民法改正の論点整理その24

(債務不履行による解除の要件)

 現民法では、条文上、履行不能による解除の場合のみ帰責事由を必要としているが、条文上明示されては居ないが、履行遅滞の場合にも帰責事由が必要であると解されている。また、不完全履行については事案に応じて履行不能、履行遅滞の規定が準用されると解されているところである。

 これに対し、債権法改正の基本方針では、解除を債務者への制裁という制度から、債権者を契約の拘束力から解放するための制度であると理解をかえ、解除の要件として債務者の帰責事由を不要とされ、債権者からみて契約の重大な不履行であるか否かを要することとされた。
 無催告解除と催告解除の2元的な構造を維持しているが、催告解除において、「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたるとき」を解除の要件とされた。
 また、事業者間契約においては、「契約の重大な不履行」の立証責任を債務者に負わせることによって、迅速な解除ができるよう配慮されている。
 なお、解除から債務者の帰責事由を排除したことにより、債務者に過失がないが契約の重大な不履行にあたると評価しうる事案等において、解除と危険負担の適用が重複する場面も想定しうることになるため、危険負担の制度を廃止し、解除に一本化することが提案されている。

 債権法改正の基本方針の提案によると、催告解除の際、「催告に応じない」+「契約の重大な不履行にあたる」と、一見要件が加重されているようにもみえる。これは付随的な義務違反の場合には解除が認められないという判例を意識したものであると思われるが、催告解除の要件事実に変更をもたらすものなのか、それとも解除の実務は変わらないものとなるのか、より明確な表現方法を検討すべきであろう。
 また、事情者取引の特則の規定についても慎重な検討が必要である。そもそも消費者契約法を民法に取り込むか否かという議論とあわせて、事業者概念を民法に導入するか否かという議論もなされるべきである。
 事業者取引の規定の存置場所としては、本来、商法が適格なのではないかとも思われるのだが・・・。
 事業者取引の取り込み等については、「市民のためにわかりやすい民法」の意味をどのように考えるのか、という問題から議論する必要があろう。

 また、危険負担を廃止すると、適用局面において、反対債務を免れようとする当事者からの解除の意思表示が必要となる。プロである実務家レベルでは、解除通知をだせばよいという結論さえおさえておけば事足りるのであるが、法律実務家にアクセスすることが容易ではない市民レベルで考えると、一定の場合に新たなアクションを起こさないと契約から解放されないという制度の導入は混乱を招くおそれがあるのではないだろうか。
 とくに、解除から帰責事由を排除しても、危険負担の制度を存続させている諸外国の立法例があることも踏まえて、危険負担の廃止は慎重な議論が尽くされるべきであるように思う。



 

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