民事紛争における司法書士の果たすべき役割その2

2 民事紛争における司法書士の役割の変遷
 筆者は、司法書士としての経歴が10年にも満たない若輩者であるため、本来、司法書士の役割の変遷を語る資格はない。とはいうものの、本稿では簡裁訴訟代理関係業務の前後における司法書士の役割は、どうしても整理する必要があるので、私見とお断りさせていただいた上で述べることにする。
 従来から司法書士は、登記を主な業務とすることが多く、不動産登記や商業登記等に関する登記申請代理及びそれらに付随する書類作成等を通じ、権利関係の確定に寄与してきた。登記が迅速・円滑になされることによって、紛争を未然に防いできたと評価することができ、司法書士は長らく予防司法の役割を担ってきたといえるだろう。
 登記を主たる業務とする司法書士は今でも大半であると思われるが、仁木論文は、その要因が登記に偏った試験制度と特認制度にあると分析する。すなわち、司法書士試験合格者は登記に関する専門的知見が突出しており、法務局からの人材登用である特認司法書士においても自ずと、それまでの経験を生かす傾向が強く、いずれのルートで司法書士になっても、登記に比重を置くことは当然である、という分析である。
 この分析を逆から考えると、仁木論文では、今後、登記以外の業務を主たる業務とする司法書士の増加を図るのであれば、試験制度改革も必要になることが示唆されているといえよう。
 さて、司法書士は登記とともに、裁判書類作成という業務も担っていた。仁木論文でも、この業務に着目し、弁護士不在地域にも存在する司法書士が弁護士の機能を代替して法的役務を提供していたのではないかとの検討がなされている。
 しかしながら、弁護士不在地域でのみ司法書士が民事紛争に関する法的役務を提供していたのかというと、必ずしもそうではない。仁木論文で引用されたデータによると、逆に、弁護士集中地域で司法書士を利用する相談者も多いという結果も紹介されている。
 このことから、司法書士の裁判書類作成関係業務は、弁護士機能の代替ではないと理解することもできよう。
 現に仁木論文では、司法書士の民事紛争に関する機能を、弁護士の包括的訴訟代理によらなくても司法書士による裁判書類作成関係業務で目的達成ができる場合には紛争当事者は事前に司法書士を選択する傾向があるという側面(紛争解決により得られる利得と紛争解決に要する手続(尋問等を要するか)・費用とを対比させて選択するのだろう)と、司法書士の行う業務が書類作成関係業務に制約されているからこそ、紛争当事者の話をよく聴き、紛争の概要を整理して紛争当事者に伝えることにより、紛争当事者をエンパワーするという側面の2つの側面から生じる機能に関する分析が展開されている。
 これらの機能により、司法書士は紛争処理機能としての独自性を有することになり、その独自性の中から本人訴訟支援という理念が形成されたといえよう。
 その後、平成14年司法書士法改正により、司法書士が簡裁訴訟代理関係業務を行うようになると、司法書士は、その代理権の範囲内で代理人として民事紛争に関与するようになり、前述の登記業務における予防司法的役割、裁判書類作成関係業務における紛争当事者をエンパワーする役割、手続の複雑でない紛争をできるだけ低コストで解決したいというニーズに応える役割のほか、少額民事紛争の専門家という役割をも合わせ持つことになった。これにより、こと顕在化した民事紛争に関して言えば、「本人訴訟支援」と「代理」という、一見、両立しない関与の在り方が併存することになったと言うこともできる。
 仁木論文では、このような状況を経て、現在、「司法書士の紛争処理の理念モデルは、「本人支援」をどのようなかたちで維持することができるのか、それとも大幅な組み換えを検討せざるを得ないのか」と、司法書士の紛争処理機関の機能の理念について抜本的修正の検討が求められているとの指摘がなされている。

コメント

司法書士の簡裁訴訟代理

  その1、その2を、いつにも増して興味深く拝見させていただきました。
「月報司法書士」は単位会の会館玄関にあるマガジンラックに備え付けてある様子を見たことがあります。
お借りして拝見させていただきます。こちらの原稿の掲載号が楽しみです。
 赤松先生と関川先生がブログで薦めてくださっておりました「現代日本の紛争処理と民事司法②トラブル経験と相談行動」が手元に参りました。仁木先生の論文を拝見させていただきます。有難うございました。

ありがとうございます。

 1月13日に最終部分の原稿をアップしますので、司法書士以外の方からの読後の感想も是非いただきたいです。

 ところで、月報司法書士が送付されていいないんですね。
 消費生活センターにも送付するよう事務局に依頼しておきます。今後とも、よろしくお願いいたします。


 

月報司法書士の送付先

 事務局に確認しましたところ、月報司法書士は、全国の消費生活センターに既に送付しておりました。

 とはいうものの支所、出張所、分室などには、送付されておりませんので、送付先をご連絡いただければ、あらためて送付依頼をいたします。

消費生活センター

 送付先の件有難うございます。改めてお知らせ申し上げます。
おそらく、国民生活センターでの扱いが、週4日以上開設を「センター」とするため、全国規模での名簿等には、それ以外は上がってこないのだと思うのです。
 ご質問です。いつ頃から「月報司法書士」を全国の消費生活センターにご送付なさっているのでしょうか。

おそらく

少なくとも数年前より送付していると思います。

他にも、ここは配布した方がよいと思われるところがあれば、いつでもご意見ください。
委員会に諮るようにしますので。


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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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