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司法書士業務における「囚人のジレンマ」

 「囚人のジレンマ」という命題がある。
 2人の当事者が、それぞれ、「協調」と「裏切り」という戦略の選択肢をもつ場合、
 一方が「裏切り」、もう一方が「協調」という戦略を選択したときが、裏切った当事者の利得がもっとも高い。このとき、「協調」の戦略を選択した当事者の利得は、すべての戦略の中でもっとも低い。
 双方が「協調」という戦略を選択すると、双方とも一定の利得はあるが、次善の利得となる。
 双方が「裏切り」という戦略を選択すると、双方ともさらに利得は低くなるが、一方が「裏切り」、自らが「協調」したときよりは、まだましな利得となる。
 このような事案のときに、2人の当事者が、それぞれ協議することができず、同時に意思表示を行うとしたら、どのような戦略を選択するのがよいか、という命題である。
 一方が裏切れば、裏切った方は、もっとも利得が高いのであるから、相手の出方を合理的に予想するときには、相手方が裏切るだろうとの予想をたてるほかない。
 相手方も同様に考えるだろうから、この場合、双方「裏切り」という戦略を選択することになる。
 その結果、次善の策である双方「協調」という戦略は選択されない。
 自己の利益を追求するあまり「裏切り」という戦略を選択すると、2当事者間の利得の総和が減少してしまうのである。(双方「協調」より、双方「裏切り」の方が利得の総和は少ない。)

 このような場合は、実は、司法書士業務においても散見される。
 同一の振り込め詐欺の被害者AとBが、それぞれ別の司法書士に相談した場合を想定してもらいたい。
 このとき口座には50万円ロックされていたが、Aが50万円、Bも50万円を同日に振り込んでいたと仮定しよう。
 被害者が「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(振り込め詐欺救済法)」に基づき、被害回復分配金請求をすれば、按分で被害額が分配される。手続が簡便であるので、おそらく、司法書士の費用も相談料だけで足りるだろう。これを「協調」戦略とする。
 一方、被害者が裁判を起こし、ロックされた口座を差し押さえた場合、「振り込め詐欺救済法」の手続は開始しないから(振り込め詐欺防止法4条2項)、執行裁判所で配当される。競合すれば按分配当であるし、競合していなければ全額の配当を受けることができる。ただし、司法書士の訴訟費用・差押え費用は、相当額要するだろう。これを「裏切り」戦略とする。
 この場合、一方「裏切り」・一方「協調」であれば、「裏切り」の戦略を選択した方が相当額の訴訟費用を要するものの全額回収を図ることができる。「協調」の戦略を選択した方は全く配当を得ることはできない。
 双方「協調」であれば、訴訟費用はかからず、按分で分配される。
 双方「裏切り」であれば、訴訟費用はかかるし、配当も按分されてしまう。
 この場合も、双方「協調」よりも、双方「裏切り」の方が、訴訟費用がかかる分、当事者の利得は少なくなる。にもかかわらず、相手方の「裏切り」をおそれ、自らも「裏切り」を選択することになってしまうのである。
 つまり、振り込め詐欺救済法に基づく被害救済と、強制執行に基づく被害救済を、ゲーム理論として分析すると、合理的な当事者は強制執行を選択するという結論になる。
 あくまで、経済的な合理人を前提とし、当事者間で情報交流がないという事案のモデルであるので、実際にこのようなことを考えて、訴訟行為の意思決定をすることは少ないかもしれないが。

 ただし、少なくともゲーム理論は、経済的に当事者の満足を得ていただくためには興味深い理論であり、わたしたち司法書士実務とも密接に影響しうるものといえよう。

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プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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