静岡県司法書士会「総合相談センターしずおか」相談員向研修会

 平成22年1月30日は、静岡の東中西の3会場で、「総合相談センターしずおか」相談員向研修会が開催されたので参加した。テーマは「相談技法」である。相談技法に関する全体研修を行った後、司法書士と相談者の模擬面談のロープレを行い、相談技法の充実を図った。
 「総合相談センターしずおか」では、電話・面談の無料相談を行っているが、30分の相談時間でいかに相談者の悩みを受け止め、解消するか、また、事務局等との連携を図り、相談者の負担をいかに減らすか、などが課題となっている。
 多くの相談員が参加してくださり、白熱したロープレが展開された。
 司法書士は、このように、法律相談のスキルだけでなく、コミュニケーションスキルも磨いているのである。
 相談員向研修会を継続的に開催し、より充実した「総合相談センターしずおか」としていきたい。
 
 この研修が終わると、その足で、神戸へ。
 明日は、全青司主催「民法(債権関係)改正シンポジウム」が神戸で開催され、その講師を務めるためだ。




民法改正の論点整理その20

(相殺の要件)

 現民法では、相殺の要件として、
① 債権が対立していること
② 双方の債権が同種の目的をもつこと
③ 双方の債権が弁済期にあること
④ 双方の債権が有効に存在すること
が挙げられる。(民法505条)

 しかしながら、判例では、相殺者は自らの債務の期限の利益を放棄できるので、受動債権については弁済期にあるという要件を満たす必要はないとされているところである。

 また、判例では、自動債権に抗弁が付着している場合に相殺が許されると、相手方の抗弁権がゆえなく喪失することになるため、性質上相殺を許さない場合に該当すると判断しているところである。

 このように、条文から導くことができない解釈によって運用されている実情にある。

 そこで、債権法改正の基本方針では、受動債権の弁済期を要件としないこと、自動債権に抗弁権が付着している場合には相殺が認められないこと、を明文化することを提案している。
 また、相殺の提案として、特筆すべきであるのは、第三者による相殺を認めていること、相殺適状を遡及させず相殺の意思表示の時に生じるとしたこと、時効により消滅した債権を自動債権とする相殺について相手方の保護を明示したこと、等があげられる。

 とくに第三者による相殺は、濫用しようと思えば、いくらでも濫用策が思いついてしまうため(ここには書かないが)、しかるべく制限を加えたうえでなければ、認めることはできないと考えている。
 

民法改正の論点整理その19

(一部弁済による代位)

 現民法では、債権の一部について弁済があった場合の効果として一部代位が生じるが、債権者と一部代位者との関係につき、①抵当権等の担保権の実行は債権者と一部代位者が共同して行使することを要するのか、②抵当権等の担保権の実行による配当は債権者が優先するのか等につき規定が不明確であるという問題が指摘されてきた。
 なお、判例では、①につき、一部代位者による原債権の担保権の実行を認め、②につき、抵当権実行後の配当について債権者が一部代位者に優先することを認めているところであるが、①の解釈については学説からの強い批判がある状況である。

 そこで、債権法改正の基本方針では、①につき、債権者が単独で抵当権の実行等をすることができ、②につき、一部代位者が債権者に劣後することを明文化することを提案している。
 不測の一部代位者の存在により、抵当権の実行等による債権の回収という債権者の期待が奪われるおそれもあるので、債権法改正の基本方針の提案には概ね賛同することができる。

 また、債権法改正の基本方針では、「代位の割合を変更する旨の合意」を登記できるものとするという提案もしている。登記実務にも影響を及ぼす改正論点である。

民法改正の論点整理その18

(弁済の充当)

 現民法では、債務者が同一の債権者に対して数個の債務を負う場合、一部の弁済は、合意による充当、指定充当、法定充当といった方法が認められている。
 また、一個の債務から生じる数個の弁済は、指定充当、法定充当が、一個の債務に対する弁済は、費用、利息及び元本に充当されると定められているところである。
 しかし、数個の債務に対する弁済について、費用、利息及び元本への充当方法については、まず全ての債務の弁済の費用に充当し、その後、全ての債務の利息の順で充当するものの、費用相互間における優劣については明文の規定がない状況にある。

 そこで、債権法改正の基本方針では、複数の債権の費用相互間では、指定充当、法定充当の順に充当することを明文をもって定めることを提案している。

 この提案には、原則として賛成だ。
 このように解釈によって補われていた部分を明確にすることにより、紛争が減少することに資することとなると思われるからである。
 逆に、改正により、それまで明確であった規定を規範的要件と変更するようなものは、規範的要件に該当するか否かという事実の評価をめぐって、紛争が増加することが見込まれるので、容易に賛成することはできない。
 紛争が増えれば、法律実務家の仕事が増えるのは明らかなのだが、それをよしとするわけにはいかなかろう。




民法改正の論点整理その17

(債務引受)

 現民法では、明文の規定はないが、判例において、併存的債務引受と免責的債務引受が認められているところである。とくに併存的債務引受は、その効果が保証と類似するので、代替的に利用される例も多いようだ。
 この論点につき、債権法改正の基本方針では、併存的債務引受を原則として、契約の成立を①債務者と債務者との間の合意、②債権者と引受人との合意、のいずれによっても成立するものとした。なお、債権者、債務者と引受人との三面契約による合意も有効である。
 また、この原則に対し、債権者と債務者との間の免除の合意がある場合、例外的に免責的債務引受となるとした。

 保証人保護の規定が導入されると、債権者の立場からは、保証を避け、類似の効果となる併存的債務引受契約を債務者と締結するか、引受人と締結するよう債務者に要求するといった事態も想定しうる。
 債権法改正の基本方針では、この危惧に対し、「債務引受の合意によって引受人の負う債務が債務者の負う債務を保証する目的のものであるときは、保証の規定が準用される。」として手当てをしているが、この規定振りでは、当該併存的債務引受が保証する目的であるとの立証が、その主張をする債務者もしくは引受人に課されるものになると思われる。そうすると、主張権者は、多くの負担が課せられ、現実には保護されないといったことになりかねない。
 保証の規定が適用される併存的債務引受の類型を明記するか、併存的債務引受の中で保証の規定が準用されない類型を逆に明記するか、いずれかの方法で明確に定めることが望ましいと考えるが、いかがだろうか。


中央新人研修(つくば)

 平成22年1月25日は、つくばにおいて、司法書士中央新人研修の講義を担当させていただいた。テーマは、神戸と同様「労働問題と司法書士」である。
 つくばは、7年前に私自身が中央新人研修を受講した会場でもあるので、感慨深いものがある。
 当時受けた新人研修での刺激を実現すべく、試行錯誤していたら、あっという間に7年が過ぎてしまった。
 今回の受講生の中からも、数年後、中央新人研修の講師がでてくることを期待したい。

 研修は予定どおりの内容を行うことができたが、振り返ってみると、登録前の有資格者にとっては、いささか実務的であったかもしれない。受講者からの感想なども気になるところである。

全青司代表者会議

 平成22年1月23日(土)、24日(日)は、名古屋において、全青司代表者会議が開催されたので、幹事として参加した。全国から100名前後の司法書士が集まった。
 会議では、「民法(債権関係)改正への全青司の取組み」が議案として提出され、同議案に関し、レジュメを用いて基礎講義を兼ねた解説を担当させていただいた。

 全国の青年会の代表者の多くも、民法(債権関係)改正に高い関心を示しており、法政審に合わせて、各改正論点について意見を述べていってくださるとのことである。
 また、全青司の民法(債権関係)改正対策委員会への幹事の立候補・推薦も相次いだ。
 体制や人員が整うことにより、これから、さらに加速して、民法(債権関係)改正への取組みを進めていくことができるだろう。
 得るべきものの多い会議であった。


全青司民法(債権関係)改正神戸シンポジウム

 全青司民法(債権関係)改正対策特別委員会主催で、次のとおり平成22年1月31日(日)に、民法(債権関係)改正シンポジウムが神戸で開催される。
 私も講師を務めさせていただく。民法(債権関係)改正に関心のある司法書士は、ふるってご参加をお願いしたい。問い合わせは、全青司事務局(電話03-3359-3513)まで。

以下、シンポジウムの案内を引用する。

 

全国青年司法書士協議会主催
民法(債権関係)改正神戸シンポジウム


 民法(債権関係)改正が法制審議会に諮問され、11月24日いよいよ法制審での議論がスタートしました!債権法の全面改正は、明治29年に制定されて以来初めてであり、100年に一度の大改正となる見通しです。今年4月に発表された、民法(債権法)改正検討委員会の改正試案では、消費者契約法4条の不実告知、不利益事実の不告知を不実表示として一般法化し、断定的判断の提供や困惑類型の取消権を民法に統合するなど、私たちが日頃使うことが多い消費者契約のルールについても大幅な改正が提案されています。また、債権譲渡の対第三者対抗要件が登記に一元化され、債権者代位権について不動産登記法への移設も検討されるなど、改正の内容によっては司法書士の実務にも大きな影響が生じることが予想されます。
 そこで、現在の民法(債権関係)改正の議論を確認し、今後の改正に関して実務の現場から積極的に声をあげていくために、下記のとおりシンポジウムを開催いたします。
 最近よく民法改正って聞くけどどんなふうに改正されるの?とか、改正されたら実務の現場はどう変わるの?などと思っていらっしゃる全青司会員の皆さん、ぜひご参加ください。
 市民のための民法改正を実現するには何が必要か、一緒に考えてみませんか?

日 時 平成22年1月31日(日) 午後1時15分~4時45分
場 所 神戸市産業振興センター  9階 901会議室
          神戸市中央区東川崎町1丁目8番4号 (神戸ハーバーランド内)
          http://www.kobe-ipc.or.jp/access/
主 催 全国青年司法書士協議会
共 催 兵庫県青年司法書士会

≪シンポジウム内容≫
①なぜいま民法(債権関係)改正か
②民法(債権関係)総論と31の論点整理
③全青司の今後の取組みと活動方針について
※講師は民法(債権関係)改正対策特別委員会 委員が担当いたします。


民法改正の論点整理その16

(債権譲渡の対抗要件)

 債権が2重譲渡されたときの優劣については、判例により債務者への到達の先後によると解されているところである。このように債務者をインフォメーションセンターとした優劣基準においては、債務者に過大な負担を課すために相当ではないとの見解もある。
 そこで、債権法改正の基本方針では、金銭債権の2重譲渡につき、登記制度への一元化を提案している。
 現在も、特例法により、法人を当事者とする債権譲渡については登記をすることができるので、それを自然人にまで拡大するという見方もできる。
 確かに優劣を決するためには、登記を利用したほうが明確である。
 そのため、基本的には、登記一元化の提案を支持したい。
 しかしながら、実現には、いくつかの問題がある。
 一つ目は、登記一元化に向けた技術・コストの問題である。抜本的な変更であるので、自然人の特定方法やら、登記システムの構築やら、制度の周知方法やら、・・・検討しなければならないことは山ほどある。
 二つ目は、少額債権等の取扱いである。当事者が、わざわざ登記するほどもないと判断した債権譲渡については、対抗要件が付与されないことになる。しかし、それでは仮に当該債権が2重譲渡された場合に、優劣を決することができずに紛争を助長してしまうのではないか、という懸念が生じる。
 登記一元化のためには、詳細をさらに深く検討していく必要があろう。
 
 この分野は、登記による対抗要件の付与という、まさに司法書士の専門的知見を生かすべくテーマだといえよう。




民法改正の論点整理その15

(債権の譲渡禁止特約)

 現民法では、債権の譲渡は原則として可能であるものの当事者が反対の意思表示をした場合には譲渡できないという規定になっている。そのため、現在は債権譲渡禁止特約のある債権を譲渡することは容易ではない状態である。

 これに対し、債権法改正の基本方針では、債権譲渡自由の原則を維持しつつ、債権譲渡禁止の特約があると債務者は譲受人からの請求を原則として拒むことができるが、譲渡人と譲受人との間の譲渡自体は有効となるとの規定を提案をしている。債務者が請求を拒んだら、債権譲渡の意味がないのではないかとも考えられるが、これには例外が設けられており、①債務者が承認したとき、②譲受人が債権譲渡禁止特約につき善意無重過失であるとき、③第三者対抗要件を備えており、譲渡人に倒産手続の開始決定があったとき、のいずれかに該当するときは、債務者は譲受人からの請求を拒むことができないとされている。ここで、大事なのは③だ。
 つまり、平時は、債務者は譲渡人に弁済を続け、譲受人は譲渡人から金員を受領する。そして、譲渡人の倒産等の非常時には譲受人が直接債務者から弁済を受けることができるということになるからだ。
 したがって、ABSのような資産流動にとっては意義がある提案である。
 
 これを債務者の立場から見ると、どうか?
 自分の債権者が譲渡人のままだと思い、ずっと譲渡人に弁済を続けていても、実は自らの債権が譲渡されており、譲渡人の倒産などの非常時には第三者から突然請求をされることになる。
 元の債権が債権譲渡禁止だという抗弁は通用しない。
 いずれは発生する債権譲渡禁止特約付債権の譲渡人が倒産する初めてのケースの際は大きな混乱が生じるのではないかとも思われる。

 ところで、債権法改正の基本方針の提案が実現すると、債権譲渡禁止特約付の債権の代表といえば預金債権であるが、金融機関が譲渡人となって、預金債権を第三者に譲渡して資金調達をするということも、民法上はあり得ることになる点にも留意しておく必要があるのかもしれない。


中央新人研修「労働問題と司法書士」

 平成22年1月19日は、10時55分より12時15分まで、神戸において、中央新人研修の講師として登壇した。テーマは「労働問題と司法書士」である。
 司法書士有資格者数百人が参加しており、①司法書士が何故労働問題に取り組むのか、②労働者の実態、③労働相談の事例、④これからの取組み等の講義を行った。
 新人に対する講義は、いつも以上に気が抜けない。
 場合によっては講師の一言で、その新人の今後の執務姿勢が決まってしまうこともあるからだ。
 80分という講義時間で、どこまで伝えることができたか不安ではあるが、これを機会に一人でも多くの司法書士が労働問題に取組み、さらには、司法書士にとって新しい分野に挑戦していっていただければ幸いである。

 中央新人研修は、東部と西部にわかれて行われるので、東部(つくば)は来週である。


民法改正の論点整理その14

(保証)

 平成16年の保証に関する民法改正の際、法務委員会では、次のような付帯決議がなされている。
「第161回第10号 法務委員会議事録より抜粋」
「個人保証人保護の観点から、引き続き、各種取引の実態やそこにおける保証制度の利用状況を注視し、必要があれば早急に、継続的な商品売買に係る代金債務や不動産賃貸借に係る賃借人の債務など、貸金等債務以外の債務を主たる債務とする根保証契約についても、個人保証人を保護する措置を検討すること」

 以上の付帯決議を踏まえて、根保証契約を貸金等債務に限定しない形で規定する必要があるのではないかとのコメントが法務省よりなされているところである。

 また、債権法改正の基本方針では、保証引受契約という主債務者と保証人との間の契約で、今までの保証契約と同様の効果が生じる契約類型が提案されている。
 保証引受契約は、重畳的債務引受契約と類似した契約形態であるといえる。
 一方、債権者には、説明責任等を課すことが提案されているが、保証引受契約は、契約当事者に債権者が含まれないことになる。そうすると、債権者は、自らの責任を回避するために、主債務者に保証引受契約を締結することを促すといった弊害も想定しうることになる。
 そのような弊害を防止するために、保証引受契約においても、債権者の説明責任等が生じるよう手当てをすべきであるといえよう。



民法改正の論点整理その13

(連帯債務者の一人について生じた事由の効力)

 現民法では、連帯債務者の一人について生じた事由の効力は、原則として相対効であり、例外的に、請求・更改・相殺・免除・混同・時効について絶対効が認められているところである。
 絶対効は、請求のように連帯債務の担保的効力を強める方向に作用するものと、請求以外の絶対効のように連帯債務の担保的効力を弱める方向に作用するものがある。

 このような連帯債務者の一人について生じた事由の効力に関し、債権法改正の基本方針では、相対効の原則を維持しつつ、例外となる絶対効をほとんど認めないという方向で提案がなされている。この提案によると、連帯債務者の一人に対してした免除や連帯債務者の一人からされた時効援用の主張は、当該連帯債務者が連帯債務関係から離脱するのみであり、現民法のような当該連帯債務者の負担分を考慮して他の連帯債務者の負担分をはじきだす必要はなくなる。結論として、きわめてシンプルな考え方をとることができる。
 また、請求が原則として相対効となるということは、実は、この規定を準用する連帯保証についても大きな影響を及ぼすことになる。
 現民法では、連帯保証人に対する請求は、主債務者に対しても効力が生じ、主債務の時効が中断するが、債権法改正の基本方針の考えによると、連帯保証人に対する請求は、あくまで相対効であるので、主債務には何ら影響を及ぼさないことになる。この考えに従うと、債権管理の実務が大きく変わるだろう。


日司連月報発行委員会

 平成22年1月13日は、日司連において、月報発行委員会があったので、委員として参加した。
月報司法書士の特集テーマは、なぜか既に9月号まで案がでている。
そのうち6月号の「司法書士から見た民法(債権関係)改正(仮称)」という特集テーマを担当することになった。
特集仮称案のとおり、すべて司法書士による論考で特集をまとめる予定である。
月報司法書士は、司法書士の活動や制度を外部に広報するという側面もあわせもつ機関紙であるので、私が特集を担当するときは、極力、執筆者を司法書士で固めるようにしている。

ところで、最近は、どこに行っても、民法(債権関係)改正関連について関与することが多い。
それだけ、司法書士業界が高い関心をもっているということであろう。

日司連民事法改正対策部会開催

 平成22年1月12日は、日司連において、民事法改正対策部会が開催されたので、部委員として参加した。
 昨年12月より、法制審議会民法(債権関係)部会が開催されており、民法(債権関係)改正がいよいよ具体化しつつある。
 同部会の資料によると、債務不履行・解除などの履行障害についての検討からなされるとのことである。
 部会での検討テーマにそって、順次、日司連対策部の現時点での見解をまとめ、部会に提出することとなった。
 最終的には、部会より来年春頃を目安に公表される見込みの「中間的な論点整理」につき、日司連としての意見書を取りまとめ、内外に公表する予定である。
 
 ところで、報道によると、民法改正は、債権関係よりも家族法に関するものが先に国会に上程される可能性もある。
 債権関係だけでなく、家族法も注視しなければならない。

民法改正の論点整理その12

(詐害行為取消権の行使要件)

 現在、破産法上の否認権を行使しうる範囲より、民法上の詐害行為取消権を行使しうる範囲の方が広くなっている。前者は破産管財人がなすものであり、後者は一般債権者がなすものではあるが、いずれも債務者の非常時に行使されるものであり、範囲が異なるのは問題であるとの指摘もあるところである。

 そこで、債権法改正の基本方針では、詐害行為取消権の行使しうる範囲を、原則として破産法上の否認権を行使しうる範囲に揃えることが提案されている。
 また、転得者がいる場合には、受益者・転得者双方の悪意を要件とし、裁判をする際には受益者もしくは転得者のほかに債務者もあわせて被告とする必要があるなど、現在の実務を大きく変える提案となっている。
 事実上の優先弁済については、一定期間の制限を課すこととしている。事実上の優先弁済をすべて禁止した債権者代位権と比較すべきであろう。

 司法書士が詐害行為取消権を利用することは稀であると思われるが、破産事件などの書類作成業務の際、常に一般債権者から詐害行為取消しを主張されるリスクがあるか否かということは視野に入れて業務をおこなっている。つまり、一般債権者の立場からすると、詐害行為取消権は「伝家の宝刀」であるといえる。倒産処理が円滑にすすむために、詐害行為取消権は、いざとなったら使いやすいものでなければならない。




民法改正の論点整理その11

(債権者代位権)

 現民法の規定する債権者代位権制度は
① 条文が少ないため、制度が不透明となっている
② 事実上の優先弁済が認められている
③ 日本では、保全・執行の制度が完備されているため、利用される頻度が少ない
などの問題点がある。

 これに対し、債権法改正の基本方針では、
① いわゆる転用型を明文をもって認め、第三債務者や債務者への保護も明文化する
② 事実上の優先弁済を禁止する
③ ①に関連し、債権者代位権行使の際、債権者は原則として債務者に対しての通知義務を課す
などのドラスティックな変更を提案している。

 実は、債権者代位が最も利用されているのは、不動産登記の代位請求権であると思われ、現に代位登記は強制執行の準備手続にはかかせないものとなっている。
 したがって、この部分の改正は、登記の専門家たる司法書士にとっても、きわめて重大な影響をおよぼす可能性を秘めているといえる。

 現在の利用実績の大多数が不動産登記なのであれば、代位を認める根拠規定を不動産登記法に存置し、民法の債権者代位制度を廃止するということも検討案としては出てくるものと思われる。
 不動産登記以外の代位請求は、保全・執行制度で補完し、さらに、第三者に対する直接請求権を個別に設けるなどの策もあるだろう。

 債権者代位制度、果たして、民法に必要か否か。
 これから、同制度の存在意義が問われようとしているのだ。


民法改正の論点整理その10

(債務不履行による損害賠償の要件)

 現民法において、債務不履行による損害賠償を請求する際には、
① 債務内容の確定
② 債務不履行の存否判断
③ 帰責事由なしの抗弁
という判断プロセスを辿ると説明されることが多い。

 債権法改正の基本方針では、上記のプロセスのうち、免責事由③の内容を変更し、「契約で引き受けていなかった事由」を免責事由とすることが提案されている。

 「契約で引き受けていなかった事由」とは、一見、契約で定められていなければリスクを負担しないという意味ではないかと考えることもできる。
そうすると、契約時において、一般に優位な立場にある債権者は、契約書に膨大なリスク引受条項を要求することにもなりかねない。ひいては契約書の冗長を招くことになる。

 しかしながら、提案の趣旨は、そうではない。
 結論として、現民法下の実務と、ほぼ変わらないことになると立案担当者からは説明がされているところである。
 (その結論の説明にいたるには、結果債務や手段債務などについても考察する必要があるので割愛する。)

 ここで、また疑問がわく。
 実務が変わらないのであれば、そもそも立法事実がないのであるから、少なくとも、その部分については改正する必要はないのではないかという疑問である。

 そのような疑問に対する回答としては、民法そのものが古くなっているため、全体のオーバーホールが必要だと説明されることがある。

 確かに、そのとおりかもしれない。
 ただし、立法事実がない規定も改正するという、通常の法律改正では考えられない改正が検討されているということは、今以上に周知が図られなければならないだろう。

 そのためにも、全国各地で異業種を含めた民法改正の勉強会を開催する必要がある。

民法改正の論点整理その9

(追完請求権)

 不完全履行がなされた場合、現民法では追完請求権が明文をもっては認められていない。
 債権法改正の基本方針では、債権者に追完請求権を明文をもって認め、その権利内容を明確にしようという提案がなされている。具体的には、債権者が追完の請求をしてもなお追完がなされないときに追完にかわる損害賠償請求権を有するものとし、一定の場合には無催告で追完にかわる損害賠償請求権を有するとするものである。
 不完全履行とは、すなわち、目的物に瑕疵がある場合も含みうるので、瑕疵担保責任もリンクして検討する必要がある。
 一方、不完全履行をした債務者には、追完権という債権者の無催告による追完にかわる損害賠償請求権に対抗する権利を付与することも提案されている。

 たとえば、壊れたエアコンの修補請求など、この規定が適用される場面は数多く想起され、さまざまな事例を想定した上で、慎重に検討を重ねる必要があるテーマであるといえよう。

新年の挨拶まわり

 平成22年1月4日は、午後から静岡県司法書士会の挨拶まわりに、相談事業部長として同行させていただいた。
 静岡地方法務局、静岡地方裁判所、静岡家庭裁判所、法テラス、静岡労働局等を回ったが、各組織のトップの顔を拝見する機会は滅多にないことであり、また、雑談の中から色々な活動のヒントも得ることができ、とても新鮮であった。(私の事務所では、新年の挨拶まわりどころか、開業の挨拶まわりもしなかったので、尚更なのかもしれない。)
 明日からは、通常業務の日々である。

謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。

 さて、旧年は、労働者派遣が社会問題となり、労働者派遣の法的諸問題も浮き彫りとなりつつあります。
 長期化する不況の中、労働者派遣という非正規雇用の問題は勿論のこと、正規雇用についても、注視していかなければならないと考えています。

 また、いよいよ民法(債権法)改正が具体化しています。
 法案が成立してから勉強しようという姿勢ではなく、法案に私たちの意見を盛り込もうという姿勢で果敢に活動を展開していく所存です。

 何事も、攻めの姿勢で動く一年にしたいものです。

 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


             平成22年 元旦  司法書士 赤松 茂
プロフィール

Author:赤松 茂
あかまつ司法書士事務所
静岡県沼津市下河原町48番地

【TEL】055-963-8002

【Mail】 quick-response@nifty.com

(平成26年5月に事務所移転しました。)

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