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東京大学大学院法学政治学研究科・法学部 連続講義(第6回)

債権法改正―『債権法改正の基本方針』を中心に
補論―債権法改正の必要性と今後の課題


 平成22年3月17日18時30分から20時まで、東京大学法文1号館25番教室において、連続講義第6回が開催された。テーマは「補論―債権法改正の必要性と今後の課題」である。講師は、河上正二教授である。100名以上の受講生が参加した。
当日の講義の概要は、次のとおりである。
なお、講義の聴き誤りや解釈の誤りがある可能性もあるので、ご了承をいただきたい。(文責 赤松 茂)

【いまなぜ「債権法改正」なのか?】
 債権法改正の理由として、①財産法部分の内容的陳腐化・空洞化、②市民のための民法の必要性とわかりやすい民法、③判例の規範化による法準則の透明化、④経済のグローバル化と国際的調和への対応、⑤日本の国際的プレゼンスのかかった国家戦略などが挙げられるが、河上氏によると、本当に、いま「抜本的改正」が必要であるか疑問であるとのことである。
 たとえば、上記理由①乃至⑤にそれぞれ対比した疑問を挙げると、①判例による解釈的修正や特別法による補正の総体がなされているともいえる、②法の解釈はどうしても専門的知識が必要であるので、わかりやすさの追求は、そもそもどこまでできるのか、③判例準則のうち、どこまでが基本ルールとして固定化にふさわしいといえるのか、④諸外国と事情の異なる日本で、国内法と渉外取引規範を一致させる必然性があるといえるのか、⑤国際的プレゼンスは民法によって高めなければならないものといえるのか、などがある。
 そのように考えると、全面改正にこだわることなく、本当に改正が必要な規定について慎重に検討をしていくことが重要であると思われるとのことであった。

【「基本方針」における改正試案の対象領域から】
 改正の対象領域は、債権編を中心に、必要に応じて総則に及ぶとされており、消費者契約法や商法の規定を一般法化して取込んだり、そのまま統合したりすることが検討されている。

【「基本方針」における改正試案の編成から】
 現民法の5編を維持し、かつ、パンデクテンの体系も維持している。

【「基本方針」における提案の具体的内容から】
 基本原則等や定義を明文化し、「特定物ドグマ」や原始的不能論を排斥することが提案されている。原始的不能論が排斥されたのは、帰責事由を廃止し、契約による引受概念を導入されたこととも関連がある。

【「基本方針」の考え方に対するいくつかの疑問】
 「消費者・事業者」概念の導入については、慎重に検討すべきである。「消費者=自然人」と考えるべきであって、特別な規律が必要となるのは「事業者」であり、むしろ導入が必要になるのは、情報・交渉力の格差に配慮した受け皿ではないか、とのことであった。
 また、消費者契約法の導入について議論されることが多いが、借地借家法・製造物責任法・利息制限法・区分所有権法・労働契約法・保険契約法・特商法・割販法等も入れるべきではないかとのことであった。

【放棄されようとしている諸概念は無用の長物か】
 放棄されようとしている諸概念を今一度、ほんとうに放棄すべきか、再確認をすべきであるとのことであった。放棄されようとしている概念は、たとえば、不能概念、帰責事由、危険負担、債務の本旨などがある。

【これからの課題】
 これからの民法(債権関係)改正にあたり、あまり「基本方針」に引きづられる必要はない。立法事実の確認と法改正に関するコストの評価、判例のリステイトメント等を検討し、実務界からの問題提起や批判がなされることを期待するとのことであった。

        *

 「基本方針」を、あえて批判的に検討するという視点からの講義は、とても新鮮であった。これからの民法(債権関係)改正の議論に向けても、わたしたち実務家はこのような批判的精神をもって意見提言に臨んでいくべきだろう。

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赤松 茂

Author:赤松 茂
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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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