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高校生法律講座実践報告

 高校生法律講座を実施するにあたり、いつも悩むことがある。
 それは、講座のスタンスである。
 すなわち、①法的思考方法の基礎を身につけるための講義を行うか、②消費者被害や劣悪な労働実態につき事例を交えて紹介し、それら被害防止のための講義を行うか、ということである。
 「法教育」を、「法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身に付けるための教育」(法務省法教育研究会「報告書」参照)と定義づけるのであれば、もちろん講座のスタンスは前者で臨むべきである。
 ところが、実際に高校の教諭と話をしてみると、思いのほか後者の需要が多いことに驚かされる。たびたび、「ヤミ金の怖さを教えてやってください」、「内定取消しの実態を教えてやってください」等とリクエストされるのである。これは私に限ったことではないようだ。
 このように、法教育の「理想」と「現場の需要」との間には隔たりがあるということを、まずは認めたうえで、それらの調和を図らなければ、法教育を広めていくことはできないだろう。
 そのために、できるだけ高校生に身近な題材を選び、それらのテーマにつき、高校生が自ら考えるような仕掛けをつくって、講義を進めていくわけである。
 そのようなことに試行錯誤しながら、私は今年も高校生法律講座を続けている。
            *
 平成21年7月3日は、M高校において、19時30分より21時まで、高校生法律講座を行った。テーマは、高校側の希望により「労働問題」である。昨年、F高校で同様のテーマの講座を行ったところ、好評だったようで、その噂を聞いたM高校から、講座の申込みがあった次第である。
 さて、当日、教室には20名の生徒がいた。
 定時制なので、生徒のほとんどは昼間働いている。ただし、正社員で働いているものはいなかった。
 講義では、まず、司法書士の自己紹介として、今までに取り扱った労働事件の話をしたり、近時マスコミを賑わしたマクドナルド事件の概要を紹介したりした。高校生相手の講義は、つかみが重要なので、開始時は、いつも気が抜けない。高校生は、最初の5分で、講師の本質を見抜く。つまり、聴くに値する講義か、居眠りをするか、という判断を即時にするのである。
 今回は、いきなり具体例から入ったので、生徒の興味を引くことができた。
 続いて、非正規社員の説明に入る。非正規社員とは、法律上の定義はないが、便宜、①終身・有期という契約期間、②フルタイム・パートタイムという労働時間、③直接・間接という雇用形態に分別することができる。①に対応する非正規が契約社員、②に対応する非正規がパート社員、③に対応する非正規が派遣社員ということになる。そのように、できるだけ具体的に説明して、生徒に非正規社員のイメージをもってもらう。
 そこから、派遣契約の3面構造について講義を展開する。
 なぜ派遣社員の賃金は低いのか、なぜ派遣社員は安易に解雇されてしまうのか、なぜ派遣社員には失業保険が支給されないのか、について3面構造の図を用いて説明し、図を示しながら、生徒に、それらの理由を考えてもらった。
 次は、パート社員について講義を行った。パート社員であっても、有給休暇が取れるということを具体的に説明し、パート社員と正社員が同じ仕事をしていた場合、賃金が異なるのはおかしいのではないか、ということについても考えてもらった。
 最後は、解雇と退職についての講義を行った。
 退職の場合は、通常、労働者は退職に備えて生活費や就職活動等の準備を経たうえで退職の意思表示をする。ところが、解雇の場合は、使用者からの一方的意思表示であるので、労働者には準備期間がない。だから、解雇の場合は、労基法等で労働者を保護しているのだ、ということを説明した。生徒には、法の結論だけでなく、法の趣旨を理解してもらいたい。
 また、解雇の有効性や手続要件である解雇予告手当についても紹介した。労働トラブルは、労働契約終了時に顕在化することが最も多い。そのため、生徒が万一そのような労働トラブルに巻き込まれた時のことを想定すると、解雇予告手当の紹介や未払い賃金で退職した時のために未払賃金立替払制度の紹介をはずすわけにいかない。
 ところで、講義の締めくくりでは、いつも、「労働者は働くことによって賃金を得る。それが労働者にとって労働契約を締結する目的でもある。だが、それだけだろうか。働くことによって、達成感や充実感を得るという掛け替えのない体験をすることも、きっとあるだろう。すなわち、『働く』ということは『生きる』ということなのだ。だから、安易に職を探すのは賢明ではないのだ」と言っている。実は、このメッセージが最も伝えたいことでもある。
 

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プロフィール

Author:赤松 茂
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静岡県沼津市下河原町48番地

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【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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