近刊『司法書士による被告事件の実務─訴訟活動の事例と指針─』のはしがき

 民事法研究会から6月中旬に鈴木修司司法書士・山田茂樹司法書士・私との共著で発刊予定の『司法書士による被告事件の実務─訴訟活動の事例と指針─』のはしがきを執筆したので、書籍の紹介を兼ねて掲げる。

 書籍の詳細は、民事法研究会HP(http://www.minjiho.com/)の「近刊情報」からご参照いただきたい。

 はしがき
 司法書士に簡裁代理権が付与されて10年が経過しました。
 この10年の間に、「司法制度改革審議会意見書」において「当面の措置」として司法書士に簡裁代理権が付与された大きな要因である弁護士人口の大幅な増加は達成されたと評価してもよいだろうと私は考えています。
 これを形式的に捉えるならば、もはや司法書士に簡裁代理権を付与する必要はなくなったといえるのかもしれません。
 はたしてそうでしょうか。
 簡裁代理権というものは、いうまでもなく制限付代理権であり、代理権の範囲を超えると本人を代理できなくなるという一見とても使い勝手が悪く、本人にも不便を強いるものであるような気がします。
 しかしながら、この簡裁代理権を行使して数多くの事件に関わっていく中で、法律実務家と本人との間に、代理業務のみではあり得ない、新たな関わり方というものが見えてきました。そのような新たな関わり方をまとめておきたいという思いがあり、その切り口として、司法統計上、司法書士の関与がもっとも劣っている被告事件を取り上げることとしました。
 この司法書士による民事紛争への新たな関わり方を提示することによって、簡裁代理権は「当面の措置」から「恒久のもの」へと深化していくのだろうと私は信じています。そして、紛争解決の選択肢が増えることが、ひいては紛争を抱える当事者の利益になるのです。
 本書を機に、読者諸氏にも、民事紛争への関わり方における司法書士の独自性というものについて深く考えていただくことを期待しています。
 平成25年5月吉日
  富士登山競争に向けた試走のため富士吉田登山道の新緑に囲まれながら
                         司法書士 赤松 茂

近刊『司法書士による被告事件の実務─訴訟活動の事例と指針─』のチラシ

 6月下旬に民事法研究会から共著で出版予定の書籍が同社HPで既に案内されているが(こちらの「近刊情報」をクリック→http://www.minjiho.com/)、今般、同書籍のチラシができたので、参考までにリンク先を掲げておく。

 https://www.evernote.com/shard/s26/sh/d5b18113-aa3e-4970-8e0a-2bedc4d26f82/c73de5628808783fa865e0ebc99cc156

 ■どんとこい!被告事件!4段階35の事例でわかりやすく解説!■
→ 訴え提起前・訴え提起後・債務名義取得後・強制執行申立て後の4段階それぞれの場面で問題となりうる35のテーマを事例に沿って、わかりやすく解説!
→ 事件の態様、被告の(経済的な)状況、裁判の見通しを踏まえて、代理業務か裁判書類作成業務かの選択・判断にも重点をおいて解説!
→ 各事例では、法的対応のための理論、被告事件特有の交渉術・法的留意点など実務の指針を明示!
→ また、各事例の最後には、裁判事務に積極的に取り組んできた執筆者による、交渉のコツ、執筆担当者の経験事例、民法(債権関係)改正の動向など実務に直接結びつくコラム「豆知識」付き!
→ 貸金請求事件、消費者信用関係事件、建物明渡請求事件、敷金返還請求事件、交通物損事故、個別労働事件など幅広い事件類型を取り上げているので、一般民事事件の実践的手引としても最適!
→ 加藤新太郎東京高裁判事をお迎えした座談会「司法書士の被告事件関与をめぐる現状と課題」を収録!

民事訴訟法学会聴講

 平成25年5月19日(日)9時30分から16時30分まで、上智大学において、第83回民事訴訟法学会2日目が開催され、シンポジウムのテーマが「債権法改正と民事手続法」であったので聴講した。
 シンポジウムの司会は京都大学の山本克己教授で、第一報告を早稲田大学の勅使河原和彦教授が「将来債権譲渡と執行・倒産手続」、第二報告を大阪大学の名津井吉裕教授が「債権者代位訴訟と第三者の訴訟参加」、第三報告を東京大学の畑瑞穂教授が「詐害行為取消訴訟の構造と転得者に対する取消しの効果」、第四報告を「否認要件から見た詐害行為取消しの要件」とし、コメンテーターは大阪弁護士会の赫高規弁護士、東京大学の中田裕康教授であった。

【第一報告】
 将来債権の効力はどこまで及ぶのか。具体的には、次の点について検討された。
(1)建物賃貸借契約の契約上の地位の承継人(建物譲受人)のもとで生じた賃料債権に差押えの効力が及ぶか。
(2)建物賃貸借契約(取引契約)の契約上の地位の承継人(建物譲受人、事業譲渡を受けた者)のもとで生じた賃料債権(売掛債権)譲渡の効力が及ぶか。
(3)将来債権を含む債権の譲渡後に倒産手続が開始された場合における管財人又は再生債務者の下で発生する債権に債権譲渡の効力が及ぶか。

【第二報告】
 代位債権者と債務者との関係(同格主義か債務者優先主義か)、また、その関係における第三者への影響について。具体的には、次の説例に基づいて検討された。
(1)代位債権者と第三債務者との間で代位訴訟係属中に債務者が訴訟参加できるか。
(2)代位債権者と第三債務者との間で代位訴訟係属中に他の代位債権者が訴訟参加できるか。
(3)債務者と第三債務者との間で訴訟係属中に代位債権者・他の代位債権者が訴訟参加できるか。

【第三報告】
 従来の状況や近時の立法論を踏まえて上で、次の点について検討された。
詐害行為取消訴訟の構造等について
(1)否認権との比較
(2)他の形成訴訟との比較(裁判上の行使を要する実体法上の形成権という構成の可能性)
(3)訴訟告知活用の諸相
転得者に対する取消しの効果について
(1)詐害行為取消権・否認権の「相対効」の意味
(2)担保責任による処理の限界
(3)手続的な側面

【第四報告】
 中間試案の詐害行為取消権の要件の各論的な論点のうち、次の点について検討された。
(1)特定の債権者を利する行為の特則
(2)対抗要件具備行為

冒頭、司会の山本教授から、民事手続法からの視点としては、中間試案を規定の実体法とみた場合に民事手続法に及ぶ影響を考えるというアプローチと、民事手続法に及ぶ影響を踏まえつつ、中間試案を批判するというアプローチがあり得、各報告において、それぞれ適切と考えられるアプローチ方法を採用したとの説明があった。こういったアプローチそのものにおいても民法改正と民事手続との関係を考える上で参考になった。

【近刊】「司法書士による被告事件の実務」脱稿

 民事法研究会から、平成25年6月中旬に、山田茂樹司法書士、鈴木修司司法書士と私との共著で発刊予定の「司法書士による被告事件の実務」を脱稿した。
 平成24年8月頃に企画をいただき、加藤新太郎判事との座談会を同年11月に実施し、12月から執筆していた事例解説である。
 当初のスケジュール通りで出版する見込みがたったことで、ひとまず安堵している。

 実は、本書は、このブログの記事がきっかけとなって企画されたものだ。
 詳細等は、おってお知らせしていこうと思う。

 既に民事法研究会HPでは「近刊情報」のコーナーで取り上げてくださっている。
 http://www.minjiho.com/
 書籍ごとにアクセスカウンターもついているので、お手すきのときにでも、ぜひクリックしてみていただきたい。

 本書の内容は、おって紹介するが、現在検討中の書籍のオビには次のような文言が入る予定だ。
 「どんとこい!被告事件
  ◆交渉から法的手続まで実務の在り方を探求!
  ◆幅広い事件類型を取り上げているので、
   一般民事事件の実践的手引として最適!
  ◆代理業務だけでなく、
   裁判書類作成業務も重視した解説が豊富! 」


 


「中間試案の基底に迫る〜債務不履行・解除と危険負担・約款〜」受講報告

 平成25年5月13日(月)13時から17時まで、東京・日弁連クレオにて、日弁連法務研究財団主催、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、関東弁護士会連合会共催で、債権法改正研修「中間試案の基底に迫る〜債務不履行・解除と危険負担・約款〜」が開催されたので報告する。
弁護士の他、一般の参加も含めて、受講生は300人以上と大盛況であった。

 開会挨拶を東京弁護士会会長の菊池裕太郎氏が行った。パブコメに向けて、立法論と解釈論が交差する重要な時期にさしかかったといえる。主催団体は、運動団体ではないので、じっくりと債権法改正について学んでいただきたいとのことであった。

 第一部として、法務省参与の内田貴氏、東京大学教授の道垣内弘人氏、早稲田大学教授の山野目章夫氏が基調講演を行った。内田参与が司会進行しつつ、各テーマについて道垣内教授や山野目教授がコメントを述べていくという形式であった。
(1)損害賠償の要件
 「当該契約の趣旨に照らして」が中間試案におけるキーワードとなる。契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の事情に基づき、取引通念を考慮して定める当該契約の趣旨というものである。
 これに対し、山野目教授からは、債務者の責めに帰することのできない事由という表現自体は残るので安心してほしいと述べられた。債務不履行を無過失責任にしようという議論自体もされておらず、免責事由を詳細に表現することを試みたのが中間試案であるとのことであった。契約の趣旨とは、「契約書の記載」は関係なく、契約の交渉力の強い方が優位になるということもないと述べられた。表現については、「照らし」でよいのか、「基づき」という表現もあり得るのではないかという可能性の問題が語られた。
(2)損害賠償の範囲
 中間試案では、損害を規範的なものと表現するとともに、損害の認識の主体を債務者、その時点を不履行の時であるという判例法理を明文化することとした。さらに、契約締結時から不履行のときまでに生ずべき結果と予見し、予見すべきものとなったものには一定の免責措置を定めた。
 これに対し、山野目教授からは、そもそも損害は完全に賠償されるわけではなく、一定の制限があるものであり、その制限の方法として相当因果関係という概念を教科書では学ぶが実務上機能しているとは思えない。これを洗練させていくためには、予見可能性ルールを取り入れることが必要であろうとのことであった。通常損害という表現を残すか否かという問題については考え方の違いに過ぎず、いずれであっても範囲は変わらない。なお、予見の時点を不履行時とするのは国際法的には極めて異例であり、中間試案では国際法の潮流にあわせるのではなく日本の判例法理を明文化したものもあるという一例であるとのことであった。
(3)解除の要件
 催告解除と無催告解除の概念は残しつつ、催告解除において付随義務違反(軽微な不履行)の場合には解除を制限するとともに、無催告解除において履行不能を履行請求権の限界事由と改めた。また、履行期前の履行拒絶についても解除できることを明文化した。
これに対し、道垣内教授からは、損害賠償と解除の各場面において、債務者の帰責事由は根拠が異なるので、別に考えるべきであるとのことであった。
(4)危険負担との関係
 中間試案では、批判の強い債権者主義を廃止するとともに、債務者主義も廃止することとしている。債務者主義の536条1項に対応する規定は削除するといっても、契約類型ごとに個別に規定することとしているので、債務者主義の概念が廃止されるというわけではないことに留意されたいという指摘が内田参与からあった。
 これに対し、山野教授からは、帰責事由がなくとも契約の解除ができるとするのであれば、民法536条1項のルールが適用されるか否かについて考え込まねばならず、部会で検討を重ねた結果、危険負担を廃止するという一定の結論を出したところであると語られた。また、役務提供契約は、その契約の特性から反対債権が給付されないのであって、危険負担の債務者主義とは別の問題ではないかという指摘もあった。
(5)約款
 中間試案では、交渉の余地のない契約条件を約款と定義したが、約款の導入自体に依然として強い異論がある。組み入れ要件については、本文と注の規律は多くは同じ結論になるとしても、異なる結論になる場合もあり得る。また、不意打ち条項を設けたとしても、個別に合意することによって契約の効力を生じさせることもできるし、不当条項は現行法の解釈よりも踏み込んだ規律であると考えることもできるが、現行法の解釈水準にとどまる範囲であると考えることも排除されたわけではない。
これに対し、道垣内教授からは、現状を変えてほしくないという意見が多いが、判例の意思推定説と学説の白地慣習説とを混同しているものもある。中間試案の内容と意思推定説は根底は同様であると考えられるし、組み入れ要件自体も、支店ではなく遠方の本店に備え付けてあっても良いというような相当緩いイメージであるとのことであった。約款については拘束力を生じさせる根拠を緩和する制度であると理解すべきであり、約款規制というよりも、約款お墨付き制度であるといえ、むしろ約款を利用する業界にとって必要な制度であるといえる。また、現在において約款は極めて不安定な立場に置かれているということを認識すべきであると訴えられた。

 第二部として、「債務不履行、解除と危険負担及び約款の各問題点について」というテーマでパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは東京弁護士会の児玉隆晴氏、パネリストとして内田貴氏、道垣内弘人氏、山野目章夫氏、第一東京弁護士会の岡正昌氏、第二東京弁護士会の深山雅也氏、東京弁護士会の高須純一氏が務めた。

保証被害対策全国会議第4回シンポジウム開催

保証人保護のための民法改正の実現を!
〜個人保証の原則禁止へ!法制審「中間試案」を踏まえて〜

平成25年5月11日(土)13時30分から16時30分まで、東京・品川において、保証被害対策全国会議主催でシンポジウムが開催されたので参加した。
テーマは「保証人保護のための民法改正の実現を!〜個人保証の原則禁止へ!法制審「中間試案」を踏まえて〜」である。同会議主催のシンポジウムは、これで4回目となる。

開会の挨拶は、同会議代表である弁護士宇都宮健児氏から、法制審・金融庁の動向を踏まえた上で、貸金業方改正から残された問題ともいえる保証制度について、今こそ詰めるときであるとのことであった。

基調講演は、慶応義塾大学法科大学院平野裕之教授から「民法改正中間試案における保証人保護規定について」というテーマで行われた。
講義は、従来の判例の問題点について、保証契約の締結、根保証の各問題を振り返った後、中間試案については、相当論点が絞り込まれた印象があるが、その中でも、保証については奮闘しているように感じたとのことであった。
平野教授は、保証内容の説明義務とその効果を取り消しとすること、錯誤についてはグローバル的には、より柔軟に使い勝手の良いものとする必要があろうとのことであった。また、包括根保証に規制をしても、特定債務の保証への規制をしっかりしないとならず、保証債務の特定についても説明義務を課すべきであるし、根保証の確定事由についても見直す必要があるとのことであった。
最後に平野教授は、保証の論点は「引き続き検討」とされている論点が多いことから、これからの時機に、どれだけ具体的な意見を述べていくことができるかということを意識していくべきであるとまとめられた。

その後、意見交換会として複数の団体から保証制度に関する問題等が述べられた。主だった意見は次のとおりである。
・東京中小企業家同友会理事政策渉外本部長 三宅一男氏からは、保証被害の体験談とともに中小企業経営者としての取り組みについての報告があった。
・聖学院大学教授柴田武男氏からは、保証人問題を解決するために地域再投資法に関する報告があった。
・弁護士 千綿俊一郎氏からは、中小企業における個人保証等の在り方研究会報告書から見る保証制度の今後についての報告があった。
・弁護士 本家泉衣氏からは、「自殺実態白書」からみる保証被害についての報告があった。
・毎日新聞 伊藤記者からは、毎日新聞で連載されている「保証人社会を問う」を通しての報告があった。
・司法書士 赤松茂氏からは、日司連保証意見書について、とりわけ保証債務の相続問題に関しての報告があった。
・司法書士 榛葉隆雄氏からは、保証被害対策全国会議のパブコメ案についての報告があった。
・弁護士 辰巳裕規氏からは、各団体・個人に対してパブコメ提出の呼びかけがあった。

プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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