司法書士としての生き方 その9

 司法書士になるまでの回想記である。
 今回は、番外編ともいえるが、私が目指した資格が、そもそも、なぜ「司法書士」だったのか、というところを振り返ってみたい。司法書士を目指すときには、類似する資格として、司法試験が比較対象となることが多かろう。私の場合も例外ではなかった。
 それでも、次の理由により、司法書士試験を選択した。
1 試験問題
 司法試験の短答式は知識を問うだけでなく、パズルのように論理的思考を駆使して解答を導き出す問題が多いように見受けられた。これに比べ、司法書士試験は問われる知識は細かいもののパズルのような問題は少なかったので、純粋に知識を詰め込めば合格する試験のように思われた。高校時代、世界史のように年号と出来事を暗記することが得意だったので、司法書士試験の問題の方が私に向いているように思われたのである。
 ⇔ これは、ある意味誤解もあった。現に司法書士試験合格の直前であれば、司法試験の民法の短答式など同一出題範囲の問題を解くことができた。(司法試験には、短答式合格後、論文という、とてつもなく高いハードルがあるが…。)しかし、このような誤解がなければ最初の一歩を踏み出すことはなかっただろう。法律の初学者である私でも、一生懸命やれば合格するかも、と良い意味で誤解させてくれた司法書士試験は偉大である。

2 業務範囲
 司法書士も債務整理事件などを行い、弁護士に似た仕事をしている、という知識は前職の関係で知っていたものの、それでも具体的に何をする資格なのか、よくわからなかった。司法書士には、けっして悪い意味ではなく、「中途半端さ」や「怪しさ」という印象を持っていた。けっして、それまで順調な人生でなかった私には、この「中途半端さ」や「怪しさ」がとても魅力的に感じられた。
 ⇔ これも誤解だった。実務につくまで分からなかったが、司法書士には登記業務や裁判書類作成関係業務という確固たる本来業務があり、その独自性を有する専門職であった。しかし、一般の人は、今でも、司法書士という資格を知っていても、当時の私程度の認識しか持っていないことが多いらしい。つまり、多くは、司法書士という名前は聞いたことがあっても、何をやっているのか、よく分からない、というイメージのようだ。

3 合格後
 当時、司法書士試験は実務的であり、合格後短期間で独立もできる、と資格の本には、よく書かれていた。20代後半から資格試験に挑む立場としては「即独」は非常に魅力的に感じられた。
 ⇔ これは当時は誤解ではなかったが、今となっては司法試験に挑戦していても、「即独」もあり得るようであり、その是非の評価はさておき、司法書士試験独自の魅力という意味では薄れているのかもしれない。

 このように誤解もあったものの、以上の3点の理由により、漠然と目標にしていた司法書士試験合格のための準備を本格的に始めることとしたのである。

 他には、司法書士は「双方代理の登記業務がメインで平和的だ」などとの噂もあったが、それは魅力には思えなかった。法律が絡む問題で、平和的というイメージが湧かなかったからかもしれない。それまでの社会人経験で法律の出番となるのは紛争が顕在化したときであり、紛争の中に飛び込んでいくのが法律専門職であるという印象を抱いていたのだ。(これは予防司法という観点が完全に抜け落ちていた私の誤解であったと合格後に気づいた。)

 このように誤解だらけの理由をさらけ出すのも恥ずかしいものであるが、要は、多少誤解があったとしても、資格試験に取り組む「動機づけ」さえ、しっかりしていれば合格できる、ということを伝えたいのである。

             *

 おそらく、司法書士試験がなく、司法試験だけであったら、(私の思い込みによるところもあると思うが)そのハードルの高さから、資格試験にチャレンジすることなく、転職を繰り返しながら、会社員を続けていたと思う。
 司法書士試験には、それまで法律の勉強をしてこなくとも、もしかしたらがんばれば受かるのではないか、と思わせる魅力がある。そして、その合格に至る過程で私は多くのものを得た。
 だから、司法書士試験や司法書士試験を包含する司法書士制度を、これからも大事にしていきたいと思っている。

 さて、「司法書士としての生き方」本論は、このような思いこみにより資格試験に本腰を入れたところからである。
 その内容は、また次の機会に。






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プロフィール

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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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