物損交通事故における保険代位

 本日は、物損交通事故において、車両保険を利用した場合の求償関係について検討する。
 なお、検討途中のものなので、下記のメモの内容の真実性については担保しない。考える材料として公開するものである。他の考え方などがあれば、ぜひご連絡いただきたい。

 A車(運転手兼所有者甲)とB車(運転手兼所有者乙)との間に生じた物損交通事故で、A車に100万円、B車に50万円の損害が生じたとする。
 信号のない交差点での出会い頭の衝突であり、左方がA車、修正要素は特にないため、過失割合は、基本どおりA車40:B車60である。
 この事故で生じた損害につき、A車の所有者である甲は自ら加入する車両保険(免責10万円)を利用して修理をした。なお、B車所有者の乙は任意保険に加入していない。
 甲は、保険会社から免責10万円を控除した90万円の修理代の支払いを受けた。
 さて、甲および保険会社は、今後、誰にいくら請求することができるか?
 なお、事故時のA車の時価は100万円を超えるものとする。

【平成22年3月31日までに保険契約が締結された場合】
 旧商法662条が適用される。
 最判S62.5.29に基づくと、保険会社は90万(支払った修理代)×60%(乙の過失割合)=54万を代位し、同額の請求権を乙に対して有する。
 甲は10万円(免責分)×60%(乙の過失割合)=6万の請求権を乙に対して有する。

 これに対し、乙から50万(B車の修理代)×40%(甲の過失割合)=20万の請求があると、これを、まず保険会社の54万円と相殺契約したとする。仮に、このような相殺契約をすると、最終的に、保険会社が乙に対して34万円の債権をもつことになり、甲の6万円の債権は残る。甲と保険会社のいずれの債権から先に充当するのかにより結論が異なる点にご留意いただきたい。
 なお、乙の20万円は不法行為に基づく損害賠償債権であるので、甲側から受動債権として当然に相殺することはできないため(民法509条)、相殺は双方の合意に基づく相殺契約となる。

【平成22年4月1日以降に保険契約が締結された場合】
 保険法25条が適用される。
 保険会社は、90万(支払った修理代)-40万(100万(A車の修理代)×40%(甲の過失割合))=50万円を代位し、同額の請求権を乙に対して有する。
 甲は、10万円(免責分)の請求権を乙に対して有する。

 これに対し、乙から50万(B車の修理代)×40%(甲の過失割合)=20万の請求があり、この20万円を保険会社の50万円と相殺契約したとする。仮に以上のような相殺契約をすると、保険会社が乙に対して30万円の債権をもつことになり、甲は10万円の債権を持つことになる。


 商法下では、甲は90万(保険で支払われた額)+6万円(免責分の過失割合控除額)=96万円の保護をもつにとどまるが、保険法下では90万円(保険で支払われた額)+10万円(免責分)=100万円の保護を受けることができる。

 また、保険実務では、車両保険が先行払いか否か等によって計算が異なることもあるので、ご留意いただきたい。

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