スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

労働審判

 『労働裁判は時間がかかる』
 以前から言われていたこのような意見は労働審判制度が活用される今では、半分妥当であるし、半分妥当でないといえる。
従前は、労働紛争を民事上直接規律する法律がないため、主に民法を中心に、不足する部分は裁判例の積み重ねによりその法的解決が試みられてきた。それら紛争の争点は規範的要件であることが多いため、立証すべき事実もおのずと膨大にならざるを得なかった。そのため、冒頭のような意見が多かったのである。
 さて、周知のとおり労働審判制度は、まず調停による解決を試み、調停による解決に至らない場合には労働審判を行うという手続である。特色は、①地方裁判所が管轄になるという点、②労働審判官(裁判官)と労働審判員(一定の有識者)からなる労働審判委員会が手続を行うという点、③原則として3回以内の期日において審理が終結されるという点などが挙げられる。
 この労働審判制度は期日に制限があるため、審理期間が相当短縮される。そのため、労働審判制度を活用するのであれば、前述の『労働裁判は時間がかかる』という意見はもはや当てはまらないのではないかとも考えられる。
 ところが、労働審判制度は、原則として解決案に強制力がないものとして制度設計されている。すなわち、各期日における調停案に応じるか否かは、当事者の選択に委ねられているし、調停による解決に至らず、審理が終結し、労働審判が行われても、これに不服のある当事者は異議を申し立てることによって、その効力はいとも簡単に失われてしまうのである。
そこで、労働審判制度では、労働審判の実効力を高めるために、異議の申し立てによって、労働審判手続の申立ての時に訴えの提起があったものとみなされ、自動的に訴訟係属すると定められている。そこで、私たちには、労働審判制度を有効に機能させるために、事案に応じて、「異議を出すと時間も費用もかかる訴訟に自動的に移行してしまう。そうすると、判決が多少有利なものに変更されたとしても、費用対効果に照らして事実上不利益となることが多い。したがって、多少の不満はあっても、労働審判に応じた方が得策となる場合もある」と、当事者に説明することが求められている。
 つまり、労働審判が実効力を持ち、有効に機能するためには、『時間も費用もかかる労働裁判』という悪玉が必要なのである。なお、異議による訴訟への自動移行は、労働審判からカウントすると事実上の4審制となってしまうという制度上の問題点も立法当初から懸念されているところであり、『時間も費用もかかる労働裁判』は悪玉といっても、必要悪ともいえ、制度的に求められるものでもある。
 『労働裁判は時間がかかる』という意見が今も半分は妥当するというのは、以上の理由による。

 司法書士は、労働審判をさらに活用し、個別労使紛争に関する実績を積んでいくことが望まれる。

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。