、制度全体として、そのような考え方で推し進めると、簡裁訴訟代理関係業務を行う司法書士の裾野は広がらない。裾野を広げるためには、少額民事紛争への関与をプロボノマインドに頼ってはならないのだ。
 合理的判断に基づき司法書士が少額民事紛争に関わっていくためには、報酬と簡裁訴訟代理関係業務の労力とは対等の関係でなければならない。理想は、簡裁訴訟代理関係業務を軸とした少額民事紛争への関与だけでも、件数をこなすことにより事務所経営が維持できるという状況である。
 この点、仁木論文では、「事務所における業務遂行の合理化」、「補助者や事務職員の役割の検討」等が掲げられている。
 ほかにも、前述②に関連し、紛争処理の方法として、まず、手続が厳格な訴訟ではなく、交渉による簡易・迅速な解決を図ることも検討すべきだろう。

 以上、思うままの方策を述べさせていただいた。考えの至らぬところも多々あることは承知の上である。本稿は、民事紛争における司法書士の果たすべき役割の議論の叩き台として寄稿したものであるので、厳しいご意見・ご批判をいただくことにより、議論が活性となれば本望である。また、その際には、仁木論文を是非とも精読いただきたい。

               *

 「司法書士の紛争処理機関の機能の理念は、簡裁訴訟代理関係業務が加わったことにより、変容を遂げたのか。」
 「果たして、その理念に適合した実践はなされているのか。」

 仁木論文により投げかけられた、これら2つの問いに答えていくことで、民事紛争における司法書士の果たすべき役割は自明のものとなっていくのだろうと私は考えている。

コメント

No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

レスありがとうございます。

ご感想ありがとうございました。

司法書士の独自性の確立に向けて、理論面・実践面ともに、これからも研究を続けていこうと思います。

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赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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