借主のための賃貸トラブル110番

全国青年司法書士協議会では、今年度、全国一斉で「借主のための賃貸トラブル110番」の開催の呼びかけをした。当該110番開催を担当する簡裁事件受任推進委員会委員として、この度、報告書をまとめたので、参考までに掲載する。



第1、開催会と相談件数
 平成20年10月を開催月間として、「借主のための賃貸トラブル110番」の実施を呼びかけたところ、10月より12月にかけて、次のとおり15会が応じてくださり、計156件の相談が寄せられた。(相談結果の回答があった単位会のみ)
 【開催会(北から)】
  札幌、青森、千葉、東京、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、岡山、広島、徳島、LAしまね、熊本、宮崎

第2、開催の目的
1、司法書士の受任事件偏在の是正対策としての110番
 平成19年までの司法統計をみると、司法書士の被告事件関与率の低さが顕著であり、かつ、この傾向は当初より指摘され続けてきたが、未だ改善の見込みが薄い部分である。そのため、組織的に被告事件関与率向上のための対策を講じることが必要であると考え、被告事件も多く含まれると想定される本110番の開催を企画したものである。
 また、次に述べるように一般民事事件における被告代理人は重要である。その意味においても、被告事件対策が求められるといえる。

2、被告事件対策としての110番
 (1)原告代理人の限界
 原告代理人の交渉により、被告の生活に配慮した解決も可能ではあるが、原告代理人は、被告からみれば「敵」であり、本来、信頼関係が成立しにくい構造にあるといえ、その関与の在り方には自ずと限界がある。
 たとえば、現実には、交渉の余地のない相手方も多く、原告代理人が交渉のテーブルを設定すること自体が困難となる場合も少なくない。
 また、交渉のテーブルが設定できたとしても、原告代理人が被告に不利な内容を受け入れるよう説得するためには高度の信頼関係が必要となるが、原告代理人と被告との間では、その信頼関係を築くことが困難となる場合も多い。原告代理人の行う説得は、原告の利益を中心に交渉を試みることになるので、被告に交渉に応じるメリットがないと判断されると容易に決裂してしまうからである。 
 一方、原告代理人が訴訟による解決をするほかなく、判決になったとしたら、それまでに信頼関係が成立していない被告が自発的な履行をすることは期待できず、強制執行をすることになる場合も多い。その結果、被告の経済生活のみならず、生活基盤そのものを破壊してしまうことも少なくない。
  
(2)被告代理人の重要性
 前述の原告代理人の限界は、被告代理人が関与することによって、そのほとんどが解決する。
たとえば、被告代理人がつくことによって、少なくとも代理人同士で交渉のテーブルが設定されるし、原被告の代理人双方がお互いの利益を考慮した交渉内容を検討することによって、被告が交渉に応じる見込みも高まると思われる。
 また、仮に交渉が決裂し、判決になってしまったとしても、被告代理人が説得することによって、強制執行を回避することができる場合がある。被告は、原告代理人の説得には応じなくとも、自らが委任した代理人であれば、それまでに成立した信頼関係に基づいて説得に応じることがあるからである。

3、貧困対策としての110番
 近時、「貧困」が社会の病理現象として問題視されている。
 これまで司法書士は多重債務問題を中心に、貧困問題に取り組んできたが、多重債務を解決するだけでは貧困の問題は解決しないということに多くの司法書士等が気づきはじめ、貧困問題に対する取り組みは広がりと深まりを見せつつあるという現状である。
社会全体においても、多重債務者や生活保護受給者以外の貧困層も、「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」等と名付けられることによって、徐々に顕在化されており、そのための対策が講じられつつあるところである。
 しかしながら、ネットカフェ難民やホームレスのような住居喪失から生じる問題については事後的な対策を講じるばかりでなく、この問題の本質的解決のためには、住居喪失のダメージを最小限に抑えるという予防的な対策も行っていくべきであると考えられる。
ところが、家賃滞納者においては、住居喪失という究極の生活基盤破壊の局面で生じている問題であるにもかかわらず、「家賃を支払わない方が悪い」「賃料収入のみで生計をたてている貸主の立場はどうなる」等といった意見も散見されているように、実務上、家賃滞納者の保護が不十分であると感じられる。
 このような状況の中、建物明渡請求事件は、ほとんどの司法書士にとって、なじみやすい紛争類型であるといえるし、訴額も簡裁の事物管轄におさまることが多い。したがって、貧困問題に幅広く対処するためにも、わたしたち司法書士が、この建物明渡請求事件のように簡裁代理権の範囲内でできることから、まず、取組みを始めていくことを提案したい。その取組みの一つが本110番である。

 4、賃貸借契約における不当条項監視のための110番
 賃貸借契約は、貸主が相対的に情報力・交渉力をもち、借主に対して、貸主に有利な契約を要求するケースが多い。借主は、契約締結の際、そのアパート等を「借りるか、借りないか」という選択肢しか有せず、契約内容を交渉するという力は持ち合わせないのが通常である。
 とくに、最近は「ゼロゼロ物件」等に見られるように、敷金・礼金を取らない代わりに家賃を1日でも滞納すると、翌日には鍵を入居者に無断で取り換える等の不法行為を容認するような不当条項すら賃貸借契約に組み入れられている事例もある。
 わたしたち司法書士には、このような不当条項を監視していく責務があるのは論を待たない。その実現のためにも本110番を実施する意義はある。

5、「借主のための賃貸トラブル110番」開催の目的
 今まで述べたように、「借主のための賃貸トラブル110番」開催の目的は次の3点である。
① 生活困窮者の住居喪失の過程に司法書士が生活困窮者側の立場に立って関与することにより、住居喪失のダメージを最小限におさえる。
               ⇔ 家賃を踏み倒すことが目的ではない。
② 賃貸借契約における不当条項を監視する。
③ 被告事件に目を向けることにより、被告事件関与率を増加させ、ひいては司法書士の一般民事事件の関与率を増加させる。

コメント

祝!ブログ開設

ブログ開設おめでとうございます。
(もしかして初コメントかな?)
私のブログと違って、さすが格調高いですね~。
勉強になります。
これからも訪問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

Re: 祝!ブログ開設

初コメントありがとうございます。
3日坊主にはならないようにします。
これからも、お暇なとき、のぞいてください。
では、また。

祝祝ブログ開設っ!

星降るブログ素敵ですね★
今後しばしば寄らせていただきます。

では、さるまた失敬。

Re: 祝祝ブログ開設っ!

摩雲天さん、ご訪問ありがとうございます。

摩雲天さんは、いつも「さるまた」を着ているのですか?
(嘘です・・・。このネタを知っているとは、摩雲天さんは、きっと三谷ファンなんですね)

ぜひまたお立ち寄り下さい。

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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