全青司消費者問題対策シンポジウム「貸金業者倒産手続の検討と今後の課題」

 平成23年1月29日(土)12時より16時まで、大阪において、全青司の主催で「貸金業者倒産手続の検討と今後の課題~武富士会社更生法に関する諸問題を通じて~」が開催されたので、副会長として参加した。
 当日は数十名の司法書士の参加があった。
 主なプログラムは次のとおり。
1 民事再生法
2 武富士を事例として見る会社更生法
3 アイフルの私的整理は最後まで成功するのか?~事業再生ADR手続を知る~

 また、同日、同所において、16時より18時まで、同じく全青司の主催で「刑事法フォーラム~新しい刑事司法(犯罪被害者支援)~」も開催された。
 とくに、司法書士が犯罪被害者からの相談を受けるにあたっての心構え、支援実務について、実際に犯罪被害者支援の活動を行なっている司法書士から実践報告がなされた。

 終息しつつあるようにみえる多重債務問題に関する詰めの問題とともに、司法書士にとって未知の分野であるといえる犯罪被害者支援に関する研修を同日に開催することの意義は大きいだろう。

 司法書士が取り組まなければならない問題は依然として山積みである。

 なお、翌日は、大阪において、全青司民法(債権関係)改正対策委員会が開催されたので、その報告は、また日を改めて述べることとする。

法制審議会民法(債権関係)部会

 法制審議会民法(債権関係)部会の第20回議事録までが公表された。

 http://www.moj.go.jp

 これで、民法典の検討課題が一巡したことになる。
 1月からは「中間的な論点整理」に向けて、今までの議論の整理が行われる見込みのようだ。

 ところで、日司連の対策部部委員をしていると、何か特別な情報を得て、それらに基づいて議論をしていると思われる方もいらっしゃるようだが、けっしてそうではない。
 法務省からの情報公開も進んでおり、私たちが対策部で議論しているのは、すべて公開情報に基づく資料がベースだ。

 すなわち、司法書士の任意団体や個人の方も、まったく同じ土俵で民法(債権関係)改正の議論をすることができるのだ。
 量は膨大だが、これらを読み込みことは、とても重要であり、さらに、それらについて意見を述べることは、もっと重要だ。

 春に予定されているパブコメでは日司連以外の司法書士(団体)からも、どんどん意見が出されることを強く期待している。

中央新人研修(つくば)

 平成23年1月26日(水)10時55分から12時15分まで、つくばにおいて開催されている中央新人研修で「労働問題」について講師をさせていただいた。
 内容は、先週行った神戸での講義と同じである。
 受講生は、主に日本東地区の司法書士有資格者である。

 さて、今回も私のコマの前は、静岡の小澤吉徳先生が裁判業務全般について講義されていたのだが、その講義を聴講させていただいて、驚いたことがある。
 講義のまとめ方が私と同じだったのだ。
 「司法書士の業務は無限大であり、私の紹介する労働問題は、その一例に過ぎない。受講生は開業されていから、当然、労働問題に取り組んでいただきたいが、活動は労働問題に留まらず、未知の分野にも積極的に取り組み、これからどんどん情報発信してほしい。」
 ということを私はメッセージとして伝えているのだが、その趣旨と全く同じことを小澤吉徳先生もおっしゃっていた。

 まとめ方が「たまたま」似たというより、私の発想が小澤吉徳先生に大きく影響を受けているのだろうと思う。
 つまり、講義のまとめ方が似るのは必然であったのだろう。
 どんな講義をしても、同じ内容の講義をする自信もある。
 これがマインドの承継か、と実感した。
 まだまだ私は小澤吉徳先生の足元にも及ばないが、引き続き、大きな背中を追いかけていきたい。

 なお、今回の中央新人研修のカリキュラムは、神戸もつくばも、さらに私の後に、古橋清二司法書士の消費者問題のコマもあり、お二人とともに2会場で新人に向けた講師を担当させていただいたことは私の司法書士研修講師人生にとって、非常に大きな意味を持つものである。

 個人的には、私の講師歴の集大成であるともいえ、これで最終回としても良いくらいだ。
 そうはいうものの、まだまだ研究しなければならないこと、発信しなければならないこと、が山盛りなので、とりあえずは、今回をもって「第一部完」といったところである。

 すぐに第二部がスタートするのだが(笑)。


日司連民事法改正対策部開催

 平成23年1月25日11時から17時まで、日司連において、民事法改正対策部が開催されたので、部委員として参加した。
 今回の議題は、今年の6月から開始予定の月報司法書士の民法(債権関係)改正に関する連載の件、次年度開催予定の研修会の件、法務省が今年の春以降に行う予定のパブコメ対応に関する件、などである。
 各グループに分かれて、具体的議論も行なった。
 
 また、同日17時から19時までの間、同じく日司連において、日経新聞の小林記者と打ち合わせを行なった。小林記者は、月報司法書士に新聞記者からみた司法書士というテーマで、毎月、コラムを担当していただいている。次回は、司法書士と労働問題というテーマでコラムを執筆されるということなので、長野のK司法書士とともに司法書士の受ける労働相談の実際について色々とお話させていただいた。

 その後、秋葉原から、つくばエキスプレスで、つくばへ。
 翌日に、中央新人研修の講師があるためだ。

司法書士としての生き方 その14

 司法書士になるまでの回想記の続きである。バックナンバーは、左欄の「司法書士新人研修」からご覧いただきたい。

 このテーマは久々の更新だが、話は、いよいよ1回目の司法書士試験を受験することになったところからである。

 司法書士試験の出題範囲は膨大である。
 受験一年目の私は、主要科目である民法、不動産登記法、商法(会社法)、商業登記法を回すだけで精いっぱいであり、試験会場に向かう電車で刑法の過去問を初めて解いているような状態であった。
 いわゆる記念受験に毛が生えた程度の準備しかしていなかったともいえる。

 しかし、試験問題を解きながら、この問題であれば、おそらく後1年で記述式を含めて8割以上を理解することができるだろうという、これまた根拠のない自信も芽生えた。
 ただし、その目的達成のためには、自分の能力を踏まえ、自分の生活から様々のものをそぎ落とすことが必要であるということも実感した。
 すなわち、会社関係での勤務時間以外の付き合いとプライベートでの交友関係も一切断つ、ということが必要だと判断したのである。
 そして、実行した。

 このように司法書士試験を通じて、自分の能力を客観的に把握し、目標達成のために、優先順位をたて、優先度の低いものは自分の事務処理能力の追いつくまで捨てる、ということを学んだ。

 これは、とくに司法書士になってからの実務に大いに役立っている。

 あれもこれもやろうとするのは能力のある人にのみ許された特権である。
 私のように能力の限られた人は「あれ」をやろうとするのなら、「これ」を捨てねばならない。
 このように自分の能力を超えた部分のものを捨てる覚悟をし、実行さえできれば、後はやるだけである。
 
 そして、司法書士試験の受験は2回目に突入するのだが、その話は、また次の機会に。

 ところで、私の「司法書士としての生き方」というテーマの関連書籍として、下記の書籍がある。
 司法書士になってから、悪質商法と対峙する司法書士の生き方をつぶさに綴った短篇集であり、とくに開業間もない司法書士の方にオススメだ。




全青司さいたま代表者会議

 平成23年1月22日(土)9時30分から12時まで全青司役員会、同日13時から18時までと同月24日(日)9時30分から12時30分まで全青司代表者会議が埼玉で開催されたので、副会長として参加した。
 司法書士法改正大綱案に関する件、武富士対策に関する件、民法(債権関係)改正の動向など、多くの議題について協議・報告がなされた。
 今回の会議では、議長を務めたので、議題の整理や時間配分などに気をつけながら、議事を進行させていただいた。
 全青司の会議では、7人の副会長が持ち回りで議長を行っているが(一部、代表者が議長を務めることもある)、議長を担当するときの会議は、いつも以上に疲れるものだ。
 参加者のご協力により、両日とも予定通りの次第を進行させることができた。この場を借りて、参加者の皆様には感謝申し上げたい。

 また、代表者会議終了後には、次年度の役員予定者による予定者会議も開催された。
 委員会構成や委員会ごとの予算配分など、大枠についての協議が行われた。

 なお、今年度より、全青司では、役員会についてはユーストリームを利用した配信を行なっており、役員会に参加できないときがあっても、議論についてこれるような体制も整えているところである。このように時間的・経済的負担に配慮した基盤づくりもなされているので、全青司会員は、積極的に役員となって、思う存分全青司活動を楽しんでいただきたいと考えている。全青司の年度は3月で入れ替わるので、この年度の入れ替わりの時期から全青司に関わると具体的活動に携わりやすいと思われる。

中央新人研修(神戸)

 平成23年1月20日10時55分から12時15分まで、神戸において、司法書士中央新人研修が行われたので、講師として登壇した。司法書士となる資格を有するものを対象に、日本東部と西部の2会場で、それぞれ一週間にわたって行われる新人司法書士の研修としては最大規模のものだ。
 私は、「労働問題」というテーマを担当し、80分間の講義を行なった。

 私のコマの前は私の師匠である小澤吉徳司法書士が担当され、私のコマの後は尊敬する古橋清二司法書士が担当される。まさか両人と同じ演台にたてるときが来るとは開業当時思いもしなかった。実に光栄なことである。

 さて、私の講義が中継ぎの役目を果たすことができたかどうかは、受講生のアンケート結果を見るまでわからないが、講義の中では2つのことを伝えることに集中した。
 すなわち、①これから積極的に労働問題に取り組んでいただきたいということと、②司法書士にとって新しい(と思われる)業務を研究し、全国へ後輩へ情報発信をしていただきたいということである。

 一人でも多くの受講生に、これらのことが伝わっていれば本望である。
 次は東部会場として、1月26日(水)に、つくばで行う予定である。

平成22年度第2回関東ブロック業務拡充担当者会議開催

 平成23年1月19日(水)15時から17時まで、日司連ビル2階において、平成22年度第2回関東ブロック業務拡充担当者会議が開催されたので、静岡県司法書士会相談事業部長として参加した。参加者は、関東ブロック11会の担当者と日司連理事、日司連裁判事務推進委員会委員長である。
裁判業務のうち、とくに簡裁訴訟代理関係業務について拡充を図ることを目的に定期的に開催されている会議だ。
 当日は、主に次の議題について協議された。
1 多重債務事件以外の裁判事務受託促進問題について
2 簡裁代理権の積極的な活用、周辺業務や新たな業務分野の開拓について
3 その他

 協議の詳細は次のとおり。
 日司連裁判事務推進委員会委員長から、日司連で把握している裁判書類作成関係業務及び簡裁訴訟代理関係業務の司法書士関与率について報告がなされ、関与する事件に大きな偏り(過払い請求)があるという問題点が指摘され、広く一般民事事件に対して関与していかなければならないとの検討課題が示された。
単位会の取り組みとして、埼玉会で行っている少額事件裁判事務推進助成金制度やリアルタイムでの裁判事務研修についての報告がなされた。また、神奈川会では、ベテラン司法書士と新人司法書士の共同受託制度も試みているとのことであった。
 また、近時、一部の簡易裁判所で運用されている付調停事件の実情や傾向についての報告もなされた。
 日司連では多重債務事件以外の裁判事務受託促進について問題意識は持っているものの、具体的事業活動の展開の方法については検討段階に留まっているようだ。
日司連のイメージとしては、認定司法書士が年間1件ベースで受託件数を増加するような働きかけをしていくという方針のようだ。
 しかしながら、これに対しては疑問がある。
 簡裁代理権付与後8年が経過しようとしているにもかかわらず、訴訟業務を受託しない会員が今さら日司連からの呼びかけで受任するとは思えないからだ。
 私は、受託件数の増加を図るには、既にある程度一般民事事件を受託している司法書士がさらに受託件数を増やすためのバックアップ及び裁判業務を受託する新規開業者を増やすためのバックアップが重要になると考えている。そのように会議では発言させていただいた。

司法書士業務に専念できる日

 平成23年1月18日は、私にしては珍しく一日事務所にて執務ができる日であった。

 今週は、月曜日・研修講師、水曜日・東京での会議、木曜日・研修講師、金曜日・東京での会議、と、ほぼ連日事務所を空け続けることなるので、火曜日は貴重な執務日である。

 競馬情報代金返還請求の少額訴訟の訴状起案、建物明渡請求の訴状起案、物損交通事故の求償金請求の支払督促起案など、立て続けに執務を続ける。ちなみに、これらは溜まっている仕事ではない。来週以降に動く予定の事件の準備である。自分のメモリーの容量を把握しているつもりなので、手の空いたときに常に先の業務をやることを心がけている。
 その合間にも、敷金返還請求の相談のアポイントや消滅時効に関する相談などが立て続けにあり、今までに継続している事件の打ち合わせに依頼者も30分刻みで10人以上来所された。

 今週の仕事を1日で終わらせなければならないので、それなりにタイトだ。
 おかげで司法書士業務を満喫することができた。


 

関東ブロック新人研修クレサラゼミナール

 平成23年1月17日(月)14時35分から17時45分まで、横浜において、関東ブロック新人研修クレサラゼミナールが開催されたので、チューターとして参加した。私のクラスでは、主に埼玉で合格した新人15名を担当した。
 クレサラゼミナールの内容は、ある事例について、破産、個人再生、任意整理等の手続をあてはめて、その可否、メリット・デメリットなどをグループ討議をすることにより、検討するというものが主である。
 昨年までは、ロールプレイをふんだんに取り入れていたのだが、今年からはディスカッションを重視する方針に改められた。
 それぞれの手続を比較することも重要であるが、実務では、手続のあてはめの優先順位も重要だ。破産すべき案件を無理な家計を強要して任意整理で処理するということはあってはならないからだ。
 そのような留意点を踏まえた上で、ゼミナールを進行した。

 また、面談時の留意点なども、できるかぎり受講生から意見を吸い上げる形で進めると、あっというまに時間が終了してしまった。

 私は、クレサラゼミナールのチューターを5年ほど担当させていただいているが、必ず最後に言うことがある。
 それは、「クレサラ事件は、頭で理解できても、自分で経験しなければ意味がない。心身ともに疲弊しきった相談者が相談の過程で生気を取り戻す過程を、これから生で体験してほしい。そのためには、地元で開催されるクレサラ110番や相談センターの相談員などに積極的に参加してもらいたい。」
 今年も、上記内容を伝えて、クレサラゼミナールを終了した。

 一人でも多くの新人が実践してくれることを期待している。

 さて、次は、中央新人研修だ。
 今週は神戸で、来週はつくばで、それぞれ「労働問題」に関する講義を行う予定である。


全青司・大阪司法書士会共催「消費者問題最前線~悪質商法を突破せよ~」

 平成23年1月15日13時から17時まで、大阪司法書士会において、全青司・大阪司法書士会共催でシンポジウム「消費者問題最前線~悪質商法を突破せよ~」が開催されたので、全青司副会長として出席した。司法書士100名前後が参加した。
 当日の主な内容は、次のとおりである。
 基調講演は、「最近の消費者問題と法律実務家の役割」というテーマで、国民生活センター理事長である野々山宏弁護士が講義された。講義の内容は、国民生活センターの業務内容、寄せられる具体的相談事例、そして、今後の国民生活センターの在り方についてまで及んだ。
野々山宏弁護士によると、消費者問題に対する法律実務家の役割には次の5つがあるという。すなわち、①被害救済の役割、②社会の問題点を発見する役割、③新たな紛争解決先例や判決例を形成することによる社会貢献の役割、④法政策や法制度に対して意見を述べる役割、⑤法律実務以外の世界に進出して、「法の支配」を貫徹させる役割、である。
 その後、パネルディスカッションの形式で、「悪質商法の現場から」というテーマで、次の登壇者によるリレー報告がなされた。
  司会 谷嘉浩司法書士
1 消費者問題の現場から~消費生活センター~ 喜多川千恵子消費生活相談員
2 クレジットの実情を全て見せます~元信販会社社員として~森田裕一司法書士
3 消費者被害の救済に向けて~定番編~  登山祐樹司法書士
4 消費者被害の救済に向けて~新たなる試み~ 森田裕一司法書士
5 消費者自身の取り組み~消費者団体~ 川戸周平司法書士

 シンポジウムの最後に、私は、次のような閉会の挨拶を行なった。
「わたしたち司法書士の取組みも、現在、突出していた多重債務相談から、悪質商法を含む消費者問題全般に関する相談へと大きくシフトしようとしている。本日、ご紹介いただいたように消費者被害はイタチごっこを繰り返しており、常に最新情報を入手しておく必要がある。本シンポジウムは、悪質商法などの消費者被害に司法書士が取り組むためのきっかけとなるべく開催させていただいたが、これからも継続的に消費者問題最前線を追い続けていかなければならない。なお、基調講演を頂いた野々山先生の講義の続きは、平成23年9月17日に静岡で開催される全青司しずおか全国研修で聴くことができる。次回は、ぜひ静岡にいらしていただきたい。」


日司連月報発行委員会

 平成23年1月13日(木)13時30分から17時まで、日司連において、月報発行委員会が開催されたので、委員として参加した。
 今週は、司法書士の民事紛争に関する文章を立て続けにアップしていたが、その間も、静岡県司法書士会総合相談センター相談員、法律扶助審査員など会務が毎日続いている。
 さて、今回の月報発行委員会では、昨日までにアップしていた原稿を入稿したので、気が楽であった。

 月報司法書士の「現代を読み解く講座」では、「クラウドと司法書士業務」というテーマを提案し、採用されたので、執筆者に静岡の小林亮介司法書士を推薦した。以前にも、このブログで紹介したが、クラウドやツイッターをテーマにした読書術「アウトプット・リーディング」の著者である。



 また、先日、私の担当する犯罪被害者保護法に基づく損害賠償命令申立事件が完結したので、その報告記を掲載することを提案したところ、採用されたので、これから執筆に取りかかる予定である。
 
 なお、登記に関する報告記は来春以降に執筆者を一人推薦する予定だ。私から頼まれた方は、快く受けていただきたい。
 

民事紛争における司法書士の果たすべき役割その4

4 民事紛争における司法書士の果たすべき役割
 簡裁訴訟代理関係業務の偏りが指摘されており、実務の実感としても同様に感じているところであるのだが、実は、この偏りにおける全国的なデータはない。前述した司法統計も事件名別には集計されていない。したがって、偏りを正確に把握することは困難な状況である。
以上のような状況を踏まえ、筆者は、今後、民事紛争における司法書士の果たすべき役割を具体的に、より深く考察するのであれば、司法書士の簡裁訴訟代理関係業務の事件名別集計をする必要があるのではないかと考えている。それには全国の司法書士の協力を得て、全国の簡裁に掲示される事件名を集計するなどの方法が考えられる。このような集計をすることによって、司法書士にとって、おそろしい現実が突きつけられる可能性も否定できないが、現実を直視しなければ、今後の展望を検討することはできないだろう。
 果たして、実践が理念にどれほど適合していないのか、私たちが自ら問いただしていかなければならないと思うのだ。
 そのような具体的データのない現状においては、実践を理念に適合させるための方策を、前項の①乃至④に対応して、以下、それぞれ述べることとしたい。
 ① 司法書士が受けるトラブル相談の総数と多様性の貧困さを改善するために、司法書士総合相談センターの充実と様々な類型の事件に関する研修及び相談会を積極的に開催していく必要があろう。債務整理に関する紛争に偏重することなく、「B(事業者)to C(消費者)間」の紛争全般、たとえば、契約トラブルなどの悪質商法の事件にも、もっと積極的に関与すべきであるし、紛争当事者が市民同士となる一般民事事件にも広く対応することを強く意識すべきである。具体的には、日司連が例年各会に呼びかけている「労働トラブル110番」のほか、「賃貸トラブル110番」、「物損交通事故110番」等の開催を呼びかけることにより、個々の司法書士が幅広い紛争類型に関与するための仕掛け作りが重要になる。
 また、顕在化した紛争に関わる司法書士の増加には、前述のとおり試験制度改革も視野に入れるべきであろうと思われる。
 ② 司法書士が提供する役務内容の機能充実を図るために、裁判書類作成関係業務だけでなく、簡裁訴訟代理関係業務のうち、とくに訴訟外での交渉術を磨く必要がある。紛争に代理人として関与するということは、対立当事者間の間に入って利害調整を行うことを意味する。そのような利害調整は全てが訴訟に適合的というわけではないと言われている。
法的には関連しない性質の事項であっても、交渉によって、それらを一括で解決することが妥当であるケースもあるし、後述④に述べるように紛争処理のコストを下げる意味においても、簡易・迅速な交渉を試みる意義は大きい。このように、新しい理念に伴う実践活動を行う司法書士は文章がかけるだけでなく、交渉もできなければならないのだ。
 なお、簡裁代理権の訴訟外での活用の具体例については、拙稿(「裁判外における簡裁代理権の活用」月報司法書士418号26頁)をご参照いただきたい。
 ③ 近年、司法書士の地方開業が低下しつつある傾向への対策を立てるために、新規開業希望者を中心に、司法過疎地を始めとする地方での開業を促進していく必要がある。日司連でも司法過疎地での開業支援等を行っており、司法過疎地における開業者も増えつつあるが、地方における司法書士の減少率と比較すると現状は不十分な対策であると言わざるをえない。現在の支援は開業に至るまでのいわば片道切符型の支援となっているので、開業後に状況に応じて従前の居住地等に比較的容易に戻ることが可能となるような、いわば往復切符型の支援等も含めた制度の抜本的見直しを検討すべきだろう。
 同時に、地方で既に開業している司法書士に対する簡裁訴訟代理関係業務に関する研修等も一層実施していかなければならないが、簡裁訴訟代理関係業務を行うようになって既に7年が経過しており、既存の開業者の業務拡充の急激な増加は、さほど見込めないのではないだろうか。
そのような事情を鑑みると、司法過疎地を始めとする地方での開業促進は、新たな理念に基づく試験に合格した者を、いかに誘致するかが鍵となるように思われるのである。
 ④ 簡裁訴訟代理関係業務の労力と報酬の対価が対等となるために、紛争処理の合理化を図る必要があるが、司法書士が代理する業務は簡裁の事物管轄に関する民事紛争に限定され、経済的利益が140万円以下の紛争に限られる。したがって、紛争の経済的利益に比例し、自ずと報酬も低額となることが大半であると思われる。
 このような簡裁訴訟代理関係業務と報酬との関係に対し、他の業務で事務所経営に必要な報酬を得て、簡裁訴訟代理関係業務は赤字であっても構わないという考え方もあろうが、制度全体として、そのような考え方で推し進めると、簡裁訴訟代理関係業務を行う司法書士の裾野は広がらない。裾野を広げるためには、少額民事紛争への関与をプロボノマインドに頼ってはならないのだ。
 合理的判断に基づき司法書士が少額民事紛争に関わっていくためには、報酬と簡裁訴訟代理関係業務の労力とは対等の関係でなければならない。理想は、簡裁訴訟代理関係業務を軸とした少額民事紛争への関与だけでも、件数をこなすことにより事務所経営が維持できるという状況である。
 この点、仁木論文では、「事務所における業務遂行の合理化」、「補助者や事務職員の役割の検討」等が掲げられている。
 ほかにも、前述②に関連し、紛争処理の方法として、まず、手続が厳格な訴訟ではなく、交渉による簡易・迅速な解決を図ることも検討すべきだろう。

 以上、思うままの方策を述べさせていただいた。考えの至らぬところも多々あることは承知の上である。本稿は、民事紛争における司法書士の果たすべき役割の議論の叩き台として寄稿したものであるので、厳しいご意見・ご批判をいただくことにより、議論が活性となれば本望である。また、その際には、仁木論文を是非とも精読いただきたい。

               *

 「司法書士の紛争処理機関の機能の理念は、簡裁訴訟代理関係業務が加わったことにより、変容を遂げたのか。」
 「果たして、その理念に適合した実践はなされているのか。」

 仁木論文により投げかけられた、これら2つの問いに答えていくことで、民事紛争における司法書士の果たすべき役割は自明のものとなっていくのだろうと私は考えている。

民事紛争における司法書士の果たすべき役割その3

3 『司法書士の紛争処理機能』論による考察
 この指摘に対し、仁木論文では自ら、司法書士の紛争処理機構の理念につき、一時的にせよ、貸金業者に対する不当利得返還請求事件の大量突出によって司法書士が党派的な法役務を体験したことによって理念が変容するのではないか、との見解を述べている。すなわち、新たな理念の誕生が示唆されているのである。
一方、筆者は、簡裁訴訟代理関係業務の拡充によっても、従来の理念に変わりはないと考えている。つまり、少額民事紛争の代理人として紛争に関与することも、裁判書類作成によって本人訴訟を支援することも、一元的に整理し、理解することが可能であると考えているのである。なぜなら、簡裁訴訟代理関係業務も裁判書類作成関係業務も、紛争解決に至る手続を複雑とせずに、できるだけ低廉な費用で解決するという意味では、いずれも同じだからだ。また、いずれの手続においても、紛争当事者が、よりダイレクトに紛争と関わり続けることになり、その結果、紛争当事者をエンパワーするという効果も生じることになると思うのだ。
 しかしながら、仁木論文の見解は首肯できる部分も多く、確かに、簡裁訴訟代理関係業務の拡充によって、司法書士制度は生まれ変わったと評価する向きがないわけでもない。まさに司法書士の紛争処理機関としての機能の理念に対する理解は過度期を迎えているのだろうと思う。
そのような状況と寄稿の趣旨を踏まえ、本稿では、仁木論文の見解のとおり、近時の司法書士の紛争処理機関としての機能に新たな理念が生じたという前提で論考を進めていきたい。
 この新たな理念という視点から司法書士の紛争処理機関としての機能を考える際、仁木論文では、理念と実践とを対比させ、新たな理念に対して、果たして業務の実践が適合しているのか、というアプローチで検討する方法が提案されている。
 このように理念と実践との対比による検討は、法律実務家の機能を考えるには極めて有用であるように思う。実践の伴わない理念は、法律実務家には机上の理念でしかありえないからだ。
さて、業務の実践について、その件数に着目すると、今や、裁判書類作成関係業務よりも簡裁訴訟代理関係業務として民事紛争に係わるケースの方が多いのではないか、というのが筆者の周囲を見渡した実感である。このような実感からは、新たな理念に対する実績は数値の上では充分であると言い得ることもできるのだが、果たして、その質は充分なのだろうか。
 この点に関し、仁木論文では、司法書士の紛争処理機関では本人支援の機能は実践されているとみることができるものの、多様な紛争の相談を受けている状況にはないと実践の質の欠乏を鋭く指摘し、このような現状を受け、「今後、拡充された司法書士の法的能力(筆者注:簡裁訴訟代理関係業務)が機能するようになることが望まれる」との将来の課題が提言されているところである。
 確かに簡裁訴訟代理関係業務の多くは前述のとおり貸金業者に対する不当利得返還請求事件に極端に偏っていると思われ、質の欠乏は否定できない。
 しかしながら、不動産に関するトラブルや労働問題に関するトラブルなど、徐々にではあるが、司法書士が代理人となって民事紛争に関与するケースも増えつつある。わたしたち司法書士は、仁木論文の指摘を胸に刻み込み、新たな理念に対応する幅の広い実践活動を行っていくためにも、一般民事事件の受託範囲の拡充に努めていかなければならないだろう。
 ところで、司法書士の紛争処理機能の理念と実践を適合させるために、仁木論文では、次の4つの課題が提示されている。
① 司法書士が受けるトラブル相談の総数と多様性の貧困さを改善しなければならない。
② 司法書士が提供する役務内容の機能充実を図らなければならない。
③ 近年、司法書士の地方開業が低下しつつある傾向を防止しなければならない。同時に、地方で既に開業している司法書士への簡裁訴訟代理関係業務受託の促進をしなければならない。
④ 簡裁訴訟代理関係業務の労力と報酬の対価が対等となるようにしていかなければならない。
 なお、この4つの課題をクリアする過程では、司法書士にとって新たな倫理の問題が惹起するおそれもあるので、倫理への対処も重要になると付言されている。

 次項では、これら4つの課題への方策を検討することによって、民事紛争における司法書士の果たすべき役割について考えてみたい。
 

民事紛争における司法書士の果たすべき役割その2

2 民事紛争における司法書士の役割の変遷
 筆者は、司法書士としての経歴が10年にも満たない若輩者であるため、本来、司法書士の役割の変遷を語る資格はない。とはいうものの、本稿では簡裁訴訟代理関係業務の前後における司法書士の役割は、どうしても整理する必要があるので、私見とお断りさせていただいた上で述べることにする。
 従来から司法書士は、登記を主な業務とすることが多く、不動産登記や商業登記等に関する登記申請代理及びそれらに付随する書類作成等を通じ、権利関係の確定に寄与してきた。登記が迅速・円滑になされることによって、紛争を未然に防いできたと評価することができ、司法書士は長らく予防司法の役割を担ってきたといえるだろう。
 登記を主たる業務とする司法書士は今でも大半であると思われるが、仁木論文は、その要因が登記に偏った試験制度と特認制度にあると分析する。すなわち、司法書士試験合格者は登記に関する専門的知見が突出しており、法務局からの人材登用である特認司法書士においても自ずと、それまでの経験を生かす傾向が強く、いずれのルートで司法書士になっても、登記に比重を置くことは当然である、という分析である。
 この分析を逆から考えると、仁木論文では、今後、登記以外の業務を主たる業務とする司法書士の増加を図るのであれば、試験制度改革も必要になることが示唆されているといえよう。
 さて、司法書士は登記とともに、裁判書類作成という業務も担っていた。仁木論文でも、この業務に着目し、弁護士不在地域にも存在する司法書士が弁護士の機能を代替して法的役務を提供していたのではないかとの検討がなされている。
 しかしながら、弁護士不在地域でのみ司法書士が民事紛争に関する法的役務を提供していたのかというと、必ずしもそうではない。仁木論文で引用されたデータによると、逆に、弁護士集中地域で司法書士を利用する相談者も多いという結果も紹介されている。
 このことから、司法書士の裁判書類作成関係業務は、弁護士機能の代替ではないと理解することもできよう。
 現に仁木論文では、司法書士の民事紛争に関する機能を、弁護士の包括的訴訟代理によらなくても司法書士による裁判書類作成関係業務で目的達成ができる場合には紛争当事者は事前に司法書士を選択する傾向があるという側面(紛争解決により得られる利得と紛争解決に要する手続(尋問等を要するか)・費用とを対比させて選択するのだろう)と、司法書士の行う業務が書類作成関係業務に制約されているからこそ、紛争当事者の話をよく聴き、紛争の概要を整理して紛争当事者に伝えることにより、紛争当事者をエンパワーするという側面の2つの側面から生じる機能に関する分析が展開されている。
 これらの機能により、司法書士は紛争処理機能としての独自性を有することになり、その独自性の中から本人訴訟支援という理念が形成されたといえよう。
 その後、平成14年司法書士法改正により、司法書士が簡裁訴訟代理関係業務を行うようになると、司法書士は、その代理権の範囲内で代理人として民事紛争に関与するようになり、前述の登記業務における予防司法的役割、裁判書類作成関係業務における紛争当事者をエンパワーする役割、手続の複雑でない紛争をできるだけ低コストで解決したいというニーズに応える役割のほか、少額民事紛争の専門家という役割をも合わせ持つことになった。これにより、こと顕在化した民事紛争に関して言えば、「本人訴訟支援」と「代理」という、一見、両立しない関与の在り方が併存することになったと言うこともできる。
 仁木論文では、このような状況を経て、現在、「司法書士の紛争処理の理念モデルは、「本人支援」をどのようなかたちで維持することができるのか、それとも大幅な組み換えを検討せざるを得ないのか」と、司法書士の紛争処理機関の機能の理念について抜本的修正の検討が求められているとの指摘がなされている。

民事紛争における司法書士の果たすべき役割その1

 民事紛争における司法書士の果たすべき役割について文章をかいたので、4回にわたりアップすることとする。なお、本稿は、さらに推敲したものが月報司法書士2月号に掲載される予定である。

 1 はじめに
 司法書士が簡裁訴訟代理関係業務を行うようになり7年が経過し、その業務も定着しつつあるようにみえる。司法統計の司法書士関与率からも明らかのように、簡裁訴訟代理関係業務が司法書士の業務に大きな影響を与えたことは間違いない。
 しかしながら、その関与の在り方には大きな偏りがあるのではないか、との指摘も寄せられているところである。
 簡裁訴訟代理関係業務が、このような偏りを見せながら定着しようとしつつある今こそ、従来の業務との比較、そして、これからの業務の在り方について再考すべき時期ではないだろうか。
 このように考えていた折、東京大学出版会から「現代日本の紛争処理と民事司法」全3巻が刊行された。1巻では「法意識と紛争行動」というサブテーマで、とくに法意識や問題経験と紛争行動について論ぜられており、2巻では「トラブル経験と相談行動」というサブテーマで、とくにトラブルから相談への経過や法専門職の関与について論ぜられており、3巻では「裁判経験と訴訟行動」というサブテーマで、訴訟当事者の社会的属性、利用者の期待と評価、民事訴訟における和解について論ぜられている。このうち、とくに2巻では、大阪大学准教授の仁木恒夫氏の『司法書士の紛争処理機能』という論文(以下「仁木論文」という)が掲載されており、その内容は司法書士の紛争処理機能を理念と実践との両面から考察したものであり、司法書士にとって、非常に示唆に富む内容となっている。
 筆者が、この仁木論文に触れ、司法書士としての民事紛争への関与の在り方を文章にまとめたいという思いを強くしていたところ、幸いにも月報発行委員会の委員として、「現代日本の紛争処理と民事司法」に関する論考を寄稿する機会に恵まれた。
 そこで本稿では、仁木論文を手がかりに簡裁訴訟代理関係業務を行うようになった前後の民事紛争における司法書士の役割の変遷を振り返った後、現状における司法書士の紛争処理機関としての機能を確認し、さらに、それらを踏まえ、今後の民事紛争における司法書士の果たすべき役割について考えてみたい。









【書籍紹介】家族法改正

 有斐閣から「家族法改正~婚姻・親子関係を中心に」が出版された。編者は中田裕康氏であり、執筆陣・座談会出席者は、内田貴氏、大村敦志氏、角紀代恵氏、窪田充見氏、久保野恵美子氏、瀬川信久氏、高田裕成氏、道垣内弘人氏、床谷文雄氏、水野紀子氏、山下純司氏、山本敬三氏、吉田克己氏である。

 民法改正については、現在、債権関係が先行して、法制審議会において議論されているところであるが、家族法についても注視しておく必要がある。とくに、司法書士は、相続登記などで戸籍に触れる機会が一段と多い専門職能であり、近時は成年後見業務などを通じ、家族法の立ち入った部分にまで深く関与するようになったので尚更だ。

 債権関係の議事録や資料を追いかけるだけでも精一杯であるが、時間を捻出して、このような家族法に関する書籍も読んでいきたい。

 

講師予定

 今のところ予定している研修の講師予定は次のとおりである。

 平成23年 1月17日(月)関東ブロック新人研修クレサラゼミナールチューター(横浜)
 平成23年 1月20日(木)中央新人研修「労働問題」講師(神戸)
 平成23年 1月26日(水)中央新人研修「労働問題」講師(つくば)
 平成23年 2月 5日(土)静岡県司法書士会ブロック研修「物損交通事故」講師(沼津)
 平成23年 3月14日(月)兵庫県司法書士会研修「労働問題」講師(神戸)

 まとめてみて、民法(債権関係)改正に関する講師がないことに気づいた。
 4月には法制審議会から「中間的な論点整理」が公表される見込みなので、どこもそれ以降に研修を企画しているのだろう。
 このテーマの研修は春以降に集中しそうな気配だ。

仕事始め

 当事務所は、平成23年1月4日から仕事始めである。
 初日から登記申請や面談などの予定で埋まっているので、いきなり通常業務となる。
 その合間に、年賀状のチェックなどもしなければならない。

 今年の目標は元旦のブログに掲げたとおりであるが、そのためには、まず、やりたい(やらなければならない)事業に集中できる環境を整えなければならない。
 今年の前半をその整理にあて、後半に集中した事業を展開したい。

 

謹 賀 新 年

 旧年公表された平成21年度司法統計においては、簡裁における司法書士関与率(18.40%)が弁護士関与率(18.09%)を初めて上回った。
 しかしながら、このような傾向がいつまで続くのかという不安を強く募らせているところである。
 すなわち、簡裁代理権活用の質の欠乏に対する不安だ。
 新年は、このような不安を払拭すべく、簡裁代理権活用の質の向上を目指した活動を一層展開していく所存である。
 質の向上が達成された後には、本人訴訟支援と代理支援との融合という次のステップが控えている。早く、そのステップに達しなければならない。

                     平成23年元旦
                      司法書士 赤松 茂

プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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