簡裁ウォッチング―司法書士の被告事件への対応について―

1 簡易裁判所における被告事件への法律専門職の関与率
 簡易裁判所に提訴された民事事件の司法書士や弁護士の関与の度合いを知る指標のひとつとして、裁判所が公表している司法統計がある。
 司法統計年表の「第13表第一審通常訴訟既済事件数」がそれだ。
 http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B22DMIN10~15.pdf
 私は、この表のうち、とくに「一方被告側司法書士」と「一方被告側弁護士」の数に着目している。これは、簡易裁判所に提訴された通常訴訟既済事件のうち、原告側は本人訴訟であり、被告側のみ司法書士もしくは弁護士が選任された事件の数を集計したものである。
 「一方原告側司法書士」もしくは「一方原告側弁護士」と比べ、被告事件に法律専門職が関与する数が圧倒的に少ないことが読み取れる。
 中でも、司法書士の関与率の低さは際立っている。
 簡易裁判所の事件は、訴額が小さく、一般に争点も複雑でないものが多く、事件の筋としても争うことになるものが少ないため、当事者が被告となった際には、法律専門職に委任するケースが少ないのかもしれない。
 しかしながら、それだけでは弁護士と司法書士との関与率の差の説明がつかない。
 「訴えられたら司法書士に相談する」という市民の司法書士に対する認知が低いのか、「訴えられた事件は受任しない」との認識を多くの司法書士が持っているのか、いずれかだろう。
 仮に、後者の理由により被告事件の司法書士関与率が低いとしたら、簡裁代理権が付与された意味がないというほかない。そのようなことはないと思うが、ここでは、念のため、筆者が受任した被告事件の典型例を紹介し、それをもって司法書士が被告事件の関与の仕方についての共通認識を持つことを提案したい。

2 簡易裁判所における被告事件の一例
 被告事件は、まず、原告の請求を積極的に争わないものと争うものとに大別することができる。
 被告となった方が原告の請求を積極的に争わない事件については、結局、原告の請求が認められることになるので、法律専門職の関与する意義がないと考えてしまうかもしれない。
 しかし、そのような認識は誤りだと法律専門職は肝に銘じておくべきである。
 法律専門職が関与しないことから出頭しても意味がないと考えてしまった当事者が期日に欠席し、不用意に債務名義を取得され、予期せぬ強制執行を受けるおそれもあるし、出頭しても無理な和解内容に応じてしまうおそれもある。このような事態を避けるためにも、法律専門職が関与し、紛争の着地点を探った方が好ましいことはいうまでもない。
 実際に、破産申立ての準備中に債権者から貸金請求の提訴がなされるといった事件は、よく遭遇するケースであるといえ、そのようなケースでは破産申立てを急ぐとともに、貸金請求訴訟においても適切な対応をする必要がある。
 一方、原告の請求を争うことが妥当と思われる事件については、適切な反論をすることによって原告の請求が減免されることもあるので、一層、法律専門職の関与が重要になる。
 筆者が最近受任したケースでも、本来であれば敷金全額の返還を求めることができるにもかかわらず、敷金が返還されないばかりか、家主側からハウスクリーニング代等が支払督促を利用して請求されるといったもの、酔った勢いで相手に怪我をさせてしまったところ、因果関係がほとんどないと思われるような休業補償や過大な慰謝料をいきなり通常訴訟で請求されるといったもの、などがあり、法律専門職による適切な反論によって原告の請求が確実に減免される事件は相当あるという実感をもっている。このようなケースを見定めるためにも、被告事件の相談は、被告となった方からの事情聴取を丁寧に行うことが重要である。
 最後になるが、司法書士の被告事件への関与の向上を図るためには、「訴えられたら司法書士に相談する」との市民の認知を高めることが最大の課題である。
 司法書士側の受任意識を高めるとともに、司法書士の行なうことのできる業務の認知を高めるための方策を実践し、司法書士界としても一層の司法アクセスの充実を目指していきたい。
 それが簡易裁判所の充実にも繋がるのだろうと私は思っている。

簡裁代理権活用の実務その4

4 これからの簡裁代理権の活用方法及び意義
(1)簡裁代理権の限界
  簡裁代理権の活用を検討すればするほど、司法書士が係わる民事紛争は、簡裁の事物管轄、すなわち140万円以下の民事紛争に限られていると思いがちになってしまうかもしれない。また、140万円以下の民事紛争でも、控訴中の事件や強制執行に関する事件については関与できないと思ってしまうかもしれない。
  いずれも実際に司法書士から聞いたことのある話だ。
  とくに平成14年司法書士法改正以降に登録した司法書士は、まず簡裁代理権ありき、という世代であるので、寄せられた相談が簡裁代理権の対象となる紛争であれば司法書士業務の範囲であると直感的に思う傾向があるように私は感じている。これは、逆に言えば、簡裁代理権の対象とならない紛争は司法書士業務の範囲外だと直感的に思ってしまうということだ。
  しかし、簡裁代理権があるがゆえに、司法書士業務の範囲を狭めるというのでは、市民の法的需要に応えるために司法書士に簡裁代理権が付与された趣旨が損なわれてしまい、そのような直感は弊害となるというほかない。
  そういった誤解を持たないためにも、各自が簡裁代理権の活用と司法書士が従来から取り組んできた裁判書類作成関係業務による本人訴訟支援との関係について整理しておくことが必要だろう。

(2)簡裁代理権と本人訴訟支援
  そこで、最後に雑感として、簡裁代理権と本人訴訟支援との関係について、私が考えていることを述べて、本稿を締めくくることにしたい。
  私は民事紛争に取り組む際、訴額にかかわらず、あくまで本人訴訟支援という姿勢で関与するようにしている。
  寄せられた相談が簡裁代理権の範囲を超えていたり、代理人として関与することが妥当ではないと思われたりする場合には、そのまま本人訴訟支援として業務を継続する。
  そうでない場合、つまり、寄せられた相談が簡裁代理権の範囲内であり、かつ、代理人として関与することが妥当であると思われる場合にのみ、代理人として受任するようにしているのだ。
  もっとも代理人として受任するケースであっても、私が全面的に代理人として表に出ることは少ない。ご本人ができる情報収集、相手方との交渉などは、極力、ご本人にしていただくように意識している。このように関わることによって、紛争解決コストを抑えることができるし、紛争を当事者自らが解決するという本人訴訟支援の姿勢を保つことができる。そのような意味では、おそらく弁護士が代理人として受任するケースとは異なる関与の仕方であろう。
  私の代理人としての関与の在り方のベースには、本人訴訟支援がある。
  代理事件であっても、紛争を解決する主体は、ご本人にほかならないと思うからだ。
  たとえ訴額の少ない事件であっても、否、訴額の小さい事件だからこそ、紛争解決に向けて、代理人としても、ご本人と2人3脚で歩んでいきたい。
  それが簡裁代理権という司法制度上稀有な制限付代理権のもっとも有効な活用法であり、まさに、それこそが司法書士の民事紛争に関する独自性になるのだろうと確信している。


(注1)司法制度改革審議会「司法制度改革審議会意見書―21世紀の日本を支える司法制度―」平成13年6月12日
「Ⅲ 司法制度を支える法曹の在り方 
第3 弁護士制度の改革
    7 隣接法律専門職種の活用等
 訴訟手続において、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、
•司法書士への簡易裁判所での訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。また、簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても、同様に付与すべきである。
(中略)
弁護士法第72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことなどを業とすることを禁止している。一方、司法書士、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士などのいわゆる隣接法律専門職種は、それぞれの業法に定められたところに従い、限定的な法律事務を取り扱っている。
 弁護士と隣接法律専門職種との関係については、弁護士人口の大幅な増加と諸般の弁護士改革が現実化する将来において、各隣接法律専門職種の制度の趣旨や意義、及び利用者の利便とその権利保護の要請等を踏まえ、法的サービスの担い手の在り方を改めて総合的に検討する必要がある。しかしながら、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消する必要性にかんがみ、利用者の視点から、当面の法的需要を充足させるための措置を講じる必要がある。
 このような観点に立ち、訴訟手続においては、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、少なくとも、司法書士の簡易裁判所での訴訟代理権(簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても同様)、弁理士の特許権等の侵害訴訟(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る。)での代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきであるいても、同様に付与すべきである。(後略)」

(注2)藤岡謙三「認定司法書士の簡裁民事訴訟への関与―制度発足後5年を迎えての雑感」市民と法50号
(注3)司法書士界外のものとして、たとえば、七戸克彦「今後の司法書士の業務展開の方向性」市民と法50号
    司法書士界内のものとして、たとえば、伊藤亥一郎「市民型裁判事件の受託に向けて」月報司法書士457号 などを参照
(注4) BATNA(バトナ)。Best Alternatives To a Negotiated Agreement の略。一般に「交渉が成立しない場合の最善の代替案」を言う。優れたバトナがあれば、この交渉が決裂しても構わないという強気の交渉ができることになり、交渉力が強くなると言われている。
(注5)敷引合意の特約につき、最判平成23年3月24日
    更新料合意の特約につき、最判平成23年7月15日
(注6)集会決議必要説に立つ見解として、加藤新太郎編「簡裁民事事件の考え方と実務」民事法研究会
    集会決議不要説に立つ見解として、岡久幸治ほか編「新・裁判実務体系26 簡易裁判所民事手続法」青林書院、ほか
(注7)「千葉県弁護士会『慰謝料算定の実務』ぎょうせい」、「齋藤修『慰謝料算定の理論』ぎょうせい」などを参照しつつ、インターネットによる判例検索サービスを利用して類似事例の調査を行うと有用であると思われる。
(注8) 犯罪被害者等の権利利益の保護を図る為の刑事手続に付随する措置に関する法律第17条。拙稿「司法書士による損害賠償命令申立ての実務」月報司法書士475号参照
(注9)東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ第16号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」判例タイムズ社、㈶日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(いわゆる赤い本)、㈶日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準」(いわゆる青い本)などによる基準をあてはめる。
(注10)立替金支給の要件は、「労働者が、倒産について裁判所への申立て等(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6か月前の日から2年の間に退職した者であること」とされている。
既に退職した労働者から相談があり、会社が事実上の倒産状態であるものの労基署の認定を未だ得ていない場合、この制度を利用するために、早期(退職から6か月以内)に労基署に倒産認定を求めるよう促す必要がある。
(注11)裁判外の交渉事例については、拙稿「裁判外における簡裁代理権の活用」月報司法書士418号参照
(注12)少額訴訟債権執行申立ての事例については、拙稿「少額訴訟債権執行の実務」月報司法書士442号参照

簡裁代理権活用の実務その3

3 簡裁代理権の活用事例
(1)裁判を利用した解決
 ① 契約無効等に基づく売買代金返還請求
  主に悪質商法に遭遇した消費者からの相談を受け、民法・特別法の規定により、契約の無効、取消し、もしくは解除の主張ができる場合に受任事件となることが多い。
  事情聴取の結果、契約の効力を否定する事実があったとしても、相談を受ける時点によって、売買代金の返還請求という相談者側からの積極的な行為が必要となるケースと、売買代金の支払拒絶という消極的な行為をすれば足りるケースとに分類することができる。後者のケースであっても、業者が債権者として法的手続をとってきた場合には、被告事件としての対応が必要となる。
  悪質商法は日々新たな手口が考案されており、それに伴い、それに対抗する最新の法情報を熟知しておかなければならない。
  また、クレジット会社の介在などによって契約当事者が複数となり、法律関係が複雑となることもある。
  悪質商法を営む業者は、すぐに所在不明となることもあるので、素早い対応が求められるといえ、事前交渉決裂の見極めをするや否や即座に訴訟提起するといった迅速さも大切である。

 ② 金銭消費貸借契約に基づく貸金請求
  市民間の金銭消費貸借では、契約書などの書証となる書類が不足しているケースも多く、仮にあったとしても金銭授受の記載のみで返還約束が記載されていないようなケースもある。そのような書証不足のときには、事前交渉において、相手方に金銭授受の事実と返還約束の事実を認めさせ、書証化しておくことができるかどうかが紛争解決の鍵となる。
  また、市民同士の紛争では、当事者の感情に配慮する度合いがより高く求められている。たとえば、回収可能性がほとんどなくとも後に引けないという思いだけが先行して訴訟提起を希望する相談者もいれば、顔見知り同士の紛争などでは訴訟だけは避けて紛争を解決したいと希望する相談者もいる。そのため、当事者の感情を踏まえて手続選択の説明をより慎重に行わなければならないといえる。
実際に、相談者が原告となって時効成立直前の貸金債権に基づく訴訟提起した後、被告となった相手方が裁判外で相談者に対して心からの謝罪の言葉を伝えてきたところ、相談者は満足し、時効が成立しても構わないので訴訟を取下げてほしいとの意向を示され、紛争が解決に至るということもあった。この場合、相談者にとって、「訴訟」という手続が単なる債権保全機能・債権回収機能ではなく、相手方との対話のきっかけとして機能したケースであるといえるだろう。
  また、書証が少ないケースでは、人証による証拠調べが必要となることもあるので、あらかじめ、証拠調べを想定した陳述書の作成を準備するなどの心構えも大切である。

 ③ 賃料未払いに基づく建物明渡請求
  アパート等の家主が部屋の借主の賃料未払いを理由として賃貸借契約を解除し、借主に部屋からの退去と未払いの賃料等を請求すると、通常、借主は住居を失うことになるので、賃料未払いの事実を認めつつも、部屋からの退去は仲々できないというケースもあり、当初より、そのようなケースとなることが想定される場合は、強制執行等も視野に入れて交渉を進めることになる。
  執行官による断行がある強制執行は交渉における強力なバトナ(注4)となるものの、強制執行手続には相当の時間と費用がかかるため、そのマイナス面を考慮し、家主が一定程度譲歩(明渡しの猶予もしくは未払い賃料の減額など)したうえで、和解で紛争を終結させることもある。自らが譲歩しなければならない和解内容に難色を示す家主もいるので、強制執行手続のマイナス面を踏まえると、ある程度譲歩する和解も家主にとってメリットがある旨などをあらかじめ説明しておく必要がある。
  なお、賃貸借契約を解除して部屋の退去を求めるときには部屋の固定資産税評価額の半額が訴訟の目的の価額となり、賃貸借契約を解除せずに未払賃料のみを請求するときには未払賃料の額が訴訟の目的の価額となるが、連帯保証人のみを相手方として部屋の退去を求めることはできないので、連帯保証人のみを被告とする際には、訴訟の目的の価額は未払賃料の額となることに留意するべきである。

 ④ 賃貸借契約終了に基づく敷金返還請求
  敷金は原則として全額返還されるべきであるが、通常損耗を超える損耗の原状回復費用については敷金から控除することもできる。この通常損耗の正確な認定には経年劣化も考慮しなければならず、その額の認定に手間取ることもあるが、経験上、敷金の額が少額であることが多いことを考慮し、和解で紛争が解決することも多い。
敷金という名称に限られず、入居保証金などという名目で預け入れるケースもあり、このようなケースでは契約書や実態などから交付した金員の性質を特定しなければならない。
  また、事前の敷金の天引き(敷引き)合意や更新料の支払合意などについての最判も相次いでおり(注5)、必ずしも借主に有利な判断とはいえないものもあるので、それらの相談を受ける際には十分留意しなければならない。

 ⑤ マンション管理規約に基づくマンション管理費請求
  マンション管理組合などがマンション管理費を滞納している区分所有者に対し、マンション管理費を請求する際に、まず、問題となるのが、原告適格の問題である。法人ではないマンション管理組合が訴える場合、管理者を原告とするという規約の定めがあれば、その規約が資格証明となるが、そのような定めがないときには、集会の決議が必要となる(建物の区分所有等に関する法律26条4項)。
  また、要件事実の問題として、マンション管理費の支払遅滞が建物の区分所有等に関する法律6条1項の有害行為に該当するという見解をとった場合、滞納者に対してマンション管理費請求の訴訟を提起することを集会で決議する必要がある。マンション管理費の支払遅滞が同有害行為に該当しないという見解もあり、この見解にたった場合には、この集会の決議は要件事実とはならないので、いずれの見解を採るかによって(注6)、事前に集会で決議をするか否かという訴訟の準備行為が変わることになる。
  なお、マンション管理費に関する債権は、滞納している区分所有者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する(建物の区分所有等に関する法律7条)ので、直ちに強制執行をすることもできる。同じマンションの区分所有者同士での紛争ということから、実際に、直ちに強制執行をするケースは少ないと思われるが、このような強力な債権であることをバトナとして交渉を有利に進めることもできるだろう。

 ⑥ 不倫による不法行為に基づく損害賠償請求
  配偶者の不貞行為の相手方に対して損害賠償の請求をする際には、不貞行為の事実について立証することができるかという問題とともに、いくら請求するべきかという問題がある。
  配偶者が不貞行為の事実を認めているか否かによって、立証準備の程度や内容が異なることになるので、配偶者が不貞行為の事実を認めているケースでは、その旨の念書を取るなどして書面化しておくとよい。
  事前に相談者の求める額がはっきりしていたとしても、事案の概要を詳細に聞き取り、類似事件の裁判例などを調査し(注7)、必要に応じて助言した方がよいだろう。
  なお、類似の損害賠償請求事件としては、婚約破棄による債務不履行に基づく損害賠償請求などがある。
  
 ⑦ 傷害等による不法行為に基づく損害賠償請求
  傷害を負わせた相手方に対して損害賠償の請求をする際、傷害の態様によっては刑事被告事件として立件されているケースもあり、そのようなケースでは刑事被告事件手続の進捗も踏まえつつ、民事上の損害賠償請求の手続を進めていかなければならない。
  すなわち、被害者等としては告訴するか否か、極論としては告訴の有無によって損害賠償請求の額が変わるか否かという問題(つまり、告訴しないことを条件に示談を成立させる)や、被害者等が損害賠償請求をする際に加害者がどこにいるか、そして、いつ請求をするべきか(つまり、加害者が服役中であれば、送達場所や支払可能時期の見定め)という問題である。
  なお、一定の対象犯罪については、当該刑事被告事件の公訴提起時から弁論終結時までであれば、刑事被告事件で有罪の言渡しがあった場合には、同じ裁判所において直ちに民事請求にかかる審理の期日が開始されるという極めて簡易迅速な制度である損害賠償命令の申立てをすることができる(注8)ので、この制度の存在自体は知っておくべきだろう。

 ⑧ 物損交通事故による不法行為に基づく損害賠償請求
  物損交通事故の被害者が修理代等を加害者に請求するというケースが典型的であるが、被害者が車両保険を利用した場合には、その保険会社が保険代位して加害者に求償請求するというケースもある。
  被害者にもある程度の落ち度があるというケースも多く、そのようなケースでは損害の過失相殺をすることになるが、通常、画一的な基準を基に過失相殺の割合の率を決めることになる(注9)。この過失相殺の割合の率が争点となるケースでは、事故態様の事実関係を詳細に把握する必要がある。
  また、訴訟においては、事故態様からは問題がないと考えられる過失割合の率によっても加害者の損害賠償債権と法定相殺をすることはできないため、加害者からの反訴をまって、両訴訟のそれぞれの請求につき、相殺合意による和解をすることが多い。
  なお、加害者が期日に出頭せず、訴外で連絡もとれないような場合には、加害者の損害賠償債権と相殺合意をすることが出来ず、加害者の損害賠償債権が未清算のままとなり、被害者が法的に不安定な状態に置かれてしまうことに留意しておくべきである。

 ⑨ 労働契約に基づく未払賃金請求
  労働者が賃金を支払わない会社に対し未払賃金の請求をする事件では、主に2つの理由が考えられる。すなわち、会社に賃金の支払意志はあるものの資金繰りの悪化によって賃金の支払いがされないという理由と、会社が労働者に対して何らかの債権を有しているので賃金と相殺すると主張されて賃金の支払いがされないという理由である。
  前者の理由であれば、未払賃金立替制度の適用の可否について検討することを忘れてはならない(注10)。申請期間に一定の制限があるからだ。また、事案に応じて、先取特権に基づく強制執行の申立てを直ちに検討するときもある。
  後者の理由であれば、労働基準法24条に基づく賃金の全額払いの原則を根拠に裁判例においても、労働者の同意なしに賃金と相殺することはできない旨を会社に伝え粘り強く交渉することが望ましいだろう。

 ⑩ 解雇による労働契約終了に基づく解雇予告手当請求
  会社から解雇を言い渡された労働者からの相談においては、その労働者が復職を求めるか否かによって具体的な対応が異なることになる。
  復職を求める場合には、労働者としての地位確認を求める訴訟を視野に入れて、本人訴訟支援として関与していくことになるだろう。
  復職を求めない場合であっても、解雇予告手当の請求だけでは労働者の権利保護としては不十分である。解雇予告手当は、あくまで解雇予告の言渡期間が足りないときの金銭補償に過ぎないのであって、不当解雇に関する金銭補償ではないからである。不当解雇に関する金銭補償については、労働審判制度を利用すれば比較的容易な手続で請求することができる。労働審判制度は地裁の専属管轄であるので、この場合も訴訟手続としては、本人訴訟支援として関与していくことになる。

 ⑪ 被告事件
  訴訟の類型を問わず、被告となった方から相談を寄せられることも多い。
原告からの請求の理由の大筋について被告も認めており、訴訟としては負け筋であることが予想されるときには、訴訟の一般的な手続説明をした後に、事件として受任するか否か助言に迷うこともあると思われる。
しかしながら、被告一人だけでの対応では、結局、期日を欠席して、予期せずに債務名義を与えることになってしまったり、無理な支払額による分割払いの和解に応じることになってしまったりなどという事態も十分想定されるところである。
相談者がこのような事態となることを避けるために、被告事件であっても、原告との和解が成立する見込みがあれば積極的に、その見込がなくともその後の強制執行の可能性などを考慮して、できる限り受任する方向で検討するべきである。

(2)裁判外での解決
 司法書士に寄せられる相談は、振り返ると2つに分けることができる。
  すなわち、裁判等の法的手続をする事案と、しない事案とである。
  裁判等の法的手続をする事案であっても、紛争の簡易迅速な解決を目指すという視点から、その手続の申立ての前に事前交渉を試みることが通常であるし、しない事案であれば、交渉が全てである。とくに少額民事紛争は、ことさら費用のかかる裁判まではしたくないという需要も多く、それらの需要に応えるためにも司法書士は交渉スキルを磨くことが重要である。また、交渉スキルを磨くことによって、示談成立の率が高まれば、交渉決裂による裁判という事例を減らすことができ、紛争解決コストを抑えたいという相談者の需要により応えることができる(注11)。

(3)回収
 ① 少額訴訟債権執行による回収
  司法書士は、少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行を代理することができる。管轄は、債務名義に係る簡易裁判所書記官である。手続自体は、通常の地裁管轄の債権執行とほとんど変わらない(注12)。そのため、関与する司法書士としても、書類作成であれ、代理であれ、強制執行手続自体に関与する実感としては大きな違いはない。
  しかしながら、代理することによって、実体上も、より踏み込んだ形で関与することができることになり、とくに、裁判外では、債権の捕捉に関する調査、第三債務者との交渉などで執行代理権を活用できる。
  少額民事紛争の専門家という側面をもつ司法書士としては、60万円以下の少額民事紛争の相談が寄せられた際は、まず、少額訴訟が利用できるか、という視点から助言を進めていき、最終的な回収の局面まで代理援助することを視野に入れた助言をしたいところである。
 
 ② 裁判外での回収
  現行法において裁判外の回収行為を代理できるかについては、債務名義の有無、強制執行手続の申立ての有無など、いくつかの場合分けをして判断することになるが、未だ司法書士界における統一見解があるとは思われない。
  たとえば、少額訴訟債権執行を申立てた場合には、裁判外の執行代理ができるのは当然であるが、少額訴訟ではなく簡易裁判所に係る140万円以下の債務名義に基づく強制執行を既に申立てている場合、司法書士は裁判外で執行代理、平易にいうならば回収のための請求行為などができるのだろうか。また、同様の債務名義を得たものの同債務名義に基づく強制執行の申立てをしていない場合にはどうだろうか。
  今のところ、各自がよく考えて執務にあたるほかなかろう。

簡裁代理権活用の実務その2

2 今までの司法書士の簡裁代理権の主な活用実績
 司法書士の簡裁代理権は極めて限定的にしか活用されていない、との指摘は今さらここでするまでもないだろう。
最高裁から公表されている司法統計にこそ現れていないが、ある簡裁判事によると、東京簡裁の平成15年から平成19年末までの既済事件の類型データに基づくと司法書士が原告代理人として関与したもののうち、不当利得返還請求が全体の86.3%を占めており、さらに、静岡地裁管内の同期間の既済事件の類型データに基づくと司法書士が原告代理人として関与したもののうち、売買・貸金・立替金・損害賠償等を除く金銭請求が全体の96.1%を占めており、いずれも、その大半が過払金返還と思われると述べられているところである(注2)。
 この簡裁判事の認識は、経験上、大多数の司法書士の認識とも共通するものであると思われる。このような偏重傾向に対し、司法書士界の内外から警鐘が鳴らされている(注3)。
 確かに私もその警鐘のとおりだと思う。
 司法書士の簡裁代理権に期待されているものは、過払金返還請求に関する事件への対応だけではなく、その他の幅広い民事紛争に関する事件類型(これをここでは「一般民事事件」という)への対応であろう。
 その期待に応えることができているかという自問自答は厳しく追求していかなければならない。
 しかし、これからも簡裁代理制度を維持し、市民のために活用していかなければならない私たち司法書士にとっては、仮に活用する分野が一定の事件類型に限られたものであったとしても、付与されたばかりの簡裁代理権を大いに活用する分野があったという意味においては良い面があることにも留意しておくべきである。
 すなわち、代理訴訟については未熟といえる司法書士界が訴訟ノウハウを効率的に蓄積し、一定の訴訟スキルの共有を図ることができたという司法書士側のメリットとともに、利用者である市民に対して司法書士が代理訴訟も行うことができるという認知を高めることができたという面である。
 現に私が受任する一般民事事件は、本会の常設相談センター経由のものか、過去の依頼人本人もしくはその方からの紹介というものがほとんどである。
 確かに今までのところ司法書士が簡裁代理権を活用した分野は過払金返還に偏っていることは否定できない事実であり、一般民事事件の実績数は圧倒的に少ないと思われるが、今後当面の重要課題としては、今までに司法書士が代理訴訟で関与した当事者等を通じ、一般民事事件の相談が寄せられ、徐々に増加していくことも想定し得るという側面に着目し、一般民事事件受任への対応を強化していくべきだと私は考えている。
 もっとも仮に司法書士に寄せられる一般民事事件の相談が増えていくとしても、今まであまり一般民事事件に関与したことのない司法書士に、いざ、一般民事事件の相談が寄せられたというときに、その司法書士が困惑するということがあっては現実の受任事件数の増加、ひいては司法書士全体としての簡裁代理権の活用に結びつかない。
そのように考えると、一般民事事件受任への対応の強化として、まず行うべき対策は、今までに受任したことのない類型の一般民事事件の相談が来ても、相談を受けた司法書士が困惑しないよう事件解決までのイメージの数を少しでも多く共有しておくことだと思う。(いくつかの事件解決までのイメージを持つという作業の目的は、その一般民事事件の解決方法の結論を知るということではなく、自分にとって新しい類型の一般民事事件を解決するプロセスを知るということである。すなわち、それは、一般民事事件を解決する考え方を身につけることに他ならない。)
 そこで、以降では、「3 簡裁代理権の活用事例」において、あまり一般民事事件の受任経験がないという司法書士を想定読者としたうえで、私の拙い経験をもとに、司法書士に寄せられる一般民事事件のほんの一部を紹介し、それらの事例に基づいて若干の留意点を検討することとし、最後に、「4 これからの簡裁代理権の活用方法及び意義」において、私が実務に基づいて感じている簡裁代理権活用の在るべき姿についての私見を述べることとしたい。
 

簡裁代理権活用の実務その1

 月報司法書士4月号に掲載する予定の原稿を4回に分けて一足先にアップする。
 今後の推敲や校正に反映することを検討させていただくので、ご意見があれば遠慮なくいただきたい。


 1 簡裁代理権付与の経緯
 2011年10月に、私は簡裁代理権に関する文章を自身のブログに掲載した。
 本稿と密接に関連する内容なので引用させていただく。

 司法制度改革審議会意見書が公表されてから、10年以上が経過している。
 とくに司法書士に関係するのが、意見書中「III 司法制度を支える法曹の在り方 第3 弁護士制度の改革 7. 隣接法律専門職種の活用等」だ。
 http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/iken-3.html
 この意見書が公表されたのが、平成13年6月12日のことだから、最近の合格者は読んだことがないかもしれない。
 しかしながら、今、当然のように行使している簡裁代理権が、どのような経緯で付与されたものか、常に意識しておく必要がある。
 そうしなければ、今後の司法書士のあるべき姿もみえてこず、司法書士法改正に向けた現実的な議論もできないだろう。
 意見書をご覧になっていただければ明記されているとおり、「利用者の視点から、当面の法的需要を充足させるための措置」という暫定的な措置として、司法書士の簡裁代理権は付与されているのだ。
 この「暫定的な措置」を「恒久的な措置」とすべく、私は司法書士の簡裁代理権を活用することを強く意識し、その活用方法をできる限り広めようと文章にまとめてきた。
 司法制度改革審議会意見書で述べられている「当面」のリミットである弁護士大増員がほぼ達成され、この10年間で司法書士の簡裁代理権の活用において唯一客観的な実績があるといえる債務整理事件も終息しつつある今こそ、あらためて、この司法制度改革意見書を振り返らねばならないだろう。
 司法書士に簡裁代理権があるのが当然という意識は非常に脆い幻想に基づくものだ。
 これを先輩司法書士は後輩司法書士に伝えていかなければならない。
 (司法書士あかまつの事件簿 2011年10月20日
  http://sihousyosiakamatu.blog97.fc2.com/blog-entry-712.html )


 これから本稿で述べようとすることは、ここで述べたことにつきる。
昨年、私は、ここで取り上げた司法制度改革審議会意見書(注1)を改めて読み返した際に、10年程前に初めて読んだ時に感じた無限の可能性を予感させた高揚感と、当時、頭をかすめた漠然とした不安感を思い出すとともに、今、その不安が現実のものになりつつあることに危機感を募らせた。
 それが、先の文章を書いた動機である。
 本稿では、先の文章に書いた内容をベースにしつつ、先の文章において「先輩司法書士」の責務として自ら課した課題について、さらに簡裁代理権を積極的に活用していくことによって簡裁代理権を「恒久的な措置」としていこうという視点から、展開していきたいと考えている。
そのような次第であるので、読者諸氏におかれては可能な限り本稿を読む前に、司法制度改革審議会意見書を、未読の方はもちろん、既読の方も読み返していただきたいと思う。

【日司連】民法(債権関係)改正に関する研修会開催

 平成24年2月12日(日)13時から17時まで、新大阪において、日司連主催で「民法(債権関係)改正に関する研修会~中間的な論点整理から中間試案に向けて~」を開催したので、担当委員会委員長として参加した。

 当日の研修内容は次のとおりである。
1 報告        赤松 茂
2 基調講演      潮見佳男教授
3 パネルディスカッション
   コーディネーター 初瀬智彦司法書士
   パネラー     中井康之弁護士
            潮見佳男教授
            齊藤幹司法書士
            恩田英宣司法書士

 全国から100名前後の司法書士にご参加いただいた。今回の研修内容はDVDに収録し、全国の司法書士会に配布する予定であるので、参加されなかった方は、後日、ご覧いただきたい。

 さて、私の担当部分である報告の講義メモを参考までに以下掲示しておく。今回の研修会の開催趣旨なども含めて述べている。

 本日、報告を担当させていただきます、民事法改正委員会委員長の赤松と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
 この報告の部分では、資料の通しページ3ページ目と4ページ目を利用して、法制審議会民法債権関係部会の動向と民法債権関係の改正に対する日司連の取組みについて、ご説明させていただきます。

【民法債権関係改正の予兆】
⇒ 学者の取組み
 さて、今般の民法債権関係改正のきっかけとなりましたのは、学者の方々からの提案であるということは、おそらく今回お集まりの皆様方にとっては周知のことと思います。
 とくに平成21年4月29日に早稲田大学大隅講堂で開催されたシンポジウム、民法債権法改正検討委員会の「債権法改正の基本方針」が公表されると、その圧倒的な内容は実務界にも大きなインパクトを与えました。これは言ってみれば、学者側からの挑戦状ともいうべきもので、以降、実務界は、この「基本方針」に対する見解を明らかにするということが求められることになったと言うこともできるでしょう。

⇒ 実務界の動向
 この「基本方針」を受けたような形で、実務界は急速に民法債権関係の改正について考えはじめることになりました。
 現在の民法の規定の多くは、実務上とくに支障はないと思われることが多く、もしかしたら今でもそう思っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、「果たしてそうだろうか」、という検証が求められることになったのです。
 私たち日司連においても例外ではなく、平成21年8月9日には、日司連ホールにおいて、「債権法改正に関するフォーラム」を開催しました。このフォーラムの模様は、日本評論社の「民法改正、国民・法曹・学界有志案」に収録されております。当時取り上げたテーマは、債権関係だけでなく、物権関係にまでおよび、財産法全般についての幅広い議論がなされました。また、この際、登壇された早稲田大学大学院山野目教授からは、これから、司法書士法3条1項5号に象徴されるように、身近な市民の悩みに広く耳を傾けるという司法書士の在り方にふさわしい意見を述べていただきたいという期待の言葉もいただいたところです。

【法制審議会民法債権関係部会の設置】
⇒ 法務大臣からの諮問
 このような学界・実務界の動きに対応するかのように、平成21年10月28日には、法務大臣からの民法債権関係の改正に関する諮問がありました。
諮問において、注意すべきキーワードは、「社会・経済の変化への対応」と「国民一般に分かりやすいものとする」という2つです。
 「社会・経済の変化への対応」という部分には、「もはや現民法は現代社会に適合していない」ということが示唆されていると思われます。
 「国民一般に分かりやすいものとする」という部分には、「そもそも現民法は分かりにくい」という前提意識があると思われます。
 これらの理由のうち、「現代社会に適合していない」という指摘は、通常、どんなに優れた法律であっても時が経てば避けられない性質のものです。勿論、民法の規定が時代に影響されない普遍的な規律のみが定められた法律であるということができれば、この指摘は妥当しないことになりますが、私たちの国の民法は、そうではない、と考えられているわけです。
 一方、「分かりにくい」という指摘については、ご承知のとおり、その制定過程に問題があったから分かりにくくなったと言われることが多いわけです。すなわち、民法の制定にあたり、その制定作業が急ピッチで進められたため、条文に原則規定が記されず、いきなり例外規定から記されていたり、規定する内容が乏しいため、実務を判例法理による解釈運用に頼らざるを得なかったり、ということです。これは、ひとたび民法をマスターしてしまうと途端に気づかなくなってしまいます。わたしたち司法書士にしても然りです。しかしながら、このような民法の規定の在り様は、これから民法を学ぼうとする、もしくは差し迫った事情により急遽民法の規定を理解しなければならないといった場合に大きな弊害となり、ときとして司法アクセスの障害ともなり兼ねません。
このような2つの問題意識に基づいて、現在、民法債権関係の改正作業が進められているということを、まず、押さえておく必要があります。

【法制審議会民法債権関係部会開始】
⇒ 第一読会の成果物として、「中間的な論点整理」が公表
 諮問を受けて、法制審議会民法債権関係部会が開催されるようになると、民法典を一巡し、中間的な論点整理を公表するまでの間を第一読会ということもあるのですが、その第一読会は、3週間に2回ほど、毎回約5時間というとてもハードな内容で開催されました。この際の議論に用いられた資料や議事録は法務省ホームページに公開されています。
 平成23年5月には、第一読会の成果物として、「中間的な論点整理」が公表されるに至りました。この「中間的な論点整理」は改正の対象となった民法典の不法行為や事務管理を除く債権編や契約に関連する総則規程などから63の論点を抽出し、これからの検討論点が示されたものです。188ページに亘る論点整理だけでなく、さらに、それに第一読会の「議事の概況」などの補足説明を加えた467ページにもおよぶ資料が公開されているところです。

【その間の日司連の取組み】
 さて、第一読会が開催されている最中に、日司連が何をしていたかと申しますと、大きく分けて、2方向に対する活動を続けておりました。
 それは、会員に対する情報発信と法制審に対する意見提出です。

⇒ 会員に対する情報発信
 日司連では、法制審の設置直後である平成21年12月に「債権法改正に関するシンポジウム」を開催し、法制審の動向についての情報収集をするとともに、当委員会委員が各会へ講師派遣に伺うといった各地での研修会開催のほか、月報司法書士へは民法債権関係に関する特集に寄稿するなど、会員の皆様の関心を高めるべく司法書士界内の活動を積極的に行ってきました。

⇒ 法制審に対する意見提出
 また、法制審に対しては、比較的早い段階で、改正の議論の際に取り上げていただきたい論点を提示し、さらに、第一読会の終了間際には、重点論点に対する意見書を提出いたしました。
具体的には、平成22年6月に、先に出した論点の提示で、消費者の視点から見た論点として、①未成年者取消しに伴う原状回復義務の範囲について、②暴利行為の明文化およびその要件緩和について、③複数の契約の解除について、④建物の賃貸借契約の保証人の保護について、という4論点を取り上げました。これらの論点は、後の意見書でも詳細に意見を展開しております。
 次に、平成23年3月の第一読会の終了間際に提出した「司法書士からみた民法債権関係改正に関する意見書」において、第一読会で議論された論点の中から大きく22論点を抽出し、それらの論点について、司法書士実務の視点から意見を述べました。この際述べた意見の論点をさらに広範な範囲に広げたものが、後のパブリックコメントに提出した意見です。

【法制審第1読会から第2読会にかけて】
⇒ パブコメの実施
 法務省から「中間的な論点整理」が公表されると、平成23年6月から8月までの間、パブリックコメントが実施されました。
 この際、日司連は「民法債権関係の改正に関する中間的な論点整理に対する意見」として意見を提出いたしました。これは、中間的な論点整理で示された63の論点のうち、司法書士実務に大きく影響すると思われる論点について、当委員会委員の能力と気力の続く限り網羅的に意見を述べたものであります。
 この意見書は「意見の趣旨」と「意見の理由」からなるのですが、すべてを掲載すると144ページほどになってしまいますので、本日は、通しページで5ページ目以降から37ページ目まで、「意見の趣旨」だけ抜粋したものを掲載させていただいております。本日の基調講演やパネルで各論点についての講義がある際に、日司連がどのような意見を持っているのか、と、ご参照していただければ幸いです。

⇒ ヒアリングの実施
 このパブリックコメントが実施されている間、法制審は、各団体に対してヒアリングを実施していました。このヒアリングは、事業団体や消費者団体など幅広く21団体に対して行われ、日司連も6月にヒアリングを受けました。
 その際、日司連としては、「制限能力者の取消権とその返還義務の範囲」という消費者問題に関する問題提起と「債権譲渡の第三者対抗要件について登記に一元化するべきである」という問題提起を行ったところです。
このヒアリングの模様も、他の資料と同様に法務省ホームページで公開されています。

【第二読会の開始】
⇒ 第二読会のスケジュール
 平成23年7月より再開された法制審の第二読会からは3つの分科会も設置され、とくに今年の4月以降は、ほぼ毎週部会が開催されるかもしれない、とのうわさもあるほどです。今まで以上に非常にハードな日程で検討が続けられるものと思われます。
 第2読会の成果物としては、「中間試案」という、より条文に近づいた案がまとめられる予定で、平成25年2月に決定することを目標にしているとのことです。さらに、その「中間試案」に対して再度パブリックコメントが実施される見込みです。

⇒ これからの日司連の取組み
 パブリックコメントへの意見は、各本会で意見を出すことはもちろん、司法書士個人でも提出することが可能ですし、有志が集まって任意の勉強団体としても提出できます。
 司法書士業務を通じて留意するべきであると思われる民法債権関係の改正論点や改正の方向性について、複数の司法書士団体から、多くの視点に立って積極的に意見を述べていくことが、市民のために、よりよい民法とするためには重要です。
 ところが、先日行われた第一回目のパブリックコメントでは、「司法書士」との名称がつく団体からの意見提出は、日司連、大阪司法書士会、静岡県司法書士会制度対策委員会、全青司、東京青司協、滋賀県司法書士会青年会民法債権法改正勉強会のわずか6団体のみです。
 これは、とても寂しい数字であり、このままでは、司法書士団体は、民法債権関係改正にあまり関心がないと思われてしまうかもしれません。
 ここにお集まりの皆様方は、この改正に非常に高い関心をお持ちの方々ばかりですので、ぜひ次のパブリックコメントには、本会・個人・任意団体として、積極的に意見を述べていただきたいと思います。
 何も、すべての論点に対して、意見を述べることはありません。
 関心の高い論点に対して、重点的に意見を述べるということでもかまわないのです。
 今回の研修会がその一助となれば幸いです。
 また、これからの取組みとして、日司連として、今まで以上に取り組んでいこうと計画しておりますのが、市民に対する啓もう活動です。
 法制審では、第一読会を経て論点の抽出が終わり、第二読会では具体的に改正内容を検討する段階となり、これからは、改正後の民法を「分かりやすい」民法とするべく、市民からの声をもっと法制審に届ける必要があります。
 このような段階に入り、日司連では、市民の関心を高めるために、一般の方々を対象に民法改正に関する情報を毎月1回日司連ホームページに連載しています。平成23年12月から連載を開始し、2月で既に3回目となります。第1回目は「いま民法について」、第2回目は「契約とは」、第3回目は「約款について」というテーマで掲載し、3月以降も債権関係のトピックを中心に長期間連載する予定です。
 こちらの日司連ホームページの連載も、お手すきのときに、ご覧いただき、忌憚のないご意見をいただきたいと思っています。

 今日は、これから基調講演・パネルと盛りだくさんの講義が続きますが、がんばって勉強しましょう。
 ご清聴ありがとうございました。

保証被害対策会議

 平成24年2月5日(日)名古屋において、保証被害対策会議が開催されたので、幹事として参加した。
 この会議は保証被害を無くすことを目的とするが、民法(債権関係)改正において、保証の在り方が検討されているところでもあるので、法改正を求めて法制審議会民法(債権関係)部会に対するアプローチと保証被害の救済という実務によるアプローチの2段構えで活動している。

 今回も、その2段構えに従って、法制審議会民法(債権関係)部会に寄せられたパブリック・コメントのうち、保証に関する部分のとりまとめを行うことと平成24年3月24日(土)に神戸で開催する保証被害撲滅に関する集会の打ち合わせを行った。

 頭と体の両方を使う会議なので、なかなかハードだ。
 3月の集会成功に向けて、引き続き、努力していきたい。

【全青司】出会い系サイト被害110番実施

全青司では、平成24年2月5日(日)に「出会い系サイト被害110番」を実施する。

詳細は全青司HPで参照されたい。
 http://zenseishi.com/info/detail.php?autono=185

以下、全青司HPから引用
 昨今、出会い系サイト・アダルトサイト・架空請求などサイト関連の消費者被害が深刻化しており、2010年度に全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は、28,228件を数えました。そして、その内容は手口が巧妙化するとともに、決済方法として電子マネーやコンビニ決済サービスなど新たな方法が普及し、クレジットカード決済においては海外の決済代行業者が関与することなどにより被害額が大きくなるとともに、問題が複雑化して被害回復が困難になっている傾向にあります。

 そこで、出会い系サイト・アダルトサイト・架空請求などに関する消費者被害の事例を集積し、被害救済を図るべく、無料の電話相談会である「出会い系サイト被害110番」を実施いたします。

 本相談会では、電話による助言をするにとどまらず、希望される方には必要に応じて地元の司法書士を紹介し、継続的な相談対応及び司法書士法に定められた範囲内における法的手続(訴額140万円以内の簡裁訴訟代理業務)の受任を行うことといたします。

開 催 概 要

<実施日時> 平成24年2月5日(日)午前10時~午後4時

<電話番号> 0120-33-8942(携帯電話からの通話も可能・相談料は無料です。)

<相談方法> 電 話 (相談員数約10名)

日司連民法(債権関係)改正に関する研修会の事前打ち合わせ

 平成24年2月12日(日)に大阪で、司法書士を対象に、日司連主催による民法(債権関係)改正に関する研修会が開催される。
 私の所属する民事法改正委員会が企画しており、半年ほど前から準備を進めてきたものである。
 当日は、京都大学法科大学院の潮見佳男教授に基調講演をいただき、後半は、さらに大阪弁護士会の中井康之弁護士を交えて司法書士とのパネルディスカッションを展開する予定である。

 先日、両先生方と研修会の事前打ち合わせを行なった。
 現在の法制審議会民法(債権関係)部会での議論の状況のほか、来年公表される見込みの「中間試案」、そして、その後に実施される「パブリック・コメント」に向けて、司法書士がどのような視点から意見を述べていくべきか、などについてのご意見も頂ける。
 パネルで取り上げる論点も、「債権者代位」・「債権譲渡」と登記関連の論点のほか、裁判関連として「約款」、司法書士独自の論点として「供託」と、バラエティーに富む内容とした。

 既に研修会の申込みは締切っているが、一人でも多くの司法書士に受講していただきたい。

プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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