スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

東京大学大学院法学政治学研究科・法学部 連続講義 「債権法改正―『債権法改正の基本方針』を中心に」第4回受講報告

 平成22年3月1日午後6時30分から午後8時まで、東京大学において、標記講義が開催されたので、参加した。
 本日の講師は、東京大学教授の中田裕康氏であり、「契約その1-各種契約の編成、継続的契約」をテーマに講義は行われた。
 講義の概要は次のとおりである。(以下、主語は中田裕康氏であるが、講義内容の聴き誤りや解釈の誤りがある可能性があることをご了承願いたい。文責 赤松 茂)

Ⅰ 「基本方針」における各種の契約の編成
 1 概要
  本日は、客観的な概略とともに、私見についても述べていきたい。

 2 典型契約の編成
 (1)選択の準備
基本方針では16種類の典型契約を設けた。増えたのは、「ファイナンス・リース」、「役務提供」、「補則(第三者のためにする契約、継続的契約等)である。

 (2)選択の基準―民法典に各種の契約に関する規定を置く意義
 わが国では、50年以上前から数多くの契約類型が検討されていた。諸外国においても同様である。
 各種の契約に関する規定を置く意義は、①当事者が自由に契約を設計するための道具となりうる規律の提供、②標準的な規律の提供、の2つが考えられる。
 改正民法には、このような意義を持ちうる規定を置くべきである。
 また、規定の実現可能性、現存する典型契約との関係等についても配慮した。
 改正民法の典型契約においても、現民法程度の抽象度・普遍性は必要であると考え、細部や特則は当事者の契約の事由・特別法に委ねることとした。

 (3)「中2階の契約規範」の検討
 各種の典型契約の規定を1階、契約・債権の総則を2階とすると、その間の規定を設けるという方針をとった。その意味は、同じグループの共通規範を設けるということ、総則レベルでの原則・重要な例外となる規範を設けるということ、法形式の整備をすること、の3つがある。

 (4)新種契約の検討
 「ファイナンス・リース」、「第三者型与信契約」、「在学契約」、「診療契約」、「銀行取引」、「中間流通業者の契約(仲立・問屋)」、「中間流通業者の契約(フランチャイズ・特約店)」、「ライセンス契約」等の新種契約の検討をした結果、「ファイナンス・リース」、「役務提供契約」、「継続的契約」等を新種契約として規定することを提案した。なお、採用しなかった上記の検討論点についても、消費貸借、役務提供契約、寄託等に検討の成果が反映されているものが多い。

 3 典型契約の配列
 (1)有償契約を無償契約よりも前に配置
 現代社会におけるウェイトが高いものから配置する構成としたが、無償契約を軽視するものではない。無償契約の規定を有償契約で準用する現民法の規定はわかりづらいものと評価できるのではないか。

 (2)賃貸借型の契約の配列
 ファイナンス・リース契約は、目的物の利用と信用供与の意味合いがある。そのため、賃貸借型のグループの最後に設けることとした。

 (3)役務型の契約の配列
 雇用は、労働契約法もあり、民法が直接適用となるケースも少ないと考えられることから、役務型のグループの最後に設けることとした。最終的には、雇用と労働契約法とは統合されることが望ましいという意見が多かった。ただし、今回の改正では、そこまでは考えていない。

 (4)横断的契約類型の配置
 補則に設けた第三者のためにする契約や継続的契約等は、各種の契約を横断する規定である。

 (5)配列変更における検討課題
  (a)無償契約の位置
 無償契約の配置を後ろにしたからといって、無償契約を軽視しているようなことはない。あくまで、わかりやすさという観点からの配置変更である。

  (b)ブロック化
 典型契約は、一般に、交換型、賃借型、役務提供型、その他、という分類があるが、必ずしも分類に該当しない契約類型もあるといえるのではないか。たとえば、賃借型の類型といわれる消費貸借は、目的物そのものの所有権が移転するという意味では交換型にも該当するといえる。また、雇用や請負も、労働力等の貸借と捉える考えもあり、さらに委任や寄託まで含めてサービス契約と分類することもでき得る。
 また、その他は、どの分類にも該当しないという消極的な意味だけではなく、構造的な相違もあると考えられる。
 検討を重ねた結果、基本方針では、交換型、賃借型、役務提供型、その他のブロックを維持することとした。

 4 各種の契約の取扱いの難しさ
 (1)統合化・抽象化の要請と個別化・具体化の要請
 統合化・抽象化を強めると、個別化・具体化が弱くなる傾向にある。その間で、どう落ち着けるかが難しい。

 (2)民法の中で
売買のルールと請負のルールの整合性をとる等の同様の難しさもある。

 (3)他の法分野との間で
委任と商行為との整合性をとることも同様に難しい問題であった。

 (4)均衡点を支えるもの
 有用性と公正さの均衡をとることが重要であるが、それは中期的な社会のコンセンサスではないかと考えられる。

Ⅱ 継続的契約
 1 継続的契約に関する「基本方針」の提案
 (1)概要
 基本方針では、継続的契約を「補則」に置くこととしたが、他に「各種の契約」に総則規定をおき、そこに置くという考えや、各典型契約の該当する個所に横断的に規定を置くという考えもあり得る。

 (2)定義
 一般的に全ての場合に該当する定義を設けることは困難であるといえるので、「契約の成立上」、「ある期間」、「分割履行契約を除く」等の絞りをかけることとした。

 (3)終了原因
 終了原因を「期間の定めのない契約」と「期間の定めのある契約」とを分けて規定した。
「期間の定めのない契約」の終了原因の要件に、合理的な期間を設けたが、これを当事者間の特約で排除することも可能である。(不当条項に該当するか否かは別問題である。)
 「期間の定めのある契約」については、更新条項を設け、更新拒絶に関する信義則の規定も設けた。ただし、当然であるが、更新拒絶について特別法の規定があれば、そちらが優先される。また、消費者契約については、消費者に有利な規定を設けるべきという意見もあるが、そのような規定を置くと、消費者契約で「期間の定めのある契約」が利用されなくなるのではないだろうか。

 (4)解除の効果
 原則として将来に向かってのみ、効力が生じる。

 (5)分割履行契約
 ウィーン売買条約73条の規定を、より一般化したものである。
ある分割履行部分の履行が終わっている場合のように当該部分の解除が一般原則でできなくとも、一定の場合には解除を認めることとした。

 (6)多数当事者型継続的契約
 フランチャイズ契約や会員制のスポーツクラブ契約等を想定した規定である。

 2 継続的取引に関するその他の規律
 (1)情報提供義務・説明義務
 (2)不当条項規制
 (3)契約解釈に関する規律
 (4)契約の解消に関する規律
 (5)事情変更の原則
 上記(1)乃至(5)は、一般原則での対応が可能であると考えられる。

Ⅲ 法制審議会の審議状況と今後の見通し
 これから積極的に改正についての意見を出してもらいたい。基本方針のレベルは非常に高いが、実務家の視点からの批判は今後必要である。皆で、良い民法改正を創りあげていきたい。



コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。