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全青司労働問題ロープレ台本「正社員になったは、良いものの…」

 全青司東京全国研修の2日目に開催した司法アクセス・ADR推進委員会担当の分科会の中で行なったロープレの評判がよいようだ。主演の佐藤司法書士の演技力の賜であるのだが、この台本の内容には労働者派遣をはじめとした非正規の問題が散りばめられており、また、26業務の雇用申込義務の削除も検討されている労働者派遣法の改正についても論点が及んでいる。そのため、ト書きの状態でご覧いただいても、非正規労働の問題点を掴むことができると思われるので参考までに掲示する。

 「正社員になったは、良いものの…」


(導入)武田司法書士事務所に佐藤さんが相談に訪れるという設定
(武田さんが待機しているところに、佐藤さんが訪問する。)
佐藤「武田先生、聞いてください!会社をクビになりそうなんです。」
武田「まぁまぁ。落ち着いて。一体、どうされたんですか?」
佐藤「会社の上司が、契約が切れるから、もう来なくてもいいって、突然言ってきたんです!」
武田「あぁ、佐藤さんは、契約社員だったんですね。」
佐藤「いえ。元は派遣社員でした。」
武田「というと派遣元から、次の派遣先を紹介されなくなったってことですか?」
佐藤「そういうわけではありません。」
武田「ちょっと状況がわからないんですが…」
佐藤「分かりました。今から、再現してみますから、ちょっと見ててください。」
(武田さん退場)

       *

佐藤「(独白)私は、派遣社員でした。掛川人材スタッフに登録して、3年前から梅垣興業に派遣されました。仕事は庶務。正確に言うと、パソコンへのデータ入力のほかは、コピーとりやお茶くみ、そんな仕事なのに、派遣元
からもらった書類には、ファイリング(26業務)って書いてあるんです。それでも、私は、このデータ入力の仕事が好きでしたし、職場の仲間ともうまくやっていましたので、この仕事を長く続けたいと思っていました。ところが、私が働き始めて3年が過ぎたころ、会社の専務がこう言ってきたのです…」

       *

(梅垣さん登場)
梅垣「佐藤さん、いつもがんばっているねぇ。」
佐藤「あ、梅垣専務。お疲れ様です。」
梅垣「今少し時間大丈夫かね?」
佐藤「はい。少しなら。」
梅垣「君も、この職場に来て3年もたつし、そろそろ、どうだね。ここいらで気分一新してみては?」
佐藤「梅垣専務、それは、どういう意味でしょう?」
梅垣「いやぁ。職場の花も毎日変えるように、職場の女の子も入れ替わりが大事じゃないかと思ってね。佐藤さんほどのスキルがあれば、他の派遣先もすぐ紹介してもらえるだろうし。」
佐藤「え?(少し間をおいて)つまり、私の派遣契約を切る、ということです
か?」
梅垣「いや、けっしてそういうわけではないんだよ。けっして一方的に、というわけでは…。お互いの合意の上で。円満に、といことを望んでいるものだから、その…。」
佐藤「(ため息をついて)専務のおっしゃりたいことは、わかりました。私も十分考えた上で、お返事させてもらいます。」
梅垣「佐藤さん、ものわかりが良くて、私も助かるよ。今度、どうだい?仕事帰りに一杯。」
佐藤「それは遠慮します。(きっぱり)」
梅垣「まぁ、そう言わずに、どうだい…」
佐藤「しつこいですよ!(怒)」
(梅垣さん退場)

       *

佐藤「(独白)それから、私は、労働者派遣について調べました。派遣社員として働いて3年以上経っていましたが、私は労働者派遣の仕組みについて細かいことは、ほとんど知らなかったことに気づきました。それまでは、わざわざ勉強するのが億劫なほど労働者派遣法という法律が複雑に思えたのです。私のやっているファイリングという仕事が労働者派遣法では26業務に該当して、派遣可能期間がない、ということも初めて知りました。
それから、労働者派遣法40条の5という条文で、梅垣興業が、3年以上働いている私と同一の業務に新しく労働者を雇おうとする場合には、まず私に直接雇用の申入れをしなければならない、という決まりが定められていることも知りました。それなのに…。求人雑誌をみたら、梅垣興業は、既に私の部署の求人を出していたんです!それも「新たな職場の花を募集!」なんてキャッチコピーまでつけて!!頭に来たので、すぐに派遣元の掛川人材スタッフに苦情を言いに行きました。そのときの様子はこんな感じです。」

       *

(掛川さん登場)
掛川「佐藤さん、お久しぶり。梅垣興業でがんばっているようで何よりですよ。」
佐藤「今日は、そのことで相談があって参りました。」
掛川「と、言うと?」
佐藤「梅垣興業から、若い正社員を雇うから、もう来なくてもいいと言われました。でも、これって、おかしいですよね?労働者派遣法40条の5によると、私を正社員にしないとならないんですよね?」
掛川「(ぎくっとして)よく勉強してますね。たしかに法律ではそうなんですが…。うーん。悪いことは言いません。他に、よい派遣先をこちらでも探しますから、ここは受け入れてはどうですか。」
佐藤「嫌です。私は、あの職場が気に入っているんです。あの専務以外。」
掛川「そうですかぁ。そこまでおっしゃるんなら、最近は、法律専門家も、ものすごくうるさいし、トラブルが大きくなっても困りますから、うちとしましても、一応、梅垣興業さんに、その旨、伝えるだけは伝えますが…。それが必ずしも良い結果になるとは限りませんよ。」
佐藤「私、がんばりますから。お願いします。」
(掛川さん退場)

       *

佐藤「(独白)その後、派遣元の掛川人材スタッフさんからの申し入れもあり、私もこのままでは法律専門家の労働相談を受ける準備もあるということをやんわりと伝えていたこともあったせいか、梅垣興業は、新入社員の募集を中止して、私を正社員として採用してくれることになりました。私は、法律は、やっぱり弱い者の味方なんだって、とっても嬉しく思いました。
ところが…。派遣社員の間は、派遣元に中抜きされるので、給料が低いのはわかります。だけど、梅垣興業の正社員になっても、給料は派遣社員のときと変わらないって言われたんです。しかも、会社の皆は、社員食堂を社員割引の値段で利用できているのに、元が派遣社員だった私は、正社員になっても、社員割引の適用外だともいわれました。それだけではありません。何よりも、正社員として雇うけれども、3か月だけだって、あらかじめ予告されたんです。」

       *

(武田さん登場)
武田「それで、私の事務所に相談にいらした、というわけですね。」
佐藤「そうなんです。やっとご理解いただけました?」
武田「ええ。今時こんな会社もあるんですね。この問題は、とても悩ましい問題で、現在も検討されている労働者派遣法の改正論点としても、非常に大きな問題として取り上げられています。」
佐藤「正社員になって、2か月経ちました。昨日、梅垣専務からは「後1か月だからね」と念押しされました。嫌な予感がして、帰りにコンビニで求人雑誌をみたら、「職場の花再募集!」なんて、キャッチコピーで、また新入社員を募集していたんです。しかも、採用担当があの梅垣専務!私、ものすごく悔しいです。」
武田「雇い止めの主張ができればいいんですけどねぇ」
佐藤「じゃあ、それでいってください」
武田「でも、それも今回は難しいかも…」
佐藤「そんなぁ」
武田「では、佐藤さんをめぐる派遣労働者、契約社員について、現実に、どのような問題があるのか、また、法改正では、どのような点に留意されるべきなのか、後半のパネルで、パネラーの皆さんからも、ご意見をいただくことにしましょう。」

       *

佐藤「待ってください。最後に、これだけは言わせてください。(独白)私は、最初は派遣社員として働いていました。好きで派遣社員をしていたわけではありません。不景気で正社員で採用してくれるところが、とても少なかったのです。それでも、良い仕事をしていれば、きっと認めてもらえる、と信じてがんばってきました。私のように派遣労働者から正社員になりたいと願って、がんばっている労働者のためにも、労働者派遣法が、本当の意味で、労働者のための法律になるよう、司法書士の皆さんにも、精一杯の努力をしてもらいたいと願ってやみません。皆さん、この分科会を機に、派遣労働者がもっとスムーズにしかも安定した正社員になれるよう、労働者のための労働者派遣法改正をつくるために、がんばってください。」



 

コメント

No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

ご来訪ありがとうございます。

そう言っていただけると脚本を書いたかいがあります。

これからも、労働問題に関する記事を充実させていきますね!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Nさん、いつも閲覧ありがとうございます。

Nさん、いつも閲覧ありがとうございます。

司法書士受験生の方々もモチベーションの維持につながるような記事を、これからも書き続けますね!

相談技法の向上などのために、ロープレも実際によくやりますよ。
研修だけでなく、少人数でやるときもあります。

ところで、現在、当事務所ではスタッフの募集はしておりません。
ご希望に添えず、誠に申し訳ございません。

これからも、よろしくお願いたします。

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プロフィール

赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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