「司法書士のための法律相談NAVI」編集会議

 平成24年5月27日(日)は、東京において、書籍「司法書士のための法律相談NAVI」の追録編集会議が開催されたので、執筆者として参加した。
 編者の加藤新太郎判事に自分の担当原稿のチェックをしていただけるという、実に司法書士冥利に尽きる会議だ。
 今回、私の担当する雇用の章では、「パート労働者」に焦点をあてることとした。
 あいかわらず、非正規労働者は多く、相談が多いながらも、裁判になるケースは少ないので、実務上は非正規労働者に関する専門知識を仕入れる機会が少ないと思われるからだ。

 http://www.daiichihoki.co.jp/dh/product/604785.html
 
 おそらく今夏には追録版が出されるだろう。

 ところで、編集会議の際に、加藤新太郎判事から全出席者に「原稿に魂を入れる」というお話をいただいた。
 方々に寄稿していると原稿を書くのがルーティン作業になってしまいがちだったので、身が引き締まる思いがした。

 確かに「魂の入った原稿」は一読して分かるものだ。

 今回の私の原稿に「魂」が入っているかどうか、書籍をお読みになって、ご判断いただきたい。

静岡県司法書士会定時総会開催

 平成24年5月26日(土)は、静岡において、静岡県司法書士会定時総会が開催されたので参加した。
 会員なので参加するのは当然なのだが、私は理事という執行部側にいるので、立場上、質疑などができず、総会運営のスタッフとして動いていた。

 今回の総会の目玉と思われる議案は会費の定額可だ。
 今までの「定額+事件割」から「定額のみ」へ移行するという議案であり、全会員に影響し、とくに事件数の少ない会員には事実上会費の値上げにもなるので大きな影響があるのだが、おそらく執行部から事前・当日の説明が尽くされていたということもあり、総会当日は何の質疑もなく承認された。

 他の議案を通しても1件の質疑があっただけで、滞りなく総会は終了した。

 それにしても、質疑がないと総会は盛り上がらないし、制度に関する議論は活性化しない。
 質疑をすると、「では、そこまで言うのなら、あなたが担当者となって、その事業を行ってください。」と切り返される風潮があるとなると、事実上、質疑の抑制になってしまうだろう。
 (念のため申し添えるが、当会にそういう風潮があるというわけではない。一般論として、である。)

 制度に関する議論を活性化するためには、まずは、責任を伴わず、総会などで気軽に質疑をすることのできる環境を整えることが重要だ。

民法(債権関係)改正における相殺の議論について

 現在、法制審議会民法(債権関係)部会で第2読会と呼ばれる2周目の議論が頻繁に行われており、先日は相殺に関する議論がなされたようだ。
 相殺では、「遡及効の見直し」や「相殺と差押え」といった論点のほか、「第三者による相殺」や「不法行為債権を受働債権とする相殺の禁止」など実務に非常に大きな影響を及ぼす論点も議論されている。

 ここでは、「第三者による相殺」と「不法行為債権を受働債権とする相殺の禁止」について考えてみたい。
 個人的には、「第三者による相殺」を認めることは弊害が大きいと思われるので消極、「不法行為債権を受働債権とする相殺の禁止」に例外規定を設けることは物損交通事故において簡易な解決が期待できるので積極、という考えであったが、両者を組み合わせると、効果的に解決できるのではないかと思われる事例があったからだ。

 具体的には次のようなケースを想定されたい。
 被害車両を運転するC、加害車両を運転するA、被害車両の車両保険会社Bの場合において、車両保険会社Bは被害車両の修理代をCに支払って、Aに対する求償請求権を取得するというケースである。
 このとき、「第三者による相殺」が認められ、「不法行為債権を受働債権とする相殺の禁止」の例外に一定の例外規定が設けられれば、BがAに対する求償金請求権(被害車両の損害)を訴訟において請求する際、Aが期日に欠席しても、自己の求償権とAのCに対する損害賠償請求権(加害車両の損害)とを相殺できるようになる。

 このようなケースは、今まで相殺合意によって処理されてきていたが(厳密に言えば、当事者が異なるので「相殺」ではない。三者間契約というべきだろう)、「合意」が必要である以上、Aが期日に出頭することが不可欠であった。仮にAが期日に欠席すると、Bは自己の請求権を認容する欠席判決を取得することができても、AのCに対する損害賠償請求権が未解決という片手落ちの解決になってしまい、Bにしてみれば契約者であるCが法的に不安定な状態におかれたままという重大な弊害が生じてしまうのである。

 それが先に挙げたような改正がなされることによって、紛争の一回解決が図られることになるのだから、車両保険を扱う損害保険会社は契約者のためにも、これらの改正に賛成するイニシアチブがあるのではないだろうか。

 と思って、パブリックコメントを見直してみたところ、これらの論点に対して、損害保険会社関連は意見を述べていないようだ。
 もったいない。

 もちろん、これらの改正には冒頭に述べたとおりの弊害もつきまとうので、適切な要件設定は必須であるが、題材として、改正後の活用事例を念頭に置くことができれば、議論も活性化すると思われたので紹介することとした。





保証被害対策全国会議事務局運営会議

 平成24年5月13日(日)10時から12時まで、京都において、保証被害対策全国会議事務局運営会議が開催されたので、幹事として参加した。
 法制審議会民法(債権関係)部会における保証の審議状況並びに今後の対策を打ち合わせた後、夏に実施予定の保証制度を考えるシンポジウムの開催についても協議がなされた。
 その結果、保証に代わる機能を地域ぐるみで創り上げようという視点を考えてみようということになった。
 この視点では、既に伊賀市社協などが活発に取り組んでおられ、参考になる。
 
  http://blog.canpan.info/kouken/archive/72
 (伊賀市社協のブログ)

 この取組みは、厚生労働省の安心生活創造事業推進検討会においても報告されているようだ。

 保証制度はいらない、ということを市民の側から宣言されているということは、これからの保証制度を考えるにあたっても重視していかなければならないだろう。
 さらに全国の市民団体にも広がっていくと良いと思う。

 上記のシンポジウムは、7月か8月に名古屋で開催する予定だ。
 一般参加もできるので、詳細が決まり次第、本ブログにおいても紹介することとしたい。

 なお、このシンポジウムが終わるとすぐに、10月27日(土)28日(日)に札幌で行われるクレサラ被害者交流集会でも保証制度に関する分科会が設けられる予定だ。
 そちらにも多数の参加を期待したい。

 今年は、クレサラ問題においても「保証制度」がキモとなるだろう。

 また、韓国の保証人特別法についても、情報収集を重ね、日本の民法に反映させることができる点があるか、さらに研究を深めていくこととなった。

 

クレサラ実務研究会IN京都

 平成24年5月12日(土)10時から17時まで、京都において、全国クレジット・サラ金問題対策協議会主催の「クレサラ実務研究会」が開催されたので参加した。
 おそらく400名以上がしたものと思われる。
 当日のプログラムは次のとおりである。

第1部 基礎講座
 1 非正規雇用問題と公契約法・公契約条例を学ぶ
   中西 基 (大阪弁護士会 非正規労働者の権利実現全国会議事務局長)
                              
 2 出会い系サイト被害の解決方法
    小田典靖 (愛知県弁護士会 出会い系サイト被害全国連絡協議会事務局長 )

3 消費者団体訴訟と適格消費者団体の可能性
     -貸金業者の契約条項の差し止めの事例など-
   五條 操 (大阪弁護士会 消費者支援機構関西検討委員長)

第2部 記念講演
   取締役の第三者責任の理論と判例
    -倒産貸金業者役員への過払金債権者による追及の可能性-
 前嶋京子(甲南大学法学部教授)

第3部 クレジット・サラ金問題の最新論点
 (1) ネット消費者被害における決済手続業者の法的責任
   山田茂樹 (静岡県司法書士会)            
(2) クレジット会社のマンスリークリアー取引などの個別貸付の主張について
   小林孝志 (宮崎県弁護士会)
(3) 債権譲渡と過払金債務の承継(プロミス・タンポート事案から)
   菅 陽一 (愛媛弁護士会)  
(4) 信託譲渡と地位の承継(ニューヨークメロン事案から)
   大森景一 (高知弁護士会)            
(5) 質屋仮装業者・違法年金担保業者の実態
   黒江正志 (熊本県司法書士会)          
 (6) 判決の実効性確保のさまざまな手法について
   荒井哲朗 (東京弁護士会)

 大森弁護士の「信託譲渡と地位の承継」の講義では、債務者対抗要件が行使される前に譲渡人にした弁済に基づく過払い金の不当利得返還請求について、譲受人に支払い義務を認めたという、債権譲渡法制において考えさせられる裁判例も紹介された。
 同様のケースは、クレディア再生申立事件の際も生じており、こと過払い金に関しては、債務者対抗要件のみで決して果たして良かったのだろうか、ということを改めて考えさせられた。
 民法(債権関係)改正に関する議論においても、債権譲渡では、このようなサイレント型の登記の位置づけが重要となっているので、検討を重ね、今回の裁判例の上級審の行く末を注視していく必要があるだろう。

 なお、山田茂樹司法書士は相変わらず名口調であり、最先端の議論が非常に分かりやすく講義された。
 

シンポジウム「債権法の未来像」を受講して

 平成24年5月9日(水)13時30分から17時まで、東京・日経ビルにおいて、(財)日本法律家協会、(公)商事法務研究会主催で、シンポジウム「債権法の未来像」が開催されたので参加した。
 600人の募集枠で、ホールがほぼ満席となる盛況であった。

 シンポジウムは、とくに「わかりやすい民法」「社会・経済への対応を図る」という諮問で掲げられた目的に沿った形で進められた。

 「わかりやすい民法」というテーマについては、わかりやすさとは「言語表現」、「論理性・体系性」、「内容の明確性」であるという解説とともに、法教育の視点、司法制度改革の視点、渉外法務の視点のそれぞれから、民法のわかりやすさの必要性が述べられた。
 そのわかりやすさの実現のために、具体的には、判例のリステイトメントを目指すということである。
 これに対し、例外事例の判例を明文化することへの危惧や、わざわざリステイトメントしなくとも不都合はない、といった批判がパブリックコメント等において寄せられているが、リステイトメントする判例の吟味・射程の検討が重要となり、判例の内容が確定し、かつ、一般的・普遍性のあるものを対象とすることで、そのような批判には対応することができる、という意見が述べられた。

 「社会・経済の変化への対応を図る」というテーマについては、民法が古くなっているのは事実であるし、日本は特別法での修正が多すぎるという問題点もあり、これから100年通用する規定を考えなければならない時期に差し掛かっているともいえる、とその必要性が述べられた。
 具体的には、約款、リース契約など新種の契約類型に対応する必要性、もはや民法が指標原理として機能していないことを改善する必要性、国際取引に対応する必要性があるとのことであった。
 なお、現代化を図ったアメリカUCCの改正を参考にするべきであるとの意見もあった。
 判例によって裁判所が法的規範を創るというより、本来、立法で対応するべきという意見も印象的であった。
 これに対し、今のままでも、実務上、不都合はないという批判がパブリックコメント等において寄せられているが、今のままでは、世界・アジアをリードする法典としては不十分であり、国内の現代事情に対応するだけでなく、世界の現代事情に対応することを意識した改正が重要となる、という意見が述べられた。
   
 今回のシンポジウムでは、民法(債権関係)改正はそもそも必要か、という総論的な視点に対する解説がメインであり、パブリックコメント等で寄せられた批判に対する一定の回答が示されたことによって、改正の必要性が根拠づけられたものと私は評価している。

NISグループ民事再生申立

 平成24年5月9日付で、貸金業者のNISグループ株式会社が東京地方裁判所に民事再生の申立てをした。

 http://www.nisgroup.jp/

 古くから債務整理業務をしていた方には、愛媛に本社をおいていた「ニッシン」と言ったほうが分かりやすいかもしれない。

 タイトな日程が定められているので、今後、NISグループ株式会社を含む債務整理には留意が必要だ。


 

原稿の執筆について

 司法書士になると、司法書士としての通常業務のほか、会務(むしろ、これが大半を占める…)、研修講師などのように派生業務を担当することが殊の外多くなる。(司法書士にもよるのだろうが)
 このような派生業務には、原稿の依頼というものもある。

 原稿のご依頼をいただく際に、「何時までに」「どのような内容のものを」寄稿いただきたい、ということは必ずと言ってよいほど伝えられるのだが、時に「お好きなだけ書いてください」と言われることがある。

 執筆するこちら側に気を使って、このような申入れをしてくださっているのだろうが、実は、このように言われると私は、とても躊躇してしまう。

 「お好きなだけ」と言われても、原稿を執筆する際に、執筆量を決めないで書き始める人はいないだろう。
 同じテーマであっても、2000字のまとめ方と10000字のまとめ方では大きく構成が異なってくるからだ。

 逆に言うと、(これが一番大事なポイントなのだが、)原稿のご依頼をいただくほど自分が関心のあるテーマであれば、2000字だろうと、10000字だろうとまとめることは可能ということだ。

 このようにまとめる気になれば、どんな分量でもできてしまうだけに、この執筆量を自分で決めるというのは、簡単なようで実はなかなか難しい。
 また、依頼する側にも、本心では、大体何ページ分の原稿がほしいという期待があるはずだ。書き上げた原稿と期待されていた量との間に大きな過不足が生じると、依頼趣旨に反するということにもなってしまう。ときたま、誌面の特集などで、一本だけ分量が突出している原稿に出くわしたりすると、依頼する側が執筆量をきちんと伝えていなかったのだろうかと勘ぐってしまう。逆に、掲載する前に、分量が多すぎでリライトを要求するケースもあるのだろう。

 執筆する側、依頼する側双方にとって無駄を省き、何より読者のために、より良い内容の原稿を書くために、ご依頼される際には、「何時までに」、「どのような内容のものを」、「どのくらいの量で」という3点を明示してくださるとよいと思う。

 執筆する側、依頼する側のコミュニケーションが取れてさえすれば、後の原稿は執筆者の問題だ。
 読者の方は、「内容が薄い」「参考にならない」などのご批判があれば、思う存分、執筆者に向けていただきたい。

プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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