敷引特約に関する最高裁判決

 平成23年3月24日に敷引特約に関して最高裁が判断を示している。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81180&hanreiKbn=02

 その要旨は次のとおり。
1 居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,敷引金の額が高額に過ぎるものである場合には,賃料が相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,消費者契約法10条により無効となる
2 居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできないとされた事例

 消費者契約法10条の射程について、事案ごと検討していく必要がある。

 静岡県内においても、「敷引」という名称ではないが、「敷金」を「入居保証金」などという名目で受領し、当該入居保証金から一定額を無条件で控除する特約を設ける事案が散見されるところである。

 事例の集積を行い、消費者契約法10条の射程をより明確にしていかなければならないだろう。
 

法制審議会民法(債権関係)部会の延期

 3月29日に開催が予定されていた法制審議会民法(債権関係)部会が中止された。
 同期日において、公表する「中間的な論点整理」の最終確認をし、第一読会が終了する予定だったときく。

 おそらく、後日に部会が開催され、そこで第一読会が終了することになるのだろうが、当初の「中間的な論点整理」の公表時期ならびにパブコメの開始時期も、それに連動して、少なくとも数週間は遅れるのではないかと思われる。

 有事の中でも平時をこなしていくことの困難さを実感しつつも、民法(債権関係)改正への対応も、当初の予定通り、しっかりとこなしていきたい。

【日弁連】東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故に関する会長声明

 今般の大震災により顕在化した原発のリスクをこのままにしておくわけにはいかない。
 社会生活のありようにも関わる非常に大きな問題であるので、司法書士も意見を述べていかなければならないことは当然だ。

 日弁連は平成23年3月25日、次のとおりの会長声明を公表している。

東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故に関する会長声明

1 本年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこの地震によって引き起こされた大津波により、東京電力福島第一原子力発電所では、1号機から4号機で、外部電源や非常用ディーゼル発電など炉心や使用済核燃料プールの冷却機能を働かせるために必要な電源が全て失われ、核燃料棒が冠水できず、高温状態が継続して、炉心溶融・水素爆発等による建屋や圧力抑制室の損壊・使用済核燃料プールの水温上昇などの事故が発生し、放射性物質が原子力発電所から環境中に放出されるなど予断を許さない深刻な事態が進行している。そのため、原子力発電所から半径20km以内は避難指示、半径20~30kmの範囲では屋内待避指示が出される異常事態となっている。

当連合会は、避難指示及び屋内待避指示を受けた住民の皆様にお見舞い申し上げるとともに、現在も原子力発電所事故の現場で懸命の努力が続けられている原子炉の冷却作業等によりこれ以上の深刻な被害が回避されるよう心から祈念する。

2 福島原子力発電所事故に対する危機管理は、原子力災害対策特別措置法により行われているが、原子力災害対策本部による情報開示は、情報伝達の遅れ、東京電力との情報の食い違い、開示情報が不十分であるなどの問題があり、国際原子力機関(IAEA)を中心とする諸外国からも批判がなされている。

日本の原子力発電所は、設計の際に想定した地震や津波を基に安全性評価を行っており、かつ、原子力発電所の安全装置の一つが働かなくなっても、他の装置が働いて安全性を確保できるという単一故障指針に基づいて設計されてきた。今回の福島第一原子力発電所の事故により、想定されている地震、津波が過小評価であること、そして地震に対しては複数の故障が同時に生じ、安全性が確保されないことが明らかになった。

また、国や電力会社は、放射性物質が外部に漏出しないよう、燃料被覆管、圧力容器、格納容器、原子炉建屋で多重に防護されているから安全であるとしてきた。しかし、今回のような冷却剤喪失等の事故が起これば、原子力発電所の安全性が確保できないことも明らかになった。

今回の地震と同じ大規模なプレート境界地震である東海地震等の発生が予測されており、その想定される震源域の直上に位置する浜岡原子力発電所をはじめ、全国には地震と津波の危険にさらされている多数の原子力発電所や原子力施設が存在するが、今回の事態を受けて、原子力発電所の建設が進められていた上関原子力発電所、東通原子力発電所、大間原子力発電所については工事を一時見合わせることが発表された。

当連合会は、従前より、地震及び津波による原子力発電所事故の危険性を指摘し、原子力発電所の新増設の停止と既存の原子力発電所の段階的廃止を訴えてきた(2000年10月6日第43回人権擁護大会決議)。今回の事態は、当連合会の表明してきた危惧が現実のものとなったものである。今こそ、原子力発電所に頼ってきた従来のエネルギー政策を抜本的に見直し、エネルギーの消費削減と再生可能エネルギーなど他のエネルギー源への転換を速やかに図らなければならない。

3 よって、当連合会は、現下の緊急事態に鑑み、地域住民と広く国民の生命と健康、安全と安心を守る立場から、関係機関に対し、早急に以下の措置を講じるよう強く求める。

(1) 原子力災害対策本部は、福島第一原子力発電所事故の現状及び今後想定されるあらゆる事態、並びに、各地の放射能汚染の実情と被曝による長期的なリスクに関する情報、被曝防護に関する情報を正確かつ迅速に国民に提供し、適切な範囲の住民を速やかに避難させること。

(2) 国及び東京電力は、今回の事故により避難及び屋内待避の指示を受けた住民等に対し十分な支援及び被害補償を行うこと。

(3) 国、電力会社その他原子力関係機関は、二度とこのような原子力発電所事故を繰り返さないために、原子力発電所の新増設を停止し、既存の原子力発電所については、電力需給を勘案しつつ、危険性の高いものから段階的に停止すること。

2011年(平成23年)3月25日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児

新日本法規「Q&A災害時の法律実務ハンドブック(平成18年発行) 」及び商事法務「地震に伴う法律問題Q&A」のWEB無料公開

 新日本法規出版の「Q&A災害時の法律実務ハンドブック(平成18年発行)」がWEBで無料公開されている。
  http://www.sn-hoki.co.jp/shop/zmsrc/qa50593/mokuji.htm

(以下、同WEBより引用)
 弊社では、関東弁護士会連合会編集にて「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」を平成18年に発行いたしましたが、このたびの東日本大震災復興の一助として本書の改訂を決定いたしました。関東弁護士会連合会編集にて本年6月頃の発行を予定しております。
なお、初版については在庫がございませんので、参考として平成18年の内容をテキストデータでご覧いただけるようにいたしました。お役立ていただければ幸いです。

平成23年3月25日 新日本法規出版株式会社


 また、商事法務の「地震に伴う法律問題Q&A」も同様にWEBで無料公開されている。
 http://www.shojihomu.co.jp/0708qa/0708qa.html

(以下、同WEBより引用)
 この度の東北地方太平洋沖地震により被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、心よりお悔やみを申し上げます。 一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 弊社は、阪神・淡路大震災を機に、緊急出版『地震に伴う法律問題Q&A』を発刊いたしました。今回の大震災に際して、この絶版となった書籍に対するお問い合わせを大変多く頂戴しております。
 残念ながら、この書籍の改訂版の発刊の予定はございませんが、震災復興に伴う法律問題の解決のための一助になるのであれば、ご参照頂こうということで、今回、ホームページ上でpdf版を掲載することといたしました。
 何分、平成7年の刊行ですので、情報が古くなっております。そのことを前提として、ご注意の上、ご利用頂きたいと存じます。

 よろしくお願い申し上げます。
平成23年3月25日 株式会社商事法務   


 それぞれの立場で自らができる最大限の復興支援対策をしていると思うと、元気が出る。

静岡県司法書士会常任理事会

 平成23年3月23日14時から18時まで、静岡県司法書士会において、5会合同会議・常任理事会が開催されたので、常任理事として参加した。
 
 「5会」とは、本会・青年会・政治連盟・リーガルサポート・公嘱の各団体のことである。
 2ヶ月に一回ほど定期的に交流会議を行っている。

 本会は、3月末で事業年度が終了するので、定時総会に向けた準備が進められている。
 今回の会議・常任理事会でも、総会の準備が中心となった。

静岡県に対する被災地からの避難民に対する支援の協力申入れ

 被災地からの避難民を東京やさいたまでは大会場で受け入れているところであるが、静岡においては県内各地の公営住宅に分散して受け入れる方針のようである。
 今回の災害による避難は、いつまで避難生活を送るのか、どの程度の規模になるのか、が全く予測できない状況である。
 そこで、静岡県青年司法書士協議会では、次のとおり県に対し、協力申入れを行なった。
 受入先の現場で司法書士ができることが必ずあるはずである。


静岡県公営住宅課御中

 被災地からの避難民に対する支援の協力申入書

平成23年3月23日

                   静岡県青年司法書士協議会
                      会長 芝  知 美


 当協議会は、静岡県内の青年司法書士110余名で構成する団体です。
 東北・関東大震災により被災地から全国各地に避難されている方々が多数生じており、静岡県内においても、受入れを開始しているとの情報を得ました。
 避難されている方々おかれましては、安定した住居の確保のほか、様々な不安を抱えておられるであろうと思われます。
 そこで、当協議会といたしましては、県内の受入先各地において、避難されている方々に対し、迅速に支援をしていく所存です。
 具体的には、近隣の司法書士が受入先を訪問し、法的支援を中心としたケアを行っていく予定です。
 つきましては、静岡県におかれましても、受入情報の公開や必要と思われる法的支援などについて、随時、情報の共有を迅速に行っていただきたく存じます。
 当協議会は、今般の震災の被害回復に全力で取り組んでいきます。
 

静岡青司協定時総会開催

 平成23年3月21日(月・祝)13時30分より14時30分まで、静岡県司法書士会において、静岡青司協定時総会が開催されたので、青司協会員として参加した。

主な報告・議案は次のとおり。
1 平成22年度事業報告・決算承認
2 役員改選
3 平成23年事業計画・予算案承認

 今般の定時総会で、青司協会長も交代することになり、執行部の若返りもなされた。

 無事退任された沼津のS氏には、早速、別団体の事業に専念していただくことを期待するとともに、新会長となられた清水のS氏には若手を引っ張っていただき、災害対策その他の事業をリードしていただきたいと思う。

全青司災害対策本部のブログ開設!

全青司災害対策本部のブログが開設された。
http://ameblo.jp/zssk-saigai/

全国の避難地の避難民の受け入れ状況について、現地の司法書士が足を運んで、生の状況を報告していくものである。
HPやブログをお持ちの方は、ぜひ、リンク等貼っていただきたい。

全青司災害対策意見交換会

 平成23年3月19日10時から17時まで、神戸において、全青司災害対策本部の呼びかけによる「災害対策意見交換会」開催されたので、対策本部副本部長として参加した。

 午前は阪神淡路大震災を経験された先輩司法書士ら、日司連役員、リーガルサポート役員などとの意見交換を行った。初動体制に関する留意事項として多くの示唆を受けるとともに、他団体との連携なくして、今回の災害対策にあたることはできない、ということを強く実感した。

 午後は主に全青司会員による具体的対策についての意見交換を行った。
相談体制を主に次のように分類し、協議をした。
① 被災地での現地相談の可否。実施する場合の時期。また、その内容など。
② 被災地からの避難者を受入れた先での相談。全国各地での実態調査。また、その集約の方法など。
③ 被災地以外で生じることが見込まれる不景気型相談への対応。
④ 被災した司法書士への支援方法

また、相談内容は専門的に12~20に分類し、全青司各委員会や全国の単位青年会、また他団体とも連携し、相談マニュアル、研修を早期に行うことの検討を開始することとなった。

 協議した具体的対策について、すぐに実働に入ることになる。



買占めによる「囚人のジレンマ」

 「囚人のジレンマ」というゲーム理論の考え方がある。
 ウィキペディアでは次のように解説されているものである。

 共同で犯罪を行った(と思われる)2人が捕まった。
 警官はこの2人の囚人に自白させる為に、彼らの牢屋を順に訪れ、自白した場合などの司法取引について以下の条件を伝えた。
 もし、おまえらが2人とも黙秘したら、2人とも懲役2年だ。
 だが、共犯者が黙秘していても、おまえだけが自白したらおまえだけは刑を1年に減刑してやろう。ただし、共犯者の方は懲役15年だ。
 逆に共犯者だけが自白し、おまえが黙秘したら共犯者は刑が1年になる。ただし、おまえの方は懲役15年だ。
 ただし、おまえらが2人とも自白したら、2人とも懲役10年だ。
 なお、2人は双方に同じ条件が提示されている事を知っているものとする。また、彼らは2人は別室に隔離されていて、2人の間で強制力のある合意を形成できないとする。
 このとき、囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、というのが問題である。
 2人の囚人の名前をA、Bとして表にまとめると、以下のようになる。表内の左側が囚人Aの懲役、右側が囚人Bの懲役を表す。たとえば右上の欄は、Aが懲役15年、Bが1年である事を意味する。
          囚人B 協調 囚人B 裏切り
  囚人A 協調  (2年、2年) (15年、1年)
  囚人A 裏切り (1年、15年) (10年、10年)


 囚人2人にとって、互いに裏切りあって10年の刑を受けるよりは互いに協調しあって2年の刑を受ける方が得である。しかし囚人達が自分の利益のみを追求している限り、互いに裏切りあうという結末を迎える。なぜなら囚人Aは 以下のように考えるからだ。
 囚人Bが「協調」を選んだとする。このとき、もし自分 (=A) がBと協調すれば自分は懲役2年だが、逆に自分がBを裏切れば懲役は1年ですむ。だからBを裏切ったほうが得だ。
 囚人Bが「裏切り」を選んだとする。このとき、もし自分がBと協調すれば自分は懲役15年だが、逆に自分がBを裏切れば懲役は10年ですむ。だからBをやはり裏切ったほうが得だ。
 以上の議論により、Bが自分との協調を選んだかどうかによらずBを裏切るのが最適な戦略(支配戦略)であるので、AはBを裏切る。囚人Bも同様の考えにより、囚人Aを裏切ることになる。
 よってA、Bは(互いに裏切りあうよりは)互いに協調しあったほうが得であるにもかかわらず、互いに裏切りあって10年の刑を受ける事になる。合理的な各個人が自分にとって「最適な選択」(裏切り)をすることと、全体として「最適な選択」をすることが同時に達成できないことがジレンマと言われる所以である。


 一言で言うと、個々の利益を最大限追求すると、それにより全体の利得の総和が減少する、というモデルだ。
 現在、問題となっている「買占め」も、まさに、この「囚人のジレンマ」モデルに該当するといえるだろう。
 個々人の買占めにより、社会全体に著しい不利益が生じている。

 思い出してほしい。
 「囚人のジレンマ」では、AとBがそれぞれ別室に隔離されており、合意をするための情報が遮断されているからこそ生じるモデルなのだ。それぞれの間で「合意」がされている場合には、そもそも「囚人のジレンマ」はありえない。

 つまり、それぞれが正しい情報のもと、「合意」をし、「協調」戦略を採用さえすればよいのである。

 いま、正しい情報を正確に伝え、個々人が理解することが今もっとも重要となっている。

 

災害に直面する司法書士

 被災地で事務所を津波に流され、自らは毛布一つで避難所を転々としている司法書士が、震災に対する消費者被害対策に関する指示のメールを何回も投稿されており、メールを読みながら涙が出そうになった。

 私も、同じ司法書士として、そういう同職の思いに応えていきたい。

 

全青司災害対策本部設置

 全青司では、東北関東地方の大震災への対応を図るために、地震発生当日より、災害対策本部を設置している。
 同日より、同職らの安否確認と被害情報の把握に努め、現在、被災支援に向けての対応を協議しているところである。
 義援金などの金銭支援、司法書士の専門的知見を生かした法律相談支援など、多角的な視点から支援内容を検討しているので、今後、全青司会員におかれては、何卒、ご協力をお願いしたい。

第42回全青司埼玉全国大会・第44回全青司定時総会 並びに全青司40周年記念式 中止のお知らせ

平素は当協議会の活動にご支援・ご協力いただき厚くお礼申し上げます。
さて、この度、3月11日に発生いたしました「東北地方太平洋沖地震」は、 世界最大規模の地震となり、その被害状況はあまりにも悲惨であり、 各地で膨大な死亡者数・行方不明者数が発表されております。
 津波による甚大な被害は、東北地方を中心としながらも、九州、四国まで全国に広がっています。
また、原子力発電所の放射線流失や大きな余震が発生する危険性も想定されるところであり、今後も予断を許さない状況です。
被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。また 今だ、安否確認のとれない会員の皆様がいらっしゃり、そのご無事を祈るばかりです。
 このような現状に鑑みまして、執行部は協議の末、3月19日・20日開催を予定していた第42回全青司埼玉全国大会・第44回全青司定時総会を中止することといたしました。これは全国大会・定時総会に参加される皆様の安全を最優先に考えた末の決断であることを、どうかご理解ください。また、今後の被災地域への支援活動等については、当協議会一丸となって取り組むべく、既に議論と準備を始めており、会員各位のご協力を切に望むものであります。
既に参加費用をお振込みいただいている方におかれましては追って返金手続きを行う予定です。
なお、第44回全青司定時総会につきましては、改めて別便にてご案内いたします。
 会員各位におかれましては、このような事情でありますので、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。


                     全国青年司法書士協議会
                      会長 村上 美和子 

東北地方太平洋沖地震

 被災された皆様方、心よりお見舞い申し上げます。
 
 3月11日東京・日司連ビルでの民事法改正対策部の会議の最中に地震がおきた。
 直後より首都圏の交通機関が麻痺し、夕方から深夜にかけて大量に帰宅難民の方々が日司連ビルのある四ツ谷近辺も歩いておられたので、急きょ、日司連ビルを開放し、トイレ・簡易休憩所としたので、私も、その案内を深夜まで行った。

 同時に、東北地方を中心とする大被害を報道で知った。
 言葉を失った。
 この大被害を直ちに表現する文章力は私にはない。

 全青司でも、被災への対応を同日より行うことを決定している。
 19日に予定されている全青司さいたま大会の開催についての問い合わせも多数あるが、被災地の状況、被災支援に関する対応を最大限考慮した上で、開催の有無について早急に告知する予定であるので、会員各位におかれては、今しばらくお待ちいただきたい。

 今般の大震災に際し、司法書士として、できることを全力で行っていく所存だ。

消費者シンポジウム「くらしやすい社会の実現をめざして!『集団的消費者被害救済制度』を実現させましょう!」

 平成23年3月10日(木)13時30分から16時まで、東京・主婦会館において、全国消費者団体連絡会、埼玉消費者被害をなくす会、主婦連合会、消費者機構日本、(社)全国消費生活相談員協会、(財)日本消費者協会、(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、日本生活協同組合連合会の主催で、消費者シンポジウム「くらしやすい社会の実現をめざして!『集団的消費者被害救済制度』を実現させましょう!」が開催されたので参加した。
 当日は、司法書士・弁護士などの法律専門職能のほか、消費者の方々も含めて、およそ130名以上が参加した。
集団的消費者被害救済制度については、少額同種の被害が多発するという消費者被害では、費用及び労力との見合いから、個々の消費者が自ら訴えを提起して被害回復を図ることを断念しがちであることを踏まえ、消費者庁において、このような消費者被害を回復するための制度の検討が行われているところであり、平成23年8月には、消費者庁からは、制度の在り方に関するとりまとめがなされる予定である。
 そのような状況を踏まえ、今回のシンポジウムでは、集団的消費者被害救済制度がどのように消費者被害救済に資することになるのか、わかりやすく解説することを目的に開催されたものである。
当日の次第および概要は次のとおり。

【消費者被害笑百科】
 コープとうきょう組合員の方々による寸劇を交えながら、どのような消費者被害救済に集団的消費者被害救済制度が影響を及ぼすのか、わかりやすく解説がなされた。

【行政からの報告】
 消費者庁企画課企画官加納克利氏より、消費者委員会の下に設けられた「集団的消費者被害制度専門調査会」の検討内容や今後のスケジュールについての報告がなされた。

【特別報告】
 主婦連合会参与の清水鳩子氏より、「ヤミ協定・灯油裁判」を題材に、集団的消費者被害救済制度の必要性と同制度の活用されるものにするためには、法律専門職能・消費者・消費者団体などが連携をしていくことが重要であるとの示唆もなされた。

【パネル・ディスカッション】
 コーディネーター:明治大学教協政策大学院教授・消費者機構日本会長、青山佾氏
 パネラー:弁護士、野々山宏氏
      ㈳全国消費生活相談員協会、丹野美恵子氏
      ㈳日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、唯根妙子氏

  各パネラーの発言およびレジュメから、以下抜粋して引用する。
《唯根妙子氏》
「どうして制度が必要なのか」
 消費者被害は少額で多数の人が巻き込まれます。その中でも、情報も知識も交渉力もない若者や高齢者、障害者が悪質な事業者にだまされるような被害は、たとえ事業者が摘発されたとしても救済されず多くが泣き寝入りになります。
 たとえば、若者が被害に遭うキャッチセールスでの宝石や化粧品の高額品や、高齢者が巻き込まれる健康食品や老人ホーム入所金などは、価格が高額で不透明な契約で違約金も法外だったりしています。こういった被害救済が可能になりますし、輸入品などの偽装表示による被害も救済できたり、抑止できるのではないかと思います。
「こんな時に制度があったらよかったのに」
 最近のインターネットを利用した情報商材といわれるHP作成ソフトやギャンブルソフトの被害、海外宝くじの当選商法や、地デジ・火災報知器設置にからむ訪問業者の被害救済ができるのにと思います。又、携帯電話やプロバイダの通信契約と端末機器のセット販売などの問題も検討していけるのではないかと期待しています。

《丹野美恵子氏》
「どうして制度が必要なのか」
・消費生活センターでは、様々な消費者苦情を受けますが、大部分は契約トラブルであり、とくに少額多数被害と呼ばれるものが多数を占めます。
・消費生活センターでは、消費者の紛争について助言をし、案件によってはあっせんを行うなどして、消費者の被害回復のために尽力します。ただし、中には、消費生活センターには法的強制力がないこともありますが、①そもそも事業者が責任を認めない、②認めたとしても資力がない、③その上、零細な業者では連絡さえつかないなどの理由により、実際には被害回復ができないこともたくさんあります。
・被害回復に有効な方法として裁判がありますが、消費者にとって、裁判は時間、費用、立証責任等の観点から心理的にも実務的にも非常に敷居が高いものです。また裁判外紛争解決機関が複数設立され活用されていますが、紛争件数の多さから言えば、とても全部はフォローできないと思っております。
・このように消費者の少額被害が救済されていない現実を踏まえれば、当然に、集団的消費者被害救済制度が創設される必要があると思っております。
「こんなときに制度があったらよかったのに」
・この制度を作る中で、どのような消費者被害であれば救済できるのかという点は、これからきちんと検討する事柄だと思っています。
・全相協では、既に、専門学校の学費の返還について、また美容整形外科の解約料について、有料老人ホームの退去や死亡時の入居金の返還について、スポーツジムの会費の返還について、探偵契約のキャンセル時の返還金等について、不当条項の差止を行っています。これらは、条項を使うなとの差止や改善が行われても、あくまで「今後は使うな」ということに留まるので、差止の結果の公表後にも、消費者の方から「この業者の以前の契約ではお金が戻るんですか」と問い合わせがあります。その消費者の声に応えなくてはいけない、応えるためには、本制度が必要になると思っています。

《野々山宏氏》
 集団的消費者被害救済制度は、現在、①集合訴訟制度、②行政による経済的不利益賦課制度、③財産保全制度などのいくつかのパターンが構想されており、消費者被害の事案に応じで、これらのパターンを組み合わせて、被害救済にあたることが重要である。
 消費者個人が訴訟を起こすことは現実的には厳しいことが多いのであるが、このような制度の創設により、消費者被害が回復される可能性が高くなる。また、ひとりひとりの被害額が少額で救済が得られない場合でも、事業者に不当利得を吐き出させることにより、市場の公正化が進むと考えられる。
 とくに、①について、当事者適格(適格消費者団体?・被害者の会?)、対象事件(どこまで限定するか?)などについての検討が重ねられている。消費者側としては、できる限り、これらを広い範囲になるよう求めていくべきであろう。

              *

 わたしたち司法書士も、①集合訴訟制度、②行政による経済的不利益賦課制度、③財産保全制度などの様々な視点から集団的消費者被害のための制度を検討していく必要がある。かつ、これは喫緊の課題である。
 とくに、①集合訴訟制度については、個別の消費者が、集合訴訟の過程において、権利確定若しくは分配手続に関与することになる。わたしたち司法書士が、どのように、これら個別の消費者と集合訴訟手続とを繋ぐ懸け橋となっていくことができるのか、という視点からの研究を早急に進めていかなければならない。

日司連月報発行委員会

 平成23年3月9日(水)13時30分から17時まで、日司連において、月報発行委員会が開催されたので、委員として参加した。
 協議の結果、9月号の特集を担当することとなった。
 現時点の腹案としては、「司法書士と犯罪被害者支援」というテーマで企画案を練るつもりだ。
 月報司法書士では、平成21年に、犯罪被害者支援というテーマで、特集を組んだことがあるが、当時は外部への執筆依頼がほとんどという特集であったが、今回は、司法書士による執筆を中心に特集を組んでみたい。
 この数年で司法書士の行う犯罪被害者支援がどの程度展開されてきたのか、その足取りをたどるような内容になればよいと思う。

 また、その他のコーナーでも、司法書士の執筆者を数名推薦させていただいた。
 日司連事務局から私からの紹介でという執筆依頼が入ったら、ぜひとも、ご快諾いただきたい。

民法(債権関係)改正勉強会

 平成23年3月6日(日)7時30分から17時まで、8時間以上にわたり、私の事務所で、民法(債権関係)改正に関する勉強会を開催した。参加者は、伊豆のY司法書士と秋田のS司法書士である。ともに日司連の民事法改正対策部の部委員であり、事実上のミニ対策部会議、といったところだ。
 民法(債権関係)改正は、今年に入ってから法制審議会で「中間的な論点整理の叩き台」が4回に分けて検討されており、その「中間的な論点整理の叩き台」を修正したものがパブリックコメントに付されるものと推測されることから、今回の勉強会では、とくに「中間的な論点整理の叩き台」の(1)と(2)について検討することとした。

 既に意見を述べている部分は、その趣旨を維持してよいか、最終確認をし、その余の部分について、新たに意見を述べることを特に議論した。

 8時間かけても、時間は足りず、また来月に非公式に事実上のミニ対策部会議を開催することになった。
 机の上がチョコレートだらけになってしまったが、自発的に勉強を重ねていく作業は、とても刺激になり、充実したものである。
 このような機会をこれからも大事にしていきたい。

静岡県司法書士会「裁判事務研修会」【犯罪被害者支援】【民法改正】

 平成23年3月5日(土)13時から17時20分まで、静岡県司法書士会において、裁判事務研修会が開催されたので、講師として参加した。
 研修会のテーマは、第1講「司法書士犯罪被害者支援」、第2講「民法改正について」である。第1講は静岡県司法書士会の犯罪被害者支援委員会委員が担当し、私も第1講において損害賠償命令申立制度活用の実務についての講師を担当した。第2講は、一橋大学大学院法学研究科松本恒雄教授に講師としてご登壇いただいた。

 犯罪被害者支援委員会からは、250頁を超える資料を提供いただき、詳細な資料に基づいて司法書士が犯罪被害者支援に取り組む意義、また、そのアプローチ方法、具体例などを講義することができ、今後の司法書士犯罪被害者支援についての指針を示すことができたと思う。

 松本恒雄教授からは、次のテーマで講義をいただいた。
1 なぜ今、債権法改正か
2 法制審議会の審議の経緯
3 中間論点整理案から
4 いくつかの共通傾向(主として検討委員会案に由来)
5 今後の見通し

 松本恒雄教授によると、「中間的な論点整理」は、現在公表されている「叩き台」から大幅に加筆され、「補足説明」を含めると400頁以上になるのではないか、また、中間的な論点整理に基づくパブコメは2~3か月程度の期間が設けられるのではないか、とのことであった。

 早ければ、4月上旬にも公表されるかもしれない「中間的な論点整理」に関する対策を進めていかなければならない。明日は、朝7時30分から、日司連民事法改正対策部部委員有志によるパブコメ対応ミニ合宿(自主トレ)を開催する予定だ。

日本労働弁護団主催「労働者性の否定を許さない集会~そんなあなたは『労働者』~」

 平成23年3月4日(金)18時から20時まで、東京・御茶ノ水において、日本労働弁護団主催で、「労働者性の否定を許さない集会~そんなあなたは『労働者』~」というテーマで集会が開催されたので参加した。
 参加者は、一般の方を含め200名以上である。(なお、弁護士・司法書士のような法律専門職よりも、労働組合関係の方と思われる方々の参加者が多いという印象を受ける。)
 正社員や派遣労働者への規制が厳しくなっている昨今(厳しくなっているというよりも、法の適切な解釈を求めているという結果であり、有期雇用法制の検討が労政審において進められていることも影響していよう)、その反動で、使用者からは、雇用する従業員を委託業務や請負業務であるとして、そもそも労働者ではない、という主張が増加しつつある。このように看過することができない実態を問題視して、今回の集会では、「労働者性」をテーマとしたとのことである。
 集会の次第及び概要は次のとおりである。

【基調報告】
 日本労働弁護団会長である宮里邦雄弁護士から、次の内容で基調報告がなされた。
1 何故いま、「労働者」性(「労働者の定義」)が重要な問題となっているのか。
2 「労働者」概念の重要性と三つの「労働者概念」
 ・労基法上の労働者
 ・労契法上の労働者
 ・労組法上の労働者
3 労組法上の労働者は、労基法、労契法のそれより広くとらえられている―労組法の定義規定の特色
4 労働者の定義規定は抽象的なため、労働者該当性の判断のあり方は何かをめぐって見解が対立している。
5 三判決に共通する問題点―「労働者性」否定の判断手法
 ・新国立劇場運営財団事件、東京高裁H21.3.25労判981号13頁
   財団と出演契約を締結しているオペラ合唱団員
 ・INAXメンテナンス事件、東京高裁H21.9.16労判988号12頁
   住宅設備機器の修理業務を行う業務委託契約を締結している者
 ・ビクターサービスエンジニアリング事件、東京高裁H22.8.26労判1012号86頁(判例ダイジェスト)
   製品の修理、メンテナンス業務を行う個人代行店
6 三事件判決は最高裁(第三小法廷)に係属―最高裁は、高裁判決をどのように見直すか。
7 労組法上の「労働者」性をこえる基本視点
8 「労働者権」の確立を目指すたたかいとして

【「労使関係法研究会」について】
 平成22年11月より、厚労省において、集団的労使関係法制のあり方についての検討が行われている。平成23年6月には「中間報告書とりまとめ」がなされる見込みとのことである。

【「東陽ガス」における「二重契約」の問題性】
 配送に係る雇用契約と「保安・点検」及び「配管工事」という2つの業務委託契約が一人の労働者に締結されている。(合計3つの契約)
 → 業務委託契約の部分が「名ばかり労働者」となっている。
 → 経費以外にも多くの天引きがなされ、当月に天引きできない分は翌月以降に天引きされるという「借金漬け労働」が恒常化している。

【各事件に関して】
 ・CBC管弦楽団労組事件について
 ・ソクハイ事件について
 ・新国立劇場財団事件について
 ・INAXメンテナンス事件について
 ・ビクターサービスエンジニアリング事件について

【集会アピール】
 集会の最後に採択された集会アピールは次のとおり。
「雇用契約によらず、個人請負(委託)形式等によって働いている者が増え、労働基準法上の「労働者」といえるか、労働組合法上の「労働者」にあたるか、ということが重要な問題となっている。とりわけ、個人請負(委託)形式等で就労する者が団結し、団体交渉を申し入れたことについて、労組法上の「労働者」に該当しないとして、使用者がこれを拒否する事件が増加している。その中で、裁判所は、このような使用者の対応を不当労働行為とした労働委員会命令を不当に取り消し、団交拒否を容認する判決を相次いで行っている(新国立劇場運営財団事件・東京高裁平成21年3月25日判決、INAXメンテナンス事件・東京高裁平成21年9月16日判決、ビクターサービスエンジニアリング事件・東京高裁平成22年8月26日判決)。
 個人請負(委託)形式等で就労する者の労組法上の労働者性を否定するこれらの判決は、いずれも労組法上の労働者性につき、「法的」な指揮命令関係ないし使用従属性を要求するなど、使用従属性を過度に強調し、客観的な就労実態は考慮に入れず、使用従属性をもっぱら契約文言上の権利義務の有無という観点から判断している。
 日本国憲法28条は、勤労者の労働基本権を保障している。その趣旨は、勤労者が使用者に対して経済的に従属し、使用者の決めた契約内容に従わざるを得ない立場にあるから、団結によって使用者との実質的な対等化を図り、労働条件を維持・向上させることにある。したがって、この趣旨を具体化した労組法上の労働者性は、団結によって団体交渉の保護を及ぼすことによって実質的な対等化を図る必要性が認められる者、すなわち労務供給の相手方と比べて交渉力が劣り、経済的に依存する立場にある者について広く認められなければならない。同法第3条が、「労働者」を「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」として、労働者概念を労基法及び労働契約法上のそれより広く規定しているのも、このためである。
 使用従属性を過度に強調し、さらには使用従属性の有無を就労実態ではなく、契約文言上の権利義務を中心に判断することは、憲法28条の趣旨及び、労組法の趣旨・目的をないがしろにするものであって、到底認められない。使用者が、個人請負や業務委託など、労働契約とは異なる契約形式を採用するのは、労働者規制を免れ、人件費を切り下げる意図によるものであり、このような非雇用化・非労働者化を容認することは、ワーキングプアの増大にも拍車をかけることになりかねない。
 われわれは、不当な上記3判決について、最高裁に口頭弁論を開いて是正するよう求めてきたが、最高裁は、平成23年3月15日に新国立劇場運営財団事件、同29日にINAXメンテナンス事件につき口頭弁論を開くことを決定した。われわれは、最高裁判所が労組法上の労働者性につき、憲法28条及び労組法の趣旨を尊重した判決を下すよう要求するとともに、個人請負(委託)形式等で働く者の労働者としての権利実現を目指してともに取り組むことを表明する。
                2011年3月4日
    「労働者性の否定を許さない集会」参加者一同」

         *

 今回の集会では、「労組法の労働者性」が主なテーマであったが、個別労使紛争では、「労基法上の労働者性」、「労契法上の労働者性」が問題となることが多い。そして、これらの労働者性は、労組法のそれよりも厳格に解釈される。
 私たち司法書士は個別労使紛争に関わることが多いのであるから、「労基法上労働者性」、「労契法上の労働者性」についての研究も深めていかなければならないといえるだろう。
集会に参加して、そのようなことを考えるきっかけをいただいた。

 

労働審判の実務

 先日、近々行う予定の労働研修の講義レジュメを作成するために、データを整理していたところ、労働審判の事例報告をまとめたものがあったので、内容のうち、事実関係を大幅に簡略化したものをアップする。
 労働審判の利用促進につながれば幸いである。

【事例】
 トラック運転手Aは、長時間労働など過酷な労働条件で労務を提供し続けたことにより、平成19年1月ごろから不眠症を患い、心療内科に通院するようになったが、その医師の勧めもあり、同年6月ごろから、休業していた。なお、休業中は会社より休業手当の支給がされていた。
 同年12月下旬、療養の成果により病状が快復したため、医師の診断書を添えて職場に復帰しようとしたところ、使用者より、「職を変えた方がよいのではないか」など執拗に言われた。しかし、Aは、生活がかかっているので、「今の職場でがんばりたい。そのために療養をしてきたのだから」と懸命にくいさがり、その場では平成20年1月5日より職場に復帰することとなった。
 ところが、Aがその日に出社すると、使用者から、「このまま病気が快復するとも思えない。明日から来なくてよい」と即日解雇を言い渡されたという事案である。
 まず、Aは、職場の労働組合に相談し、労働組合から使用者に対し、Aの解雇に対する質問書を送付してもらったが、使用者からは、「就業規則の解雇事由である『精神または身体の故障のため、業務に耐えられないと認められるとき』に該当するため、解雇は有効である。また、会社の財務状況は債務超過であり、このままAの雇用を継続することはとてもできないので理解をしてほしい」と形式的な回答がなされただけであり、労働組合はそれ以上Aのために動いてはくれなかった。
 平成20年1月下旬には、使用者より解雇予告手当として30日分の平均賃金がAの口座に振り込まれた。
 その後、Aは、同年2月に、労働局の紛争調整委員会にあっせんの申立てをしたが、使用者不出頭のために打ち切られた。
 Aは、このままでは納得ができず、司法書士のもとに相談に訪れた。

【経過】
(1)復職を求めるか否か。
 司法書士が事情を聴きとったところ、Aは、会社業務におけるストレスが主要因で睡眠障害となり、その療養のために休職をしていたのであるから、その直後に言い渡された本件解雇は、労働基準法19条の解雇制限期間に該当し無効であると考えられた。
 また、使用者は、「Aが持参した医師の診断書に『薬物による療養を継続する必要はある』と記載されていたので、副作用などにより居眠り運転をされてしまう可能性がある以上、ドライバーとしての業務につかせることはできず、それ以外の業務につかせるにはポストに空きがなく、経営も苦しいので、困難である」ということを解雇理由の一つに挙げていた。ところが、医師の診断の趣旨は「今後、就労することで更なる病症の快復が期待できる」というものであり、当然、Aの業務がドライバーであることを踏まえての診断であった。したがって、医師の診断書を曲解した解雇理由は、労働基準法18条の2(当時)に基づき、無効であるとも考えられた。
 そのため、司法書士は、Aに対し、まず復職を求めるか否かの確認をした。Aは、職探しが難航することは明らかであるので、可能であれば復職したいとの意向を示し、それが困難であるときは一定の金銭解決も視野に入れるとのことであった。それにより、本件解雇事件は、復職を求める地位確認請求を主たる訴訟物とすることに決定した。なお、この時点で、司法書士は、Aに対し、代理業務ではなく、裁判書類作成関係業務として相談に応じることとした。

(2)労働審判制度を利用するか否か。
 地位確認請求を行うという方針は決定したものの、それを実現するための手続は、①仮処分、②通常訴訟、③労働審判制度などがある。それぞれにメリット・デメリットがあるので、司法書士はAに各手続の説明をしたところ、Aは労働審判制度で進めたいとの意向を示した。なお、労働審判制度は、現在、地方裁判所本庁で行われており、各支部では行っていない裁判所が多いようである。そのため、Aは最寄りの地方裁判所○○支部ではなく、本庁にまで出頭する必要があったので、その旨までを説明したところ、Aが納得したので、司法書士は、労働審判手続申立書の書類作成業務として事件を受任した。なお、Aは、生活費にも窮する状態であったので、労働審判手続の申立てに先立ち、失業保険の仮給付の申請をした。

(3)労働審判の期日
 労働審判手続申立書は、労働審判員の分も必要となるため、相手方の人数分プラス3部を提出することになる。
平成20年2月19日に労働審判手続の申立てをしたところ、同年4月7日に期日が指定された。労働審判法規則13条では40日以内に期日を指定しなければならないとされているものの、本件は年度の変わり目であったので40日を過ぎた指定になったと思われる。
第1回期日前に、相手方代理人弁護士より、求釈明がなされた。Aが療養中に服用していた薬物の名称や量などを明らかにするようにとのことであった。労働審判制度では、「おって主張する」などという形式的な答弁書の記載により期日が空転することは、ほとんどない。最初の期日から、内容のある審理が始まるのである。
 Aも、第1回期日前に適宜、求釈明に対する回答をした。
 また、労働審判法16条但書に基づき、司法書士は書類作成者として傍聴許可の申立てを同時に行っていた。第1回期日の直前まで傍聴許可の判断は留保され、結局、労働審判委員会は司法書士の傍聴を認めなかった。(ただし、後に別の事例で認められたケースあり。)
 第1回期日ではその大半が、労働審判委員会がAから事情を聴くことに費やされ、相手方は使用者本人と代理人弁護士が出頭していたものの、本件の進行に対する意向を若干尋ねられるに留まったようである。第1回期日は2時間弱かかった。
 第2回期日は、同年4月24日に指定された。第1回期日から17日後である。このときに、相手方代理人より、80万円という解決金の提示がなされる。Aは返事を留保し、次回期日の指定を要求する。第3回期日は、同年5月8日に指定された。第2回期日から14日後、申立日から79日後である。この期日に調停が成立しなければ、労働審判が行われることになる。

(4)調停成立
 第3回期日の前に、Aのもとに裁判所書記官から打診があり、労働審判委員会としても、90万円までであれば相手方に強くあっせんしてみるとのことであった。この場合、労働審判は同様に90万円を言い渡される可能性が強い。あくまで復職を求めるのであれば、当然拒絶すべきであるが、Aの頭の中には、最終的には金銭解決という選択肢も残されていた。そして、90万円の支払いを命ずる労働審判に異議を申し立て、訴訟に移行させても、今後の時間と費用のリスクを考慮すると、このまま90万円で応じた方が得策であるとAは判断した。なお、90万という額はAの賃金のおよそ3.5カ月分にあたる。その結果、第3回期日に調停が成立し、解決金は同年5月16日にAの口座に振り込まれた。Aは、その後、その金員を基に求職活動を開始した。

【終りに】
 紛争調整委員会によるあっせんでは使用者は不出頭であったが、労働審判手続では代理人弁護士とともに使用者が出頭した。また、申立てから3カ月以内に解決金の支払いがなされた。これだけをみても、労働審判制度がどれだけ使えるかがお分かりいただけると思う。

静岡県司法書士会常任理事会開催

 平成23年3月1日(火)16時より18時30分まで、静岡県司法書士会において、常任理事会が開催されたので、常任理事として参加した。
 5月に控えた定時総会の準備が主な議事内容である。

 私の担当する相談事業部としても、近時の社会状況を踏まえ、若干、委員会構成を修正する方針だ。

 「司法書士総合相談センターしずおか」の一層の充実を図っていきたい。

民法(債権関係)改正の概要~消費者問題に関連する論点を中心として~IN神戸

 平成23年2月28日18時より20時30分まで、兵庫県司法書士会館において、「民法(債権関係)改正の概要~消費者問題に関連する論点を中心として~」と題する勉強会が開催されたので、全青司副会長として参加した。
 参加者は、明治学院大学の圓山茂夫准教授、消費生活相談員の方々7~8名、兵庫県司法書士会の司法書士の方々8名、全青司役員4名である。
 既に公表している全青司意見書をベースに、民法(債権関係)改正の概要、個別論点の検討を行った。

 消費生活相談員の立場から、意思無能力者のした法律行為の効果を無効とすべきか取消しとすべきかなどにつき、相談現場の実情に即し、率直なご意見等をいただくことができた。

 また、民法の規律について、司法書士等は裁判規範と捉えがちであるが、消費生活相談の現場では相手方と交渉する際の説得規範として用いることが大半であり、今般の改正にあたっても、そのような相談の現場で使い方を意識していただきたいという要望も寄せられた。

 このような消費生活相談員の方々との合同勉強会も全国各地で定期的に開催していきたい。

司法書士としての生き方 その16

 司法書士になるまでの回想記の続きである。バックナンバーは、左欄の「司法書士新人研修」からご覧いただきたい。

 さて、受験勉強2年目になると、テキストの復習をしながら、過去問を丁寧に解く余裕が生まれた。
 受験準備には、「テキスト1種類」、「過去問」、「六法」のほか、必要ないということも分かってきた。

 それらを繰り返しながら、次の試験までに、合格に必要な知識をおそらく身につけることができるだろうという、根拠のない自信を深めていった。

 この「根拠のない自信」というのは、何をなすにも、極めて重要である。

 自信の裏付けに根拠があってはいけない。
 たとえば、答練で○位だったとか、テキストを○回読み込んだとか、そのような具体的データに基づく自信は弊害としかなりえない。
 考えてみてほしい。
 それだけやっても、ダメなときはダメ、という試験である。
 根拠に依拠した自信は、仮に、ダメだったときに、「あれだけやってもダメだったんだ、もうあれ以上できない・・・」という思考になりがちである。
 そのような自信であれば最初から持たない方がよい。

 一方、「根拠のない自信」であれば、結果がでなくとも、自信をなくすことはなく、何事にも覆されることがない。
 常に前向きな気持ちを保つことができる。

 次回述べることになるが、司法書士試験は一定レベルに達すると精神的な部分での勝負になる試験である。
 最後の段階で、このような気の持ちようは大きく影響すると思う。

 「根拠のない自信」を持つということは、今でも、司法書士業務をするにあたり、とても役に立っている。

 なお、山田茂樹司法書士の「司法書士という生き方」は本稿の姉妹編とも呼べるものであるので、改めて紹介しておく。




 
プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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