大阪司法書士会民法(債権関係)改正に関する検討会

 平成22年2月26日18時より20時30分まで、大阪司法書士会が民法(債権関係)改正に関する検討会第1回が開催され、日司連民事法改正対策部部委員として参加した。
 大阪司法書士会では、15名前後の構成員が契約関係を5つのパートにわけて、それぞれ担当を決めて分析研究をしていくとのことである。
 第1回ということで、日司連の今までの取組み等を報告させていただいた。
 全国各地の本会・青年会で、このようなチームが結成されることを強く期待する。

 同会議に同席した伊豆の司法書士Y氏は懇親会に参加されたようだが、私は、会議終了後その足で三重・鈴鹿へ。
 翌日から開催される全青司みえ全国大会の午前中に予定されている役員会に参加するためだ。


 

静岡県司法書士会主催「消費者問題シリーズ研修」開催

 平成22年2月25日は、三島市において、静岡県司法書士会主催で「消費者問題シリーズ研修」が開催されたので、担当部の常任理事として参加した。この研修は、静岡県内の市町村等の行政担当者のうち消費者相談を直接担当される方々等を対象に数年前から開催しているものである。幸いにも好評を博し、現在では年に6回、静岡県内の東部・中部・西部で開催している。
 今回は、伊豆の司法書士Y氏を講師として、特商法・割販法の改正論点について講義を行った。参加者は20名ほどであった。
 このような研修は、行政機関等と司法書士会との連携を深めるためにも有意義なものである。
 ワンストップサービスの実現のために、今後も各機関との連携を図っていきたい。


消費者団体等との民法(債権関係)改正に関する意見交換会開催報告

 平成22年2月24日(水)18時から19時30分ごろまで、東京・四ツ谷において、全青司民法(債権関係)改正対策特別委員会主催による民法(債権関係)改正に関して消費者団体等との意見交換会が開催されたので、委員として参加した。
 当日は、2団体のご参加をいただき、茂木昌子委員長ほか委員等4名と積極的な情報交換が交わされたので、その概要を報告する。
 意見交換会は、まず、山田茂樹委員から、民法(債権関係)改正に向けたタイムスケジュールの説明をした後、具体的な論点についての解説がなされた。
 たとえば、認知症気味の高齢者が寝具セットを訪問販売で購入してしまった契約から解放されるための法律構成(無効がよいのか、取消しがよいのか)、事業者が訪問販売で事業目的外の商品を購入してしまった契約から解放されるための法律構成(民法か、特別法か)、誇大広告の商品を購入してしまった消費者が契約から解放されるための法律構成(消契法の不実告知と債権法改正の基本方針の不実表示との違い)、役務提供契約の履行途中で提供業者が倒産してしまった場合、先払いしたクレジット代金の返還を受けるための法律構成(抗弁接続のみならず、複数契約の解除を認めるべきか)、約款を利用した契約から解放されるための法律構成(約款を明文をもって認めるべきか)、等の論点について事例に基づいて、それぞれの状況に応じた意見の交換を行った。
 また、それ以外にも、公序良俗違反に現代的暴利行為を含めることの是非、錯誤の効果を取消しとすることの是非等、多くの論点の紹介がされた。
 その後、消費者団体にとって、民法(債権関係)改正の最大のテーマともいえる消費者契約法の取込みについて、そのメリット(消費者保護の精神が広く法曹に浸透する見込み等)・デメリット(消費者保護の目的規定が不存在であると解釈が後退するおそれ等)が比較され、その是非について積極的に意見交換がされた。
 民法(債権関係)改正の議論は、まだ始まったばかりである。
 これからも今回のような意見交換会を開催していくことが必要であろう。

民法(債権法)改正のポイント受講報告

 平成22年2月24日(水)13時から17時まで、商事法務主催で、「民法(債権法)改正のポイント」というテーマで、セミナーが開催されたので受講した。講師は、森・濱田松本法律事務所に所属し、早稲田大学大学院法学研究科教授である児島幸良弁護士が担当された。
 参加は、事業会社、金融会社、業界団体、弁護士、司法書士等幅広い層から計40名程であった。
 講義は、民法改正が実務に及ぼす影響、改正に向けたタイムスケジュール、改正の範囲、改正の動向等が述べられた後、実務家等がこれから対応するには、法制審の進み方と並行して研究を進めていくことがベターであろうとの見解が述べられた。
 一方、民法改正に大きな影響を及ぼすと思われる「債権法改正の基本方針」では、合意主義を重視しているといわれることがあり、その根底には、健全な合意は保護されるべきであり、また逆に、健全でない合意を成立させることは妥当ではない、との思想が流れているのではないかとのことである。その証左に、一度健全に成立した契約から解放されるためには危険負担の方に権利が自然消滅するのではなく、解除という意思表示を要求していること、時効期間の満了により債務が消滅するのではなく、請求を拒絶することができるに留まるという案も(乙案として)出していること、等があろうとのことであった。
 その後、法務省より法制審民法(債権関係)改正部会第1回において示されている31の論点について、実務的な観点から順次コメントが述べられた。
 なお、講義内容は、改正案に対して、こうすべきであるという私見は述べられず、債権法改正の基本方針の提案を前提に、このような改正がなされたら、実務的には、このような点に留意すべきである、という触れ方が多かったように思う。むしろ実務家向けに講義をするには、今回のセミナーのようなアプローチがよいのだろう。
 今回のセミナーは、司法書士が実務家向けに講義をする際の参考にもなった。

民法改正の論点整理その25

 (瑕疵担保責任と債務不履行との関係)

 現民法における瑕疵担保責任は、その法的責任を法定責任説とする見解や契約責任説とする見解等、諸説の解釈が対立している状況にあるものの、判例は、一応、法定責任説を採用していると考えることもできる。
 法定責任説の一般的な考え方は、契約の目的物が特定物である場合、履行が完了した時点で債務不履行を問うことができず、目的物に瑕疵があったとき、買主が売主に責任を問うことができなくなってしまうという事態が生じかねない。そこで、法が特別に瑕疵担保に関する規定を定められたと解釈する。その結果、不特定物を契約の目的物としたときは債務不履行責任を問うべきであり、瑕疵担保責任の規定は適用されないということになる。
 一方、契約責任説の一般的な考え方は、目的物に瑕疵があれば、それは不完全履行であり、買主は売主に対して債務不履行の責任を問うことができ、瑕疵担保責任は、その債務不履行責任をもとに定められたと解釈する。その結果、目的物が不特定物・特定物であるとに限らず、瑕疵担保責任を問うことができることになる。

 このように諸説ある中、債権法改正の基本方針では、契約責任説の立場から瑕疵担保責任の規定が見直された。
 現代的取引は代替的特定物が主であるため、契約責任説を採用することとしたとの説明がなされている。
 現民法で規定されていた期間制限も廃止されたが、その代わり買主は瑕疵の通知を合理的な期間内に売主に通知しなければならず、通知をしなかったときは救済手段を利用できないとされた。
 また、明文をもって、代金減額請求が認められた。
 なお、特定物の現状による引渡しを定めた現民法483条の廃止も提案されているところである。

 契約責任説を採用することによって、瑕疵担保責任を問う際にも、債務不履行の一般原則をもとに請求することとなるが、そうすると債務不履行の一般原則による請求権と瑕疵担保責任において定められた請求権との関係について整理する必要が生じる。例えば、一般の追完請求と瑕疵担保責任の瑕疵のない物の履行請求、一般の解除・損害賠償請求と瑕疵担保責任の解除・損害賠償請求との関係である。
 ここの部分は、まさにゼロベースから実務上の問題点を洗い出していかなければならない箇所であるといえる。

 

静岡県司法書士会常任理事会

 平成22年2月23日は静岡県司法書士会において常任理事会が開催されたので、相談事業部担当常任として参加した。
 常任理事会では、昨今の司法書士を巡る不祥事を重く見て、日司連が制定した債務整理事件処理に関する指針よりも、厳格な債務整理事件処理に関する定めを、より実効力のある「規則」として制定することとなった。
 面談をしないで業務を受任したり、品位のない広告を打ったり、報酬の説明をしっかりしなかったり、過払いだけ受任して破産や再生事件は受任しなかったり、ということのないように規則を設けるわけである。
 いずれも当たり前のことであるが、それが一部において守られていないから、規則ができるわけであり、全国的にもみても、看過できない状況にあることは間違いがない。
 この時期、司法書士が自ら襟を正さなければ、市民の期待に応えることなど到底できないだろう。


司法書士から見た民法(債権関係)改正研修(徳島)

 平成22年2月20日は、13時30分から17時まで、徳島県司法書士会館において、徳島県司法書士会主催で、民法(債権関係)改正の研修が開催されたので、講師として登壇した。
 参加者は40名ほどであった。
 今まで用いてきた「司法書士からみた民法(債権関係)改正」のレジュメを使い、いつものように1時間ほど総論的な講義を行った後、31の論点について解説を行った。
 触れることのできたテーマは次のとおり。
1、意思能力の意義と効果
2、錯誤の効果
3、意思表示に関する規定の拡充
4、短期消滅時効の廃止と消滅時効制度の全般的な見直し
5、法定利率
6、履行の請求の限界
7、追完請求権
10、債務不履行による損害賠償の要件
11、債権者代位権の制度の在り方
12、詐害行為取消権の行使要件
13、連帯債務者の一人について生じた事由の効力
14、保証人保護の拡充
15、債権の譲渡禁止特約
16、債権譲渡の対抗要件
17、債務不履行による解除の要件

 徳島本会では、11月にも民法(債権関係)改正の研修を予定しているという程の力の入れようだ。
 ぜひ民法(債権関係)改正に関して、会独自の意見書をだしていただきたい。

静岡青司協東部地区勉強会

 平成22年2月18日は、三島市において、静岡県青年司法書士協議会東部地区の勉強会が開催されたので、参加した。10名以上の司法書士が集まった。
 勉強会のテーマは、「スマートフォンの活用」と「登記実務の諸問題」であった。
 スマートフォンの活用では、「クラウド」、「ウェブメール」、「マインドマップ」など、専門用語が飛び交った。
(マインドマップは、スマートフォンとは関係ないが・・・)
 確かに、インターネットを有効活用することによって、外出先での仕事もできるようになり、また、情報整理や共有の方法も格段に上昇した。
 効率的な仕事をするためには、知っておくに越したことはない。

 スマートフォンの活用法の詳しくは、リンク先の小林亮介司法書士のブログにアップされている。

民法改正の論点整理その24

(債務不履行による解除の要件)

 現民法では、条文上、履行不能による解除の場合のみ帰責事由を必要としているが、条文上明示されては居ないが、履行遅滞の場合にも帰責事由が必要であると解されている。また、不完全履行については事案に応じて履行不能、履行遅滞の規定が準用されると解されているところである。

 これに対し、債権法改正の基本方針では、解除を債務者への制裁という制度から、債権者を契約の拘束力から解放するための制度であると理解をかえ、解除の要件として債務者の帰責事由を不要とされ、債権者からみて契約の重大な不履行であるか否かを要することとされた。
 無催告解除と催告解除の2元的な構造を維持しているが、催告解除において、「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたるとき」を解除の要件とされた。
 また、事業者間契約においては、「契約の重大な不履行」の立証責任を債務者に負わせることによって、迅速な解除ができるよう配慮されている。
 なお、解除から債務者の帰責事由を排除したことにより、債務者に過失がないが契約の重大な不履行にあたると評価しうる事案等において、解除と危険負担の適用が重複する場面も想定しうることになるため、危険負担の制度を廃止し、解除に一本化することが提案されている。

 債権法改正の基本方針の提案によると、催告解除の際、「催告に応じない」+「契約の重大な不履行にあたる」と、一見要件が加重されているようにもみえる。これは付随的な義務違反の場合には解除が認められないという判例を意識したものであると思われるが、催告解除の要件事実に変更をもたらすものなのか、それとも解除の実務は変わらないものとなるのか、より明確な表現方法を検討すべきであろう。
 また、事情者取引の特則の規定についても慎重な検討が必要である。そもそも消費者契約法を民法に取り込むか否かという議論とあわせて、事業者概念を民法に導入するか否かという議論もなされるべきである。
 事業者取引の規定の存置場所としては、本来、商法が適格なのではないかとも思われるのだが・・・。
 事業者取引の取り込み等については、「市民のためにわかりやすい民法」の意味をどのように考えるのか、という問題から議論する必要があろう。

 また、危険負担を廃止すると、適用局面において、反対債務を免れようとする当事者からの解除の意思表示が必要となる。プロである実務家レベルでは、解除通知をだせばよいという結論さえおさえておけば事足りるのであるが、法律実務家にアクセスすることが容易ではない市民レベルで考えると、一定の場合に新たなアクションを起こさないと契約から解放されないという制度の導入は混乱を招くおそれがあるのではないだろうか。
 とくに、解除から帰責事由を排除しても、危険負担の制度を存続させている諸外国の立法例があることも踏まえて、危険負担の廃止は慎重な議論が尽くされるべきであるように思う。



 

東京大学大学院法学政治学科・法学部連続講義「債権法―『債権法改正の基本方針』を中心に」(第2回)受講報告

 平成22年2月16日18時30分から20時まで、東京大学大学院法学政治学研究科・法学部連続講義「債権法改正―『債権法改正の基本方針』を中心に」第2回が開催された。第2回のテーマは、「債権その1-債務不履行のシステム」であり、講師は東京大学教授の森田修氏が務められた。

 講義の主な内容は次のとおりである。主語は、講師の森田修氏である。なお、講義内容に聴き誤りや解釈の誤りがあるおそれもあるので、ご了承をいただきたい。(文責 赤松 茂)

【はじめに】
 ①市場からの入力を重視する、②「合意は守られるべし」から「契約の尊重」へ、という契約責任法の大きな2つの文脈の中で、債権法改正の基本方針は作られた。②については、一件同じようにも思えるが、「合意」よりも、「契約」の方が広いと考えられる。

【契約債権の基本構造】
 債権法改正の基本方針では、履行請求権の存在意義が定められ、同時に、履行請求権の限界も定められている。履行請求権の限界は契約の趣旨によって定まるものと考えられる。履行請求権の排除原因のひとつが不能にすぎない。
 原始的に不能なものを契約の目的とした場合、契約は成立しないという現民法の考えから、原則として有効であると変更された。これは、契約債権の基本構造へのアプローチを履行請求権から出発するという考えから導かれたものである。

【損害賠償・要件】
 債権法改正の基本方針では、債務不履行の一元論を採用し、帰責事由の変更が提案されている。その構造は、「契約債務の内容+債務不履行-免責事由」と考えることができる。
 免責事由としては、「契約において債務者が引き受けていなかった事由」という契約におけるリスク分配のルールが採用されている。
 なお、履行請求の認められる場面が広くなっている点に留意されたい(【3.1.1.65】〈ウ〉)。
 ところで、不能と遅滞は、無履行という点では同じであるが、不完全履行については、一応履行がされている点で異なる。不完全履行は、その事案に応じて、不能や遅滞の規定にあてはめて解釈されてきた。債権法改正の基本方針では、不完全履行に対して追完という新たな制度が設けられた。

【損害賠償・効果】
 債権法改正の基本方針では、通常損害・特別損害という考えから、予見可能性という考えに変更することが提案されているが、実務はさほど変わらないものと考えている。予見可能性とは、当事者が契約締結時にいかなるリスク分担をしていたかという考えに基づくことになる(【3.1.1.67】〈1〉)。
 なお、一定の場合には、債務不履行時においても、リスク分担をすることが提案されている(【3.1.1.67】〈2〉)。
 また、損害軽減義務を定めることも提案されている(【3.1.1.73】)。
 
【追完】
 追完請求権は、不完全履行がなされた場面での履行請求権を具体化したものである。この追完請求権には、修補請求、追履行請求、代物請求を含むものである。売買のところに詳細な規定も定められている。
 なお、債権法改正の基本方針では、債務者の追完利益を保障するために、債務者に追完権を認めることが提案されている。この制度は極めて限定的であり、不完全履行の類型にのみ適用されるものである。
 ところで、追完権は、【3.1.1.57】〈3〉の解釈によって、適用範囲が異なることになるので留意が必要である。

【解除・危険負担】
 債権法改正の基本方針では、解除の要件について、無催告解除と催告解除の2本立てが維持されている。不能は、契約の重大な不履行として判断されることになる。立証負担はあるが、契約の重大な不履行という事実を立証すれば無催告解除をすることも認められる。
 ところで、解除の帰責事由が排除されているが、それは帰責事由が問題となった判例がほとんど見当たらなかったこと等が理由である。
 そのように解すると、天災等により不履行となれば、それが契約の重大な不履行に該当すれば、解除をすることができるが、損害賠償請求はできないという事態も想定し得ることになる。(ただし、天災による不履行リスクを契約時に債務者が引き受けていれば損害賠償請求ができることは当然である。)
 なお、催告解除に、「催告に応じないことが契約の重大な不履行にあたるとき」という要件を加えたが、判例も規範的要件をもとに動いているので、それを忠実に提案されたものである(【3.1.1.77】〈2〉)。一方、事業者間契約については立証責任を転換することが提案されている(【3.1.1.77】〈3〉)。
 解除から帰責事由を排除することにより、危険負担との整合性についても検討する必要が生じる。ドイツ等は、解除に帰責事由が求められないにもかかわらず、危険負担の制度を残しているが、債権法改正の基本方針では、危険負担制度を廃止し、解除に一元化することが提案されている。これは、今後、メリット(反対債務を残しておきたい場合、解除の意思表示をしなければよい)とデメリット(反対債務を消滅させたい場合、解除の意思表示という負担が生じる)とを比較考慮していく必要がある。
 なお、現民法536条2項に対応した規定は、債権法改正の基本方針でも存続させることが提案されている。

【事情変更】
 債権法改正の基本方針では、事情変更は原則として認めないとすることが提案されている。ただし、判例、学説上、異論のないものとして認められている部分につき例外規定を置くこととされている。
 条文化したとしても、事情変更の原則が認められることが極めて困難であることに変わりはない。
 なお、債権法改正の基本方針では、事情変更の効果として、再交渉義務を原則的義務として定め、交渉中は履行を停止することを認めており、その交渉が決裂したとき、解除を原則とする案と契約改訂を原則とする案とが併記されている。しかし、いずれの案も、現実的には解除が原則形態になるものと予想している。

民法改正の論点整理その23

(約款)

 現民法においては、約款に関する規定はない。
 判例では、約款の拘束力の考え方につき、合意意思が推定されるとされているところである(大判大正4年12月24日)。

 債権法改正の基本方針では、約款の定義と組入れ要件を規定することが提案されている。また、不当条項規制として、約款と消費者契約に関し、無効とする、みなし条項、推定条項をそれぞれ設けることが提案されている。

 約款を用いた契約は数多くあり、定義の定め方や規律の設け方は、実際の契約取引に大きな影響を及ぼすものと想定される。
 たとえば、債権法改正の基本方針では、約款を「多数の契約に用いるためにあらかじめ定式化された契約条項の総体をいう」と定義しているが、定義付けされることによって、今までは約款の問題と捉えられていなかった契約も、約款の規律を受けるおそれがある。むしろ、これは約款使用者の相手方(多くは消費者)にしてみると、好ましいことかもしれない。

 また、約款規定を導入するとしたら、その際、不意打ち条項を設けるかどうかも、実務的な視点から検討する必要がある。すなわち、不意打ち条項により契約の入口の段階での規制をするか、不当条項規制として契約の出口の段階で規制をするか、という問題である。

 さらに、不当条項規制のみなし条項、推定条項についても、定めることになったとしたら、具体的なリストの内容については約款を用いた契約トラブルの実情を踏まえて定める必要があろう。

 約款の規律は、消費者にとって最も注視すべき分野の一つであるといえよう。


長野青司協定時総会研修

 平成22年2月13日は、長野の昼神温泉にて、長野青司協定時総会が行われ、同時に民法(債権関係)改正に関する研修が開催されたので、講師として参加した。
 参加者は、長野の司法書士20名ほどであった。
 3時間ほどの講義時間の中で、「司法書士からみた民法(債権関係)改正」というテーマで講義を行った。
 総論に1時間ほどの時間を費やし、各論については次のものに触れた。
1、意思能力の意義と効果
2、錯誤の効果
3、意思表示に関する規定の拡充
4、短期消滅時効の廃止と消滅時効制度の全般的な見直し
5、法定利率
6、債務不履行による損害賠償の要件
7、債務不履行による解除の要件
8、債権者代位権の制度の在り方
9、連帯債務者の一人について生じた事由の効力
10、保証人保護の拡充
11、債権譲渡の対抗要件

 なお、全青司民法(債権関係)改正対策委員会に、長野青司協前会長T氏とS氏から就任承諾をいただいた。しかしながら、懇親会の席上ということもあり、後日、心裡留保但書の主張がなされる可能性もあることを念のため付け加えておく。

民法改正の論点整理その22

(契約の申込みと承諾)

 意思表示にてついては到達主義が原則であるが、現民法においては、承諾につき、例外的に発信主義としている。通信機関の発達していなかった時代に契約を早く成立させ、取引を迅速に進めることを認めるために、このような例外規定を設けたものと思われる。
 しかしながら、承諾の発信主義という規定は、申込者が承諾の期間を定めてした契約の申込みに対して承諾の期間内に承諾の通知を受けなかったときは申込みの効力を失うと規定した民法521条2項との整合性について問題があると指摘されているところである。

 そこで、債権法改正の基本方針では、承諾を意思表示の原則どおり到達主義とすることが提案されている。

 それ以外にも、契約が迅速に成立するための規定が、いくつか提案されており、たとえば、事業者がする不特定の者に対する契約内容の提示については、一定の場合には、申込みの誘引ではなく、申込みと推定するとの規定を置くことが提案されている。これにより、インターネット通販などでは、顧客の意思表示は申込みではなく、承諾と解することになり、顧客の意思表示によって、契約は成立することになる。そのため、事業者に注文が殺到し、当該商品の在庫が無くなったとしても、顧客との契約が成立している以上、事業者には、場合によっては損害賠償を負うリスクが生じるという弊害も考えうることになる。

東京大学大学院法学政治学研究科・法学部主催 連続講義第1回

平成22年2月10日18時30分から20時まで、東京大学において、「債権法改正―『債権法改正の基本方針』を中心に」をテーマとした連続講義が開催されたので受講した。
 合計6回の講義であるが、第1回の講義は、「序論―これまでの経緯、検討の対象、民法総則の変容」をテーマに、大村敦志氏が講師を務めた。

以下、講義の概要を述べる。主語は、講師の大村敦志氏である。なお、講義中の聴き誤りや解釈の誤りがある可能性があることを念のため申し添えておく。(文責 赤松 茂)

【債権法改正の経緯】
 内田貴氏らが民法(債権法)改正検討委員会を立ち上げたほか、加藤雅信氏らも民法改正研究会を立ち上げ、それ以外にも多くの学者が民法改正に関する提言をしているところである。
 法務省も、諮問88号を受け、法制審に民法(債権関係)部会を設置し、具体的な検討を開始したところである。
 
【本講義の構成】
 本講義では、民法(債権法)改正検討委員会がまとめた「債権法改正の基本方針」を中心に解説を行うこととする。
 その理由は、学者の成果物としては、もっとも詳細なものであると思われることと、本講義を担当する講師が民法(債権法)改正検討委員会に所属していることが挙げられる。
 連続講義の第2回から第5回までに「債権法改正の基本方針」本体部分の講義を行い、第6回はやや外側の視点からの講義をする予定であり、今回の第1回は序論という位置づけでの講義は行われる。
 受講対象者を意識して、実務的な観点から講義をすることを心がけるとのことであった。

【改正の背景】
 差し迫った不都合を修正するための改正を小さな改正とするならば(例:割賦販売法改正など、いわゆる火消し立法)、民法は、数十年に一度のスパンで行うべきである全体的な見直しを図るための大きな改正をする必要が高いと考えられる。
 大きな改正をするには、形式的には50年、100年という区切りのよい時間の経過が契機となることもある。
 現在の民法改正の論議は、民法施行100周年が契機となっているとみることもできる。
 1990年代以降、諸外国において民法改正の動向があり、グローバリゼーションという風潮があることは間違いない。
 日本では、経済体制の再編などを受けて、倒産法、会社法、信託法、保険法等の改正が行われており、民法も例外とはならない。これら改正には正当性の調達を図ることが重要であると考えられている。そのため、民法改正に関しては、市民のためにわかりやすい民法という方針が重要になる。

【検討の対象】
 法制審の部会は、民法(債権関係)とされている。財産法全般を改正の対象としないことについての批判もあるところである。
 しかしながら、財産法は膨大であるので、いくつかのパートにわけて見直すという方法もあり、諸外国においてもそのような見直しの方法をとっている例もある。
 また、部会が「債権法」ではなく、「債権関係」となっているのは、改正の検討対象が、債権編のうち法定債権を含まず、逆に総則の一部(意思表示や消滅時効)を含むものであり、実質的な意味での契約法が検討の対象になっているといえるからである。
 とくに、契約法については、現代化の必要性が高いと考えられる。その理由は、新しい形態の取引等に現民法は対応できていないということと、契約理論に限界がきている(特定物の概念、約款に関する問題など)ということ等があげられる。
 なお、契約主義という概念は、規範的な契約解釈等の一定な社会的サポートに包まれているものの、当事者の創意工夫にルール創りを委ねていくことが求められているといえ、さらに、社会全体が契約によって形成されているということを追求していくことが重要であると考えるので、契約法から改正を検討するという方針に賛成することができる。

【総則の変容】
 法律行為については、現民法90条から98条までにつき、現代化が提案されている。具体的には、公序良俗違反の現代化(暴利行為の定式化)、不実表示の導入、意思能力に関する規定の新設(行為類型に応じた意思)が挙げられる。
 このような提案を鑑みても、債権法改正の基本方針は、弱肉強食を招く合意主義を採用しているわけではないということができる。
 消滅時効については、債権時効とその他の時効とに分けて規定することが提案されている。提案は、消滅時効期間を統一するとともに、起算点等についても検討を加えた内容となっている。
 消費者契約法については、同法4条、8条から10条を民法に取り込むことが提案されている。消費者契約法を取込むことによって、同法の存在意義が失われるという考えもある。たとえば、消費者契約法には差止請求権の規定があり、同法4条を民法に規定すると差止請求権が機能しなくなるというおそれである。しかしながら、差止請求権の規定を民法の新条文に移したり、差止請求権の規定自体を変更したりという方法もあり得るため、それらを理由に消費者契約法の規定を民法に規定することを否定することは妥当ではない。
また、その他の批判を考えても、消費者契約法の規定を民法に「一般法化」「統合」することを否定することは妥当ではない。
 民法に「消費者」という人概念を持ち込むことについても、現民法では既に「外国人」「未成年」「行為能力者」等の人概念が導入されており、抽象的な人概念のみで民法が構成されているわけではないといえ、消費者という人概念を導入しても、抽象的な人概念の重要性は些かも薄れるものではない。
 「消費者」「事業者」という人概念を持ち込むことによって、より市民社会の実情に即した規定をすることができると考えられる。
 今日の契約の在り方を考えると、商取引や消費者取引の基本ルールを取り込まなければ、市民のための民法を実現することは難しい。
 なお、フランス法は民法典に消費者法を取込んでいないが、フランス法では消費者法の一般法化が既に相当進んでいる等の事情があり、日本とは事情が異なると評価すべきである。
 ところで、規定を具体的にするために、総則編はできる限り小さなものとした方が好ましいという考えがあり、そのために債権法改正の基本方針では、消滅時効の規定のうち債権時効を債権編に移すことが提案されている。

【今後の見通し】
 今回の改正が、実質的な契約法の見直しになることは間違いないと思われる。
 債権関係の改正以外でも、広い意味での「人」を対象とした改正(成人年齢引下げ、夫婦別姓等)が引き続き検討されるのではないだろうか。
 他にも、物権や不法行為等の見直しも順次なされるべきである。
 民法改正を通じ、社会の基本部分の見直しをしていくことになる。



民法改正の論点整理その21

(相殺と差押え)

 現在、判例では、弁済を禁止された第三債務者と差押債権者との関係につき、第三債務者が差押えを対抗するためには、第三債務者の自動債権・受動債権の弁済期の先後を問わないという無制限説が採用されている(最判昭45.6.24)。また、非常時には自動債権の弁済期を繰り上げる特約、いわゆる相殺予約も実務上広く認められているところである。
 このような解釈・運用により、第三債務者の保護が図られてきた。

 一方、債権法改正の基本方針では、第三債務者の立場を尊重し、第三債務者は原則として差押え後に、取得した自動債権をもってする相殺のみを禁じられることとし、受動債権の弁済期の先後を問わないことで、現在の無制限説と大きくは変わらない規律とした。
 ただし、相殺予約については、原則として禁じられ、銀行預金のような特定の継続的取引によって生じるものに限って例外的に認めることが提案されている。

 債権法改正の基本方針の提案に従うと、実務上、銀行預金のような特定の継続的取引以外で相殺予約を利用している場合、第三債務者に不利益が生じないだろうか。たとえば売掛金などを多く持つ商社等の相殺予約の取引実態について検討する必要があると思われる。
 

日司連月報発行委員会開催

 平成22年2月8日は、日司連において、月報発行委員会が開催されたので、委員として参加した。
 月報司法書士では、6月号に民法(債権関係)改正の特集を組み、翌7月号には労働問題の特集を組む予定である。
いずれも、読者アンケートで、取り上げてもらいたいテーマとして頻出するテーマであるので、読者の声を反映し、特集を組むこととした。
 なお、労働問題の特集についても、民法(債権関係)改正の特集と同様に、極力、執筆者を司法書士で固める方針とした。司法書士が労働問題に取り組んでいることを広報したいからである。


 上述のような経緯があり、このブログを読んでくださっているであろう鹿児島のU司法書士、静岡のS司法書士、千葉のT司法書士、青森のK司法書士には、近日、日司連事務局から労働問題に関する原稿の執筆依頼がいくと思われるので、ご快諾をお願いしたい。


静岡県司法書士会「民法(債権関係)改正」研修

 平成22年2月6日は、13時20分から15時20分まで、静岡県司法書士会において「民法(債権関係)改正」研修が開催され、講師として登壇した。
 なぜ今、民法改正か?債権法改正の基本方針の概要、などの総論的な講義を1時間ほど、残りを法務省より公表されている31の論点の解説にあてた。
 触れることのできた論点は次のとおり。
1、意思能力の意義と効果
2、錯誤の効果
3、意思表示に関する規定の拡充
4、短期消滅時効の廃止と消滅時効制度の全般的な見直し
5、債務不履行による損害賠償の要件
6、債権者代位権の制度の在り方
7、保証人保護の拡充
8、債権譲渡の対抗要件
いずれも超特急の触れ方であった。
 今週末には、長野で講義をさせていただくが、講義時間を3時間いただいているので、もう少し多くの論点を扱うことができるだろう。

日司連民事法改正対策部開催

 平成22年2月4日は、日司連において、民事法改正対策部の会議が開催されたので、部委員として参加した。
 既に開催されている法制審議会民法(債権関係)部会に対し、司法書士として、どのように意見を述べていくかということにつき、協議がなされ、具体的な段取りまで決定した。
 とくに、「国民(市民)のために分かりやすい民法」を目指すという視点は、非常に抽象的であり、部委員間においても、認識の相違があったところであるので、意見交換を重ねることにより、一定の共通認識を得ることができたように思う。各論に関する意見で部委員間で異なる見解がでた場合には、この大きな視点に立ち戻り、司法書士らしい意見を述べていくことになろう。
 引き続き、部委員以外の司法書士からも、この大きな視点に対する考えを伺っていきたい。

静岡県司法書士会法教育委員会開催

 平成22年2月3日は、静岡県司法書士会において、法教育委員会が開催されたので、委員として参加した。
 現在、悪質商法事案と中古自動車のトラブル事案の2パターンを教材として用意しているが、次年度に向けて、教材のブラッシュアップを図ることが今回の会議の主な目的だ。
 今回の委員会から多数のオブザーバーに参加いただき、教材製作に加わっていただくことになったので、さらに良い教材ができるだろう。
 労働問題の教材を一昨年作成したものの、使いこなせる講師が少ないというのが理由で、現在、お蔵入りとなってしまっている。
 個人的には、労働問題の教材の復活も期待したいところである。

関東ブロック新人研修講義の練習

 平成22年2月2日は、関東ブロック新人研修で、プレクレサラゼミナールという講義を行うため、講師陣6名が集まって、打ち合わせを行なった。
 90分という講義時間のうちの大半を、クレサラ相談の模擬面談という形式で、ロープレを行う予定だ。
 3人で1チームをつくり、2会場の同時開催をする。
 1人が解説者、1人が司法書士役、1人が相談者役という設定である。
 ロープレと言っても、台本があり、一言一句慎重に言葉を選んで進行する。
 新人の模範となるよう、入念な準備を行っているのだ。

 打ち合わせでは、ひととおりロープレの練習をした後、各シーンでの演技指導や台本の内容について、講師陣間での鋭いやりとりが続いた。
 これで当日は万全の体制で臨むことができそうだ。



「司法書士のための法律相談NAVI」編集会議

 平成22年2月1日は、第一法規から出版されている「司法書士のための法律相談NAVI」の編集会議があり、執筆者のひとりとして参加した。今年の夏から秋にかけて追録を出すため、その内容の打ち合わせをすることが目的だ。
 編者が加藤新太郎判事であるので、ご一緒に会議に参加させていただき、話を伺うだけでも、参考になるところが多く、また、刺激を受けるところも多い。
 私の担当は雇用の部分であるが、当該部分すべてにつき平成22年労基法改正を反映させること、近時増加している労働審判を利用した解雇事案について解説を補強すること、が課せられた。
 これから、できるだけ早い時期に鋭意執筆に取り掛かる予定である。 

全青司「民法(債権関係)改正シンポジウムIN神戸」開催

 平成22年1月31日は、13時15分から16時45分まで、神戸において、全青司主催「民法(債権関係)改正シンポジウム」が開催され、講師として登壇した。
 急な開催であったにもかかわらず、50名以上の幅広い層の司法書士に参加していただき、あらためて司法書士の民法(債権関係)改正への関心の高さを窺い知ることができた。
 講義は、法務省より提示されている31の論点について、解説と検討を伊豆のY司法書士とともに加えるという方式で進行させていただいた。
 民法は、私法の一般法であるため、さまざまな立場から検討を加える必要があるといえ、対話、討論形式の講義は、講師としても、新たな発見があり、非常に有益であった。
 また、講義中は述べることができなかったが、司法書士として尊敬する伊豆のY氏と3時間以上も民法(債権関係)改正について議論する機会を得ることができたのは光栄なことであった。
 講義中、総論のほか、触れることができた31の論点は次のとおり。
 ・意思能力の意義と効果
 ・錯誤の効果
 ・意思表示に関する規定の拡充
 ・短期消滅時効の廃止と消滅時効制度の全般的な見直し
 ・債務不履行による損害賠償の要件
 ・債務不履行による解除の要件
 ・保証人保護の拡充
 ・債権譲渡の対抗要件
おそらく31の論点全てに触れるとなると、10時間以上の研修が必要となろう。

 最後に、民法(債権関係)改正対策特別委員会本部長代行M氏より、次年度は100名体制の委員会として、全青司をあげて、民法(債権関係)改正に取り組んでいきたいとの力強い抱負が語られた。



プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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