日司連「司法書士民事法律扶助業務開始10周年記念事業」報告

 平成22年10月26日(火)12時30分から17時まで、日司連において、「司法書士民事法律扶助業務開始10周年記念事業」が開催されたので、相談事業部長として参加した。この事業は、司法書士が民事法律扶助業務を開始して10年が経過するので、それを記念して行われたものである。全国の各単位会から民事法律扶助業務担当者と司法書士の法テラス副所長ら総勢100名以上が参加した。
 記念事業は、第1部として「司法書士会法テラス担当者意見交換会」と「法テラス司法書士副所長会議」が別に開催され、以降は合同で第2部「座談会」、第3部「セレモニー」が開催された。
 以下、概要を報告する。

【司法書士法テラス担当者意見交換会】
(1)民事法律扶助業務(審査体制等を含む)について
 契約司法書士の受託予定者数契約率は、平成18年度18.8%、平成19年度21.1%、平成20年度24.2%、平成21年度25.7%と増加傾向にあり、書類作成援助も平成18年度3877件、平成19年度4197件、平成20年度5101件、平成21年度6769件と、こちらも増加傾向にある。生活保護受給者の破産予納金決定数は、平成22年度(10月12日現在)7525件のうち、書類作成援助は1002件である。なお、数値は公式データではない点に留意されたいとのことである。
 以降、日本司法支援センター事務局長らと各単位会担当者等との間で、各号に関する質疑応答がなされ、日本司法支援センターから次のような回答若しくは要望がなされた。
  ①「裁判外紛争解決手続への法律扶助の援助について」
 現在は、裁判外の交渉事件として対応しているところである。今後、対象となるADR機関などを検討していきたい。
  ②「自死対策相談としての出張相談への対応について」
 出張相談を積極的に活用していただきたい。出張相談については、旅費の支給規程もあるので参考にして欲しい。ただし、事前に出張相談の申込が必要である点には留意。
  ③「民事法律扶助審査会における司法書士の権限について」
 審査員は専門資格によって権限を分けていないので、司法書士が審査員となる場合であっても、審査の対象が代理権限の範囲に限定されることはない。
  ④「代理援助(法律相談援助)の簡裁事物管轄における、相談票の“一社あたりの経済利益”の考え方について」
 コールセンターでは、便宜、総額で振り分けているが、扶助の申込の際においては、便宜、一社ごとの債務額もしくは過払い額で判断する運用を行っているところである。
  ⑤「指定相談場所の捉え方及び広報活動について」
 司法書士総合相談センターのうち指定相談場所となっている所は地方事務所との連携を図って広報活動等も充実させていただきたい。
  ⑥「センター相談における司法書士の活用について」
 司法書士のセンター相談も司法書士の専門的知見や代理権の特色に配慮した上で積極的に活用を検討していきたい。簡裁の答弁書に司法書士のセンター相談などの案内もしていくとよいのではないか。

(2)情報提供業務について
  ①「地方事務所における司法書士窓口対応専門職員による情報提供について」
 日司連より、司法書士窓口対応専門職員の配置状況に関する報告がなされた。司法書士窓口対応専門職員に対する助成金も行っているところである。
  ②「地方事務所における情報提供業務対応席数の取扱について」
 日本司法支援センターから、予算の都合上、平成23年度より窓口対応専門職員の席数を10席ほど減らさなければならないとの報告があった。
  ③「窓口対応専門職員の採用及び今後の司法書士の活用について」
 日本司法支援センターから、司法書士の専門的知見を活かす形で、今後も司法書士には窓口対応専門職員として活躍していただきたいと期待しているとの報告がなされた。
 なお、最後に、日本司法支援センターでは、現在、資力要件を問わない初期相談の創設を検討しているので、これが創設されると膨大な相談が法テラスに寄せられることが予想されるので、司法書士の活躍に期待している旨の報告がなされた。

【座談会】
 「司法書士の法的サービス提供と民事法律扶助の活用と新たな可能性にむけて」をテーマに、コーディネーターを日司連法テラス対応委員会委員長の和田博恭氏、パネラーを日本司法支援センター本部事業企画本部長の藤井範弘氏、同本部事務局長の田中晴雄氏、同本部第一事業部長の佐川孝志氏、日司連会長の細田長司氏、日司連常任理事の山本一宏氏が務め、司法書士と民事法律扶助の関わり方について、活発な意見交換がなされた。とくに、司法書士の法律扶助の利用については、関与する事件の偏り、地域ごとの偏りが顕著であるので、今後の是正課題である旨が確認された。
 一方、司法書士が積極的に法テラスに関わっていくためには、司法書士の総合相談センターが指定相談場所になることも検討されなければならないが、無料の総合相談センターでは困難となるケースも少なくない。日司連では、これらケースに対応できるよう日本司法支援センターとの協議を重ねていくとのことである。

【セレモニー】
(1)法務省大臣官房司法法制部長の後藤博氏より、「民事法律扶助の一翼を担う司法書士への期待」と題して講話がなされた。不動産登記、商業登記に関する業務はもちろんのこと、憲法に保障された裁判を受ける権利を実現するためにも、司法書士には法律扶助の積極的関与を期待したい。社会の変化に応じて様々な新しい類型の事件が生じるので、継続的な研鑽を積んでいくことも求められる。最後に、法制定時の意気込みを忘れることなく、今後も民事法律扶助の一翼を担っていただきたいと述べられた。

(2)日本司法支援センター理事長の寺井一弘氏より、「民事法律扶助の課題と司法書士への期待」と題して講話がなされた。司法書士には代理援助とともに書類作成援助の活用を期待している。とくに、書類作成援助は、司法書士の方の利用を念頭において設置した制度であるので、積極的に利用していただきたい、とのことであった。最後に、法テラスにおいて、初回、法律相談の無料化を検討していきたいと述べられた。

(3)日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏より、「多重債務問題、貧困問題に対する取り組みと弁護士、司法書士の協働」と題して講話がなされた。平成18年の貸金業法改正の際にも、弁護士、司法書士は力をあわせて法改正運動を行ってきた。これら法改正運動は国民運動となって画期的な結論を産み出すことができたが、法改正運動を国民運動にまで高めるためには弁護士、司法書士などの専門職が協働したからにほかならない。これからは貧困問題に対しても同様に協働していかなければならないだろうと述べられた。

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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