民法改正の論点整理その26

(消費貸借契約と諾成契約)

 現民法では、消費貸借契約は要物契約とされているものの、実務上、抵当権設定等をした後、融資実行がなされるというケースも散見され、要物性が緩和されている現状にある。

 このような現状を踏まえ、債権法改正の基本方針では、消費貸借契約を諾成契約とすることが提案されている。

 しかしながら、消費貸借契約が諾成契約となると、理論上、契約成立から融資実行まで、一定期間のタイムラグが生じることが予想される。(たとえば、3月4日に消費貸借契約を締結したものの、融資実行は4月1日とする等。)そうすると、契約締結後の事情(たとえば、債務者の信用状況の悪化、債権者の経営の悪化等)により、融資の有無や融資条件を変更するといったことも想定される。
 今般の提案は、法を実務に合わせることが主たる目的であり、改正によって実務に影響を与えるべきではないと考えられる。
 そこで、債権法改正の基本方針では、契約締結後融資実行までの間、各当事者に「引渡前解除権」という権利を認めることが提案されている。これにより、融資が実行されるまでは、契約の拘束力は、ほとんど生じないことになる。ただし、書面による消費貸借契約には、この「引渡前解除権」が認められないという規定ぶりなので、実務上、この解除権が発動されることは、ほとんど期待できない。そのため、あまり意味の無い規定のような気もする。ところが、債権法改正の基本方針では、「乙案」として、借主が消費者である場合には、書面による消費貸借契約であっても「引渡前解除権」を認めるとし、さらに、この「引渡前解除権」を強行法規とする案が示されている。
 この乙案であれば、「引渡前解除権」は実効力のある規定となろう。
 そして、「引渡前解除権」が抑止力となり、消費貸借契約締結時から融資実行まで一定期間のタイムラグが生じるおそれも、ほとんどなくなるものと思われる。
 そのため、個人的は、「引渡前解除権」乙案を支持したい。


コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

カテゴリ