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金融法学会第26回大会参加報告

 平成21年10月10日(土)10時から17時まで、東京大学法文1号館25番教室において、金融法学会第26回大会が開催され、民法(債権法)改正が主たるテーマとして取り上げられたので、聴講した。以下、当日の模様を報告する。

【午前の部】
 10時から13時10分まで、「債権法改正と金融取引」というテーマで、シンポジウムが開催された。司会を近畿大学教授の安永正昭氏、神戸大学教授の山田誠一氏が務めた。
 シンポジウムは、次の6つのテーマの報告を中心に行われた。なお、報告の詳細は、「金融法務事情1874号」に掲載されている。

①「金融取引における債権法改正および弁済」報告者 神戸大学教授 山田誠一氏
 債権法改正を、「預金」、「貸付」、「為替」、「約款」、「セキュリタイゼーション(証券化)」、「プロジェクト・ファイナンス」などの金融取引実務の視点から概観がなされた。
 また、とくに金融実務に影響を及ぼす改正として、「弁済」が取り上げられた。中でも「債権の準占有者への弁済」について、受領する者の要件、弁済をする者の主観的要件、債権者の帰責性を要件とするか等について検討すべきであるとの提案がなされ、「弁済による代位」について、誰が弁済による代位をすることができるか、代位前は原債権を被担保債権としていた担保権の処遇(担保権の被担保債権を原債権とするか、求償権とするか)について検討すべきであるとの提案がなされた。

②「相殺」報告者 三井住友銀行法務部長 三上徹氏
 差押えと相殺の抗弁につき、無制限説と制限説等の見解があるが、債権法改正においては、加藤グループは法定相殺について制限説をとり、内田グループは、無制限説に近い立場であると理解している。三上氏は、金融実務から、さまざまな場合分けを検討した結果、無制限説を維持すべきではないかとの意見を述べられた。
 また、「受動債権の譲渡・転付命令と相殺の抗弁」について、金融実務の立場から、いくつかの問題点を提示された。とくに、第三者による相殺については、金融機関に及ぼす影響が極めて大きく、濫用的な利用も想定され得るところであるので、何らかの対策が必要であるとのことであった。
 
③「保証」報告者 三菱東京UFJ銀行法務室長 中原利明氏
 「保証人の解約権」、「元本確定前の保証人に対する保証履行請求」、「元本確定前の被保証債権の譲渡と保証債務の随伴性」について、金融実務の立場から、具体的提案がなされた。すなわち、)保証人は、解約権を行使することはできない、)債権者は、根保証契約の元本確定前であっても、保証債権を行使することができる、)根保証契約の主たる債権が、元本確定前に譲渡された場合には、保証の効力が及ばない、というものである。
 また、典型契約のひとつに、金融実務上多用されている「損害担保契約」を規定することが提案された。
 なお、提案の「適時執行義務」、「連帯保証における請求の絶対効の制限」については、実務的見地から批判を述べられた。

④「決済という問題と債権法改正」報告者 早稲田大学教授 山野目章夫氏
 まず、「決済」について債権法改正について検討する意義について述べられ、集中決済方式としての新しい概念である「一人計算」についての解説がなされた。現在でも類似のスキームによる集中決済方式はなされているところであるが、いくつかの理論上の問題点(債務引受に法的瑕疵があった場合において債権取得が被る法的影響が判然としない、新しく取得される債権の発生原因の説明には疑義がある)があるので、債権法改正にあたり「一人計算」は提案されたとのことである。
また、「流動性預金口座の諸問題」として、預金債権の時効や振込についての提案内容の解説がなされた。

⑤「金融取引から見た債権譲渡法制のあり方」報告者 弁護士 井上聡氏
 「将来債権譲渡」については、現行法の解釈通り、それが譲渡されたものであるか否かを認識できる程度に特定できれば有効と認めるべきでるとの意見が述べられた。また、将来債権を対価を得て売却した者は、買主に対し、別段の合意がない限り、正当な理由なしに当該将来債権の発生を阻害しない義務を負うと解すべきであるとも述べられた。
 「債権譲渡禁止特約」については、譲渡禁止特約付債権であってもその譲渡は有効であり、ただ、債務者は譲渡禁止特約をもって譲受人に対抗できるという原則を示した提案の内容について一応賛成できると述べられた。
 「債権譲渡における対抗要件」については、金銭債権の譲渡に係る第三者対抗要件を債権譲渡登記に一元化することは、金銭債権の譲渡に関する公示性を高めるものと評価をすることができるとのことであるが、金銭債権と非金銭債権の取扱いの相違などに関し、若干の意見も述べられた。
 「債務引受」に関する提案については、おおむね妥当なものと評価するとのことであった。

⑥「詐害行為取消権」報告者 一橋大学教授 沖野眞巳氏
 現行の詐害行為取消権には、ルールの見通しの悪さ、事実上の優先弁済権、否認権との不整合などの問題があり、改正の必要があると考えた。
 そのため、提案にあたり、要件・効果について明確さの確保、否認権との関係への配慮、詐害行為取消権の法的性質や効果について重点的に検討をしたとのことであった。
 具体的には、明文をもって、取消債権者に対し、一定期間経過後、相殺を認めた。また、受益者の反対給付については優先的弁済権を付与した。訴訟手続として提案では、債務者をも被告とすることとした。

【午後の部】
14時30分から17時まで、質疑応答を中心としたシンポジウムが行われた。質疑応答は、質問内容に該当する午前の部の報告者がそれに対する回答を行う形式で質疑応答は行われた。会場からの質問は30通以上に及んだ。


【参加をおえて】
 金融法学会において、民法改正を検討するということは、金融実務の現場、すなわち、金融会社の立場から、実務に影響をおよぼすであろう論点を抽出し、その論点に対する分析をし、その分析結果に基づき意見表明をするということである。
 一方、司法書士は民法改正に意見を述べるにあたり、司法書士を利用する市民の立場にたつことが必要であると考えられる。
 しかしながら、司法書士の関与する射程が広範であることもあり、金融法学界における意見表明のように偏った意見になることは認められまい。
まずは、わたしたち司法書士は、どのような視点でアプローチしていくかにつき、早急に議論を重ねるべきであると感じた次第である。


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赤松 茂

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
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(平成26年5月に事務所移転しました。)

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