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民事紛争における司法書士の果たすべき役割その3

3 『司法書士の紛争処理機能』論による考察
 この指摘に対し、仁木論文では自ら、司法書士の紛争処理機構の理念につき、一時的にせよ、貸金業者に対する不当利得返還請求事件の大量突出によって司法書士が党派的な法役務を体験したことによって理念が変容するのではないか、との見解を述べている。すなわち、新たな理念の誕生が示唆されているのである。
一方、筆者は、簡裁訴訟代理関係業務の拡充によっても、従来の理念に変わりはないと考えている。つまり、少額民事紛争の代理人として紛争に関与することも、裁判書類作成によって本人訴訟を支援することも、一元的に整理し、理解することが可能であると考えているのである。なぜなら、簡裁訴訟代理関係業務も裁判書類作成関係業務も、紛争解決に至る手続を複雑とせずに、できるだけ低廉な費用で解決するという意味では、いずれも同じだからだ。また、いずれの手続においても、紛争当事者が、よりダイレクトに紛争と関わり続けることになり、その結果、紛争当事者をエンパワーするという効果も生じることになると思うのだ。
 しかしながら、仁木論文の見解は首肯できる部分も多く、確かに、簡裁訴訟代理関係業務の拡充によって、司法書士制度は生まれ変わったと評価する向きがないわけでもない。まさに司法書士の紛争処理機関としての機能の理念に対する理解は過度期を迎えているのだろうと思う。
そのような状況と寄稿の趣旨を踏まえ、本稿では、仁木論文の見解のとおり、近時の司法書士の紛争処理機関としての機能に新たな理念が生じたという前提で論考を進めていきたい。
 この新たな理念という視点から司法書士の紛争処理機関としての機能を考える際、仁木論文では、理念と実践とを対比させ、新たな理念に対して、果たして業務の実践が適合しているのか、というアプローチで検討する方法が提案されている。
 このように理念と実践との対比による検討は、法律実務家の機能を考えるには極めて有用であるように思う。実践の伴わない理念は、法律実務家には机上の理念でしかありえないからだ。
さて、業務の実践について、その件数に着目すると、今や、裁判書類作成関係業務よりも簡裁訴訟代理関係業務として民事紛争に係わるケースの方が多いのではないか、というのが筆者の周囲を見渡した実感である。このような実感からは、新たな理念に対する実績は数値の上では充分であると言い得ることもできるのだが、果たして、その質は充分なのだろうか。
 この点に関し、仁木論文では、司法書士の紛争処理機関では本人支援の機能は実践されているとみることができるものの、多様な紛争の相談を受けている状況にはないと実践の質の欠乏を鋭く指摘し、このような現状を受け、「今後、拡充された司法書士の法的能力(筆者注:簡裁訴訟代理関係業務)が機能するようになることが望まれる」との将来の課題が提言されているところである。
 確かに簡裁訴訟代理関係業務の多くは前述のとおり貸金業者に対する不当利得返還請求事件に極端に偏っていると思われ、質の欠乏は否定できない。
 しかしながら、不動産に関するトラブルや労働問題に関するトラブルなど、徐々にではあるが、司法書士が代理人となって民事紛争に関与するケースも増えつつある。わたしたち司法書士は、仁木論文の指摘を胸に刻み込み、新たな理念に対応する幅の広い実践活動を行っていくためにも、一般民事事件の受託範囲の拡充に努めていかなければならないだろう。
 ところで、司法書士の紛争処理機能の理念と実践を適合させるために、仁木論文では、次の4つの課題が提示されている。
① 司法書士が受けるトラブル相談の総数と多様性の貧困さを改善しなければならない。
② 司法書士が提供する役務内容の機能充実を図らなければならない。
③ 近年、司法書士の地方開業が低下しつつある傾向を防止しなければならない。同時に、地方で既に開業している司法書士への簡裁訴訟代理関係業務受託の促進をしなければならない。
④ 簡裁訴訟代理関係業務の労力と報酬の対価が対等となるようにしていかなければならない。
 なお、この4つの課題をクリアする過程では、司法書士にとって新たな倫理の問題が惹起するおそれもあるので、倫理への対処も重要になると付言されている。

 次項では、これら4つの課題への方策を検討することによって、民事紛争における司法書士の果たすべき役割について考えてみたい。
 

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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