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「債権法改正に関する日司連シンポジウム」開催

 平成21年12月12日(土)13時から17時まで、日司連ホールにおいて、「債権法改正に関する日司連シンポジウム~司法書士実務の視点から考える~」が開催された。全国からの司法書士の参加は170名を超え、参加者の数からも、司法書士の民法(債権関係)改正への関心の高さを窺い知ることができた。
 日司連の細田会長から、民法(債権関係)改正は、すべての司法書士の実務に直結することであり、日司連としても、改正の動向を深く注視し、適宜に「市民のためにわかりやすい民法」となるよう意見等を述べていく所存であるとの挨拶があった。
 シンポジウムは、次の内容で進行した。
1、基調講演「債権法改正の課題」(13時10分から15時10分まで)
 法務省 経済関係民刑基本法整備推進本部 参与 内田貴氏
 法務省 民事局 参事官 筒井健夫氏
2、パネルディスカッション(15時15分から17時まで)
 コーディネーター 司法書士 小沢吉徳氏(静岡県会)
 パネラー     東京大学大学院法学研究科 教授 中田裕康氏
  同       京都大学大学院法学研究科 教授 佐久間毅氏
  同       司法書士 鈴木龍介氏(東京会)
  同       司法書士 山田茂樹氏(静岡県会)
 以下、シンポジウムの概要を報告する。

【基調講演】
1、改正論議の対象
 今般の民法(債権関係)改正では、現民法第1編第5章法律行為、第6章期間の計算、第7章時効のうち第1節総則と第3節消滅時効並びに第3編債権のうち第1章総則、第2章契約が対象となり、必要に応じて第3編第3章事務管理及び第4章不当利得を検討することになるとの説明がなされた。
 世界で大きな統一の契約法をつくろうという国際社会の潮流に合わせるためにも、法的インフラのプラットフォームとして契約法を整える必要があるとのことであった。

2、なぜ債権法改正が必要か
(1)国民(市民)のための民法典の必要性
 日本民法典制定の経緯をふりかえると、市民のために民法を制定したとは言い難く、法律家のための民法となっている。その証左として現民法典の条文数の少なさや簡潔な文言となっていることが挙げられる。
 そのため、解釈論への過大な比重が占められるようになり、判例法理によって実務の運用がなされているという現状にある。
ところが、司法制度改革後の市民社会において、民法典の在り方も異なるものとなってきている。一般の方が条文を読んで法律を理解できないというのは問題であると認識されるようになっているのである。今こそ、まさに「法の支配」の貫徹する民主社会の実現に向けて、「国民(市民)のための民法」が求められているとのことであった。

(2)国際的潮流とアジアからの発信
 世界では19世紀型民法典が次々と現代化されようとしている。契約法のグローバルスタンダードができあがる前に、アジアから契約法を発信することによって、日本の民法典がグローバルスタンダードの形成そのものにかかわることを目指しているとのことであった。

3、債権法改正の現段階
(1)学界からの問題提起
 学界では、1993年頃より債権法改正の検討が始まり、近年、民法(債権法)改正検討委員会や民法改正研究会等から、相次いで民法改正の提案がなされている状況にある。

(2)実務界からの意見
 学者からの問題提起に対して、弁護士会や実務家からの複数の意見が出され、民法改正の必要性から疑問が述べられているところである。

(3)法制審議会諮問
 2009年10月28日諮問88号により、法制審議会が開催されることになり、民法(債権法)改正の検討が、いよいよ具体化することになった。

4、改正の論点
(1)判例実務の明文化
 民法90条の暴利行為を明文化したり、民法415条の債務不履行による損害賠償の免責事由につき契約解釈の実務を明文化したりすることの検討がなされている。なお、実務をかえない改正であっても、現民法の条文で規定されていない、もしくは規定が不十分である場合には改正をすべきであろうとの説明があった。

(2)不明瞭な基本原則の明確化
 債権者代位権は執行法や保全法の規定が不十分であったフランスから導入された制度であるが、わが国ではドイツから執行法や保全法の制度を導入し、完備されている。よって、制度としての存続する理由は乏しいと考えられるが、制度の廃止には強硬な反対意見もあったので、事実上の優先弁済を禁止して存続することとした。ただし、債権者代位権がもっとも利用されているのは、不動産登記であると思われるので、民法ではなく、不動産登記法に債権者代位権を規定するという考えもあるとのことであった。

(3)制度の現代化
 債権譲渡の対抗要件に関する制度は、確定日付と到達日付に関連がなく、債務者に過度な負担を課すものであり、根本的な欠陥があると考えている。そのため、金銭に関する債権譲渡の対抗要件を登記に一元化することを提案しているとのことであった。

(4)商法(商行為法)との関係の調整
 事業者概念を導入し、商法507条等を一般法化し、商法526条等を統合することを検討している。

(5)消費者についての規律の扱い
 消費者契約法4条1項1号、2項を一般法化し、消費者契約法4条1項2号、3項を統合することを検討している。消費者契約法の目的規定に関しては、民法に消費者規定を導入することで既に消費者保護はなされていると考えられるので、現時点では、特段導入の必要があるとは考えていないとのことであった。

(6)その他の課題
 新たなサービス提供契約の増加にあわせて、典型契約の見直しを検討している。

 最後に、民法改正の残された課題として、数次にわたる民法の全面改正を視野に入れて、編成についても検討する必要があると述べられた。
 なお、民法(債権関係)の法制審議会については、11月24日から部会が開催されており、1年半を目処(平成23年春頃まで)に「中間的な論点整理」を公表し、この「中間的な論点整理」を基に、パブリックコメントをする予定であるとの意向が示された。また、法制審議会では、民法(債権関係)改正の論点整理として31の論点をピックアップしており、法務省のホームページ等での公表を予定しているので参考にしていただきたいとのことであった。

【パネルディスカッション】
 パネルディスカッションでは、主に次の論点につき、民法(債権法)改正検討委員会の債権法改正の基本方針の各「提案」をあてはめる形で議論が展開された。
1、債務不履行と解除、瑕疵担保責任、意思表示
 追完請求権と追完権(新設)、損害賠償(免責事由を契約で引き受けていなかった事由に変更)、解除(契約の重大な不履行を解除要件とする)、瑕疵担保責任(代金減額請求を新設)、不実表示(消費者契約法4条1項1号、2項の適用を拡大し、一般法化)、錯誤(事実錯誤を明文化)、公序良俗(暴利行為の明文化)等について、山田茂樹司法書士から実務に即した疑問が述べられ、教授らから適宜コメントがなされた。

2、債権譲渡、債権時効
 債権譲渡に関し、将来債権譲渡(明文化)、第三者対抗要件(金銭債権については登記による一元化)、消滅時効(時効障害、合意による時効期間の設定)について、鈴木龍介司法書士から実務に即した疑問が述べられ、教授らから適宜コメントがなされた。

    *

 民法(債権関係)に関する議論は始まったばかりである。本シンポジウムを契機に、平成23年春頃に公表される見込みの「中間的な論点整理」の取りまとめに向けて、全国の司法書士が積極的な意見を述べていくために、全国各地で司法書士による民法(債権関係)改正に関する勉強会が立ち上がることを強く期待したい。

(あかまつ・しげる)

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Author:赤松 茂
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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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