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司法書士からみた民法改正

1、はじめに 
 本稿では、市民からの相談を受ける司法書士が民法改正を考えるにあたり、最も関心が高いと思われる民法と消費者法契約法との関係を中心に意見を述べることとする。なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の私見である。

2、司法書士にとっての民法改正
 民法改正について司法書士が意見を述べる際に、まず、おさえておかなければ、「どのような視点から意見を述べるか」ということである。立場が異なれば、意見も異なるということは当然だ。司法書士に期待されると思われる視点は、次のようなものが考えられる。

  ① 本人訴訟支援
 司法書士が長く取り組んできた業務に裁判書類作成関係業務がある。そして、司法書士は、裁判書類作成を通じ、本人訴訟支援を続けてきた。言わずもがなであるが、本人訴訟支援とは、相談者の民事紛争の生の事実について、どのような法が適用されるのか、相談者に法の趣旨や要件・効果を説明し、最終的に相談者に法的判断をしていただくという過程を経ることになる。すなわち、本人訴訟支援を行う司法書士には、市民と法の間の架け橋となることが要求されているといえる。
 今般の民法改正では、このような業務実績を踏まえ、「市民のために、わかりやすい民法」を目指し、意見を述べていくことが重要になると考える。

  ② 登記
 司法書士の本来的な業務として、登記業務がある。登記には、不動産・商業・法人・成年後見・債権譲渡等があり、いずれの分野においても、司法書士は、登記の専門家として、迅速で安全な取引に寄与してきたという実績がある。
 今般の民法改正においても、民法(債権法)改正検討委員会や民法改正研究会等から、不動産登記や債権譲渡において、重要な試案の提示がなされており、取引実務に大きな影響を及ぼすことも予想される。
 そこで、司法書士には、登記を利用する市民のために、民法改正で影響を受ける登記制度につき、実務的な視点から意見を述べていくことが求められていると考える。

  ③ 少額民事紛争
 平成14年の司法書士法改正により、司法書士は、簡裁を事物管轄とする140万円以内の民事紛争について代理人として関与するようになり、少額民事紛争の専門家という側面をも併せ持つ職能となった。
少額民事紛争の特色として、)簡易迅速な解決を希望する相談者が多い、)費用対効果等からも、できれば裁判を避けたいと考えている相談者が多い、ということ等があげられる。
これら特色から鑑みると、少額民事紛争の当事者は、裁判で争うための法ではなく、紛争を未然に防ぐための予防司法としての法を求めているといえる。すなわち、裁判規範のみならず、行為規範をより明確にした民法である。司法書士には、そのような視点からの意見も述べる責務があると考える。

3、民法に消費者契約法を取り込むべきか否か
(1)消費者契約法の取り込み方
 今般の民法改正に関しては、消費者にとっての最も重大な関心事として、消費者契約法を民法に取り込むか否かというテーマを取り上げることができる。司法書士に寄せられる市民からの相談は、エンドユーザーとして法的トラブルに巻き込まれたというものが経験上、相談件数の大多数を占める。そうすると司法書士が述べる民法改正には、上述の3つの視点に基づき、消費者からの目線で意見を述べることが要求される。
 ところで、民法(債権法)改正検討委員会が公表する試案(以下「検討委員会試案」)によると、民法への消費者契約法の取り込みには、「一般法化」と「統合」という2つの方法がある。以下、それら2つを検討することを通じ、民法と消費者契約法との関係について考えてみたい。

(2)「一般法化」の是非
  ① 消費者契約法4条1項1号
 検討委員会試案では、消費者契約法4条1項1号(不実告知)の規定を消費者契約に限定しない形で、民法に規定すると提案されている。(適用対象を拡大することも提案されているが、ここでは、その点については触れない。)
このように「BtoC」のみならず、「BtoB」、「CtoC」、「CtoB」という取引形態も対象にした形で、民法に取り込むことを「一般法化」という。
 消費者契約法の規定の「一般法化」により、これまでは消費者の定義を拡大解釈することや民法の規定によって解決を図ってきた零細個人事業主を当事者とする契約トラブルにつき、当該規定を直接適用対象とすることができるようになるので、「一般法化」については原則として賛成することができる。
 しかしながら、「一般法化」により、本来であれば意思表示の判断に通常影響を及ぼす事項ではないような消費者の不実表示に対し、事業者から取消しが主張されるという事例(保険契約に基づき、保険会社が保険金を支払う局面を想定されたい)のような紛争が増加するといった事態が想定されなくもない。
 また、消費者からの取消しの意思表示をする際においても、意思表示の判断に通常影響を及ぼす事項であるか否かにつき評価がわかれそうな事例において、消費者契約法に規定が存置されていれば、同法の目的規定により、消費者に有利に解釈するよう主張を展開することもでき得るが、対等当事者間を前提とする民法に規定がある場合、消費者有利に主張する解釈の拠り所がなくなってしまう。
以上のような懸念もあり、「一般法化」については原則として賛成であるものの、様々な事例を想定したうえで慎重に検討すべきと考える。

(3)「統合」の是非
  ① 消費者契約法4条1項2号及び3号
 検討委員会試案では、消費者契約法4条1項2号(断定的判断)及び3号(困惑)を消費者契約に限定したまま、民法に規定を移すと提案されている。このような消費者契約法の規定の移行を「統合」という。
 将来的に「一般法化」することを視野に入れて、消費者契約法の規定を民法に「統合」するというのであれば、そのような発想自体は評価することができる。
 しかしながら、消費者保護の目的規定が不存在のまま、消費者契約法の規定を民法に移行すると、消費者保護の目的規定の不存在ゆえに事例によっては解釈が必要となる局面で消費者に有利に解釈することが困難となることも想定し得る。そうすると、消費者契約法に規定のある現在よりも、むしろ消費者保護が後退してしまうといった事態が生じてしまうことにもなりかねない。
 他方で、「統合」には、「一般法化」のように零細個人事業主が直接適用対象となるというメリットも考えられないので、目的規定の不存在という不安が解消されない限り、「統合」に賛成することはできない。

② 消費者契約法8条乃至10条
 検討委員会試案では、消費者契約につき、当該条項が存在しない場合と比較して、条項使用者の相手方の利益を信義則に反する程度に害するものは無効とするという規定が提案されており、参考として「みなし例(ブラックリスト)」、「推定例(グレーリスト)」が挙げられている。これらの規定は、)約款と消費者契約、)消費者契約のみに、それぞれリストを挙げているので、4つに分類することができる。このうち、消費者契約にかかる部分については、消費者契約法8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)、同法9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)、同法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)を、より具体化して、民法に「統合」したものと評価することができる。
 ブラックリストやグレーリストのように、不当条項リストを設けることは、契約内容の違法性の判断を容易にし、紛争の予防に資することは間違いない。したがって、このような不当条項リストを設けることについては、積極的に賛成することができる。ただし、不当条項リストを、民法に設けるか、消費者契約法に設けるかという検討は、なお残されている。
 また、検討委員会試案では、前述のとおり、不当条項リストを、消費者契約に限らず、約款にも適用されるケースがあるという前提で提案されているので、消費者契約法に不当条項リストを設けると仮定した場合、約款に関する不当条項リストの存置場所についても検討する必要が生じる。

(4)目的規定の導入
 さて、以上みてきたとおりであるので、私見としては消費者契約法の規定の「一般法化」については、原則として賛成できるものの、「統合」については、特段、賛成する理由がないということになる。
仮に、「統合」に賛成すべき理由があり、「統合」を導入するとしても、新しい民法には、消費者保護の規定が設けられなければならないと考える。そうでなければ、前述のとおり規範的要件の事実のあてはめや解釈が必要となる局面において、消費者保護が後退することもあり得るからである。
 さらにいうならば、この目的規定は、消費者契約に限定した「統合」規定についての目的ではなく、消費者契約であれば、「一般法化」された規定や既存の規定に対しても適用される規定となることを強く希望するものである。消費者を保護すべきであるのは、消費者契約法に規定された意思表示に限らないと考えるからである。
 したがって、「統合」が見送られたとしても、「一般法化」が導入されるのであれば(極論をいえば、「一般法化」が見送られたとしても)、民法に消費者保護の目的規定は必須であると考える。
 そのような目的規定が導入されることによって、民法は、まさに「市民のための民法」と変容を遂げることができるのではないだろうか。

4、おわりに
 民法改正は、これから実務家や市民団体を巻き込んで議論されるべきステージを向かえる。1つでも多くの団体、1人でも多くの実務家、市民が積極的に意見を述べ、真の「市民のための民法」が実現されなければならない。私も、これからも1人の実務家として意見を述べていく所存である。


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プロフィール

赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

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【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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